劉備に転生した俺、三国志が思ったより治安悪すぎる ~ニートになりたいだけなのに、関羽と張飛が俺を覇王にしようとしてくる~   作:ブンチョウ

11 / 11
第11話:呂布の娘は戦闘狂

──前世の格言に曰く、『虎の尾を踏んではならない』。

 

 だが、今の俺の状況はそんな生易しいものではなかった。

 

 虎の尾どころか、世界最強の狂犬ガンダムこと呂布(りょふ)の家庭内に、うっかりダイナマイトを投げ込んでしまったのだから。

 

 厳氏から「劉備殿には絶対に逆らうな」とガチ恋混じりの釘を刺された呂布軍の陣営は、現在進行形で大パニックに陥っていた。

 

「あの劉備、我が妻を脅迫し、精神的に洗脳するとは……! だが、俺が直接動けば徐州の領民が暴動を起こす。誰か、奴の『底』を割ってこい!」

 

 怯える呂布の前で、ドォンと胸を叩いて名乗りを上げた者がいた。

 

 呂布の愛娘──呂玲綺(りょれいき)である。

 

 彼女は普通の可愛いお姫様ではない。

 

 父親譲りの怪力と野生の勘を持ち、十代にして大の大人の兵士を素手で引きちぎる、愛用の小方天画戟(しょうほうてんがげき)を振り回す「合法的な野生のゴリラ(美少女版)」であった。

 

 ただし、力任せに暴れるだけではない。

 

 敵の足運びや陣の綻びを、獣じみた勘で嗅ぎ取る、戦場向きの目も持っていた。

 

 一方、その頃の俺──劉備(りゅうび)は、役所の執務室で震えていた。

 

「ねえ関羽、張飛。最近、役所の周りを異様に殺気立った女の子がうろついてるんだよね……。お願いだから二人とも、彼女と絶対に目を合わせないで! 現代の防犯の基本は『ヤバい不審者には近づかない』だからね!」

 

 俺の「近づくな」は、二人には「相手を刺激せず、役所の外で正体を探れ」という密命に聞こえたらしい。

 

「承知した、兄者」

 

「へへっ、じゃあ外を見てくるぜ!」

 

 関羽と張飛が役所の外周へ散ったのと入れ違いに、その『ヤバい不審者』は、正面からやってきた。

 

 バガァァァァン!!!

 

 凄まじい爆音と共に、俺の執務室の頑丈な木扉が文字通り「木っ端微塵」に粉砕された。

 

 飛び散る木片の向こうから、目をらんらんと輝かせた呂玲綺が乱入してくる。

 

「お前が劉備か! 母上をたぶらかし、父上を恐怖で縛った化け物め! 父上が動けぬと高をくくっていたのだろうが、そうはいかん。娘である私が、貴様の正体を暴いてやる!」

 

 フンッ! と彼女が小方天画戟を振り下ろすと、俺のデスクが綺麗に一刀両断された。

 

 鋭い刃先が、俺の鼻先数センチのところでピタリと止まる。

 

 風圧だけで前髪が吹き飛んだ。

 

「ひええええええええ!!?」

 

 恐怖のあまり脳のヒューズが消し飛んだ俺は、無意識に机の引き出し(奇跡的に残った側)を開け、中にあった「ある物」を彼女の顔面に突き出した。

 

 それは、前世の記憶を頼りに、暇つぶし──もといニート生活の準備──として地元の鍛冶屋に作らせていた鉄製の『知恵の輪』だった。

 

「暴力反対! ほら、これあげるから! 落ち着いて! 現代の教育に良いとされる知育玩具だよ! それが解けたら戦ってあげるからぁぁ!!」

 

 とにかくこれで時間を稼ごう。

 

 彼女が戸惑っている隙に、裏口から夜逃げして徐州から失踪してやる。

 

 そんな下心100%のパニック状態で、俺は鉄のパズルを彼女の手の中へと無理やり押し付けた。

 

