リリローグ。   作:すず夜

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第16話

「皆も知っていると思うが、学寮祭が近い」

「学寮祭!!!! 学園の三大イベントの一つっすね!!!! 去年のメルセデス先輩とリリー先輩のご活躍は伝説的っした!!!!」

「……ロカ、もう少し声量を下げてください」

「あっ!!!! 夜だもんね!!!! ごめんなさいっす!!!!」

「……はぁぁぁ」

「ロカはあほかわいいね」

「??? あざっす!!!! リリー先輩もかわいいっす!!!!」

 

 どうも、リリーです。

 うるせい星の下、生まれたやつの名はロカ。皮肉もいじりも通用しないというか伝わらない元気な子犬系(獣人ではない)の後輩です。

 前の【ダンジョン】解体では荷物持ちを任せるはずが、結局メッセンジャーになってもらった以来の邂逅です、わたしは。

 

 ……まぁ、それはさておき。

 

 今現在、わたしとメルセデスちゃん、エスメラとロカの四人は、わたしの大親友メルセデスちゃんのお部屋に集まっています。

 普段ならば、メルセデスちゃんのお部屋にわたし以外の客人が来るなんて絶許なのですが、かと言ってわたしのお部屋は……ちょっと……ヒトを招ける状態ではないので……そしてエスメラの部屋は、エスメラがわたしの入室を拒否しているので……あとロカは個室ではなく大部屋で集団生活を送っている、等々の理由で、まぁ、消去法でメルセデスちゃんのお部屋以外に選択肢がなかったわけですね。

 

 わたしを部屋に入れろエスメラァ! という話ではあるのですが、いかんせんこういう時のメルセデスちゃんは部屋の主の意向を尊重するタイプなので、エスメラにわたしを部屋に入れろとは言わないのです。それどころか、無理を言うべきではないと言って、わたしを窘めてしまうのです。……エスメラァ!

 

 学寮にある談話室では他のヒトも利用しますし、貸し切りに関してはメルセデスちゃんが否定的です。というより、メルセデスちゃん的には自分の部屋に集まればいいのでは? となるので、談話室をわざわざ貸し切りにする理由が理解(わか)らないのです。

 わたしの"じぇらしー"にもっと意識を向けて……!

 

 なのでこの通り、わたしたちはメルセデスちゃんのお部屋に集まったわけですが……大きな金庫(メルセデスちゃんいわく武器庫)以外は何の変哲もない普通の部屋でした。てっきり、メルセデスちゃんの匂いでいっぱいになっていると思っていた……期待していたのですが、残念ながら、相変わらずメルセデスちゃんは匂いに気を遣っているのか、すごく、無臭です。

 もっと個性を出そうよ、メルセデスちゃん。

 

「ロカ、この部屋は完全防音だ。隣室に迷惑をかけることは早々ないだろう。しかし隣人の言葉にはもう少し耳を傾けたほうがいい」

「すみません!!!! 気をつけます!!!! ……気をつけます!! ……気をつけます(ぼそぼそ)」

「……お前の思う普通の話し方でいい」

「すみません!!!! あざっす!!!!」

 

「そろそろ話し進めない?」「そろそろ話を進めませんか?」

 

「エスメ「それでメルセデス先輩、私とロカはまだ学寮祭の経験がないのですが、もう一度学寮祭について確認してもよろしいでしょうか?」

「ああ、わかった。しかし私よりもリリーの説明のほうがロカが理解しやすいだろう。リリー、頼めるか?」

「うん、いいよ」

 

 

 ではでは学寮祭についての説明! ……の前に。

 まずこの学園の学寮について説明しますね。

 

 我が校は学寮制なので、生徒は例外なく、いずれかの学寮に所属しなければなりません。

 どの寮に属するかは学園長が独断で決めてるらしいのですが……なにゆえか、学寮には『傾向』があり、属した生徒もその『傾向』の影響をそれなりに受けます。

 

 

①【ドレッドフィア/戦慄と恐怖】

 【寮色】赤【象徴】傾いた天秤

 

 【傾向】

 ・実力主義で、敵対者の破壊を好み、暴力に長けた者が多い。

 ・基本的にその暴力は制御されており、敵対者以外には振るわないよう心がけている。

 ・感情的な者も多いので、揉め事の数は他の寮よりも多い。

 ・貴族と平民の割合は半々。

 ・身内意識が強く、また繋がりも強い。

 

 

②【ブルームオーダー/花咲く騎士団】

 【寮色】青【象徴】百合

 

 【傾向】

 ・栄誉と血統を重んじる者が多い。貴種に対する忠誠心が強く、また所属する者も貴族や騎士の生まれが多い。

 ・彼らは血を重んじるが、だからといって平民を嫌悪したり、その存在を軽んじたりする者はいない。彼らは()()にも心優しいのだ。

 ・貴族や騎士との繋がりが強い。

 

 

③【ローウィン/法の勝利】

 【寮色】黄【象徴】魚

 

 【傾向】

 ・規律を重んじると同時に"真なる弱者"の救済を望む者が多い。

 ・彼らの語る"真なる弱者"とは不当に虐げられている者のことであり、悪人や"弱者の傲慢"を誰よりも忌み嫌う。

 ・貴族と平民の割合は半々。

 ・彼らは彼らに救われた者たちから強く信奉されている。

 

 

④【グリムアート/冷厳な技巧】

 【寮色】緑【象徴】本

 

 【傾向】

 ・他の寮と肌の合わない者が多い。寄せ集めと言ってしまえばそれまでだが、強いていうなら過度な干渉や支配、束縛を厭う者が多い。

 ・横の繋がりがほぼない。

 

