「勝ったサケ!! リリローグ 完ッ!!」
「勝ってないし、句点が抜けてるよ」
どうも、リリーです。
……誰か、誰かまともなヒトを連れてきてください。
わたしは今、生まれて初めて見た珍獣を相手に、どうにも戸惑いが隠せません。
そんな気持ちのまま、殴りかかってくるサケ女ことアキに対し、相も変わらずカウンターで無駄に美少女なその面に、今度は上段蹴りをのめり込ませておきました。
下手すれば死ぬ? 腐っても冒険者見習いなので、その程度では死にません。それにわたし、超親友メルセデスちゃんやエスメラと比べるとそこまで強化魔法に特化してるわけじゃないですし。
「ぐえっ!! へ、へへ……流石ですリリー先輩……」
グーパンチ、キック、ぱんぱん、血っ血、飛び膝蹴り。
「痛いっ、痛いです!! ボ、ボクの負けです!! 許してくださいっ!! 痛い、痛いです!! うぅ、いたいよぉ……ぐすん」
「冒険者向いてないよ、お前」
「ひん……」
「
そんなアキとの会話中、次はロカが後ろから詠唱を叫びながら木剣で攻撃してきました。
脳天直撃を迷わず狙う兜割。それも低級なれど強化魔法込み。当たれば岩くらい簡単に砕けるその一撃が、一切の躊躇もなくわたしに向かって振り下ろされます。
まぁ、そのまま一歩だけ動いて回避します。仮に軌道が急激に変わったとしても、そもそもロカの攻撃速度では、わたしの服をかすめることも難しいでしょう。
「パーティーメンバーが攻撃されて焦るのはロカらしいけど、強化魔法は事前に済ませておかないと、せっかくの不意打ちの機会を無駄にしちゃうって、前も言ったよね。ロカは魔法が下手だけど、体術はそこそこなんだから、勿体ないよ」
「すみません!!!! 気をつけます!!!!」
そんなことを言いながらも、ロカは追撃を続けてきます。
それでいいです、今は戦闘中、相手が格上と
まぁ、全部回避するんですけどね。
「ローちゃんにだけ反撃しないのはどうしてでしゅか……」
「お前はさっさと攻撃してこい」
「ふぁい……喰らえサケッ!!
意識が攻撃に切り替わった瞬間、アキの
緩急自体は悪くないんですが、遅い遅い。
その速度、放たれた矢の如し。
常人ならば躱すのも一苦労、当たれば怪我ではすまない爆ぜる水の釘の、その数はおおよそ三十。
その一つ一つが
しかしそれも、当たらなければ意味がありません。
喰らえと叫んだ時点で、わたしの詠唱も終わっています。
「
アキの放った水属性魔法を、わたしの魔法が蒸発させました。
この程度なら、以前のような水蒸気爆発が起きないことは領都の錬金術師に確認済み。いや正しくはこの程度の規模なら冒険者なら問題ない、でしたっけ? ……まぁ、いいです。
「まだサケッ!!
さっきの三杯、殺気は三倍の猛攻。
ほーん? 放課後に集まってから今の今まで戦い続けて、魔力もそこそこ消費した状態でこの量、この質の放出魔法。
……この数日間、実力を隠してたな?
「初日からそれを使っておけばよかったのに」
超天才のわたしと比べるとお粗末にも程がありますが、それでも平均、中央値と比べると、なかなか悪くない攻撃性能です。
でも、さ。
このサケ女は状況を
「はぅわ!?!?!?」
わたしと今まさに攻防を繰り広げていた、味方であるロカを思いっきり巻き込んでますね。
これは、ロカではちょっとまずいかもしれません。
仕方ないにゃ──
"──業ッ"
──いにゃ。
「チッ。状況をよく見ろ、サケ女」
突然現れたエスメラが、魔剣の炎を放出し、その炎閃をもってすべての水の釘を焼き払いました。
爆風と共に真っ白な水蒸気が晴れた時、その手で、その胸で、ご丁寧にロカを守るように抱きしめながら、女にしては背丈の大きなエスメラは、背丈の小さなロカに、柔らかな声をかけます。
「大丈夫ですか、ロカ」
ず、随分とかっこつけるじゃんエスメラ。
「うん!!!! 大丈夫だよ!!!! ありがと!!!! エスメラ!!!!」
「……もう少し、静かに。耳が痛いです」
「あっ!!!! ごめんね!!!!」
「……はぁぁぁ」
そんなこんなで、エスメラが合流しました。
で、それから数十分後。
「すまない、遅れた」
「メルセデスちゃん~~!! 寂しかった~~!!」
わたしは一目散に超親友メルセデスちゃんに駆け寄ります。
ロカはエスメラとずっとイチャイチャしてるし、残った一人は変なやつだしさ~~!!
