私はいつも、熱しやすくて冷めやすい。
当然好きでそんな性質に育ったんじゃない。
生まれつき、そんな人間だった。
いや、そもそも人間と言っていいかどうか。
わたしには、きっと魔物の血が流れてる。
妄想だろうか。でも不思議。だってわたし、性格可愛くないのに、いっつも男のヒトがわたしに夢中になる。
きらきら瞳はきっと魔眼。
ふわふわ姿はきっと魔貌。
苛烈で過激で激情で、いつもいつでもわたしが至高。
"そんなわたしが好かれるはずないのに"
頭の片隅にはいつもそれがあって、でもわたしの心なんて、わたしじゃどうしようもない。
だから今日も、絶対"わたし"宣言。
男のヒトはみんな勝手に騎士になるって。
女のヒトはみんな勝手に敵になるって。
……まぁ、稀にわたしのことを蛇蝎の如く嫌う男のヒトもいて、そういうヒトに限ってイイヒトで。。。
ぴえん。
で。わたしはわたしの心が生み出す毒に耐えられない。
だからわたしを傷つけるの。
身体の中に流れる毒を
……だめぢゃん。
いじめいじめいじめ。女のヒトはみんなわたしが嫌いなの。
だったのに。助けてくれたの。
あの子は夜の漆黒がヒトの貌になった、そんな人。
闇の精霊は誰かと聞かれたら、きっとわたしは、あの人を思い出すの。
──だってあんなに、呼吸を忘れるほどに美しい。
艶やかな夜闇のような長い黒髪。
きらきら黄金の両の眼は、どんな宝石よりも、お星様よりもずっとずっと綺麗で。
褐色の肌は見慣れたものじゃなかったけど、それでも四肢も胸も何もかも、あの人は夜の女神のようで。
そしてあの人は、わたしなんかより、ずっと、ずっとずっと。
美しく、怜悧で、そして苛烈で過激で激情だった。
わたしをいじめていた女のヒトを、
わたしを囲んでいた男のヒトを、
みんなまとめてボコボコにしちゃった。
たぶん、身内に地位のあるヒトがいるのか、わたしをいじめていたヒトには貴族様もいたのに、みんな報復なんてすることもなく自主退学になっちゃったみたい。
あの人はすごい。すごくてすごい。
だからわたしは、あの人が好きになった。
だから。
うん、わたしにはきっと、魔物の血が流れてる。
わたしはあの人を独り占めするために、たくさんの男のヒトに彼女を襲わせた。だってきっと、みんなあの人を好きになる。
だからその前に穢して汚して駄目にして、
そしたらきっと、わたしだけがあの人を愛せるよね?
……男のヒト、みんなボコボコにされちゃった。
……だめぢゃん。
それでもわたしは、あの人と一緒になりたくて。
恋人になりたくて。
愛人になりたくて。
友達に、なりたくて。
あの人は、わたしが友達になることを赦してくれた。
親友。親友。親友。
同性愛者じゃないからって、恋人にはなれなかったけど。
それでもわたしは、あの人を親友と呼んで慕った。
みんながあの人を好きになるって思ってたけど、思ったよりもそうじゃなかったみたい。
あの人の肌は褐色で、先住民の肌の色で、わたしたちの先祖はずっとずっと先住民と戦争ばっかりしてたから、あの人の肌の色をあんまり好きになれなかったみたい。
やった。やった。うれしいな。
そうしてわたしたちは、親友になった。
好き。好き。好き。
わたし──アリス・リリー・ベルデ・アイズは。
あの人──マリア・メルセデス・エディ・ハグワールが。
好き。
マリア。マリア。わたしのマリア・メルセデス。
どうかわたしだけを見て。ずっとずっとわたしだけを見て。
わたしと一緒にいて。
ねぇ。お願い。好きだから。男のヒトも女のヒトも貴族も平民も王族も侯爵領も先住民も、全部、全部全部どうでもいいから。
ずっとわたしと一緒にいてね。
……………………
…………
……
どうも、リリーです。
現在正座中です。
……はい、ハイテンションになりすぎて、大親友メルセデスちゃんからお説教を受けている最中です。
あれからわたしのバグ技で周囲一帯を爆散させたわけですが、その時、エスメラのことが完全に頭から抜けていました。
もし大親友メルセデスちゃんがエスメラを助けていなかったら、わたしはパーティーメンバーを自分の手で殺していたことになります。
反省反省。
……本当に反省してますよ?
