リリローグ。   作:すず夜

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第六話

 どうも、リリーです。

 道中、遭遇したモンスターは鏖殺しました。下手に戦闘を避けて後々に回すよりも、見つけた【ビースト】は見敵必殺(サーチアンドデストロイ)したほうが最終的には楽なのです。

 他のパーティーでは違うらしいですが。

 

 で。ようやくメルセデスちゃんが言っていた大きな湖に辿り着きました。辿り着いたのはいいのですが、一つだけ言いたいことがあります。

 

「この【ダンジョン】さぁ……ごみじゃない?」

「……珍しく同意しますよ。これは……あまりにも……」

 

 まず、入場の時点で青空ダイブ。上空三〇〇〇メートルに投げ捨てられても平気なヒト以外は落下ダメージで即死します。

 なお帰りも、ごみわかりづらい上空三〇〇〇メートルのどこかにある(ゲート)を探さなくてはいけません。

 そもそも普通の冒険者や聖騎士は上空三〇〇〇メートルにいけないのですが……。

 

 次に、たびたび空から魔法か体質だかで無音で急降下急接近してくる一〇メートルくらいの鳥型の【ビースト】を倒しましょう。

 ついでにそこら辺に普通にいる犬型だの猿型だの鹿型だのその他様々な【ビースト】も倒しましょう。

 

 一つ目が酷すぎますね。初見殺しにも程があります。わたしたちには大親友メルセデスちゃんがいるので何とかなりましたが、あんなものを初見で対処できるのは、領内どころか国内でもごく僅かだと思います。普通のヒトは空を飛べませんので。

 

 二つ目のはまだマシですが、それでも【ビースト】の相手は基本的にベテランの冒険者でも嫌がります。聖騎士ならば複数を同時に相手にすることも可能ですが……それでも、誰にでもできることの類ではありません。

 

 で。三つ目。

 

「……湖の底だな。深層に続く道があるのは」

 

 

 注意(アテンション)!…この先に進むには湖の底にいく必要があります。

 

 注意(アテンション)!…なお深層は完全に水没しているので、深層での活動は完全に水中活動が前提となります。

 

 注意(アテンション)!…そしておまけ程度ですが、【ビースト】の中でも特にごみめんどーなタイプは、だいたい水中で活動しています。

 

 

 結論は?

 

「もう帰らない?」

「それは駄目だ」

「知ってた。でもどうしよっか、深層が水没してるのって前例がないし、青空ダイブもそうだけど、この【ダンジョン】ってやっぱりごみじゃない?」

「かと言って放置することはできない。……最悪、私が授かっている加護の力を使えば──」

 

「それはやめて」「それはやめてください」

 

 大親友メルセデスちゃんの()()()()を絶対受け入れないわたしの言葉と、エスメラの言葉が被りました。屈辱です。

 でも、やっぱりそれだけは……メルセデスちゃんの加護の力だけは頼りたくありません。

 例えどれだけこの【ダンジョン】がごみ面倒であったとしても、()()()()()を頼るくらいなら素直に攻略したほうがいいです。

 

「……そうか。ではどうする? わたしの魔法では獣や巨人の姿には成れるが、鳥や魚には成れん。リリーやエスメラの加護や魔法でも地形(フィールド)に干渉するのは難しいだろう」

「んー、一回、全員の手札を確認しようよ。隠しておきたいものはさておくにしても、メルセデスちゃんの巨人化みたく、お互いに把握してない手札でなんとかできたりしないかな?」

「……そうですね。何もせずにメルセデス先輩の加護に頼るよりは、そちらのほうが健全でしょう」

 

 そうして、わたしたちはお互いの武器や手札を改めて確認しあうのでした。

 勿論、わたしたちは元々それなりにパーティーを組む関係ではあったので、目新しい情報はあまりないでしょうが……。

 

「とりあえず、エスメラ、わたし、メルセデスちゃんの順番でいいかな?」

「ああ、わかった」

「わかりました。では」

 

「私の基本属性は『地』。土や岩を多少動かすことはできますが、流石にここまで大きな湖はどうにもできません。湖の底を押し上げようにも、水底が操作の射程距離の外です。放出は地属性ならば上級、他は使えません。強化魔法は当然使えます。

 加護は『剣の加護』。剣の潜在能力を引き出し、また剣から傷つけられないという効果です。今回は炎の魔剣を持ってきていますが……戦闘以外だと火起こしくらいにしか使えません」

 

「わたしの基本属性も『地』。エスメラよりは大地に干渉できるけど……癪だけど、どうにもできない理由が同じ。

 放出は一応炎風水地(ぜんぶ)使える。上級までね。でも基本的に攻撃にしか使えないかな。水中活動とか水そのものに干渉するとか、そういうのはなし。強化魔法は当然使えるし、加護の関係で『防御増強(ライズ)』以外は『暴走』も視野に入るかな。

 加護は『自傷の加護』。自分で自分を傷つける場合に限って、わたしは絶対に生存できる。木っ端微塵になっても、再生できるよ。

 武器はねー、普通の短剣かな。自傷用として兼用してる」

 

「私の基本属性は『無』。固有魔法は『陸の王』。獣や巨人といった陸上での活動を前提とした怪物に成ることができる。ただし翼ある獣や水辺の獣には成れない。放出系……加護の影響化にあって変異している。雷の放出が可能だ。強化魔法に関してはおそらく領内随一だと自負している。

 加護は『神龍の加護』。武器は『鍛冶の加護』を持つ鍛冶師に打たれた剣と槍だ」

 

 

 今更ながら基本属性、魔法、加護について説明しましょう!