「ぬお!? なんだこれは……新手の妖術か!?」

 

 呂玲綺は戸惑った。

 

 だが、ただの力自慢ではない。

 

 今、この距離で劉備が武器でもない鉄輪を差し出してくる理由を、武人の勘で読もうとした。

 

 彼女はこれまで、力と殺戮の中で生きてきた。

 

 敵を倒すには首をハネる。

 

 扉を開けるにはぶち壊す。

 

 だが、目の前の鉄輪には、力をぶつける以外の答えがあるように思えた。

 

「うぬぬぬ! 外れん! この私が全力で引いても千切れんとは……。いや、違う。これは力を測る物ではないのか……?」

 

 顔を真っ赤にして、知恵の輪をガチャガチャと弄り始めるゴリラ美少女。

 

 よし、今だ。

 

 俺はジリジリと部屋の隅へ避難を開始する。

 

 だが、あまりにも彼女が力任せに壊そうとするので、鍛冶屋への修理代がもったいなくなり、つい口が滑った。

 

「あ、あの、力入れたらダメだよ。角度をこう、ひねって、優しくスライドさせるんだよ。……じゃあ、私はこれから有給消化に入りますので……」

 

 俺がビビってガタガタ震える指先で、彼女の手元をちょんと突いて「正解の角度」へ導いた──その瞬間だった。

 

 カチャリ。

 

 心地よい金属音と共に、複雑に絡み合っていた鉄の輪が、嘘のように鮮やかに外れた。

 

「あ……」

 

 呂玲綺は、外れた二つの輪を見つめた。

 

 力では壊せなかったものが、角度と順序を変えただけで、するりと外れた。

 

「貴様は最初から、私が父と同じ答えしか出せぬかを試していたのか」

 

「この輪は玩具ではない。兵を動かす者のための、小さな戦場だ」

 

 筋肉では絶対に解決できなかった世界の謎が、劉備の「優しい指先(ただの怯え)」によって一瞬で解き明かされたのだ。

 

(な、何これ……。力では解けなかったものが、順序一つで開いた……! 私の圧倒的な武力を、この人は汗一つかかずに『知略』だけで無力化した。そればかりか、私に、兵を動かす者のための別の勝ち方を教えてくれた……!)

 

 彼女の脳内で超解釈の嵐が吹き荒れる。

 

(母上が言っていたことは本当だった。この人、ただの天才じゃない。私の『野生』を完全に支配した覇王だわ……!)

 

 さっきまで獣のように荒々しかった彼女の目は一転し、武人の鋭さを残したまま、仕えるべき主を見定めた者の熱を宿していた。

 

「師匠……! いや、我が主よ! 私に……私にその『力に頼らぬ勝ち方』を、もっと教えてください!」

 

「えっ? いや、俺はただの無職希望の──」

 

 そこへ、部屋の惨状を聞きつけた公孫蘭(こうそんらん)──俺の秘書兼お嬢様──が、現代の「進捗管理表」の木簡を抱えて冷徹に入ってきた。

 

 呂玲綺の顔を一瞥し、すべてを察したように冷たい笑みを浮かべる。

 

「劉備様、執務室の備品損壊に関する始末書です。……あら、呂布の娘さん。劉備様から『武力以外で勝つための教え』を受けているのですね。素晴らしいことです」

 

 公孫蘭は、進捗管理表の下から別の木簡を取り出した。

 

「武力だけでは兵站も財も回りません。劉備様の高みに少しでも近づきたいならば、まず数字を読めるようになりなさい。こちらの『九九の暗唱』と『帳簿の初歩』からです」

 

「は、はい! 劉備様の教えなら、私、なんでもやります!」

 

 こうして、武一辺倒だった呂玲綺は、公孫蘭の手によって「劉備を崇拝し、武と算術を両方学ぶ英才女騎士」へと強制的に育成枠に入れられてしまうのだった。

 

