どうも、リリーです。
そんなこんなで【ダンジョン】に来たわたしたちですが、早速問題が起きています。
【ダンジョン】を目前にしたわたしの超親友メルセデスちゃんが、いきなりとんでもないことを言い出しました。
「【ダンジョン】の
「え、そんなことある?」
「そんなことあるんすね!!!!」
「……普通はありませんよ。少なくとも世間一般的には、一度成長を終えた【ダンジョン】の
しかし、他でもないメルセデス先輩がおっしゃるのであれば……」
正確に言うと、【ダンジョン】の
でも、わたしの超親友メルセデスちゃんの
そして超親友メルセデスちゃんはとっても誠実で、確信していること以外は決して断言しません。
真顔で冗談を言うこともあるので稀にどっちかわからなくなりますが、こんなときにそんなことを言う子ではありませんし、冗談を言ったときはちゃんと最後に冗談だと教えてくれます。すき。
つまり今、眼前の【ダンジョン】では常識の外の出来事が発生しているということです。
「元の
「資料ではⅡ。地形ダメージと【ゴブリン】が発生する程度だったはずだ。しかし今は……Ⅲ。深層はⅣでも不思議じゃないな」
「はぅわ!?
「……第七騎士団には聖騎士も上位
「ごみめんどー」
今更ながら【ダンジョン】と
【ダンジョン】とは世界各地に点在する地下世界だよ!
内部構造は外部から観測できる以上の空間が広がってるよ!
常人では入るだけで死ぬほど空気中の魔力濃度が高いよ!
【ダンジョン】の魔力濃度に耐性があって、内部の探索を許可されたヒトを『冒険者』と呼ぶよ!
①Ⅰではモンスターが発生しないよ! 地上のモンスターが棲み着いて繁殖する場合は別とするよ! 地形ダメージがあるくらいだよ!
②Ⅱでは夜行性のモンスター【ゴブリン】が発生するよ! 人型に近い醜悪なモンスターだよ! 全部で三十六種が観測されてるよ!
③Ⅲでは【ビースト】が発生するよ! 獣型に近い醜悪なモンスターだよ! 種類は少なくとも百種以上は確認されてるけど、まだまだたくさんいるといわれているよ!
④Ⅳでは【デーモン】が発生するよ! 個体数は少ないけど一体いたら街どころか小さな国一つは簡単に滅ぼせる程度には強いよ!
メルセデスちゃんの言葉通りなら、今この【ダンジョン】は全体に【ゴブリン】や【ビースト】、深層には【デーモン】が発生してるってことだよ!
精鋭約百名で構成されている騎士団は各個人が【ビースト】一体と同等といわれていますが、奇襲を受けた場合にはこの限りじゃないので、もし深度Ⅱだと思い込んだまま【ダンジョン】を探索していた場合は……エスメラの言う通り、全滅もありえます。
「これは一度学園に戻って、学園長や侯爵夫人の判断を仰いだほうがいいんじゃないかなってリリーは思うんだけど……だめ?」
「……急に猫をかぶるのはやめてもらってもいいですか? 蕁麻疹が出そうになります」
「ええー、酷いよエスメラー」
「自分は可愛いと思いますリリー先輩!!!!」
「ふふっ、ありがと、ロカも可愛いねー」
「……はぁぁぁ……で、どうします? メルセデス先輩。癪ですがリリー先輩の言う通り、私も一度戻って学園長に報告すべきだと思いますが」
学園長の言う通り、これはただの
ひしひしと感じる嫌な予感が、なるほどたしかに侯爵夫人の言う通り超親友メルセデスちゃんと愛の逃避行をしたほうがいいんじゃないかと思わせてきます。
……ごみ面倒もごみ面倒です。
ああ、でも、やっぱり、こういうときにこそ、こういうときだからこそ、メルセデスちゃんの次の言葉が容易に思い浮かびます。
「いや、『調査』は続行する」
……だよね。
「原因は不明だが、【ダンジョン】の
それにもし【ダンジョン】が今以上に活性化する可能性が場合、今のうちに叩いておかなければ本当に手がつけられなくなる。
今日、ここで確実に解体しておく必要がある」
「だね。ごみめんどーだけど、メルセデスちゃんが言うなら仕方ないかな。後輩ちゃん二人はどうしようか?」
「少なくともロカは学園長にこの件を伝えるために学園に戻ってもらう。実力的にも、少し危険だ。
エスメラは、騎士団が全滅していない場合に備え、能力的にもできれば私たちと共に死地に向かってもらおうと思うが……死地になる可能性もある。本人の意志を尊重しよう」
「行きますよ、メルセデス先輩。リリー先輩はともかく、メルセデス先輩には荷物持ちがいたほうがいいでしょうし、何よりメルセデス先輩の指示を私は最良だと信じます」
「ちゃんとわたしの荷物も持ってよー」
「……はぁぁぁ」
「悪いが助かる。ロカはこの件を学園長に伝えてくれ」
「わかりました!!!!」
ロカに持たせていた荷物をエスメラに渡しつつ、ロカを先に学園に戻ってもらったその後。
わたしたちは、何とも何ともごみめんどーな予感しかしない【ダンジョン】の中に入っていくのでした。
で。内部に入った次の瞬間──
──わたしたちは、青空に放り出されました。
「「は?」」
よりにもよってエスメラと反応がハモりました。屈辱です。
「ふむ、こういうこともあるのか」
「いや落ち着きすぎだってメルセデスちゃんこれやばい死ぬ死ぬ死ぬあぁあ゛あ゛あ゛ーーー!!!」
どんなときでも冷静沈着怜悧で鋭利なわたしの親友!
