一番信頼していた幼馴染が実は全ての元凶だったやつ 作:全ての元凶
投稿が遅れて申し訳ないです
それからのことは、正直よく覚えていない。
気がつくと、僕の手には、父さんが常日頃から家宝だと自慢していた剣が握られていて。
目の前で父さん達を襲った狼の魔物達が何体も倒れていた。
「僕が……倒した……?」
「リューク! ッリューク!」
近くには、さっき以上に取り乱しているリアナがいて、そういえばと自分の体を見ると大量の引っ掻き傷がある。
丘の上で怪我したら絶交だなんて約束をしたばっかりなのに。
嫌だなぁ、これでも結構リアナのことは好きなんだけど。
魔物がこんなに強いなんて想像してなかったし、今日はノーカウントにしてくれたりしないかな。
「嫌だ、リューク! 死なないで!」
「だ、大丈夫だって」
リアナはなおも泣きそうな顔で僕に駆け寄ってくるが、何故彼女があんな泣きそうな顔をしてるのか分からない。
いくら僕が怪我をしてるって言っても別に命に関わるほどじゃ……。
……あれ?
おかしいな、心なしか視界がボヤけている気がする。
そんな大きな怪我はしてないはずなんだけど……ダメだ、足がフラフラしてきた。
そして、不思議に思って足元を見れば、さっきは気づかなかったけど僕の足元は血で真っ赤に染まっていて。
この血って、もしかしなくても全部あの魔物じゃなくて僕のものか。
パッと見でも、なんで自分が生きているのかわからないほどの量が出ていることは分かる。
「ごめんリアナ、ちょっと眠いかも……」
「リューク? リューク!?」
そういえば、父さんと母さんは生きているんだろうか。
まあ、冷静に考えて死んでも死ななさそうな父さんが死ぬ訳ないよね。
母さんだって、僕がこんなに血を流しても生きてるんだからきっと生きてるはず。
ただ、それだけを心配しながら、僕の視界は暗転していく。
そして、消えいく意識の中で最後に見えたのは、倒れる僕を抱きしめる幼馴染の姿だった。
◆◆◆
あ、危ねぇ……。
リュークに両親が丁度息絶える瞬間を見せれたところまでは完璧だった。
だけど、まさかそこからリュークが敵討ちをしに行くとは。
ほんっっっっとうに危ない。
ここでリュークが死んでたらシャレにならないどころじゃない。
両親の死を目の当たりにして、心から絶望したリュークの顔を見たばかりだったし。
俺の感情が冗談抜きにジェットコースターになるところだった。
「り、リアナ……絶交だけはやめて……」
「ふふっ、こんな状態でまだ約束が残ってると思ってるのかぁ」
だけど、結果として、リュークは生きている。
俺の膝で、丘の上でした約束をまだ気にしている。
死んでいたら、こんなことは出来ていなかった。
もしリュークが死んでいたら、 リュークの亡骸の前で自殺を試みる俺が爆誕していたと思う。
ただ、俺の身体は簡単には死ねないようになっているから、その時は多分世界の崩壊もついてくる。
うーん、我ながらクソすぎ!
まあ、結果オーライだからセーフセーフ。
「リアナちゃん、ごめんねぇ。本当は私が見ないと行けないんだけど。私も教会の仕事で忙しくて」
「任せて、リュークのことはボクか一番分かってる」
「……いつもはリアナちゃんに振り回されてるリュークの方がお兄ちゃんっぽいのにねぇ」
「だってボクの方がリュークより生まれたの早いからね!」
そして、リュークを膝に乗せながら愛でていると。
俺が世話になっている教会のシスターがやってきた。
彼女は実質的な俺の育て親で、ただの村にしてはそこそこでかい境界を一人で管理しているおばあちゃんだ。
ちなみにここの教会の神は、俺を転生させたおっさんと同じ存在。
この世界で一番メジャーらしいんだけど、そんなのが俺みたいな存在を生み出して良いのかな……。
まあ、神も退屈なんだろう。
それはともかく、この人、こんな優しそうな顔して結構厳しいんだよな。
門限破ると普通にキレてくるし。
とは言え、基本的には優しいおばあちゃんではある。
……基本的には。
「本当に、今回のことは災難だったと思うわ。これからはリュークも教会で預かろうと思っているのだけれど、リアナちゃんは大丈夫かしら?」
「もちろん、ボクは大丈夫」
「よかった。じゃあ、今日からでもリュークがここに住めるようにしておくわね」
やったぜ。
そうそう、リュークの両親を殺したとき、もしかしたらリュークと一緒に住めるんじゃないかって考えてたんだよな。
この村で、親を亡くした子供が行く場所なんてこの教会くらいしかないからね。
これで無事俺の予想がハマった形になる。
それにしてもこれからリュークと一緒に生活するって……考えただけでも発狂しそう。
だって朝起きたら寝起きのリュークに出会えて、夜にはお眠のリュークの顔を拝めるって事でしょ。
流石にご褒美にも程があると思う。
こんな俺得なことが存在することが許されてしまっていいの?