 

①基本属性は各個人の得意な属性と思って大丈夫だよ! 全部で炎、風、水、地、無の五つだよ! 無属性以外は文字通り基本的にその属性の魔法が得意で、他の魔法が苦手だよ! ちなみにわたしみたいに基本属性以外の魔法を上級まで使えるのはあんまりいないよ! わたし天才だからね! 無属性はどの放出系も強化魔法も苦手な代わりに固有魔法っていう独立した魔法が使えるよ!

 

②魔法には放出魔法と強化魔法があるよ! 放出魔法はそのまんまだね! 体内の魔力を炎や風、水や地に変化させて体外に放出できるよ! 例外として基本属性と同一の属性と持つ存在なら、ある程度体外にあっても干渉して操作できるよ! 強化魔法は基本的に身体強化(ライズ)のことを指すよ! 派生の『属性変化』や『加速』ってのがあるけど今回は省くね!

 ちなみに無詠唱での魔法行使も不可能じゃないけど、『暴走』しやすいから基本的に詠唱するよ!

 

③加護は神々から受けた祝福、授かった力のことだよ! 名前はだいたい『~の加護』って呼ばれるよ! 強力な異能力と、その異能力を振るうための耐性を得るよ! 例えばエスメラの『剣の加護』なら、どんな剣でも使えるし、そのために普通なら所有者を傷つけたり呪ったりするような剣であってもエスメラを傷つけたり呪ったりすることができないよ! わたしの『自傷の加護』の場合は自分をどれだけでも傷つけられるように自傷に限っては絶対死なないし、絶対に再生するよ! 自殺もできないってこと! メルセデスちゃんのは、色んな意味で例外だから今回は省くよ! 授けた神は死ねよ。

 ちなみに加護持ちのことを聖騎士って呼ぶよ! 例え性根がクズでもね。

 

 以上!

 

 

 それにしても。

 こうやって見ると、わたしたちってなんだか……

 

「偏ってるよね」「偏っていますね」

 

 またエスメラと被りました。

 

「喧嘩売ってるのかエスメラー!」

「……はぁぁぁ。で、どうします? メルセデス先輩」

 

「お前たちは地属性。リリーは他の属性も使えるが、地形をどうこうするのは難しい。私は言わずもがな、だな。どうしたものか」

「水属性がいれば話が違ったんだろうけどさ、属性が炎とか風とか水のヒトって珍しいからね」

 

 大親友メルセデスちゃんの無属性が一番珍しいけど。固有魔法も超つよつよだし。

 

「……湖を叩き割ること、焼き払うこと自体は不可能ではない。ただしそれをしたところで、深層が水没していることに変わりがないのが結局のところ問題だな」

「深層は異次元化してるもんね。外側からの干渉は無理に近いし。でも異次元化していようと、湖と深層が水で繋がってるのは確定だろうし、いっそメルセデスちゃんの雷で全部感電させるとかは? 【デーモン】とかダンジョンシードごと、メルセデスちゃんなら破壊できない?」

「深層の広さにもよるが、おそらく不可能ではないだろう。

 しかしできれば、今回のダンジョンシードは破壊前に一度直接確認しておきたい。今後、似たようなことが他の【ダンジョン】でも発生した場合、結局私たちが調査することになるだろう。無意味な死者が増える前に、少しでも私たちでなんとかしたい」

 

 優しいね。わたしの大親友は。わたしだったら別にメルセデスちゃん以外のヒトが死んでも全然気にしないのに。

 でもそういうところがすき。

 調査さえ前提じゃなければ、たぶん、わたしか大親友メルセデスちゃんならダンジョンシードの破壊自体はできる。ダンジョンシードさえ破壊できれば、【ダンジョン】は解体される。

 けど。

 

「メルセデスちゃんがそう言うなら、ちゃんと調査できるようにがんばろう! でもどうしよう」

「……ひとまず、湖の水だけでも焼き払ってみるか?」

 

 脳筋可愛いね。すきだよ。

 まぁでも、わたしたちの手札でできるのがそれくらいなのも事実ですし、ここは一つ、思いっきり焼き払ってみますか。

 

「よし、放火の時間だー!」

 

 一気にこれだけの水を蒸発させたら、それはそれで水蒸気が凄いことになりそうだけど、まぁたぶんなんとかなるでしょう!

 

「念のため、『防御増強』だけしておくか」

「……ですね」

 

 そんなこんなで、わたしは炎属性の攻撃魔法の準備を、大親友メルセデスちゃんは細長いを針を用意して、エスメラは魔剣を構えます。

 

最上級(ハイエンド)炎属性攻撃魔法(ブレイズ)

誓約(サクラメント)──炎蛇の儀礼」

「魔剣解放──炎の剣(フランベルク)

 

 ところで、このときわたしは、わたしたちは知りませんでした。

 

 領都の魔法学者いわく、魔力の変換によって発生した炎は、普通の炎よりも物質を燃やす性質が強いそうです。

 領都の錬金術師いわく、水は気化したとき、その体積が約一七〇〇倍にも膨れあがるそうです。

 そして、もし多量の水が一気に気化した場合、その圧倒的急膨張により、凄まじい圧力が発生するそうです。

 そしてその現象は、こんな風に名づけられているのです。

 

 

 ──水蒸気爆発、と。

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