 数日後──。

 

 呂布の元へ帰ってきた娘は、見違えるほど丁寧な口調で、陣営の収支報告書(見やすく整理された木簡)を提出した。

 

「父上、これからは暴力だけの時代ではありません。劉備師匠の『徳』に従い、我が軍も無駄な出費を改めるべきです」

 

「な、なんだと……!?」

 

 呂布はガタガタと震え、白旗を掲げた。

 

「お、俺の誇り高き愛娘まで、わずか数日で頭の中まで塗り替えられて帰ってきた……! 劉備元徳、お前は一体どれほどの怪物を裏で飼っているんだ……!!」

 

 こうして劉備は、ただの知恵の輪一つで、世界最強のDNAを持つ呂布の娘(呂玲綺・主従忠誠)をマイハーレムの9人目に獲得。

 

 世界からは「呂布軍の親子二代を、一滴の血も流さずに『知略と洗脳』で完全支配した、底知れぬ恐怖の魔王」としてさらなる凶悪な誤解を深めていくのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

過労死ゲーマー、藤吉郎になる。 ~知識チートはあるが、人の心が重すぎる~(作者:ブンチョウ)(オリジナル歴史/戦記)

過労死したゲームプログラマーが転生したのは、やり込んだ歴史ゲーム『戦国の覇道』の世界だった。 神様から「好きなキャラになれる」というギフトをもらい、彼は選ぶ。 最も出世し、最も女性にモテる男――「木下藤吉郎」を。▼史実イベントも武将の能力値もすべて知っている。 この知識(チート)を使えば、主君・信長を導き、天下統一も楽勝のはずだった。▼――だが、彼は知らなか…


総合評価:208/評価:7.5/連載:33話/更新日時:2026年07月03日(金) 21:24 小説情報

学園生活を満喫したいだけのモブ(チート)(作者:ハスバル)(原作:ファイアーエムブレム風花雪月)

同盟領の小さな田舎貴族の三男坊にマイルズに憑依した主人公▼「目が覚めたら、大好きなゲームの世界だった」けど能力が「潜在能力オールSで全ての行動が最適解になってしまう」だった果たして、モブ君は平穏な学園生活を送れるのだろうか▼正直、ゲームでの歴史があやふやです。もしかしたら▼『こんなの絶対にあり得ない!』というのもあるかもしれません▼ご了承ください。▼許せる人…


総合評価:713/評価:7.59/連載:28話/更新日時:2026年06月02日(火) 23:32 小説情報

転生したらヒトカゲだった。しかも色違い(作者:リザードン大好きマン)(原作:ポケットモンスター)

交通事故で命を落とした俺が転生したのは、まさかの色違いのヒトカゲだった。▼森の中で目覚めたその日から、待っていたのは野生ポケモンとの命懸けの生存生活。ゲームの知識はあっても、ここはリセットの効かない現実だ。負ければ本当に死ぬ。▼目指すは最終進化のリザードン。そして、いつか大空を飛ぶこと。▼これは、逃げてばかりだった俺が、色違いのヒトカゲとしてもう一度生き直し…


総合評価:1429/評価:7.42/連載:22話/更新日時:2026年06月02日(火) 18:00 小説情報

分身ハメ殺し忍者『うちはイタチ』(作者:やめろイタチ、その技は俺に効く)(原作:NARUTO)

うちはイタチに転生した元日本人三十路サラリーマンが原作破壊しながら生き延びようとする話


総合評価:10258/評価:8.41/連載:7話/更新日時:2026年07月03日(金) 08:01 小説情報

ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!(作者:オールドファッション)(原作:Fate/)

これは明らかに転生する時代を間違えた男が風呂を作る物語である。▼主人公には型月知識はない(死刑宣告)▼pixivにて同時掲載開始。▼


総合評価:28941/評価:8.26/連載:36話/更新日時:2026年04月14日(火) 12:52 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>