人柱力? いいえ違います。ただの超魔王バールの憑代です   作:華洛

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第六話 滅びた国で、世界を喰う樹は静かに根を張る

 

 木ノ葉隠れの里でヤヨイとプリニーが少し騒ぎを起こしている頃。

 火の国から少し離れた海辺の地。

 かつて渦の国と呼ばれたその場所には、今もなお滅びの気配が沈殿していた。

 

 うずまき一族。

 封印術に長け、九尾すら封じ、制御しうると恐れられた一族。

 その力を危険視されたがゆえに、渦の国は滅び、渦潮隠れの里もまた歴史の中へ沈んだ。

 今では誰も住まない。

 崩れた建物。

 風雨に削られた石壁。

 潮風に晒され続けた瓦礫だけが、かつてここに人の営みがあったことを辛うじて伝えている。

 

 その廃墟の中を、うちはサスケは一人で歩いていた。

 任務は調査。

 この周辺で「見たこともない生物がいる」という噂が流れていた。

 ただの流言であればそれでいい。

 だが、こういう曖昧な異変の先にこそ、本物の厄介事は潜んでいる。

 

 サスケは足を止め、左目を細めた。

 輪廻眼が、空間のわずかな揺らぎを捉える。

 目の前には、ただの崩れた石壁と、草の生えた空き地しかない。

 だが、輪廻眼を通して見れば、その景色の奥に薄く歪んだ膜のようなものが重なっていた。

 結界だ。しかも、ただ隠すだけではない。

 認識そのものを逸らす幻術まで重ねられている。

 

「……なるほどな」

 

 低く呟き、サスケはその揺らぎへ踏み込んだ。

 空気が変わる。

 一歩、境界を越えただけで、潮の匂いが薄れた。

 代わりに鼻をついたのは、湿った土と、濃すぎる生命の匂いだった。

 視界の先に広がっていたのは、廃墟だけではなかった

 

 巨大な樹だった。

 

 

 

 空へ届かんばかりにそびえ立つ、異様な大樹。

 幹は山のように太く、枝は雲を抱き込むように広がっている。

 その根は大地を食い破るように四方へ伸び、周囲の地面そのものを侵食していた。

 その姿は、かつて見た大筒木一族の神樹に酷似していた。

 だが、同じではない。もっと禍々しく、もっと生々しい。

 まるで星そのものから無理やり生命を吸い上げているような、異質な圧があった。

 

 その周辺には、プリニー族、呪目族、巨眼族がいる。

 特に呪目族や巨眼族の眼は、写輪眼や輪廻眼だったりしている。

 サスケの目が細まる。

 この空間全体に張り巡らされた結界と幻術は、輪廻眼でなければ見抜けない精度で構築されている。

 ただの隠蔽ではない。ここで何かが進行している。

 それも、見られてはならない規模で。

 サスケは刀の柄に手を添えたまま、気配を消しながら大樹の根元へ向かう。

 

 やがて、その下に一人の男を見つけた。

 

 坐禅を組み、静かに座している。

 背後には黒い球体――求道玉。

 その姿は、六道仙人の力を得た者にしかありえない異形の威厳を帯びていた。

 サスケの足が、わずかに止まる。

 

(あれは……大筒木。いや、違う)

 

 輪廻眼が捉える。

 穢土転生ではない。

 死人の穢れた気配ではない。

 生きている。しかも、ただ生きているだけではない。

 この場の中心として、樹と空間そのものを支配している。

 

(――初代・千手柱間だと)

 

 ありえない。

 だが、輪廻眼がそう告げていた。

 その時、男がゆっくりと目を開いた。

 そこにあったのは、波紋を刻む両の輪廻眼だった。

 

「どうやら鼠が侵入したらしいの」

 

 静かな声だった。

 だが、その一言だけで空気が重くなる。

 柱間は坐禅を解き、ゆっくりと立ち上がる。

 気づかれている。

 そう察したサスケは、隠れる意味はないと判断し、物陰から姿を現した。

 互いの視線が正面からぶつかる。

 サスケは驚いた。

 柱間ま両目は輪廻眼であり、額には転生眼がある。

 

「大筒木以外で、輪廻眼持ちと会うとは……」

 

 柱間はサスケを見て、わずかに目を細めた。

 

「片眼の写輪眼と気配を見る限り、マダラ……いや、インドラの系譜か。しかし、まさか俺の細胞を使わずに覚醒に至るとはの」

 

 サスケは表情を変えない。

 

「初代、柱間」

 

 低く、鋭い声。

 

「ここで何をしている。いや、あんたは何だ」

 

