虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です   作:プラチナムウィッチ

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 ふと思い付いたネタです。
 よろしくお願いします。



プロローグ

 

 

 突然ではあるが。

 バンジージャンプをした時というのは、どういう感覚になるのかと長い間気になっていた。落下中は無重力のような感覚になるというような話は聞いた事があった。さてそれはジェットコースターの落下中と同じ感覚なのか、あるいは。

 なんて思っていたのが、意図せずながら身をもって体験する事になった。

 

「……これは困った事になりました」

 

 気が付いたら空中に放り出されている現状。見たところハーネスのようなものはなし。初めてのバンジーがヒモなしバンジーとは大胆な話だ。このままでは地面に打ち付けられてお陀仏である。

 これが最も大きい問題点ではあるが、問題はもう一つ。声と言葉だ。

 頭の中は冷静な風だが、もしもいつも通りの身体でこんな状況に陥ったなら、汚い絶叫を上げながら取り乱しているはずが、この口は冷静な口調を紡ぐ。そもそも俺の声はこんなに可愛くない。

 

「このままでは死んでしまいますね」

 

 というか、死ぬんだが!? このままだと死ぬんだが!? 意味も分からないまま死ぬんだが!? という必死の叫びまで優雅な感じに変換されてしまう始末。

 喉元に何かが引っ掛かっているようで気持ちが悪い。

 

「あ……」

 

 突然宙に放り出された挙句、声帯はおかしくなり、更には言語野までバグってしまったのだろうか。災難にもほどがある。

 だが、誰にぶつけたら良いのかも分からない恨み節を唱える前に、どこかの民家の屋根に激突した。

 

 砲弾でも撃ち込まれたような爆音と共に屋根が崩れ、それによって勢いを殺された身体がどこかのお宅の部屋に投げ出される。屋根を突き破る瞬間、人の気配はなかった。月が見えるようにお部屋を改造してしまっているので今さらではあるが、人を巻き込まなくて良かった。

 

「……身体が痛くないですね」

 

 大の字で床に転がったまま、月を見上げる。

 驚くほどに身体に異常がない。いや、声や言葉には違和感しかないが、上空から落下して無防備に着地したにしては全く身体の痛みがない。

 とはいえ状況が飲み込めなさすぎるので、一旦目を閉じて気持ちを落ち着かせる。

 

 そうしていると、ドドドッと誰かが走ってくるのが、聞こえ、しかし先ほどの衝撃でドアが歪んでしまったのか上手く開かず、しびれを切らしたのか強引にドアを破ってその人物は現れた。

 

「……アンタ何?」

「申し訳ありません。私にも何がどうなっているのか分からないのです。突然宙に放り出されてしまったものですから」

「突然、宙に……」

 

 そりゃあ、向こうからすればアンタ何という話だろう。急に人が降ってきたのだから、困惑するのも当然だ。

 ただ、こちらも困惑しているので、フォローするのも難しい。

 

「一応聞くけど、貴方わたしのサーヴァントよね?」

「サーヴァント?」

「とぼけないで。わたしが召喚したサーヴァントでしょう?」

「……少しお待ちを」

 

 この家の住民と思われるその少女からは黒髪のツーサイドアップに赤いシャツに黒いミニスカート、サイハイソックスというなかなかに属性が感じられた。

 可愛い。好みである。

 そして自分が床に転がっている関係上、ミニスカートの中が見えそうで……あ、一歩下がられた。

 

「何見てんのよ」

「いえ……ただ、見えそうだったもので」

 

 おい。めちゃめちゃ正直に言うのはどの口だ。

 というのは一旦おいておき、落ち着いてくると頭の中に色々と情報が流れ込んでくる。

 

 聖杯戦争。サーヴァント。7つのクラス。

 およそ聖杯戦争という儀式に掛かる知識がどこからともなく頭の中に流れ込み、そして理解する。そして、目の前の少女との目に見えない繋がりも。

 なるほど、つまり俺はこの少女にサーヴァントとして召喚された、と。

 

「鏡をお借りしても?」

「その前にこっちの話から済ませて。あなたはわたしのサーヴァントで間違いない?」

「ええ。どうやら、そのようです」

 

 この場にいる理由は理解した。急に上空に放り出されたのもその召喚によるものだろう。さすがに何かミスがあったのだとは思われるが、それはいいとして。

 じゃあこの声は、口調は、身体は一体何なのかという話だ。可愛いどころか自分で癖になってしまいそうな声に、勝手に出力する言葉を変換してくる声帯。そして、確認してみればシワ1つない真っ白な小さい手に、同じくシワ1つない真っ白で小さい足。少し頭を振れば、黒髪の短髪だったはずの髪は白金の長髪となっていた。しかも、衣服はポンチョのような布1枚のみ。布1枚に関しては、なぜか落ち着かないなどの不快感はないので構わないが。

 

「そ。なら良いわ。ところで貴方セイバーよね?」

「…………。そろそろ鏡をお借りしても?」

「嘘でしょ!? セイバーじゃないの!?」

 

 セイバー。つまり剣士のサーヴァント。どうやら聖杯戦争に集められる7つのクラスの中でも優れた英霊が当てはまりやすいらしい。確かに他のサーヴァントと戦う事を考えれば優れたサーヴァントがほしいだろうし、セイバーを求めるのも分かる。

 だが、残念ながら俺はセイバーではない。というか、7つのクラスのいずれにも当てはまっていない謎のクラス。

 

