どうも、リリーです。
先日の集まりから数日が経ちました。
わたしと超親友メルセデスちゃんは、正直修行パートを挟んだところで伸び代があるか微妙なのですが、エスメラとロカ、
エスメラとロカだけじゃないのかって?
……はい、一人増えちゃったんですよね。イロモノが。
「サーケサケサケ!! どうしたサケ、こんなもんかサケ!? 二つ名持ちの上位
なんやこいつは。
けふんけふん、グラナ口調になっちゃったじゃないですが……。
どうしてロカは、こんなやつを連れてきたのでしょうか。
そんなことを思いつつ、このあほみたいな話し方をする無駄に美少女なその顔面に、カウンターでグーパンチをしておきます。
「ぐえっ」
よわ。
「……へ、へへ……流石でございますリリー先輩……『最強』の二つ名は伊達じゃないですね流石……鬼強……尊敬してます……」
「どうでもいいけどさ、次にその『最強』とかいうクソダサネームでわたしを呼んだら殺すからな」
「ひっ!? す、すみません!! 二度と言いません!! 許してください!! 世界一美少女のリリー先輩!!」
「あ? 世界一の美少女はメルセデスちゃんだっつーの、二度と間違えんな、殺すぞ」
「すみません……!! 世界で二番目に美少女のリリー先輩!!」
「喧嘩売ってる?」
「ごめんなさい!! ごめんなさい!!」
……いや、普通に話せるじゃん。
「ねー……なんで普通に話せるのに、あんなふざけた話し方してたの? もしかして、わたしのこと舐めてる?」
「しゅ、しゅみましぇん……」
泣いちゃった。
……いや、本当にどうしてロカはこんなのを連れてきたのかなぁ。
困ったことに現在、超親友メルセデスちゃんは学園長に呼び出されている最中で、エスメラは遅れた三ヶ月の分の補習テスト、ロカはテストが赤点で補習を受けている、そんな感じでして。
つまり、わたしは今、この変なサケサケ言ってるやつと二人っきりになっているのです。
やつの名をアキ。髪と瞳は同じ色。淡い赤橙色は色鮮やかで、顔立ちも美少女と称される分には何の不足もない。
そう、黙ってたら美少女なのです。黙ってたらかなりの美少女なのですが……正直なんやこれって感じがすごくて、一緒にいるだけで疲れます。帰りたい。
「わたしはさ、謝ってほしいんじゃなくて、なんであんなサケサケ言ってたの? って聞いてるんだよ、
「ボ、ボクもなんでかわかんないんです……いつも戦闘中とか、テンションがあがると、あんなふうになっちゃうんです……ご、ごめんなさい……ゆるしてください……あいしてください……」
一人称がボク? しかも、なんだかんだで割と図々しい発言してるし……ごみだる……早く、早く来てメルセデスちゃん!
と、そんな風に祈ってる時でした。
「補習終わりました!!!! 今日もよろしくお願いしますリリー先輩!!!!!!!!」
……う、うるせー。
「ロカはいつも元気だねー」
「そうっすか??? あざっす!!!!」
「うん、まぁ、うん」
サケ女に比べるとまだロカの声量のほうがマシと思うべきか、馬鹿大きい声を出すロカより大きなノイズを出すサケ女ことアキ。
もうわたしは一刻も早く自室か、超親友メルセデスちゃんの懐に帰りたいです……。
本当は勝手にメルセデスちゃんのお部屋に帰るのも"大いにあり"だと思っているのですが、でも前にそれをしてメルセデスちゃんに普通に怒られちゃったので……自室か、メルセデスちゃんか。わたしの荒れた心を癒やせるのは、その二つしかないのです。
その時、ふと閃きました。
「今度、メルセデスちゃんと枕交換しよ」
「お泊まり会っすか!!!! 楽しそうっすね!!!!」
ごめんね、ロカ。独り言だったんだよ。
まぁ、ロカとならメルセデスちゃんの次点でありかな、お泊まり会くらい、そんな風に思わなくもないです。
そんなことを考えていたら、サケ女がロカの後ろに、そっと隠れ始めました。
そして少しだけ怯えた表情で、わたしのことを見るのです。
……ふーん。
「よし決めた、わたし対ロカとアキで、戦おっか、そこそこ本気で」
「おおー!!!! 修行の成果を見せる時っすね!!!! わかりました!!!! お胸を借りさせていただきます!!!! よろしくお願いします!!!!」
「えっ……え?」
「文句ある?」
「な、ないでしゅ……」
そんなこんなで、わたしたちはメルセデスちゃんやエスメラァが来るまでの間、"限りなく実戦に近い模擬戦"という名の蹂躙を始めたのでした。
メルセデスちゃん!! 早く来て~~!!
