リリローグ。   作:すず夜

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第十話

 どうも、リリーです。

 騎士団の生き残りである二人を保護したわたしたち(主にメルセデスちゃん)は、そのまま深層の暗黒の水空間を進み続け(主にメルセデスちゃんによって)、深層の奥──ダンジョンシードの間へと近づきつつありました。

 

 大親友メルセデスちゃんのお口の中は相変わらず真っ暗です。

 

 男二人と女二人が、暗闇の密室の中、何も起きないはずがなく……わたしたちは作戦会議を進めていました。

 

 ……えっちなこと? ここはメルセデスちゃんのお口の中だぞ、排泄どころか汗水一つ垂らそうものなら、そのまま風属性の魔法で窒息死させてあげます。ちなみに騎士団たちは【ダンジョン】の中で遭難していた割にはそこそこ綺麗でした。水属性の放出魔法の一種である衛生魔法を覚えていたようですね。

 まぁ、汚かったらそもそもメルセデスちゃんのお口の中に入れることも拒否ったのですが……。

 あとは、わたし的には別に騎士団のヒトたちが飢え死にしても構わなかったのですが、メルセデスちゃんに言われたので食糧も多少は分けてあげました。

 ああ、なんて優しいのでしょうか、メルセデスちゃんは。

 

「……とりあえず、メルセデス先輩は、【デーモン】は二体ともダンジョンシードの間にいると考えているのですね?」

 

『ああ、おそらくだがな。ダンジョンシードの間と【デーモン】の気配の位置が一致しているように思う。違ったとしても、そこまで離れているわけではないだろう』

 

「まぁ、都合が良いと言えば都合が良いね。二体ともまとめて転象に巻き込む。これでいいかな?」

「……二体の【デーモン】を同時に相手にする。本来ならば無理難題もいいところですが……メルセデス先輩とリリー先輩が揃っていて、本当によかったです」

 

「まぁねー。で、とりあえずまとめると、メルセデスちゃんが【デーモン】を発見したら、まずわたしが【デーモン】を転象に巻き込む。できれば二体とも同時に、ダンジョンシードの間が近かったらそれもまとめて。で、メルセデスちゃんとエスメラの二人に【デーモン】の相手をしてもらうわけだけど、とりあえず、エスメラは時間稼ぎさえできれば討伐はしなくても大丈夫。メルセデスちゃんが一体倒す時間だけは絶対に稼いでね。

 わたしも援護はするけど、万が一【デーモン】が一体ずつ襲い掛かってきたり、ダンジョンシードの間が微妙に離れていたりした場合、転象を何回が使う必要が出てくるかもしれないから。できれば、全部揃ってる場合以外は、魔力の消費は抑えたいんだよね」

 

 見やすくまとめると、こんな感じです。

 

①【デーモン】発見次第、わたしが転象を使う。

②メルセデスちゃんが一体を討伐している間に、もう一体をエスメラが足止めしておく。

③メルセデスちゃんが一体を討伐した後は、エスメラが足止めしていた分をメルセデスちゃんが討伐する。

④ダンジョンシードを破壊する。

 

 まぁ、これが基本……というより理想ですね。

 

 まぁ大丈夫とは思いますが、もし万が一【デーモン】が一体ずつ出てきたり、ダンジョンシードの間から【デーモン】たちが離れていた場合を考えると、わたしは転象を最大で三度行使する必要があります。

 なので、できれば魔法でエスメラを援護するにしても、魔力の消費量は抑えたい。そういうことです。

 

 本音を言うとメルセデスちゃん以外の援護はしたくないのですが、まぁ、エスメラが死んでも困るので、仕方ないですね。

 

 と、そんな会議? 打ち合わせ? をしている時でした。

 

「あの、僕は戦闘に参加しなくて本当によろしいのでしょうか……」

 

 腰の低いイケメン騎士様が、そんなことを言いました。

 

 そうです、今回この騎士様には戦闘に参加しないでくださいとお願いしました。邪魔だから、ってわけではないです。

 実際、風属性の放出魔法はかなり実戦向きで、戦場には一つあればとても便利な魔法が揃っています。

 本人の使用できる魔法を確認したところ、おそらくちゃんと努力して強くなったヒトと言えるだけの魔法は修得していました。

 

 しかし、今回はすでに寝たきりのヒトがいましてね。

 その寝たきりの騎士様の面倒を見て貰うことにしました。

 

『……さて。そろそろだな。リリー、不意を突かれても動けるように準備しておいてくれ。他の者も、臨戦態勢だけは整えておくように。【デーモン】が出現と同時に攻撃を仕掛けてくる可能性がある以上、マルティンも含めて、身体強化(ライズ)だけは怠ることのないように。わかったか?』

 

「大丈夫! いつでもこいこい!」

「……念のために多めにしておきますか」

「はい、わかりました」

 

『……ふむ。迎撃の準備をしているようだ。全員、今から私はダンジョンシードの間に突撃する。リリー、衝撃の瞬間、転象を使え』

 

「了解!」

 

 ああ、はい。この言い方だとダンジョンシードの間をボスルームのように扱いながらも、外に出ず外側に放出魔法をぶち込んでくるみたいですね、【デーモン】ども。流石ごみ【ダンジョン】と言わざるを得ませんが、こちらには大親友メルセデスちゃんの超感覚があるんですよ、残念でしたね!

