夢を叶えただけなのに、なぜか虹の賢者と呼ばれ世界を救った英雄になっていた件   作:りょりょりょ

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ワイ「チャンス到来やでぇ!」

 

 ずっと憧れていたものがあった。漫画とかでよく見る陳腐なものかもしれないが、俺はそれに心を奪われた。転生してもそれは変わらない、むしろ思いは強くなった。前の世界では絶対にできなかったこと、それがこの世界ではできるかもしれない。その為には力が必要だった、幸い転生した種族が長寿のおかげで時間だけは腐るほどあり、この世界でも屈指の強者に成ることが出来た。

 

 ――そしてとうとうその時がやってくる。 

 

 

 

 

 

 

  「ガハハハ!貴様らその程度か!所詮は人、"魔王軍幹部"である俺には手も足も出せぬか!」

 

  「くっ、強い……!これが幹部、今まで戦ってきたやつらとは次元が違う……!」

 

 簡素な鎧に包まれた男、【勇者】が顔に苦悶を浮かべて弱音を吐く。魔王討伐の命を受けてから2年、やっとたどり着いた初めての幹部。勝てると私たちは思っていた。だが今はこの有様、少し戦っただけでこちらはみんな少なくない傷を負い、対して相手は無傷。絶望したくなるのも分かる、だが君が絶望してしまうとパーティの皆にも伝播してしまう。【聖女】【剣聖】【盗賊】、皆の表情を見ると案の定勇者と同じ顔をしていた。このままでは為す滑るも無く殺されてしまうだろう。

 

 だか、私にとってはこの瞬間こそが気の遠くなる時間、思い描いて来た構図。相手は強大、全員で戦っても勝ち目はない。つまり、誰かが殿となり仲間を逃がすしかない。

 

  「皆、私が時間を稼ぐ。そのうちにここを脱出するんだ」

 

  「「「「!?」」」」

 

  「喋る時間すら惜しい決断を急いでくれ、相手はどうやら待ってくれないらしいからね」

 

 こうして喋っているうちにも、幹部の魔族はじりじりこちらに歩みを寄せている。聖女の結界のおかげでまだ来れてはいないが時間の問題だろう。

 

  「待ってください!時間稼ぎなら私の方が――「だめだ」」

 

  「君を失うと替えが効かない、聖女を失えば本格的に人類は絶望に飲まれるだろう」

 

 そう言われると、聖女は反論できず悔しそうに口を結んだ。他は名乗りを上げない、否上げれない。自分たちでは逃げ切れるまでの時間を稼ぐことはできないと悟っているから。だから、行動は早かった。

 

  「すまない、ソフィ。頼んだ……」

 

  「ああ、ここは私に任せて先に行くといい。何、心配はいらない、僕もここで死ぬつもりはないからね」

 

 言えた。ずっと言いたかった事が。2000年、一日たりとも思わない日は無かった。僕が内心、興奮している間に勇者は罪悪感に押しつぶされそうな顔をしながら逃げていった。

 

 そんな顔をすることはないよ、ユーリのせいではないんだ。星の巡りが悪かった良かったかっただけさ。

 

  「ツバキ、マリアを頼む」

 

 ツバキ、君が一番屈辱だろう。すまない耐えてくれ、仲間の命と私の夢が懸かってるんだ。

 

  「……ああ、承知した」

 

  「ま、待ってください!私はまだ――きゃ!ツバキさん降ろしてください!」

 

 ツバキがマリアを強引に抱え勇者の後を追う。

 

  「君は心配いらないね」

 

 最後に残ったのは盗賊のリア。彼女は【幽霊ファンタズマ】なんて呼ばれるくらいだ、問題ないだろう。

 

  「……生きて」

 

  「ああ、分かっているさ」

 

 それだけ言い残し、リアは気配を完全に消し見えなくなった。

 

  「なんだ、つまらん。他のやつらは逃げたのか、腰抜けどもめ」

 

 リアがいなくなってすぐ、魔族が話しかけてきた。どうやらもう結界を壊して、ここまでたどり着いていたようだ。

 

  「残念だけど、追わせはしないよ。君の相手は私さ」

 

  「ガハハハ!貴様一人で何ができる、仲間が居た時で際俺には傷一つつけられていなかっただろう!」

 

  「確かに、私達は君に掠り傷すら付けられてない。けど……君は一つ勘違いをしている」

 

