どうも、リリーです。
なんだかんだで依頼、任務についてまとまった頃、侯爵夫人様を煽るだけだった学園長がようやくまともなことを言い始めました。
「二人が侯爵夫人の依頼を受けるのはこっちでも受理しておくが、流石に二人だけだと色々と無理があるだろ。
まぁ、実際問題。
わたしと大親友メルセデスちゃんだけで【ダンジョン】を解体しろと言われても、ごみ面倒ではあるものの不可能ではないでしょう。
例えそれが最高位である
つまり、この依頼の面倒な点は任務の内容が解体ではなく『調査』であることです。
『調査』である以上、ぱぱっと【ダンジョン】の深層に行って【ダンジョン】を形成する核……『ダンジョンシード』を破壊するだけでは達成したことになりません。
①【ダンジョン】で何が起きているのか。
②騎士団となぜ連絡が途絶えたのか。
この二つを知る必要があります。
そしてもし……もし騎士団が全滅しておらず、例えば連絡がとれなくなっているものの負傷で動けないだけ、なんて場合には騎士団員を保護する必要があります。
ごみ面倒です。見捨てていいんじゃないかなって思います。
でも、残念なことに、非常に残念なことにメルセデスちゃんは決して職務を放棄する系の女の子ではありません。
なので大真面目に騎士団が生き残っていた場合を考えておかなければなりません。
まぁ、つまり。何が言いたいのかと言いますと。
「私たちをサポートする者が必要だな」
「ですねー」
そういうことです。
「ま、二人が必要だと思ったら、学園から好きなやつを連れていってもいい。
実際問題、解体中だった【ダンジョン】は本来なら騎士団が壊滅するほど脅威度の高いものじゃなかったはずだ。ただの
安心しろ。ちゃんと追加で連れていくやつの分の報酬もあの侯爵夫人から搾っとくからよ」
「わたくし、まだ貴男の目の前にいるのだけれど……ついに盲目になったか、それとも痴呆症を拗らせたのかしら?」
なんでこの二人は漫才をしてるのでしょうか。
「わかった。ひとまず連れていく人材に関してはリリーと共にすぐに決める。今日中には準備を済ませ、【ゴブリン】の活動が終わる頃……夜明け頃には【ダンジョン】に向かおうと思う。リリーもそれで大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。一緒にがんばろうね、メルセデスちゃん!」
「ああ、そうだな」
そんなこんなで、わたしたちは漫才を続ける学園長と侯爵夫人様を放置して、任務の準備にとりかかるのでした。
そして翌日。
「……それで? 前日にはわかっていたことを何故今、こんな朝早く……夜明けの間際に言い出したのですか? 今からお二人の任務について行く準備をしろと」
「うん、そうだよ。大丈夫大丈夫、エスメラなら大丈夫、わたしたちよりは弱いけど、メルセデスちゃんの足を引っ張らない程度にはちゃんと実力あるしね」
「話しを聞いていましたか? リリー先輩。私は何故、前日に知っていたはずのことを前日のうちに言わなかったのか、そう言ってるんですよ。こんな時間に……嫌がらせですか?」
「えー、まさかー」
「チッ。……いえ、失礼しました」
一人称や話し方が似てるヒトって、文章化すると誰が誰だかわかんなくなりますよね。
この一人称が大親友メルセデスちゃんと同じで、話し方が真面目系な女の子がわたしとメルセデスちゃんの後輩です。
名前はエスメラ。
長い金髪、翠眼の可愛いよりは美人なダウナー系。長身巨乳……いやもうメルセデスちゃんよりも大きいから爆乳かな? で、この通り生真面目な性格。
そして、わたしのことが大嫌いで、メルセデスちゃんのことは尊敬してる、そんな聖騎士の女の子です。
「はぁぁぁ……メルセデス先輩が関わってないなら今すぐに追い返してましたよ。メルセデス先輩もメルセデス先輩です。何故前日ではなく今、しかもよりによってリリー先輩に伝達を頼んだのか……」
