ようこそ完璧超人の教室へ   作:nyasu

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ようこそ完璧超人の教室へ

ここは……俺は……私は一体……ハッ!?

瞬間、俺の意識を上書きするような全能感が、体の内側から溢れてくる。

意味のわからない状況も、バスに乗るまでの記憶がないことも、全てが些事になっていた。

 

当たり前だと思っていた世界が変わっていく。

不明瞭で、不自由で、不出来な物を知った。

その結果、現状は当たり前ではなく、当たり前であった事は他者からしてみれば超人染みていると気付けた。

 

そうか……俺は……私は……完璧で究極の超人だったのだ。

 

「フフフ、なるほどな」

 

窓を見れば、見知らぬ顔がある。

私の記憶にない顔だ。

だが、私の頭脳は反射した自分自身だと導き出している。

つまり、この彫刻のような整ったイケメンは私ということだ。

美しい……なんという整った顔立ち、サラサラの金髪に堀の深い顔。

ナルシストだと思うかい、いいや、この認識は実に客観的だ。

何故なら私が私になる前の顔立ちに比べて、雲泥の差だからだ。

自画自賛ではない、他者であった私が美しいと思ったのだ。

他人が見た評価と同等だろう、証明はここになされた。

 

「あの!ねぇ、聞いてる?」

「フンッ……聞いていないが」

 

気付けば私の目の前に女がいた。

美少女だ、すごく可愛い。

何だか助けて上げたくなるような可哀想な表情をしている。

何か困っているのだろうか。

 

「もう、お婆さんが困ってるんだけど優先席だし譲ってくれないかな」

「ほぉ……」

 

なるほど、よく見たらお婆さんが後ろにいる。

背筋は伸び、発達した大腿四頭筋とハムストリングス。

ふむ、張りがあることから普段から運動は凡人よりも多いと見た。

この揺れの中、上半身はブレない。

インナーマッスルしっかりしている証拠でもある。

 

「私には必要であるようには見えないがね。そもそも、優先席だからと言って譲らなければいけない法的義務はない。一般席にも問いかけたらどうだい?」

「でも、若いんだし」

「若さは指標にはなるが、心臓病など目に見えない疾患故に優先席を使っているとなぜ想像が出来ないのか」

「えっ……それは」

「まぁ、私はパーフェクトな健康体であるがね」

 

一瞬、彼女の表情筋が動く。

困ってそうに見えたが、瞳孔の大きさ、身体の震え、呼吸速度、手先の角度。

ふむ、不安そうな物は感じ取れない。

おっと、困っていると思っているのに私の頭脳は演技であると見抜いている。

そんな些細な情報から見抜けるなんて、素晴らしいな。

私という肉体は凡人が出来ないようなことすら容易に出来るのか。

 

「だが、腹黒ガールの勇気に免じて譲ってあげよう。これも優れた人間の務め、普段から乗り慣れていて運動をしていそうな婦人には、年寄り扱いはナンセンスだと思うがね」

「腹黒ガール……」

「ありがとうね」

 

気にしないでいいのさ、なぜなら立ってる私も美しいからだ。

フフフ、フハハハ!

 

 

高度育成高等学校。

60万平米を超える敷地の、進学率、就職率がほぼ100%という謳い文句の学校。

在学中は寮生活で基本的に外部との接触は不可能。

 

更にやってきた良識を何処かに置いてきたような格好の女教師。

茶柱の話では毎月10万円相当のポイントが支給されるそうだ。

この学校はポイントで何でも購入できる。

1ポイントは1円、毎月ポイントは支給される。

 

はえー、すっごい。

何もしなくても生活できるとかFIREじゃん。

だが、クラス全体を30人前後として月に1200万か。

国家が運営しているとしたら微々たるものかもしれないが、話が美味すぎるのも事実。

これは裏があるねぇ。

 