……あ、でも。
この教会は俺が住めるスペースがなんとかあるだけで、とても子供とは二人が住めるようなスペースは現状ない。
だから、一旦シスターがリュークが住む場所を作らないといけないのか。
「私は一旦リュークが住める場所を作ってくるわね。それまでにリュークが目を覚ましたら……リュークを私がいるところまで連れてきて頂戴」
と思っていたら、案の定、シスターはリュークの住居を作りに行くとその場を離れようとする。
そのついでに、リュークが起きたら自分を呼んでとも言われてしまった。
だが、俺は出来ることならもう少しリュークを独り占めしていたい。
「シスターが帰ってくるまで。ボクがずっとリュークのそばにいてもいい?」
「……しょうがないわね。その代わりに、私が帰ってくるまでリュークには何も伝えないでおくのよ」
だから、そのことを正直に伝えれば、俺の我儘が珍しいのか、老シスターは俺の提案を飲んでくれた。
これで俺はしばらくリュークを独り占めにすることが出来る。
いやぁ、昔門限を破って馬鹿みたいにキレられた時に鬼シスターなんて思って申し訳ない。
貴方、いや貴方様は神シスターだわ。
「ん……こ、ここは……?」
「起きた?」
「リアナ……? 僕ちゃんと生きてる?」
そして、シスターが協会の奥へ向かってから少しして。
ついにリュークが目を覚ます。
自分が生きていることが信じられないのか、目をパチパチとさせて戸惑っている様子。
「え、僕あんな量の血出してたのに生きてるの……? 夢じゃないよね?」
「うん、夢じゃない」
「え、でもあの時リアナが怪我したら絶交だって言ってたじゃん」
相変わらず、寝言だけじゃなくて現実でも絶交のことを気にしていて。
俺が何事もなく話しているからこれは夢だと思っているみたいだ。
やっぱり俺の幼馴染、ちょっと抜けてるよな。
あんな怪我して目が覚めたらこんな反応になるのも仕方ないとは思うけど。
「……色々あったからね。ボクもリュークと絶交するのは嫌だよ」
「えー……リアナに絶交って言われたらどうしようって考えてた僕が馬鹿みたいじゃん……」
……何だこいつ。
俺のこと好きすぎだろ。
その顔と言葉、絶対に俺以外の人間には見せないでくれよ。
俺の前世が男じゃなかったら普通に惚れそうになるくらいかっこいいし可愛いから。
「って! 何で僕はリアナの膝で寝てるの??」
「あれ、バレちゃった」
「バレちゃった、じゃないでしょ!? は、恥ずかしいって!」
ここで、これがトリップしているうちにリュークが俺の膝枕に気づく。
俺はまだ堪能していたいから彼を止めようとする、が。
よほど恥ずかしかったのか、大怪我をしているというのに俊敏な動きで抜け出されてしまった。
俺だと包容力が足りないのか?
いや、別に気にしてる訳じゃないんだけど。
俺って、結構起伏の少ない体型なんだよな。
太ももがもっと太かったり、膝枕した時に空が見えなかったりしたらリュークも喜ぶんだろうか。
うーん、とてもじゃないがこれからそんなことが出来るまで成長する気がしない。
……なんて、思っていたのだが。
「ボクの膝枕じゃリュークは喜んでくれないかぁ」
「い、いやいや! 別にリアナの膝枕が嫌な訳じゃなくて!」
「それ以外に何があるの?」
「膝枕は……う、嬉しいんだけど。そんなことをするのは恥ずかしいっていうか……」
意外にも、膝枕から逃げられたことについて不満を示すと、リュークは頬を赤らめながらこんなことを言ってきた。
あれれれ?
これ、意外とリュークも喜んでいるんじゃ?
そう思って、姿勢を再度正して太ももをポンポンと叩けば、リュークは耳まで真っ赤にして目を背ける。
ふふっ、なーんだ。
そんなに俺の膝枕が気持ちよかったならいくらでもやってやるのに。
結構素直じゃないんだなぁ。
「ほらほら、別にボクは構わないよ」
「や、やめて。恥ずかしいんだってば」
「案外気持ちよかったんじゃないの〜?」
やっぱりこの幼馴染をからかうのはたまらない。
リュークが近くにいてくれて本当に良かったよ。
リュークがいなければ俺、今頃飽き飽きしてこの世界ぶっ壊してたと思うもん。
「あ、シスター。リューク起きたよ」
「……随分と楽しそうだったわね」
「見られちゃった?」
「ええ。とても微笑ましかったわ」
と、ここで騒ぐ俺達の声を聞きつけたシスターが戻ってくる。
俺達のじゃれ合いはバッチリ見られていたらしく、シスターに孫を見るような目で見られてしまう。
それに対して、リュークの顔はどんどんと青ざめていって……。
……赤くなったり青くなったり忙しそうだ。
「あの、ここは?」
「教会よ。かなり酷い怪我だからあまり動かないようにね」
そして、リュークが羞恥心で悶えまくった後。
やっと我に帰った彼はやっとここが教会だということを把握する。
まあ村の人間の殆どはここの信者だし、薄々は気づいていたとは思う。
だけど、今の彼にとって、ここがどこかなんてことはどうでもいい。
「……ここにいるのは、僕だけですか?」
「ええ。正確には、私とリアナちゃんと貴方だけね」
ぼかしてシスターに気になっていることをそれとなく聞いてみるようだが、シスターはそれに応えない。
おそらく待っているのだろう、彼の口から直接その疑問が投げかけられるのを。
「僕の……僕の父さんと母さんはどうなりましたか」
それから、長い沈黙があって。
そう、彼に言われたシスターは。
俺を数度見して、その後リュークに、彼の両親が亡くなっていることを伝えた。
「そうです、か……」
なるほど、残酷な真実を伝える嫌われ役に俺をさせたくなかったのか。
これは流石に神シスターかもしれない。
だけど、そんなシスターの気遣いは、大好きな両親を失ったリュークには届かない。
嘘だ、とかそんなわけがない、とか色々な感情が彼の中で渦巻いているだろう。
俺は、そんな彼を優しく抱きしめてやる。
大丈夫だよ、リューク。
君に家族がいなくなっても、その代わりに俺がなってあげるから。
これからは、ずっといっしょだよ?
※村はそのうち滅びます