「ああ、それはね。メルセデスちゃんは昨日のうちに言おうとしてたんだけど、わたしが伝えておくって言ったの。代わりにメルセデスちゃんにはロカを誘っておいてほしいってお願いしといたよ!」
「……はぁぁぁ」
「まぁまぁ、そんな溜息つかないの。幸せが逃げちゃうよ?」
「チッ。……今後、もしメルセデス先輩から私に何か伝えたいことがある場合、リリー先輩を通してではなく、直接私に伝えてもらうようにお願いします」
エスメラはいつものことながら生真面目で、こういうところがメルセデスちゃんを思い出すので、わたしはそんなに彼女のことが嫌いじゃありません。
それはそれとして、メルセデスちゃんに近づこうとする悪い子ではあるので、ちゃんと嫌がらせはしておきます。
……まぁ、度が過ぎるとメルセデスちゃんにバレるので、今回はこのあたりにしておきますけど。
「それで、一緒に【ダンジョン】に行ってくれるかな?」
「……集合場所だけ教えてください。三十分以内に準備して向かいます」
「準備できるまでここで待っていようか?」
「待たなくていいです。早く行ってください」
照れなくてもいいのに。あはは。
それからわたしはエスメラを置いて先に集合場所に向かいました。今回は【ダンジョン】の近くにある公園です。【ダンジョン】を集合場所にすると、他の冒険者や乞食に声をかけられたりしてごみ面倒なので、わたしたちが【ダンジョン】に行くときはいつも近場の目印になる場所に集まります。
時間的にわたしが一番かと思っていましたが、誰よりも早く集合場所に来ては準備体操を全力でしているヒトがいました。
メルセデスちゃん、わたし、エスメラに続く今回最後のパーティーメンバーです。
「あれぇ!? リリー先輩じゃないっすか!!!! おはようございますっ!!!! 早いっすね!!!! 流石です!!!!」
「うん、おはよー。相変わらずロカは声が大きいねー」
彼女はロカ。
赤みを帯びたセミロングの茶髪、茶眼で貧乳な女の子。
低い身長、低い実力、だけど声だけはおっきい。あと性格がわたしたちの中では唯一の根明で、たぶん普通はムードメーカーって呼ばれるような存在。
嫌われ者のわたしが相手でもいつもニコニコで、たぶんみんなから愛される系の純粋っ娘。獣人じゃないけど子犬系の女の子。
「いつも荷物持ちお願いしてごめんねー、わたしたち、学園の中じゃあんまり人気なくてねー」
「大丈夫っす!!!! 自分みたいなやつが尊敬する二つ名持ちの先輩方のパーティーに加えていただけるなんて光栄です!!!!」
将来は騎士志望らしい彼女は、わたしやメルセデスちゃん、エスメラと違って『神の加護』を受けた聖騎士ではないけど。
でも真面目でがんばり屋さんなので、荷物持ちという割と重要なお仕事をお願いできる数少ない……というよりは最早唯一の後輩です。
エスメラ? 彼女には普通に戦ってもらうので……。
「今日はよろしくお願いします!!!!」
「うん、よろしくー」
「それじゃあ、準備体操を続けますね!!!!」
「うん、あと早朝だからもう少し声量下げたほうがいいかな」
「はぅわっ!? すみません!!!!」
うるへー。
それから数分後経った頃にメルセデスちゃんが、そしてさらに十数分後にエスメラが来ました。
「おはよう、二人とも。いつも通り早いな、ロカ。リリーも今日は早かったんだな、いいことだ。」
「……おはようございます。メルセデス先輩、ロカ、今日はよろしくお願いします」
四人揃ったところで、わたしたちは【ダンジョン】で使う武器や道具を除いた荷物をすべてロカに持たせます。
いじめじゃないよ? これで動きが自由になったわたしとメルセデスちゃんが道中で出てくるモンスターをボコボコにするのです。
エスメラは基本的にはロカの護衛。場合によっては戦闘に参加、それがわたしたちの基本のスタイルなのです。
「では、行くか」
「はい!!!! よろしくお願いします!!!!」
そんなこんなで、わたしたちは【ダンジョン】に向かうのでした。