誤字などの指摘は歓迎です!
「今日がサービス終了、なんだよね」
暗いオフィス、PCと月の明かりが自分を照らす。
疲労からのため息が漏れ、背もたれが軋む音が鳴る。
「もう少しがんばれば間に合うかなあ。やっぱり最後だし見納めしておかなきゃ、後悔するんだろうなあ...」
疲れ目で目尻を揉みながら、楽しかった日々を思い出す。
DMMO-RPG《Yggdrasil -ユグドラシル-》
最高のギルド、アインズ・ウール・ゴウン
皆で造り上げたナザリック地下大墳墓に愛するNPC達。
この苦痛極まる現実世界における労働と、短い睡眠以外
すべての時間を費やしてきた唯一幸福の居場所。
自分にとっては《ユグドラシル》の世界こそが、あの日々こそが、真の現実だったと言っても良い。
「はは...後悔なんて言葉だけじゃあ、済まないよね。みんなの、僕たちの...!居場所なのに!終わりだなんてっ...」
デスクに拳を叩きつけ、焦燥や不安から奥歯が軋む。
震える手で頭を抱えながらキーボードに額を沈める。
「どうしてみんな!離れて行けるんだよっ...」
自分のような考えは特殊なんだろう。
他のギルドメンバーは自分と違い、現実での生活や時間が大切な人たちもいるのだろうけれど。
今ナザリックに残ってくれているのは自分と...
「ふう...早く片付けないと。あともう少しだけ待っていてくれますよね、モモンガさん...」
◆◆◆
《ユグドラシル》へ帰還するため、煩わしい雑務を
手早く終わらせ自室へと急ぐ。
着替えもそこそこに、ネクタイだけを外しゲームの起動を焦るように進めていく。
「なんとか間に合ってよかった...さて《LOGIN》、と」
ただいま、最高の我が家────
漆黒のシャンデリア。真紅の天蓋付きベッド。金の額縁で彩られたギルド1の絵師による絵画。ナザリックのギルドメンバー用個室。僕、いやこの私...
「紅玉卿アルカード·ブラッドリリー...帰還、と」
ルビー色に輝く長髪とアメジストのような瞳。
真珠のような白い肌に豪奢な真紅のローブを纏った姿。
魅惑、という言葉がここまで似合う者がいるのかという
ほどの美丈夫がそこにいた。
僕のプレイスタイルはロールプレイ。吸血鬼の王として、こう、多少大げさにしながらも格好良く、そして美しくを追求してペロロンチーノさんや、モモンガさんと一緒に
いろいろ考えたりしたなあ。
とは言っても鬱屈した現実で機械的に労働者として働く姿
の方が演じていたもので、このナザリックでの日々こそが自分が自分らしく過ごせた至福の時間だったんだよね。
コマンドでログイン履歴や個人メッセージを確認する。
ログインしたのは...たしか3日ぶりだったっけ?
嫌味上司に丸投げされた仕事が溜まってたもんなあ。
手当も無いサービス残業で遅くなっちゃったよ、もう。
ふと視界がゆらりと歪む。
「まずい、本当に疲れが酷いね。同じ境遇のヘロヘロさんも来てくれてるのかなあ。とりあえずモモンガさんに個人メッセージを...」
ふらついた身体が天蓋ベッドへと背中から倒れ込む。
シーツやマットの柔らかな感触につい瞼が閉じていく。
「メッセージ、を、送って...」
この、最後の時に...寝落ちするなんて。
ツイてないなあ僕は。
残業続きの寝不足かなあ。帰還した安心感からかも?
アルカード·ブラッドリリー、サイトウソウマは
深い眠りの中へ意識を手放した。
◆◆◆
23:59:57、58、59───
0:00:00……1、2、3
「...どういうことだ!」
ちなみにアルカード(ソウマ)がログインしたのは
アルベドの設定を書き換えるあたりかなあと妄想