「てことはアーチャー……あんなに宝石使ったのに、やっぱりしくじったんだわ……」

「もし……本人を前にして、少しひどいのではありませんか?」

「あっ、そ、そうよね? ごめんなさい。鏡よね?」

 

 残念なのは分かるが、召喚された本人を目の前にしてあからさまに落ち込まれると傷付く。

 ただ、アーチャーですらないのが申し訳ないところであるが。

 

「こっちよ」

 

 少女の案内で姿鏡の前に立つ事が出来た。

 

「…………」

 

 ピラッとポンチョのような布をめくってみる。

 

「ちょっ!? 何やってんのよ、アンタ!」

 

 まぁ、薄々分かっていた事ではあるが。布1枚以外は下着も身に着けていない以上、それをめくれば色々とあらわになる訳で。そしてそこにあったのは、棒ではなくすじ一本というか。

 布から手を離して改めて正面から自分の姿を眺めてみる。

 

 長く透き通った白金の髪に、見る者すべてを魅了してしまうような美貌の少女。有り体に言うと、『Re:ゼロから始める異世界生活』通称リゼロに登場する虚飾の魔女パンドラというキャラクターそのものだった。

 

「なるほど、そういう事でしたか」

 

 思えばこんな布1枚衣装などそのままであるし、この声も釘○ボイスそのものだ。

 

「なに? 何か分かったの?」

「ええ」

 

 一番肝心な、なぜこんな姿になったのかは分からないが、ともかくとして俺の身体がリゼロのパンドラのようになったのは事実として確認した。それと、この謎の口調変換もパンドラの口調に矯正されていると考えれば理解出来る。

 

「ところで、あなたのお名前を聞いていませんでしたね」

「ああ、確かにそうね。遠坂凛よ。好きに呼んでちょうだい」

 

 いきなり超展開に巻き込まれたというのに、随分と冷静な自分がいる。思い出してみれば、落下中も心の中では絶叫とは別に考え事をする余裕があった。

 仮に今の状況が流行りの異世界転生系の亜種のような状況だとして、このパンドラの姿は転生特典なのだろうか。転生と言っても、こうなる直前に死んだ記憶はない。というより、直前の事は思い出せない。本当に死んだのかはともかく、こうなる前を前世と分かりやすく呼称しておくと、直前の事は思い出せなくとも、前世の記憶がすべて思い出せない訳ではない。リゼロの事を思い出せるのがその証拠だ。

 

 さて、身体周りの事は良いとして。

 問題は聖杯戦争というバチバチのバトル漫画的な展開に絶賛巻き込まれ中だという事だ。見た目はパンドラだが、これが見た目だけならただのか弱い美少女だ。この身がパンドラだというのなら、『虚飾の権能』がなければ困る。

 

「凛。先ほどの部屋に戻っても構いませんか?」

「さっきの部屋? いいけど、忙しいわね。色々と話し合いたい事あるのに」

「これだけ確認出来れば、あなたの話にお付き合いしますよ」

「ならいいけど」

 

 今来た道を引き返すだけだ。今度は後ろをついていくのではなく、前を歩いて天井に穴が空いて瓦礫が転がっている部屋を目指す。

 

 そして戻ってきた最初の部屋。

 お誂え向きの状態だ。もしも『虚飾の権能』があるなら、この部屋の状態を元通りにする事は難しくないはずだ。例えば、『俺が屋根を突き破って落ちてきたのは見間違えである』とか。

 

「なっ!? 何をしたの!?」

 

 思い通りだ。部屋が何事もなかったかのように、まるでコマを飛ばしたかのように一瞬で綺麗な状態に戻った。

 そして、完全に理解した。今の行使で回路が通ったように、『虚飾の権能』について完全に理解した。本物のパンドラにも劣らず使いこなせるぐらい、理解出来た。

 同時に安堵する。権能があるならまだ戦える。見た目だけのか弱いただの超絶美少女でなくてよかった。

 

「私の能力……『虚飾の権能』です」

「権能、ですって……?」

 

『虚飾の権能』があると分かれば、何の不安もない。なにせ、虚飾の魔女は生き残る事に特化した魔女。勝てるかどうかはともかく、負ける事はない。

 

 改めてマスターである少女を見る。

 ものすごい美少女ではないか。見る者すべてが震え上がるようなウルトラ美少女となった俺には敵わないが、前世の俺では釣り合わないような美少女だ。そんな美少女がマスターになってくれるなんて、幸運な事だ。

 前世の俺では釣り合わなくても、今の俺なら見た目だけであれば釣り合いも取れるだろう。いや、向こうが釣り合っていないという形で今も釣り合いが取れていない可能性はあるが、それはともかく。

 

「貴方、何者?」

「名乗るのが遅れてしまいましたね。私はパンドラ。クラス・プリテンダー、虚飾の魔女パンドラと申します。どうぞ、よろしくお願いしますね?」

 

 ──まずは手をつなぐところから。

 

 これから始まる生活の挨拶として。マスターとなる少女へと、胸に片手を当てながら軽くお辞儀をした。

 

 

 

 





 ○『虚飾の魔女』パンドラの皮を被った元男
 アーチャーの代わりにプリテンダーとして召喚された。死んだ記憶などなく、前触れなく気付いたら憑依転生?をしていた。元男子高校生ぐらい。『虚飾の権能』を扱える。
 感性が男なので普通に女の子が好き。そういう意味では当たりのマスターを引いた。次点はバゼットさん。
 エクストラクラスは通常三騎士以外のクラスの代わりとして召喚されるが、そもそも存在そのものがイレギュラーもイレギュラーなので些細な問題。
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