かっこいい! すき!
でもちょっとこれはどうしたものかな!?
圧倒的才能を持つわたしの距離感覚が、現在地が地上からだいたい三〇〇〇メートルくらい上空にいると推測!!
そして現在進行形で落下し続けるわたしたち!!
「メルセデス先輩ッ!! 指示をッ!!」
「二人とも、『防御増強』を使え。あとは
「「
実に端的な指示。勘違いのしようもなく、わたしとエスメラは超親友メルセデスちゃんの指示通りに全身の魔力を回し、『
『防御増強』の効果は肉体が硬く、固く、そして重くなることで、前者二つはまだしも『重くなる』という性質が果たして今の状況に合っているかどうか……そんな悩みは微塵も湧きません。
なぜならわたしたちは、非常時におけるメルセデスちゃんの判断を何より誰より信じる、彼女のパーティーメンバーだからです。
「
それだけ言うと、メルセデスちゃんはいつの間にか持っていた細長い針で自分の首筋に刺しました。
すると、一瞬のうちにメルセデスちゃんの身体がだいたい三〇〇〇メートルほどに超々巨大化し、誰よりも速く、早く地上に足をつけ、わたしたちを掌で受け止めました。
もう一度言います。
わたしの超親友が超々巨大化しました──
──全裸で。
「!?!?!?!? どうしたのメルセデスちゃんそれはちょっとセンシティブすぎるって言うかえっちすぎるって言うかおいこら何メルセデスちゃんの玉体を見てんだエスメラ目を潰せぇッ!」
「素のゴミさ加減が隠せてませんよリリー先輩。死んだほうがいいんじゃないですか?」
「落ち着け、二人とも」
…………
……
…
「ふぅーっ、ふぅーっ、……ごめん、ちょっと正気じゃなかったね」
「すみません、助かりましたメルセデス先輩。あと元に戻っても裸のままなんですね」
色々としっちゃかめっちゃかしてしまいましたが、とりあえず状況をまとめましょう。
①【ダンジョン】に入る。
②青空に放り出される。
③超親友メルセデスちゃんが巨大化する。全裸になる。
④わたしとエスメラを受け止める。
⑤元のサイズに戻りながら、わたしたちは地上に着地する。
⑥元のサイズに戻ってもメルセデスちゃんは全裸のままである。
以上です。
「もしかして、巨大化して服が弾け飛んじゃったの?」
「ああ、そうだ。まぁ替えの服は念のために持ってきている」
「……心臓に悪いですね。ただでさえメルセデス先輩は『魅了』の能力を持っているのですから……気をつけてください。これが【ダンジョン】の内部じゃなければ……いえ、私が言うまでもなく、メルセデス先輩なら理解しているとは思いますが……」
「あくまで緊急事態だからしたことだ。本来なら、あれは『獣化』と併用するためのものだからな」
「ああ、なるほど」
リビドーリビドー。どんどんどんどーん。どっくん。
突然のご褒美的展開に天界に逝きそうになりましたがが、超親友メルセデスちゃんによって何とかなりましたた。
……ふぅ。
「というか、巨大化なんてできたんだね、メルセデスちゃん」
「ああ、今までは中々使う機会に恵まれなかったんだがな」
「あー、【ダンジョン】って狭いところが多いもんね」
「かと言って地上で使った場合は……それだけで災害が起きる」
「そだね……このあたりの平原、もうめちゃくちゃだもんね……」
よし、ようやく落ち着いてきました。
しかしまぁ、流石に【ダンジョン】の中で全裸のままというのは危ないので、メルセデスちゃんが替えの服に着替えるのを待ちます。
割と前々から思っていたことなのですが、メルセデスちゃんは容姿が絶世、もしくは傾国の域と言っても過言ではないにも関わらず性的なことや露出に無頓着過ぎます。
もっと肌を隠そうよ、メルセデスちゃん……!
「悪いな、今着替え終わった」
そう言ってわたしたちの前に現れたメルセデスちゃんの格好は、すごく、すごく露出が高い踊り子のような……もとい、えっちな戦装束でした。
「もっと肌を隠そうよ、メルセデスちゃん……!」
「私の露出が高くなるのは魔法の仕様上だとリリーは以前から知っているだろう」
「そうだけど、そうだけど……!」
今までそんな踊り子みたいな格好したことなかったじゃんか、なんだわたしを誘ってるのか????
……ふぅ。よくよく考えたら今までは学園の制服だけで何とかなってたもんね、服を
超親友の裸体を見るのは眼福ですが、それが周囲に晒されるとなると、親友として、とてもとても複雑な気分なのです。
「うぅ……エスメラ、ちゃんと目ぇ潰した?」
「頭に蛆でも涌いてるんですか?」
そんなことがありつつも、わたしたちはようやく【ダンジョン】の『調査』を始めるのでした。