どうも、リリーです。
近日の習慣として、相変わらず学寮祭に向けてエスメラ、ロカ、アキと修行パートを行っていた放課後のことです。
「アイズ、ハグワール、訓練中に悪いが、少し話がある」
「はい? 珍しいですね、寮長さん。どする、メルセデスちゃん」
「ふむ。エスメラ、ロカ、アキ、悪いがしばらく自習していてくれ」
そんな感じで、後輩三人娘から少し離れたところに移動します。
ちなみに、アイズがわたし、ハグワールはメルセデスちゃんのことである。苗字ですです。
ついでに、この寮長さんの出現が珍しいと言った理由は単純で、このヒト、普段はあんまり学園に来ないのです。
一応、以前のわたしやメルセデスちゃんがそうであった様に、冒険者見習い扱いの在校生でも、上位
まぁ、つまりこのヒトはそれだけ、学生身分でありながら、学外で活動できるくらい実力と信用があるってことです。
……
ちなみに男性で、イケメンです。
メルセデスちゃんと二人っきりには絶対にしませんよ。
と、そんなことを考えていたのですが……。
「アイズ、ハグワール。お前たちが学寮祭に向けて、後輩たちを鍛えていることは知っている。俺が不在の間、よく後輩たちの面倒を見てくれた。そんなお前たちにこんなことを言うのは気が引けるんだが……学寮祭が縮小されることになった」
「ふむ。学寮祭は
「ああ、俺も言われたのは今日のことなんだがな。……お前たちなら知っているだろうが、【エンジェル】の活動がここ数ヶ月の間、確認されている。そんな時に、学寮祭に人員を長時間拘束されるのは避けたいらしい。それに学徒動員の可能性もある以上、無闇に怪我人を増やすような真似をするのもな。
本来なら中止にしたのだろうが……ハグワールの言う通り、安易に中止できるものではない。ゆえに縮小だ。
これは『審判の加護』を授かった聖騎士の助言を受けた上での判断だ、覆ることはないだろう」
「そうか、わかった。具体的には何が変わった?」
「毎年行われていた団体戦があるだろう。今年は種目をあれ一つにしぼる。その上、団体のメンバーも十三人ではなく、七人に減る。
メンバーの選定方法だが、少なくとも
「あー……そうなると、わたし、メルセデスちゃん、エスメラ、寮長さんが強制参加なんですね。残りの三人にはあてがあるのです?」
ちなみに、
あくまで冒険者としての能力ではなく、戦闘力、補助力、回復力の総合値で選ばれているので、冒険者として優秀かどうかは二の次になっています。冒険者学園なのにね。
まぁ、わたしは別に学寮祭が縮小されても構いませんけどね。
むしろ早く終わってくれたほうが、大親友メルセデスちゃんとイチャイチャする時間が増えますし。
それに、そもそもわたしがそれなりにやる気を出しているのも、メルセデスちゃんが、がんばってるからってのが理由ですし。
特に問題ないですね。
「いや、三人ではない。四人だ」
「はい? どういうことですか? ……もしかして、いつの間にかエスメラの
「いや、そうじゃない。ハグワールが参加禁止になった」
「──はぁ?」
「そうか。他寮の
このままでは、戦う前から私たちの優勝が決まってしまう可能性が高い。だからか?」
「それもあるが、去年のお前とアイズが他の参加者を一網打尽にしただろう。それも理由の一つらしい。抗議はしたんだが……悪いな」
「そうか。なら仕方ない」
「待って待って、何納得してるの? 寮長さんもメルセデスちゃんも意味わかんないんだけど。それならわたしだって参加禁止じゃん!」
「俺も同じことを言ったが、アイズの参加は強制だ。去年の件と
「はあ? そんなんで納得するわけないじゃん」
「リリー」
「ふざけんなよ、学園長の案か? それとも評議会か? 図に乗るんじゃねぇぞ、あの
「リリー、やめろ。お前も
「──ああ、もうっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……ごみむかつく」
「悪いな、ハグワール」
「問題ない。理解している。納得もな。
「わたしっ……わたし、そういうのすきじゃない!!」
「リリー……」
「わかってる! でもごみむかつく!」
「そうだな。俺も今回の件は頭にきている。ハグワールは同じ寮で過ごす仲間だ。……普段、不在の俺が言うことじゃないかもしれないがな。しかしそれでも、だからこそ、アイズ。勝つぞ、いいな?」
「……ああ、もうっ! わかりましたよ……メルセデスちゃん! わたし、メルセデスちゃんが暴れられない分も、わたしが暴れてくるね!」
わたし、超がんばるから!