 

 次の瞬間、メルセデスちゃんが急加速してダンジョンシードの間に突撃しました。

 急加速の時点でわたし以外のヒトたちが体勢を崩してしまいましたが、まぁ放っておきましょう。

 

 それにしても、巨大化したメルセデスちゃんが身体強化(ライズ)を盛り盛りにして突撃するだけで【デーモン】死ぬんじゃないかとも考えましたが……まぁそんなことしたらわたしたちも余波で死にますか。

 わたしたち、メルセデスちゃんの足を引っ張ることしかできてないなぁ……。

 

 そんなこと風に気に病みつつも──殺し合いのお時間です。

 

範囲指定(アジェスト)

 

 

 『転象』とは。

 

 空間を書き換える、

 あるいは空間内に別空間を創造する上位魔法。

 

 どっちが正しいのか? ……わかんないです。

 

 使用条件は色々ありますが、有名なのは四属性(炎風水地)の放出魔法が上級以上、最低限の結界魔法、莫大な魔力、そして天賦の才(超級の計算能力と空間認識能力)があること。

 

 領都の学者や魔法学院の先生たちいわく、実戦で使うには他にも色々ある()()()です。

 いかんせん、超天才であるわたしは、そのあたりを感覚でなまじできてしまうので、言語化が難しいのですが……。

 

 わたしはこれを『意図的に自由自在の【ダンジョン】を創造する魔法』と認識しています。

 

 今回は味気ない(プレーン)型式(タイプ)でいいので、普通の転象よりは遙かに楽とは言えど、それでも普通の魔法使いなら一瞬で枯渇するレベルで魔力を消費します。嫌ですね。

 

 

 説明が長くなっちゃいましたけど、まぁ今回はこんな感じで。

 

 一瞬にも満たないような脳内独白を終えてる間にも、大事故大惨事待ったなしの大衝撃と同時に、大親友メルセデスちゃんが巨大な蛇の姿を解除しました。

 それに合わせて、わたしも魔法を行使します。

 

 

転象(てんしょう)──味気ない部屋(タイプ=プレーン)

 

 

 わたしがそう詠唱した次の瞬間、わたしを中心に半径一〇〇〇メートル程度が真っ白な空間が展開されました。

 視界に映る景色こそ、水平線まで広がる真っ白は空間ですが、実際には一〇〇〇メートル以降はただの壁です。

 一々規模が大きい? ……【デーモン】が大きいので、全部囲もうと思うと最低でもこれぐらいしないと、メルセデスちゃんが危ないのです。

 

 まぁ、何はともあれ。

 

 【デーモン】二体とも発見! 情報通り竜型!

 ダンジョンシードも発見!

 

 大当たり! 転象は今回だけで済みそうです。

 これはわたしも戦闘に参加していいのでは?

 

 そんなことを考えていたら、視界に憐れにも着地に失敗して戦場に勢い良く転がっていく無様な騎士様たちが見えました。

 

 最悪、死んでも構わないヒト達ですが、メルセデスちゃんの邪魔だけはさせません。回収して、戦場の端っこに迅速に移動しました。

 

「あ、ありがとうございます……」

「そういうのはいいですから、メルセデスちゃんの邪魔だけはしないでくださいね」

「はい……」

 

 よし、戦闘参加、鏖殺の時間だー!

 と、思ったらメルセデスちゃんが急に近づいてきました。

 え、なになに、告白?

 

「リリー、悪いが念のために待機してもらっていいか?」

「うん? まぁメルセデスちゃんがそう言うのなら理解(わか)ったけど、エスメラの援護とか騎士様たちの護衛とかは?」

「ほどほどでいい。気になることがある」

 

 それだけ言って、メルセデスちゃんは戦場に戻っていきました。

 告白じゃなかったか。……残念。

 

「待機、待機ねぇ」

 

 戦闘に参加せず、ほどほどにエスメラの援護と騎士様の護衛、あとは()()()()()かな?

 

 情報にない【デーモン】の出現の可能性とかを気にしてるのかな? まぁ何が起きてもおかしくないごみ【ダンジョン】だもんね──いや、違う。言葉数少ないことに定評のあるメルセデスちゃんがわざわざ直接言いに来たあたり、メルセデスちゃんの超感覚が何かしらの異変を感じている?

 情報にない敵の出現なんていう普通に予想できる範疇を超える、予想外の出来事が起きるかもってこと?

 

 ……ダンジョンシードか。

 

 わたしは一歩退き、エスメラ、騎士様、【デーモン】ども、そしてダンジョンシードが必ず視界に入るようにしました。

 

「んん、よし。みんながんばえ~」

「……それでいいのですか」

「いいんです、騎士様。──わたしの親友は、最強なのです」

 

 だから、戦闘以外のことは全部、わたしに任せてね。

 

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