……………………
…………
……
一方、その頃。
"──ッ"
振り下ろされた一閃は、山河を打ち砕くに値する。
言うなれば人外魔境。個が放つにはあまりに過剰で、あまりに不可思議な、あり得てはならない暴力だった。
"轟ッッッ"
その衝撃が、音が、すべてが遅れてやってくる。
山河を打ち砕くに値するのならば、当然、この地は破壊の嵐によってその悉くを荒野へと姿を変えるのが自然。
しかしこの地は、そんな自然とは無縁の不自然な魔界だった。
依然として、逆しまの夜は、深紅の魔城は、此処に在る。
そしてそんな魔城に、二人の男女がいた。
「おいおい、少しは手加減をしてくれないか?」
「断る」
脳髄を狂わせる狂気の赤と黒に満ち満ちた魔界魔城にて。
その主たる男の飄々とした言葉を、世界ごと一刀両断しようとしているのは褐色肌の女。
つまり、学園長と呼ばれる男。
つまり、メルセデスと呼ばれる女。
明確にして冷徹な、しかしあえて色で表現するならば無色の殺意をもって、メルセデスは男を討たんとする。
一抹の慈悲も一切の慈愛も持たず、その剣で、槍で、魔法で。
己の持ちうる全霊をもって、精巧な絡繰よりも緻密な仕組みで、しかしその実やはり心の中に嵐と凪を両立させ、体外に出す感情を純粋なる殺意に統一する。
「──天上天下砕け散れ」
それが、この諍いがさらに加速する──開戦の号砲だった。
この言葉の通り、次に放たれた一撃は、もはや山河を打ち砕く程度の範疇に留まらず。
つまり、世界一つを壊すに値するだけの究極にして凄絶、人の技巧と人外の理をもって漸く成立する、破
当然、如何に不自然不可思議の魔界魔境であったとしても、この破界に抗う術はない。
夜は明け、城は砕かれ、今度こそ此処はただの荒野と化す。
しかし。
しかし、メルセデスが鉄血の一騎当千、武芸絶倫にして怪力乱神の女傑ならば、それに対峙する男も尋常の域には留まらない。
三度目の、転象。
依然として逆しまの夜と深紅の魔城は、此処に在る。
熟練の魔法使い百人を使い潰してもなお不可能と断ぜられる次元の世界創造を、この男は単独で繰り返し行使していた。
「流石に疲れちゃったし、いい加減諦めてくれないかな」
「断る。お前の意見には賛同できない。そしてお前は罪を犯した。お前はその罪を、その命をもって償わなければならない」
「相変わらずの意地の強さだ。それが君の最大の長所であり、最大の短所でもある」
「否定はしないが、そんなことはどうでもいい。何故、
「言っただろう?
「そうか。ならばやはり、死ぬがいい」
「それこそ断る」
魔城から放たれるのは無数の魔弾。
兵なき城であっても、この城に兵器は無数にある。
剣林弾雨。文字通りの現象が具現化し、メルセデスを襲う。
男には殺意がなく、ゆえにこの殺戮の雨は、所詮は所謂、ただの牽制程度として放たれている。
男は知っている。この程度では、眼前の女に傷一つつけられない。眼前の女は、間違いなく『最強』と称するのに相応しい、次代の『英雄』であることを。
ゆえに、男には
そして男の想像通りに、メルセデスは魔城から放たれたありとあらゆる攻撃を撃ち堕とした。
再び、あの破界の一閃が放たれる、その直前に。
「神々に誓う。今回の僕の行動には、悪戯に誰かを傷つける意図はなく、またこの罪を償う機会を必ず三年以内に設ける」
「……何?」
嵐が、凪ぐ。
「……。…………いいだろう。お前の
「そうかい。それで、僕の話を受け入れてくれるのかな」
「それは話が別だ。……しかし、ひとまず様子見の程度にはしておこう」
「そうかい、それはよかった。僕も無駄死にはしたくないからね」
この戦いに如何なる意味があったのか。
それを知る者は当事者を除いて、まだいない。
そしてこの一件をリリーが知るのは、まだ先のことであった。