案件名:霧裂き魔事件
担当調査員:ジェーン・ドゥ
ジャン・ボイル
外部協力者:ゲイル・ハーゲン
ヴォルフ
パトリシア
調査開始日:冠暦1926年09月16日
解決日:冠暦1926年10月18日
発生地点:東区全域
依頼人:東区警察
事件概要
冠暦1926年09月15日深夜、東3番通りにて死者6名に及ぶ殺人事件が発生。
警察より依頼を受けて調査を開始した。
冠暦1926年09月17日深夜、港通りにて死者4名、東3番通りにて死者5名。
冠暦1926年09月20日深夜、東4番通りにて巡回中の警官含む5名が死亡。翌日夜間外出禁止令が発令された。
以降犯人は
冠暦1926年09月22日深夜、東2番通りにて死者3名、東3番通りにて死者2名。
冠暦1926年09月27日深夜、東1番通りにて死者1名、港通りにて死者2名。
冠暦1926年10月03日深夜、東3番通りにて死者1名。
冠暦1926年10月05日深夜、東4番通りにて死者1名。ジェーン・ドゥが交戦したが確保には至らなかった。
冠暦1926年10月13日深夜、東6番通り沿いの下水道にて死者11名以上。
調査概要
犯行のほとんどは霧の濃い深夜帯であることから犯人は霧を操る異能を所有するものだと考えられる。
また、傷跡などから大型の刃物が使用され、所持しているものだと考えられる。
冠暦1926年10月05日深夜、ジェーン・ドゥが交戦したが霧による視界不良などの要因により犯人を目視できず、確保には至らなかった。
外部協力者ゲイル・ハーゲンから提供された情報により、異能および体格的特徴が類似する人物として、ヴェスカリア国内で活動し3年前に消息を絶っていた暗殺者『フォグ・ネビア』が容疑者として浮上した。
冠暦1926年10月16日深夜、ジェーン・ドゥ、ジャン・ボイル、ゲイル・ハーゲンの3名が犯人と交戦。ゲイル・ハーゲンの異能により無力化に成功したと判断されたが、犯人は活動を継続し、ゲイル・ハーゲンの右腕を切断した後に逃亡した。
この交戦により、犯人の実態は死体を媒介として活動する存在である可能性が浮上した。
冠歴1926年10月18日昼、東5番通りにて犯人とジェーン・ドゥ、ジャン・ボイル、ゲイル・ハーゲン、ヴォルフ、パトリシアの5名が交戦。
交戦の結果、死体を操っていた存在は剣型の
犯人情報
犯人は剣型の
ジャン・ボイルの考察によれば犯行動機は強い飢餓感であり、血液をはじめとする生命力を吸収する能力を有していたものと推測される。
媒体となっていた死体は身長約180cmほどの男性で、『霧を操る』異能および視界に関する代償を持つ契約者であったと考えられる。
犯人確保後、媒体となっていた死体は霧となって消失した。
所感
今回の事件は犯人が人間ではなく
当初の捜査は『異能を持つ連続殺人犯』を前提として進められたため、真相への到達が大幅に遅れた。
特に犯人が死体を媒体として活動していたこと、媒体の異能を利用していたことが捜査を困難にした要因である。
二度も犯人を取り逃がしたにも関わらず、無事に事件を解決できたのは仲間たちの協力と助手の献身のおかげである。
異能探偵としての未熟さを痛感する事件であったが、同時に1人では解決できない事件もあるのだと学ばされた。
報告者署名:ジェーン・ドゥ
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「「「カンパーイ!」」」
今晩、ブラウンラットの本部はいつも以上に騒がしかった。
「俺ら見てただけだけどカンパーイ!」
「異能探偵の姐さんたちは?」
「そもそも呼んでねえって」
「やっぱり酒は美味いネ」
慣れない左手でグラスを持ち上げてエールを飲み込む。
『
「よくわからん」
温度を感じることができないこの体では酒の味をアイツらのように楽しむことができないようだった。
「明日の仕事に響かない程度にな!あと夜間外出禁止令が解かれるまでは夜に出歩くのも禁止だ!」
「「ハーイ!」」
「ボス!氷欲しいヨ、氷!」
近くにあった空き瓶を凍らせて投げつけ、バーカウンターに肘をついた。
『ワインとウイスキー、どっち?』
「ワイン。ヴォルフは?」
『もう寝た』
「そうか。パット、聞き流して良いから聞いてくれ」
「だがあまりにも不自然な点が多すぎる」
まず夜にしか活動しなかった点。本当に飢えていたと言うならば日中にこそ活動するべきだった。日中の人通りは夜間の比ではない、外出禁止令だって夜間だから成立したのだ。
そして霧の異能。あれは死体側の異能だった。ジェーンの
『死体に精霊は宿らない』
「そうだ、死んだ契約者からは精霊が離れていく。蘇生系の異能でもない限りコレは絶対だ」
かつて戦った死体を操る契約者。奴の操る死体には元契約者も含まれていたが異能を使ってくることはなかった。
最後に死体。フォグ・ネビアの死体だというならば明らかにおかしい。
「フォグ・ネビアは海洋恐怖症を自称していた」
『ヴェスカリア国外での活動はなかったらしいね。死んだ後に運ばれた?』
「じゃあ運んだのは誰だ」
ヴェスカリア外での活動を好まなかった彼の死体が
『別人の可能性は?』
「ある。たまたま『霧の異能』で『目が代償』の『身長180cmの大男』の契約者が同時期に二人以上いたことになるがな」
そんな『偶然』がそうそうあるものか。
「何より糸だ。銃弾を弾いてナイフを折るような自然物があるはずがない」
『異能。糸に関わる伝説なんてありふれててわかんないや』
「ジェーンも気づいてはいるだろうが…どう対応すりゃいいんだか」
解決できていないことの多さにため息をつく。
ワインを飲み干して空のグラスを置いてようやく気づいた。
「…おい、なんでいる」
『飲もうかなって』
「まだ16だろ。さっさと部屋に戻って寝ろ」
『そんなー』
バーカウンターに立つパトリシアの首根っこを掴んで立ち上がった。
「先に寝る。遅くなりすぎないようにな」
「うす!」
「良い夢を、ネ」
階段を上り、パットを部屋に放り込んで自室に戻る。
卓上に置かれたジェーンから貰った報告書の写しを見てため息をつく。
これからも事件は続くだろう。それに備えるためにも早々にベッドに入った。