劉備に転生した俺、三国志が思ったより治安悪すぎる ~ニートになりたいだけなのに、関羽と張飛が俺を覇王にしようとしてくる~   作:ブンチョウ

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第12話:甘氏、最初の夜はトントンで

──『瓢箪(ひょうたん)から駒が出る』とはよく言ったものだが、俺の人生は瓢箪からダイナマイトしか出てこない。

 

呂布の娘をただのおもちゃ(知恵の輪)で懐柔した結果、なぜか呂布の親子二代を頭脳ハッキングした「恐怖の魔王」として知名度が爆上がりしてしまった俺──劉備(りゅうび)

徐州のトップとして名声が高まる中、今度は地元の有力者や名士たちから「早く正妻を迎えて基盤を固めろ」という強烈な『お見合い圧力』がかかり始めていた。

 

そこで紹介されたのが、地元の素封家の娘──甘氏(かんし)である。

のちの歴史(演義)では「肌が白く玉のよう」とされる絶世の美女だが、リアルな戦乱末期の現実は違った。彼女は度重なる戦火のストレスと栄養失調でガリガリに痩せ、極度の人間不信から部屋に引きこもる「お腹のめちゃくちゃ弱い陰キャの娘」だったのだ。

 

だが、現代人メンタルの俺はこれを聞いて狂喜乱舞した。

 

「ラッキー! 気が強くて武装してるような武闘派女子じゃなくて、おとなしい引きこもり系か。彼女を嫁に迎えて、役所の面倒な政治仕事を全部サボり、二人で一日中部屋に引きこもるネオ・ニート生活を送ろう!」

 

最高の引きこもり仲間を見つけた気分で、俺は彼女の暮らす離れの薄暗い部屋へと向かった。

 

部屋の中は粗末な布のカーテンが閉め切られ、どんよりと暗い。甘氏は俺が来たと聞いて、布団にくるまってガタガタと震えていた。プレッシャーのあまり胃腸が限界を迎え、重度のお腹ピーピー状態で動けないらしい。

 

「……どうせあなたも、私を政治の道具か、徐州を支配するためのトロフィーとしか思っていないのでしょう……。私を好きにするがいいわ……(涙目)」

 

絶望混じりにそう呟く彼女を見て、俺の社畜時代の記憶がフラッシュバックした。

 

(あ、アカン……! この症状、前世のブラック企業時代、大事なプレゼンの前日にストレスで急性胃腸炎になった俺と完全に一致してる……!)

 

激しいシンパシーを感じた俺は、政治のことなど頭から消し飛んだ。

 

「あー、分かる、分かるよ甘さん! プレッシャーでお腹痛くなるよね! 政治とかどうでもいいから、今はとにかく休もう!」

 

俺はすぐさま台所に走り、軍医トップの崔氏(さいし)の医療班から借りた「沸騰済みの清潔な真水」を確保。前世の知識をフル活用し、塩分と電解質を絶妙に配合した『特製・お腹に優しい生姜お粥』をダッシュで調理した。

部屋に戻ると、俺はベッドの横に腰掛け、布団の上から彼女の冷え切ったお腹を、現代の整体知識に基づいた絶妙な優しさでマッサージし始めた。

 

「トントン……トントン……」

 

「ひゃあっ!? な、何を……っ!?」

 

「一気に食べると胃がびっくりするから、この木さじで少しずつね。お腹、トントンしてあげるから、もう何も心配しなくていいよ」

 

当時の中国において、一国の主である男が、身分の低い女性のために自ら台所に立ち、糞尿の危機にあるお腹を介護するなど、天地がひっくり返ってもあり得ない暴挙──すなわち「究極の慈愛」であった。

 

温かい生姜粥が染み渡り、劉備の優しい「トントン」というリズムに合わせて、彼女の長年の胃痛がみるみる消えていく。

 

(な、何この人……? 私を抱くわけでもなく、ただ私のお腹の具合を本気で心配し、まるで迷子の子猫をあやすように優しくトントンしてくれている……)

 

甘氏の脳内に、圧倒的な聖光が差し込む。

 

(肌が白いと褒められるのは、私が病弱で血色が悪いだけなのに、この方は私の『弱さ』のすべてを包み込んでくれた……。これぞ、本物の聖人……漢王朝の未来の母になるべきは、このお方の隣だけだわ!)

 

人間不信は一瞬で消滅。彼女はトロンとしたピュアなガチ恋の目を向け、俺の手をギュッと強く握りしめた。

 

そこへ、俺の看病の噂を聞きつけた崔氏と、宮廷女官の白雪(しらゆき)が部屋に入ってきた。

 

「へえ、劉備様。医学に基づいた素晴らしいアプローチね。彼女の胃腸の管理は、これからは私の救護班が引き受けるわ」

 

「素晴らしいお心配りです、劉備様。甘氏様のその『抜けるような白い肌』、漢王朝の国母にふさわしい最高級の作法を、この白雪が今日から叩き込んで差し上げます!」

 

引きこもりだった甘氏は、有能な女性レギュラー陣の手によって「劉備を狂信する、健康的な絶世の白肌貴婦人(正妻)」へと超高速でプロデュースされ始めるのだった。

 

一方、役所の廊下では、関羽が腕を組んで深く頷いていた。

 

「なるほど。兄者は徐州の名士たちの押し付けをただ受けるのではなく、あえて最も病弱で勢力のない甘氏を選ぶことで、『私は権力に興味がない(徳の高さ)』を周囲にアピールしたのだ。さらに自ら看病することで、徐州の全領民の涙を誘い、その徳を天下に聞かせるための策……。やはり、底が知れぬお方だ」

 

(違う!!! 俺はただ、一緒に部屋で引きこもってゲームでもして暮らせる、お腹の弱いニート仲間が欲しかっただけなんだよ!!! なんで正妻がバキバキのファーストレディに進化してんだよ!!!)

 

こうして劉備は、ただの「お腹ピーピーの看病(トントン)」をしただけなのに、運命の正妻(甘氏・ガチ恋)をマイハーレムの10人目に獲得。

世界からは「病弱な娘すら一晩で覚醒させる、愛と徳のマスター」としてさらにヤバい神格化を遂げ、きな臭い徐州領有編をトコトコと突き進まされていくのだった。

 

 

 

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