「以上だ。何か質問はあるか?」

「ハレンチティーチャー、質問いいかな?」

「ハレンチ……次にふざけたことを言ってみろ。なけなしのプライベートポイントを減らしてやる」

「フム……さて、質問だがポイントは毎月10万ポイント振り込まれるということでいいのかな?」

 

教室の片隅から、誰かの話を聞いとけよというからかう声が聞こえる。

話を聞いとけよ、か。

話を聞くのと、話を理解するというのは別の話だよ。

 

「ポイントは毎月支給される。もっとも、何もトラブルがなければの話だがな」

「ノンノン、私は10万ポイントが支給され続けるかを聞いたのだよ。2度目はないよ、ティーチャー」

「面白い、私に対して挑発か?ペナルティを課されたくないなら舐めた口を慎めよ高円寺」

 

ふむ。

どうにも答えたくないようだね。

やはり、ポイントは変動すると見ていいか。

 

「ならば別の質問をしよう。ポイントはマイナスになるのかな?そのペナルティとやらで大量に減点されたとしてね」

「良いことを教えてやる。如何なることがあろうと、クラスポイントもプライベートポイントもマイナスになることはない。もっとも、0にはなるがな」

「それは安心だね。おっと、私としたことが聞きそびれていた。卒業した場合、余ったポイントは換金されたりするのかな?もしされないなら、宝石などに変えたほうが良いかもしれないね」

「それに関しては3年時まで回答できない。想像にお任せしよう」

 

なるほど、どうやら予想は当たっているようだね。

ただ、レートは低いと思われる。

将来支払う約束をして、現金でポイントを買い取る事も可能ではありそうだ。

そして、ティーチャーの言葉が正しければ早期卒業も不可能ではないだろうね。

何でも買えるということは、権利も買えるはずだからね。

 

「以上だよ。何か質問はあるかい?」

「それは私のセリフだ。用はないようだな、帰らせてもらうぞ」

 

そう言って、教室を退出する茶柱佐枝。

その姿を見て、思い出したかのように教室の中の生徒達が騒ぎ出す。

まったく、今のやりとりの何を聞いていたのか。

教室や廊下にある監視カメラからして、我々の生活が査定対象だと察することが出来るだろうに……いや、凡人なら無理な話だな。

私とて、この身体になるまで気付けなかった。

 

「なぁ、聞いてるのか?さっきから堀北が話しているんだが」

「おやぁ?これは失敬、私は私の凄さを改めて実感していたのでねぇ、全く聞いてなかったよ」

「なッ!……ふぅ、さっきの質問についてよ。どういう意図があったか説明してちょうだい」

「アンガーマネージメントかな?上手く出来てないようだが、我慢してから怒れば良いという物ではないよ」

「怒ってない!」

 

いや、怒ってるじゃん。

話を聞かなかったのは悪かったが、そんな怒らなくても……ふむ、生理ではなさそうだが何故だ。

血色も匂いも立ち姿からもそういう様子は見当たらないが、性格の問題だろうか。

 

「それで、どうなのかしら?」

「フーン、すまないが何を言ってるか分からないから出直してきたまえ」

「知能指数が同じでないと会話が成立しないとは本当だったみたいね」

「そのようだね。まぁ、恥じる事はない。君は一人ではない、等しく私より上の者がいないだけなのだ」

「あっ、どこに行くの!待ちなさい」

 

いや、でもやることあるし、質問ももう少しまとめてもらわないと難しくて分かんない。

質問の意図とか、聞いてたまんまだし、何か他にあるわけじゃないよ。

それより、今すぐやらないといけないことがあるからな。

予想が正しければ早く動いたほうがいい。

 

「なぁ、参考までに聞きたいんだがどこに行く気だ?この後も授業というか、カリキュラムがあるけど」

「タイム・イズ・マネー!やるべきこと、やれること、やりたいことは早い方がいいからね」

「聞いたことがある、3Yって奴だな」

「それを言うなら3Kよ!」

「フハハハ、それではさらばだ無気力ボーイ。コミュ障ガール」

 

さぁ、ポイント荒稼ぎするぞー

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