 柱間が答えるより早く、空間にざわりと黒い影が満ちた。

 蝙蝠。

 無数の蝙蝠が、サスケと柱間の間へ集まってくる。

 羽音が渦を巻き、黒い群れが一つの輪郭を形作る。

 やがてそこに現れたのは、気品と威圧を同時に纏う一人の男だった。

 

 儚君ヴァルバトーゼ。

 

 さらにその傍らへ、二つの影が降り立つ。

 アルティナXENO。

 フェンリッヒXENO。

 いずれもただ者ではない。

 立っているだけで、空気の密度が変わる。

 

「アルティナ。フェンリッヒ」

 

 儚君ヴァルバトーゼが静かに告げる。

 

「暴君ヴァルバトーゼとの戦いで眷属が減ってしまった。あそこの男を眷属にして戦力を増やす」

 

「かしこまりました、儚君様」

 

 アルティナXENOが即座に応じる。

 

「全ては我が主のお望みのままに」

 

 フェンリッヒXENOもまた、恭しく頭を垂れた。

 二人が戦闘態勢へ移ろうとする。

 サスケもまた、刀を抜き、低く構えた。

 その直前。

 

「儚君。少し待て」

 

 柱間が口を開いた。

 

「うちはの青年と話す」

 

 儚君ヴァルバトーゼは一瞬だけ沈黙し、それから小さく頷いた。

 

「……いいだろう。二人とも待機だ」

 

 アルティナXENOとフェンリッヒXENOが一歩引く。

 だが、いつでも動けるように気配は張り詰めたままだった。

 柱間はサスケへ向き直る。

 

「さて。先程の質問だが、俺は十尾の人柱力ぞ」

 

 サスケの目がわずかに細まる。

 

「十尾の人柱力。――尾獣は一体も捕獲されていないはずだ」

「俺はこことは別の次元からやってきた」

 

 柱間の声はあまりにも自然だった。

 まるで、隣国から来たとでも言うようにいう。

 

「目的は、世界樹の実を食べることだ」

「世界樹……」

「大筒木の神樹を元に、俺が造り出した術。木遁・世界樹降誕」

 

 柱間が背後の大樹へ視線を向ける。

 

「これを降誕させた星は、自然エネルギー、チャクラ、魔力、生命エネルギー……ありとあらゆるものを吸って成長し、やがて実をつける。それを食べることが、俺の望みぞ」

 

 サスケの声が低くなる。

 

「実をつけて、星はどうなる」

 

「崩壊する」

 

 柱間は即答した。

 

「しかし、それも仕方なし。所詮はこの世は弱肉強食よ」

 

 その言葉に、サスケは沈黙する。

 目の前の男は、もはや初代火影ではない。

 大筒木とも違う。しかし、やっていることはそれ以上に質が悪い。

 神樹を模倣し、それを自らの木遁として再構築し、星を喰う。

 しかも、その理屈を当然のものとして受け入れている。

 

「うちはの者よ」

 

 柱間が、静かに言う。

 

「その輪廻眼を俺に寄越せば、星が滅びる寸前まで生かしておくが、どうするか」

「断る」

 

 即答だった。

 柱間はわずかに目を細める。

 

「そうか」

 

 そして、儚君ヴァルバトーゼへ視線を向けた。

 

「儚君。眷属にしてもよいが、左目の輪廻眼は俺が貰う」

 

 その言葉が、合図だった。

 アルティナXENOとフェンリッヒXENOが同時に動く。

 左右からサスケへ襲いかかる気配。

 だがサスケはそちらを見ない。

 狙うべきは一つ。

 

(天手力)

 

 空間が捻じれ、サスケと儚君ヴァルバトーゼの位置が一瞬で入れ替わる。

 そのままサスケは柱間へ一直線に踏み込んだ。

 

「本体ではなく分身体がここにあるということは――」

 

 刀身が閃く。

 

「世界樹は神樹と違い、実をつけるまで術者のコントロールが必要ということだ!」

 

 護衛を相手にしている時間はない。

 世界樹の維持役を落とす。

 それが最優先。

 

「――神羅天征」

 

 黒炎が迸る。

 刀とともに柱間へ迫る必殺の一撃。

 しかし。

 次の瞬間、サスケの身体が見えない壁に叩きつけられたように吹き飛んだ。

 

「っ……!」

 

 輪廻眼の汎用能力。

 神羅天征の圧倒的な反発力が、黒炎ごとサスケを弾き飛ばしたのだ。

 サスケは空中で体勢を立て直し、地を滑るように着地する。

 その視線はなお柱間から逸れない。

 柱間は微動だにしていなかった。

 

「流石はうちはの者の観察力よ」

 