「だから赦してください……」
「ただでさえ時間が惜しい。あまり感情に振り回されてくれるな。そしてお前が謝罪すべきはエスメラだ」
「ごめんねエスメラ……」
「……はぁぁぁ、いいですよ。勿論、貴女の内心も概ね察していますが、その上でよしとします。
これ以上は時間の無駄ですし、あまり貴女を庇うようなことを言いたくはありませんが……私も油断していました。
だから、もういいです」
ありがとう、エスメラ。
わたしが特にエスメラに悪いと思ってなくて、大親友メルセデスちゃんが謝れって言ってるから謝ってるだけっていうのをちゃんと理解してくれるのはエスメラくらいだよ。
そういうとこはすき。
善人すぎて誠実すぎて、大親友メルセデスちゃんの肌の色も全然気にせず尊敬して。
……随分と良い感性を持ってますね。羨ましい。
「そうか。ならこの話はここで終わりだ。移動するぞ。鳥型はリリーが全滅させたが、このあたりはリリーの血の残香が充満している。他の【ビースト】が寄ってくるのも時間の問題だ」
「とは言っても、どうする? このまま無闇矢鱈と探索してると、流石に夜になっちゃわない?」
「そうですね。そういえば、メルセデス先輩は青空ダイブの時に、このダンジョンの地形を確認しましたか?」
そういえばそんな話しもしてましたね。
その途中にあの鳥型が襲ってきたのでした。
「ああ、空から見える範疇に関しては概ね把握していた。悪いな、情報を共有しておくべきだった」
「ああ、うん。まぁわたしたちメルセデスちゃんの言うこと聞くだけの集団だから、全然それはいいんだけど」
「……間違ってませんが、そこまで開き直るのもどうかと」
だってそうじゃん。
「いや、これは私の悪癖だ。一人で考え、完結させる癖がある。……直そうとは思っているのだが、どうにもな。
聞きたいことがあるなら聞いてくれ。状況によっては、すぐに応えることができないかもしれないが」
「うんうん、わかったよ。ところでその格好って下着が」
「何を聞いてるんですか、貴女は」
だって丸見えじゃん。
「それで、平原なり森なり山なりは私たちも把握していますが、メルセデス先輩は他に何か、気になるものが見えましたか?」
「ああ、湖があった」
「湖。……水源ですか、なるほど。可能性はもう低いかもしれませんが、もし騎士団に生き残りがいるとすれば、近くに何かしらの痕跡が残っているかもしれませんね」
水源の近くは【ビースト】もたくさんいるでしょうが、それでもヒトは水がないと生きていけません。
何かしらの方法で水分を確保できる場所にいるはずです。
「それもそうだが……どうも、深層の気配を感じてな」
「あー、そっか。そもそも【ダンジョン】解体中に構造変化があったんだとしたら、騎士団はそもそも深層、というかダンジョンシードの近くにいる可能性が高い?」
「可能性がある、という程度だな。それに他にあてがないとも言う。
それに騎士団を探すのもそうだが、【ダンジョン】で異変が起きているのなら、やはり、【ダンジョン】の核であるシードに何か手掛かりはないか、とも考えている」
「……仮に騎士団がそちらにいたとしても、流石に全滅していそうですね」
そうだね。国堕としこと【デーモン】がいるとしたら深層で、ダンジョンシードの付近ってことだもんね。……ですしね。
「なら、とりあえずその湖を目指す?」
「そう考えていたが、二人もそれでいいか?」
「うん、わかった」
「わかりました」
そんなこんなで、わたしたちは、大親友メルセデスちゃんを先頭にしてついて行くのでした。