リリローグ。   作:すず夜

20 / 20
第20話

 どうも、リリーです。

 近日の習慣として、相変わらず学寮祭に向けてエスメラ、ロカ、アキと修行パートを行っていた放課後のことです。

 

 冷厳な技巧(グリムアート)の寮長さんが、わざわざわたしとメルセデスちゃんを探して、こんな辺鄙な場所(訓練に使っている深度Ⅰの【ダンジョン】)を訪れました。

 

「アイズ、ハグワール、訓練中に悪いが、少し話がある」

 

「はい? 珍しいですね、寮長さん。どする、メルセデスちゃん」

「ふむ。エスメラ、ロカ、アキ、悪いがしばらく自習していてくれ」

 

 そんな感じで、後輩三人娘から少し離れたところに移動します。

 

 ちなみに、アイズがわたし、ハグワールはメルセデスちゃんのことである。苗字ですです。

 

 ついでに、この寮長さんの出現が珍しいと言った理由は単純で、このヒト、普段はあんまり学園に来ないのです。

 一応、以前のわたしやメルセデスちゃんがそうであった様に、冒険者見習い扱いの在校生でも、上位番付者(ランカー)ともなれば指名依頼がくることが度々ありまして。

 まぁ、つまりこのヒトはそれだけ、学生身分でありながら、学外で活動できるくらい実力と信用があるってことです。

 ……冷厳な技巧(グリムアート)の寮長なのに。

 

 ちなみに男性で、イケメンです。

 メルセデスちゃんと二人っきりには絶対にしませんよ。

 

 と、そんなことを考えていたのですが……。

 

「アイズ、ハグワール。お前たちが学寮祭に向けて、後輩たちを鍛えていることは知っている。俺が不在の間、よく後輩たちの面倒を見てくれた。そんなお前たちにこんなことを言うのは気が引けるんだが……学寮祭が縮小されることになった」

 

「ふむ。学寮祭は聖約(テスタメント)で縛られている『戦争儀式』だ。安易な縮小は、神々に罰せられる可能性があるが……理由を聞いてもいいか?」

「ああ、俺も言われたのは今日のことなんだがな。……お前たちなら知っているだろうが、【エンジェル】の活動がここ数ヶ月の間、確認されている。そんな時に、学寮祭に人員を長時間拘束されるのは避けたいらしい。それに学徒動員の可能性もある以上、無闇に怪我人を増やすような真似をするのもな。

 本来なら中止にしたのだろうが……ハグワールの言う通り、安易に中止できるものではない。ゆえに縮小だ。

 これは『審判の加護』を授かった聖騎士の助言を受けた上での判断だ、覆ることはないだろう」

「そうか、わかった。具体的には何が変わった?」

「毎年行われていた団体戦があるだろう。今年は種目をあれ一つにしぼる。その上、団体のメンバーも十三人ではなく、七人に減る。

 メンバーの選定方法だが、少なくとも十三騎士(トレセーナ)は強制参加だ。残りは各寮の寮長の独断とのことだ」

「あー……そうなると、わたし、メルセデスちゃん、エスメラ、寮長さんが強制参加なんですね。残りの三人にはあてがあるのです?」

 

 ちなみに、十三騎士(トレセーナ)というのは、学園から最上位(トップクラス)と判断されているメンバーの中から、さらに上澄みと判断された十三人のヒトたちを指します。

 あくまで冒険者としての能力ではなく、戦闘力、補助力、回復力の総合値で選ばれているので、冒険者として優秀かどうかは二の次になっています。冒険者学園なのにね。

 

 まぁ、わたしは別に学寮祭が縮小されても構いませんけどね。

 むしろ早く終わってくれたほうが、大親友メルセデスちゃんとイチャイチャする時間が増えますし。

 それに、そもそもわたしがそれなりにやる気を出しているのも、メルセデスちゃんが、がんばってるからってのが理由ですし。

 特に問題ないですね。

 

「いや、三人ではない。四人だ」

「はい? どういうことですか? ……もしかして、いつの間にかエスメラの十三騎士(トレセーナ)落ちでも決まってましたか?」

「いや、そうじゃない。ハグワールが参加禁止になった」

 

「──はぁ?」

 

「そうか。他寮の十三騎士(トレセーナ)は各三人で、冷厳な技巧(グリムアート)よりも少ない。その上、冷厳な技巧(グリムアート)にいる四人は皆、武闘派だ。

 このままでは、戦う前から私たちの優勝が決まってしまう可能性が高い。だからか?」

「それもあるが、去年のお前とアイズが他の参加者を一網打尽にしただろう。それも理由の一つらしい。抗議はしたんだが……悪いな」

「そうか。なら仕方ない」

 

「待って待って、何納得してるの? 寮長さんもメルセデスちゃんも意味わかんないんだけど。それならわたしだって参加禁止じゃん!」

「俺も同じことを言ったが、アイズの参加は強制だ。去年の件と十三騎士(トレセーナ)の数の不平等。あくまでこの二つが参加禁止の理由で、アイズではなくハグワールが選ばれているのは、()()だと。少なくとも、()はそう主張しているらしい」