「リリー。学寮祭が、あくまで儀式の一環であることを忘れるな。規則正しく、行儀良く、戦ってこい」
……うん、そうだね。それでこそメルセデスちゃんだね!
「でもちょっとさ、がんばれとか言ってほしいな♡」
「そうか。お前はいつもがんばっているからな。言葉に悩んでいたのだが……」
え♡ がんばってるって思ってくれてたの♡ 嬉しい♡
でも、わたしががんばるのって、メルセデスちゃんの前だけだよ♡
……いや、でもそうなるとメルセデスちゃん視点だと、わたし、いつもがんばってるヒトだったんですね。
我ながら意外な話です。
「応援している。……がんばれ」
「すき♡ がんばる♡」
「俺、アイズ、エスパーダの三人が確定。残り四人は……四年から選ぶ。後輩たちを鍛えていたお前たちには悪いがな」
「気にする必要はない。実力的にもそうだが、そもそもロカもアキも大舞台で戦うには、まだ早い。精神的にも厳しいだろう」
「せめて一人は勝てるって思えるヒトがほしいよね。誰かいるかなー……」
「一応、目星はつけている。後で紹介しよう」
「わかった」
「わかりましたー」
ちなみに、エスパーダとはエスメラのことです。
「そういえば、わたしはともかく、寮長さんとエスメラが負ける可能性もありますよね、
「随分と舐められているようだが、一応俺も武闘派のつもりだ。戦闘力に特化しているわけではないがな」
「へー……誰が相手だと厳しいです?」
「
「赤寮と青寮に別れてるなら、まだマシですかね。できれば両方わたしが相手できたらいいのですが」
「そればかりは読みと運次第だな。団体戦と言っても、あくまで個人戦の連続だ。噛み合わないこともあるだろう」
「なるほどです。そこらへんの判断は寮長さんに丸投げしますね」
「ああ、任せろ」
……。
なんだかこのヒト、メルセデスちゃんと似たような話し方ですね。声とか一人称とか微妙な話し方違いとかはあるのですが……手紙とかでやりとりすると、混ざりそうです。
「学寮祭まで時間がない。他のメンバーにも声をかけ、全員で他寮の対策を考え、訓練を行う。ハグワール、お前にも協力を依頼したい」
「協力自体は構わないが、依頼にするのか?」
「ああ、当てつけ程度ではあるが、今回の件でお前の協力があったことを形に残しておきたい。
「ふむ。わかった」
「寮長さんって……今まであんまり話したことなかったですけど、なんだか本当に
「……そうでもない。そもそも普段は指名依頼の消化に忙しく、後輩の面倒を見れていないからな。その分、お前たちにも迷惑をかけている自覚はある」
なんだこいつ、本当に冒険者の男のヒトか?
男のヒトなんて、だいたいごみばっかなのに。……ここまでくると少し気持ち悪いですね。
メルセデスちゃん、エスメラ、ロカに続いて寮長さんまでイイヒトだなんて……なんで不良か陰キャ集団の
そんなことを思いつつ。
そんなこんなで、時計の針はチクチク進み。
学寮祭の当日になりました。
そして、事件は起きたのです。
「アイズ、緊急事態だ。俺とお前、エスメラ以外のメンバーが襲撃を受けた。すぐに代わりを見つけなければならない」
「はあ?」