それから一週間、爆発事件は不定期に起きた。
一日に三度も事件を起こしたかと思えば翌日には何もなく、表通りの八百屋のレモンを爆発させたかと思えば路地裏の木箱を爆発させる。
事件前に赤い蝶が目撃されていることで犯人は『
今は片手に収まる程度の死者で済んでいるが、いつどこで何が爆発するかわからないという緊張感が街を覆っている。
「赤い蝶を見たら逃げろ、なんて噂になってるけど…」
「見た時にはもう爆発直前ですからね…」
事件現場を渡り歩くが新しい情報は得られない。
「今日はもう帰ろっか…」
「そうですね…情報がろくにない…」
トボトボと路地を歩いている時だった。
キャー!
「!悲鳴です、行ってきます!」
「すぐに追いかける!」
「はい!」
全身を巡るエネルギーを足に集中させ、悲鳴の聞こえた方向を向く。
軽く力を込めて跳べば身体は容易く屋根を越えた。
「込めすぎたっ」
なんとか空中で姿勢を制御し、できるだけ静かに屋根に立つ。
屋根と屋根の隙間を飛び越えていけば悲鳴の元に着くのはすぐだった。
「こ、来ないで!」
「ゲヘヘ、こっちはそれが仕事で──」
「ちょっと、待った!」
少女とメイドの2人を取り囲むガラの悪い男たち。
その間にケースごと叩きつけるように着地する。
「なっ!?」
「何があったのかお聞きしても?」
「み、道を歩いていたらこの人たちに引き込まれて!」
「チッ、たった1人だ!やっちまえ!」
男たちがナイフや鉄パイプ、ピストルを取り出すのを見て、ケースの留め具に手を当てて考える。
使わなくても勝てるだろう。ただし時間がかかる。ジェーンさんが遅れて来るのだしあまり時間はかけたくない。
「よし、出番だ。頼んだよ、【カーネリオン】!」
ケースの蓋を開け、取り出した長剣を突きつけた。
〜〜〜〜〜〜
「斬るのと殺すのは禁止!」
「何を言っt」
剣身の刃のない平たい部分をぶつけてナイフを持った男を気絶させる。
「令嬢に傷一つつけるなよ!」
一斉に発射された弾丸を盾のように構えた長剣で受け止めて直進する。
「クソッ、なんて腕だ!」
「借り物ですけどね!」
初めて剣を握ったのは半月前、練習はしたがそれだけで剣を自在に操れるような才能を僕は持ち合わせていなかった。
しかしカーネリオンを握っている間は違う。
意思を持つ魔剣である【カーネリオン】は剣の使い方を知っており、達人の動きを教えてくれる。
自力で振れるよう練習は積んでいるが未だ未熟。それでもただのチンピラ相手なら今で十分だ。
向けられるパイプやピストルを切り裂き、空いた腹に蹴りや長剣の殴打を入れる。
「たった1人だね」
「ひ、ひい!」
最後の1人にカーネリオンを向ければ少しずつ後ずさっていく。
そんな彼の鼻に琥珀色のハンカチが差し込まれた。
「ふ、あ…?」
「『琥珀羊のハンカチ』だよ。いい夢を」
寝息を立て始めた彼を転がしたジェーンさんが周囲を見渡して言う。
「お待たせ、ジャン君」
「あちゃー…くる前に片付けたかったんですけど…」
「この数相手なら仕方ないよ」
チラリ、とこちらを見る少女とメイドを見る。
「彼女が被害者?」
「この人達に攫われかけたそうです」
軽く身支度を直して彼女に声をかける。
「霧鴉探偵事務所のジェーン・ドゥです。お名前を聞いても?」
「は、はい。
ドォン
遠くから轟音が響いた。
「『
「ジャン君、抱えて!急ぐよ!」
「はい!」
ジェーンさんを横抱きにして足に力を込める。
「何か用がありましたら東4番通りの霧鴉探偵事務所に──」
ジェーンさんが言い切る前に地面を蹴って屋根に登る。
屋根から屋根に飛び移り、事件現場に走った。