「おいおいおい、聖騎士同士の決闘は帝国法でも聖騎士の
「……悪いのは
「先に手を出してきたんは
「りりたん言うな死ね」
「死ねってすぐ言ったらあかんやろ?」
「死ね」
どうも、リリーです。
放課後のティータイムと大親友メルセデスちゃんと洒落込むつもりが、学園長に呼び出され、今に至ります。
いわく聖騎士はあくまで神の力の代行者。それゆえに聖騎士同士の戦いは神々の代理戦争という扱いになり、敗北は決して赦されず、敗れた者は罰として力を失う、って感じのやつです。
細かいルールは他にもありますが、とにかく聖騎士同士の決闘は禁止されているのはそういう事情があるから、程度の認識で大丈夫ですです。
メルセデスちゃんとエスメラが、わたしたちを厳しめに止めたのもそういう理由ですね。なにせわたしと、不服ですが
「せんせー、そもそもこのごみ女がメルセデスちゃんに学園から出てけとか色々酷いことを言ったのが原因ですー」
「はあ? そもそも
「戦争ばっかしてるのはこっちの先祖も同じですぅ、はいグラナの馬鹿証明。あとメルセデスちゃんをこの学園に入れたのは領主様の判断なので、どう足掻いてもグラナの負けですぅ」
「意味不明な理由でって言ったやろ。あと阿呆な領主の判断なんやから、むしろ悪手の証明やろ。この領の領主がどんだけやらかしとるかなんて、子どもでも知っとるわ。しかも、よりにもよって、
「……メルセデスちゃんの前でそれ言ったら、本当に殺すからな。例え
「安心しとき。
「──殺す」
「お前らいい加減にしろって」
殺意を具現化する前に、ただの学園長室だったはずのこの場所が、まったく別の景色に塗り替えられました。
赤。赤。赤。
それは真紅の廃城。
すべて逆しまであり、わたしたちが天井となっている床に足が張りつく形で立っている、そんな景色になっています。
本来あるべき床──天井はなく、真下には夜空が広がり、その夜空には、血のように赤い満月が浮かんで……いえ、沈んでいます。
そして認識の歪み以上に、脳内を直接汚染するような魔力で、わたしとグラナは二人とも立っていられなくなりました。
ついでに
「転象、使えたんですね……」
「吐きそう……びっくりしてまうやろ……せんせー……」
「お前らがいつまでも人の話しを聞かねーからだろ。あと
「死ねです」「もっと言い方があるやろ……」
「で、だ。とりあえず呼び出した理由をもうこのまま説明するわ。
一つ、今回のお前らのせいで出た被害、器物や設備の破損と、怪我忍の治療費に関してはお前ら二人で何とかしろ。無理なら退学な。
もう一つは、お前の決着は『学寮祭』でつけろ。もともとそのつもりだろうが、これ以上問題を起こされても面倒だからな、それまでお前らの接触を禁止する。わかったか?」
「せんせー、ここで殺しちゃだめですかー?」
「
「人の話を聞けよ問題児ども」
「まぁ、地位があるなら十分やろ」
「うっぜー」
「わかりやすすぎるんやって、りりたんは。かわええね♡」
「死ね」
「解散だ解散! 散れ散れ!」
一緒に出ていくとまた問題を起こしそうって理由で、先にグラナ、その十分後に
……このまま探し出して殺してやろうかとも一瞬思いましたが、流石に大親友メルセデスちゃんから離れた生活を送りたくないので、我慢します我慢。我慢こんなに頑張って満々気分でやっぱりグラナを殺しておけばよかったと後悔後悔。
と、その時でした。
「落ち着け、リリー」
「メルセデスちゃん……!!」
いつの間にか、大親友メルセデスちゃんが隣にいました。
これは、まさか……メルセデスちゃんに会いたい気持ちが生み出した幻覚ですか???
「様子がおかしかったからな。念のためにお前を待っていた」
ただの優しさでした。
「ありがと! すき!」
「気にするな。……学寮祭でグラナと一戦交えるつもりか?」
「そのつもり。学寮祭は数少ない、聖騎士同士の戦いが赦されてる戦争儀式だからね。殺害は禁止されてるけど、ボコボコのギッタンギッタンにするには丁度良いチャンスだよ。やってやらー!」
「そうか。応援している」
「ありがと♡」
「それはそれとして、だ」
それだけ言って、メルセデスちゃんは。
"──ビュンッ"
「ぎゃんっ」
下手なモンスターの攻撃よりも余程強力な、そんなデコピンをわたしにしてきました。めちゃくちゃ痛いです。。。
もしメルセデスちゃん以外にされていたらキレ散らかしていましたが、メルセデスちゃんから与えられる痛みは、なんと言えばいいのか……癖になりそうです。すき。
いやこれ並大抵のヒトなら頭蓋が砕けていたのでは……?
「規律を守れ。感情の制御を意識しろ。
お前がグラナから何を言われたのか、それはもう聞いた。……私は気にしていない、だから
前にも言っていた言葉。
メルセデスちゃんは強い。心が強い。だから普通は赦せなくなるような言葉を言われても、赦せなくなるようなことをされても、赦して
事実、それをしてしまったわたしでさえを親友と呼ぶことを赦してくれるメルセデスちゃんは、誰よりも強くて、優しい。
そんなメルセデスちゃんだからこそ大好きだし、そんなメルセデスちゃんだからこそ、わたしにとって救いそのものだった。
でも、だからといって。
「め、メルセデスちゃんの言葉でも……それは……
「……そうか。
しかしそれでも掟を破るな。お前の心の在り方は否定しないが、それでも、だ」
「……絶対とは言えないけど、努力する」
「そうか。ならいい」
ヒトが見れば不遜な態度と、メルセデスちゃんのことを思うかもしれない。そんなことはない。
だってメルセデスちゃんはそもそもの話、わたしと違って、ひとりでも生きていけるから。
わたしの人生にはメルセデスちゃんが必要だけど、メルセデスちゃんの人生にわたしは必要ないから。
いつだって見捨てていいのに、振り返らなくていいのに、メルセデスちゃんは"隣を歩きたい"というわたしの願いに寄り添ってくれているのだ。
立ち止まることはしなくても、気にしてくれているのだ。
……わたしの願いを、否定しないでくれているのだ。
「うん、ごめんね、色々と心配させて」
「……親友だからな」
嬉しいな。大好きだよ。
……でもね、メルセデスちゃん。わたし知ってるよ。
メルセデスちゃんはいつだって堂々としてるけど、わたしのことを親友って呼ぶときだけは、いつも目を逸らしてるよね。
気づいてるよ。……でも、言わない。
その無意識を口にしてしまえば、きっとわたしたちの関係は硝子細工みたいに砕け散ってしまいそうだから。そんな気がするから。
「うんっ、ありがとっ」
「……寮に戻ろう」
「うんっ!」
そんなこんなで、わたしたちは自分たちの学生寮に戻るのでした。