 その声には、わずかな感心が混じっていた。

 

「俺は世界樹の剪定作業で動けん。だから、儚君にその間の護衛を頼んでいる」

 

 サスケは無言のまま、刀を構え直す。

 儚君ヴァルバトーゼが、静かに前へ出た。

 その背後でアルティナXENOとフェンリッヒXENOもまた、改めて殺気を研ぎ澄ませる。

 柱間はそんな三人を一瞥し、最後に淡々と告げた。

 

「一つ言っておく」

 

 輪廻眼が、静かにサスケを見下ろす。

 

「儚君は強いぞ」

 

 その言葉に誇張はなかった。

 ただ事実を告げるだけの、冷えた確信だけがあった。

 サスケは今、自分が想定していたよりも遥かに深い災厄の中心へ踏み込んでしまったのだと、はっきり理解していた。

 そして同時に、ここで戦い続けるべきではないとも悟る。

 勝てるかどうかではない。

 この情報を持ち帰らなければならない。

 

 初代火影の姿をした異形。十尾の人柱力。

 世界樹降誕。星を喰い、世界を崩壊させる術。

 そして、この結界を見抜いてここへ辿り着けるのは、今のところ輪廻眼を持つ自分だけだ。

 ここで自分が潰えれば、木ノ葉はこの災厄の正体すら掴めない。

 

(ナルトに伝える)

 

 結論は一瞬だった。

 サスケの気配が、わずかに変わる。

 攻めるためではない。

 退くための、冷えた集中。その変化を、柱間は見逃さなかった。

 

「ほう」

 

 わずかに口元を緩める。

 儚君ヴァルバトーゼが眉を動かす。

 

「逃がすのか」

「構わぬ」

 

 柱間の返答はあまりにもあっさりしていた。

 次の瞬間、サスケは動いた。

 「天手力」により、サスケの姿が小さな石と入れ替わる。

 瞳術を駆使しながら、結界の出口へ向けて最短で駆けた。

 

 サスケは結界の境界へ到達する。

 世界樹から出された細かな胞子が、サスケの身体へ付着していた。

 根を張るほどではなくとも、位置と動向を辿るには足りる。

 この存在に気がつくのは、九尾の人柱力ぐらいだ。

 境界を越える直前、サスケは一度だけ振り返り、そのまま結界を後にした。

 

 儚君ヴァルバトーゼは柱間を一瞥すると無数の蝙蝠が再び舞い上がり姿を消した。

 同時にアルティナXENOとフェンリッヒXENOも主を追い姿を消す。

 

(木遁分身体では戦いに面白みがないからの)

 

 柱間の本体はある魔界で、実の収穫をしている最中だ。

 収穫する際に、少し邪魔が入ってようだが、軽い食前運動として蹴散らすことができたと感じた。

 

(大筒木もこの星を狙っているようだが、この星を喰らうのは――俺ぞ)

 

 滅びた渦の国の地下で。

 誰にも知られぬまま、世界を喰う樹は、なお静かに根を張り続ける。

 

 





◯儚君ヴァルバトーゼ
出典:ディスガイアRPG
異世界のヴァルバトーゼ。
死ぬ間際のアルティナの血を約束を破り吸ったことでココロが摩耗している。
血を吸うことで眷属にすることができる。
時には餌して、手駒ほ増やすため。容易く血を吸い支配をする。
六道柱間とは一時的に同盟を結び協力関係にある。

◯アルティナXENO
出典:ディスガイアRPG
異世界のアルティナ。
ナース兼メイドとして仕えておりヴァルバトーゼの命令に忠実に動く。
儚君ヴァルバトーゼの血を取り込んでいて、儚君化することも可能。
六道柱間が呼び寄せている魔物たちの世話を任されている。

◯フェンリッヒXENO
出典:ディスガイアRPG
異世界のフェンリッヒ。
この世界のフェンリッヒ同様にヴァルバトーゼの仕える忠実な執事。
フェンリッヒと異なり笑顔を絶やさない毒舌家。
ヴァルバトーゼを儚君とする原因を作ったアルティナXENOを虎視眈々と抹殺しようとする。

◯呪目族
出典:ディスガイア7
両手に呪眼を宿した牛系魔物。
だったのだが、かつてオビトが人柱力に施した似た要領で、六道柱間に魔改造された。
そのため両目の呪眼は、写輪眼と輪廻眼になっている。

◯巨眼族
出典:ディスガイア7
多くの悪魔から畏敬を集めている、魔界でも高位の一つ眼魔物。
かつて長門が口寄せした動物と同様に一つ眼は輪廻眼となっている。



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