 そしてわたしたちは四人全員がグリムアートに属しています。

 

 ちなみに寮長とかもいるのですが、今回は省きますね。

 

 まぁ何にしても風味(フレーバー)程度の話です。

 そもそもわたしとエスメラが同じ寮の時点で何の参考にもなりませんしね。もし順当にいくのであれば、エスメラはグリムアートよりもブルームオーダーかローウィンのほうが性に合っていたのではないでしょうか。

 

 

 さて、では学寮祭とは。

 ドレッドフィア、ブルームオーダー、ローウィン、グリムアートがそれぞれ同じ種目で戦い、その年の前半期の優劣を決定するための学園祭……というより体育祭のようなものです。

 別名、寮別対抗戦。むしろこっちを正式名称にしてほしいですね。

 

 ちなみに部外者でも観戦可能、そもそも学寮祭の様子は特殊な魔法で領内で放送されます。

 

 毎年種目は変わりますが、基本的には変則的な戦闘込みの競技を幾つか、最後はトーナメントでの団体戦になります。

 一応、我が校は国内最高峰の冒険者育成機関を謳っているだけあって、自然と武闘派が育つように教育課程(カリキュラム)が組まれていますが、常に争いの火種を用意することで競争心を煽り、実力を高める意識を向上させよう、そんな話らしいです。

 

 で、そんな学寮祭ですが、一番の特徴は『戦争儀式』という枠組みにあることです。

 これは聖約(テスタメント)によって『神々の代理戦争』であると同時に、敗北者の名誉が守られることを意味します。

 

 つまり、例えこの学寮祭で『聖騎士同士が争い、敗北者が出たとしても、その敗北者は加護を没収されない』ということです。

 

 なので、聖騎士にとっては合法的に他の聖騎士と争い、優劣を決定する、限りなく実戦に近い模擬戦を行う、単純に強い相手と戦える、そんな貴重な機会なのです。

 

 あとついでに結果が思いっきり成績や進路に影響します。

 

 以上!

 

 

「……そのついでが一番大事なのでは?」

「そうかな? どうでもよくない?」

「そう……なんすかね????」

「まぁ、目的は人それぞれだろう。問題は、このままではグリムアートは必ず負けるというところだ」

 

 はい、負けます。

 超天才のわたしと超親友メルセデスちゃんに敗北なんてありえませんが、残念ながら学寮祭は総合点が高い寮が勝つので、いくらわたしとメルセデスちゃんが全勝しようと、結局他のメンバーのがんばり次第では普通に敗北してしまうのです。

 

 特に、わたしたちの属するグリムアートは、まぁ、取り繕わずに言ってしまうと陰キャが多いので、こういったお祭り騒ぎが嫌いってヒトのほうが多いのです。メルセデスちゃんが関わらなければ、わたしも正直そっち側ですしね。

 

 他の寮が学寮祭に向けて色々と準備している間にも、我らグリムアート寮のメンバーはだいたいサボったり遊んだり趣味に没頭したり、そもそも学寮祭の当日に休んだり。……まぁ、勝てませんよね。

 

 去年は結局メルセデスちゃんが、割と普段のメルセデスちゃんでは考えられないような、えげつない方法を使って勝ちましたが……流石に、今年はその対策がされています。

 

「やはり、"あれ"の対策で今年は全員参加の競技がないな」

「……"あれ"は、やはり、教育機関として問題があったのでしょう」

「"あれ"っすか???? なんでしたっけ????」

「去年は、最初の種目が全員参加だったから、わたしとメルセデスちゃんで全員まとめて気絶させたの」

「ああ!!!!」

 

 去年は今年以上に勝ち目がなかったのと、さらに何故か全員参加種目が最初だったので、なら後は不戦勝で勝つかぁって、ね。

 まぁ、普通に考えますよね。

 なので去年は楽だったのですが、今年はそうもいきません。今年は全員参加種目が一つもなく、量を質で補うにも限界があります。

 

「だから、今年は比較的でいいから、学寮祭に参加できるグリムアートのメンバーを多少でも強くしようって、そういう話をしたかったんだよね。それが今日、二人を集めた理由」

「あくまで強制ではない。もし学寮祭で勝つつもりがあるならば、という程度だ。……私もリリーも、他の寮生と交流があるタイプではないからな。まずは二人に声をかけさせてもらった」

「お声かけいただきあざっす!!!! 是非参加します!!!! ねっ!!!! エスメラ!!!!」

「……まぁ、そうですね。私もやるからには勝ちたいと思います。メルセデス先輩、是非、稽古をつけてください」

「エスメラ、わたしは? わたしには何もないの?」

「お願いします、メルセデス先輩」

「エスメラ?」

「リリー先輩!!!! 自分はリリー先輩にも稽古をつけてほしいです!!!! よろしくお願いします!!!!」

「あー、よしよし。ロカはかわいいねー」

 

 しっちゃかめっちゃかしてきましたね。

 

「とりあえず、エスメラ、ロカ。二人の知り合いにグリムアートの寮生で、学寮祭に乗り気な者はいるか?」

「……私は心当たりがありませんね」

「自分は!!!! 一人だけ誘えそうなやつがいます!!!! 他の人はあんまり学寮祭に積極的じゃないみたいっす……しょぼん……」

「そうか。ならまず、明日にでもその心当たりに声をかけてもらってもいいか?」

「わかりました!!!!!!!!」

 

 うる、うるへー……。

 

 そんなこんなで、わたしたちはこの後、解散するまで戦闘だの探索だの【ダンジョン】だの学寮祭だの、各々が思うところについて話す合うのでした。

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