「はあ? そんなんで納得するわけないじゃん」

「リリー」

「ふざけんなよ、学園長の案か? それとも評議会か? 図に乗るんじゃねぇぞ、あの(ごみ)共が。今すぐ皆殺しにして──」

 

「リリー、やめろ。お前も理解(わか)っているだろう」

「──ああ、もうっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……ごみむかつく」

 

「悪いな、ハグワール」

「問題ない。理解している。納得もな。

 ()()()()()()()()()()()()()

 

「わたしっ……わたし、そういうのすきじゃない!!」

「リリー……」

「わかってる! でもごみむかつく!」

「そうだな。俺も今回の件は頭にきている。ハグワールは同じ寮で過ごす仲間だ。……普段、不在の俺が言うことじゃないかもしれないがな。しかしそれでも、だからこそ、アイズ。勝つぞ、いいな?」

「……ああ、もうっ! わかりましたよ……メルセデスちゃん! わたし、メルセデスちゃんが暴れられない分も、わたしが暴れてくるね!」

 

 わたし、超がんばるから!

 

「リリー。学寮祭が、あくまで儀式の一環であることを忘れるな。規則正しく、行儀良く、戦ってこい」

 

 ……うん、そうだね。それでこそメルセデスちゃんだね!

 

「でもちょっとさ、がんばれとか言ってほしいな♡」

「そうか。お前はいつもがんばっているからな。言葉に悩んでいたのだが……」

 

 え♡ がんばってるって思ってくれてたの♡ 嬉しい♡

 でも、わたしががんばるのって、メルセデスちゃんの前だけだよ♡

 

 ……いや、でもそうなるとメルセデスちゃん視点だと、わたし、いつもがんばってるヒトだったんですね。

 我ながら意外な話です。

 

「応援している。……がんばれ」

「すき♡ がんばる♡」

 

「俺、アイズ、エスパーダの三人が確定。残り四人は……四年から選ぶ。後輩たちを鍛えていたお前たちには悪いがな」

「気にする必要はない。実力的にもそうだが、そもそもロカもアキも大舞台で戦うには、まだ早い。精神的にも厳しいだろう」

「せめて一人は勝てるって思えるヒトがほしいよね。誰かいるかなー……」

「一応、目星はつけている。後で紹介しよう」

 

「わかった」

「わかりましたー」

 

 ちなみに、エスパーダとはエスメラのことです。

 

 

「そういえば、わたしはともかく、寮長さんとエスメラが負ける可能性もありますよね、十三騎士(トレセーナ)同士の戦いになった場合。エスメラは才能あるし努力もしてるけど経験不足ですし、寮長さんは……そもそも寮長さんって強いんですか?」

「随分と舐められているようだが、一応俺も武闘派のつもりだ。戦闘力に特化しているわけではないがな」

「へー……誰が相手だと厳しいです?」

花咲く騎士団(ブルームオーダー)の寮長と、戦慄と恐怖(ドレッドフィア)のグラナ。この二人相手だと厳しいな。他の十三騎士(トレセーナ)相手だと、武闘派とは半々。それ以外には勝てる可能性が高い」

「赤寮と青寮に別れてるなら、まだマシですかね。できれば両方わたしが相手できたらいいのですが」

「そればかりは読みと運次第だな。団体戦と言っても、あくまで個人戦の連続だ。噛み合わないこともあるだろう」

「なるほどです。そこらへんの判断は寮長さんに丸投げしますね」

「ああ、任せろ」

 

 ……。

 

 なんだかこのヒト、メルセデスちゃんと似たような話し方ですね。声とか一人称とか微妙な話し方違いとかはあるのですが……手紙とかでやりとりすると、混ざりそうです。

 

「学寮祭まで時間がない。他のメンバーにも声をかけ、全員で他寮の対策を考え、訓練を行う。ハグワール、お前にも協力を依頼したい」

「協力自体は構わないが、依頼にするのか?」

「ああ、当てつけ程度ではあるが、今回の件でお前の協力があったことを形に残しておきたい。番付者(ランカー)であるお前には指名依頼が出せるからな、それを利用する」

「ふむ。わかった」

 

「寮長さんって……今まであんまり話したことなかったですけど、なんだか本当に冷厳な技巧(グリムアート)の寮生かって疑いたくなるくらい、イイヒトですね」

「……そうでもない。そもそも普段は指名依頼の消化に忙しく、後輩の面倒を見れていないからな。その分、お前たちにも迷惑をかけている自覚はある」

 

 なんだこいつ、本当に冒険者の男のヒトか?

 

 男のヒトなんて、だいたいごみばっかなのに。……ここまでくると少し気持ち悪いですね。

 

 メルセデスちゃん、エスメラ、ロカに続いて寮長さんまでイイヒトだなんて……なんで不良か陰キャ集団の冷厳な技巧(グリムアート)にばっかり、話が通じるヒトが集まってるのでしょうか。

 

 そんなことを思いつつ。

 そんなこんなで、時計の針はチクチク進み。

 

 

 学寮祭の当日になりました。

 

 

 そして、事件は起きたのです。

 

 

「アイズ、緊急事態だ。俺とお前、エスメラ以外のメンバーが襲撃を受けた。すぐに代わりを見つけなければならない」

 

「はあ?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。