  「勘違い?一体何だというのだ」

 

 さっさと殺せば良いものを、話に乗ってくれる、それは相手の絶対的な自信からくる傲慢。負けるとは露も思っていないだろう

  

  「私がいつ――君に本気を見せたんだ?【術式展開】」

 

 仲間が出来て、久しく出せてなかった本気をここで見せる。抑えていた魔力を解放、足元に五芒星の形の魔法陣を展開。そして魔法陣から魔術が出現し私の周囲を多彩な色で染める。

 

  「【全属性オラ・スティヒア】」

 

 立ち昇る魔力、私の周囲を漂う魔術。それを脅威と感じたのか、魔族は初めてその顔を崩し肌がひりつく程の殺気を放ちながら術式の発動を止めに来る。

 

  「貴様!いつ術式の構築なんぞを!いや、まあいい。術式が発動する前に貴様を殺せばいいだけだ!ぬん!」

 

 たった一回の踏み込みで、私の眼の前までやって来た。そのまま手に持っている私の身長ほどもある大剣を、重さを感じさせない程のスピードで振り被る。このまま何もしなければ私の胴体は泣き別れになるだろう。だが、私を真っ二つにするはずの大剣はけたたまし音を立て、目の前で()()()()

 

  「な!?これは、結界か!」

 

 正解、話をしている間に張っておいた。

 

  「【集まれシラ】」

 

 漂うだけだった魔術を手元に圧縮させる。集まった魔術はまるで虹のような色彩となった。術式発動の準備は完了、それを魔族に向けて放つ。

 

  「食らうといい【虹の爆発イリス・エクリクシス】」

 

 前方全てを飲み込む虹の暴虐が魔族を襲う。自分の攻撃が防がれた事を信じられないのか、放心していた魔族は暴虐を一身に受け吹き飛んだ。

 

 【虹の爆発】五大属性と呼ばれるもの全てを調和させた究極の一撃。私が2000年、魔術を磨いた中で最も素早く威力のある魔術。欠点としては範囲が広すぎて仲間がいると使えない点。私の魔術のほとんどがそういった魔術しか無いので仲間が居ると本気が出せない。

  

  「人風情が……!やってくれたな!」

 

 まだ生きていたようだ。だが全身を血で染め、片腕を失っている。満身創痍、そう形容できるだろう。そんな相貌に尚も刺すような殺気を放ちながらこちらに歩んでくる。

 

  「だが!俺にこれを出させるのはお前が初めてだ!賞賛してやろう!うるぁぁぁ!!」

 

 なにやら急に咆哮を出したと思ったら、身体が変貌を始めていた。

 

 はい?え、何それ!?ちょ、ちょっと待って。何か身体がデカくなったんだけど?魔力も上がってるし。満身創痍なのに明らかにさっきより強そうなんだけだ、これはヤバいね。それに、どうやら理性を失っているらしい。目に知性が無くなってる。

 

 このまま放って逃げてしまえば、街の方まで行くかもしれない。流石に私もそれは本望ではない。仕方がないか、これを使うと暫く動けなくなるけど使うしかない。死ぬつもりは無かったが、覚悟を決めよう。

 

  「【制限解除アペレフセロシ】来なよ」

 

  「がぁぁぁ!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

  「母様!また。あの話を聞かせてください!」

 

  「レイまたですか?この話は何回も聞いたでしょう、好きですね」

 

  「はい!俺も大きくなったらあの方みたいな人に成りたいんです!俺の憧れの人ですから!」

 

  「ふふ、そうですか。()()()か聞いたら喜ぶでじょうね」

 

 ――ソフィ……早く帰ってきてください。私は生きていると信じていますから。この子も会いたがっているんです、だからお願いします。それまでは、あなたの偉業を広めましょう。

 

  「では、話しましょう。【虹の賢者イリス・ソフィス】ソフィアの冒険を」

 

 ()()()()()()()()()、ウーティスと呼ばれる魔族から仲間を全員逃がし。たった一人で命を賭して打ち倒した、最も尊い“エルフ“の話を。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

  「……ここ、何処だい?」

 

 拝啓、勇者パーティの皆、元気にしているかい。私はなんとか生き残ったみたいだよ。君たちにまた会えるとは楽しみだ。けど……あたりに見えるのは一面の緑、最後に見た風景とはかけ離れている。とすると、どうやら遭難したみたいです。助けてくれ…… 

 

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