そのまま制服姿のメルセデスちゃんに、
「メルセデスちゃん、なんだか血の匂いがするね」
「ああ、なかなか手強い相手と戦っていた」
「そっか、おつかれさま!!」
メルセデスちゃん、大抵の相手に手強いって言うから、実際どれぐらいの相手だったかはわからないけどね。
まぁでも、とりあえず来てくれてよかった!
「皆の様子はどうだった?」
「エスメラはとりあえず経験だけ積めばいいかな。今更新しい魔法を覚えたり、長所短所をどうこうするよりは、わたしとかメルセデスちゃんと戦ってたほうがいいと思う。
ロカとアキはまだまだだね。実戦経験もそうだけど、そもそも魔法の使い方が荒いし。
それに、ロカは一つくらい遠距離技を覚えたほうがいいかも。
あと、アキはねー……ちょっと精神が弱すぎる」
「そうか、わかった」
たんぱく~~!! でもすき~~!!
さて。
「でもどうする? エスメラやロカはともかく、アキのメンタル雑魚はすぐにはどうにもならないよ」
「リリー、仲間を雑魚と言うのはやめろ。精神の問題はそう簡単に解決するわけでもない。……荒療治は必要かもしれないがな」
「ごめん、口が滑っちゃった。それにしても荒療治かぁ……アキって
「深度Ⅳではやり過ぎだな。……深度Ⅱの【ダンジョン】で【ゴブリン】狩りをさせてみるのはどうだ?」
「あー……いいんじゃないかな。
「ああ」
「流石」
……アキ程度の実力で、【ゴブリン】狩り、ね。
なかなか鬼畜だね♡ でも付き添いは必須だよね。
【ゴブリン】は強くないけど、厄介ではあるし、以前みたく【ダンジョン】が急成長してるって可能性も
アキが死んだところでどうでもいいけど、それで有象無象にあーだこーだ言われるのもごみめんどーだしね。
「いつ行く? 明日休みだし、明日? 連れてくのはアキだけ?」
「希望者は連れて行く、程度でいいだろう。参加したい者は拒まないし、ここ数日はずっと学業と訓練に時間を使っていた。明日くらいは休みたい者もいるかもしれないから、強制にはしない。アキも含めてな」
「そっか、で、みんなどうする?」
「自分は是非とも参加しまっす!!!!」
「……まぁ、私も参加しますよ。メルセデス先輩に色々と教えていただきたいですし」
「ボ、ボクはちょっと……「うん?」ふぁい……参加しましゅ……」
「リリー、圧をかけるな」
「はぁい。で、どうする? アキ。今なら取り消せるけど」
「……参加します。ボクも、もっと強くなりたいです。それは嘘じゃないんです。本当なんです」
「そうか、わかった。では明日、深度Ⅱの【ダンジョン】で訓練を行う。荷物と装備は、【ダンジョン】探索を前提とした準備をしておくこと。集合は夜明け前に近場の公園。それでいいか?」
「りょうかいっ!」
「わかりました」
「はーい!!!!」
「はい!!」
そんなこんなで、わたしたちは明日に疲れを残さないために、ひとまず今日の訓練を終え、そのまま解散するのでした。
せっかく超親友メルセデスちゃんが来たのに!!