虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です   作:プラチナムウィッチ

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すり合わせ

 

 

「待って。言いたい事と聞きたい事が多すぎるわ」

 

 自己紹介の後、そう言ってマスターこと遠坂凛は頭を抱えてしまった。

 まぁ、分かる。そもそもクラスがよく分からないやつだし、虚飾の魔女だし、権能使ってるし。

 

「まず、プリテンダーってなに?」

「私にも詳しくは分かりませんが、恐らくは私の権能によるものでしょう」

 

 プリテンダー。すなわち詐称者。世界の事象を書き換えるという意味では、好きに世界を詐称しているとも言える。ある意味ピッタリなクラスではある。

 

「じゃあ権能。権能って、わたしが考えてる権能で合ってる?」

「あなたが考えている権能というものが分からないので、何とも言えないというのが答えですね」

「それもそうか……神代の、それも神霊の類いが行使する超常の力の事よ。でも、貴方、魔女って言ったわよね? つまりそういう事よね? 神代の魔術は権能を一部使えたりするっていう」

 

 神代に神霊。知らない単語が出てきてしまった。魔女とも言ったが、こっちの言う魔女と凛の言う魔女に齟齬があるような気がする。現代風異世界とも言えるこの世界とリゼロ世界で、世界が違う話なので仕方がないところではあるが。

 

「申し訳ありませんが、私は魔術師というものに明るくないのです。よろしければ、ご教授していただけませんか?」

 

 そもそもこちらに前提知識がないと話が涼まないので、ここはご教授願うしかない。なので、凛にはハイパー美少女笑みをお見舞いした。

 

 ◆

 

「なるほど。概要は理解しました。私とあなたでは魔女の意味は異なるようですが、権能については結果的に似たようなものだと解釈してもらって構いません」

「今はそれで納得しておくわ。それで、権能の効果は?」

「簡単に言えば、事象の書き換えです。先ほどは、私が部屋を壊したという事象をなかった事にしました」

「……とんでもないわね」

 

 凛から魔術師関係の用語や歴史を軽く説明してもらい、大まかには理解した。こちら側の話は結構ぼかして話したが。

 

「というか、貴方“あの”パンドラじゃないのね」

「ええ。パンドラの箱で有名な彼女ではありません。恐らくは、私の名は彼女の名を由来とするものでしょうが、直接の関わりはないのです」

「まぁ、これはこの際いいわ。むしろ、真名を知られても誤認させられると考えれば利点ね」

 

 聖杯戦争に関しても、概要は聖杯から知識が与えられたが、例えばサーヴァントの真名を知られたらどうなるか、などは改めて話を聞いて理解出来た。アキレス腱で有名なアキレウスなんかは、どんなに強くても自分がアキレウスだとバレたらアキレス腱を狙われてアウトだとか。

 そういう意味では、別のパンドラが有名過ぎて仮に名前がバレたとしてもそっちのパンドラだと誤認される可能性の高いこの名は、この聖杯戦争においては有利に働く。見当違いの弱点を突かれたところで痛くも痒くもないのだから。

 

「でも、バカ正直にプリテンダーで通すのもアレよね。エクストラクラスだからあと一基セイバーかアーチャーが召喚されるにしても、空白のクラスがどっちかは分からないし」

「そうですね。クラスはひとまず保留にしましょう。べつに、わざわざクラスを喧伝する必要はないのですから」

「そうね。ひとまずは保留で、あと一基がセイバーならアーチャー、あと一基がアーチャーならセイバーって事でいくわよ」

「了解しました。では、今日のところはお休みにしましょうか」

 

 夜に長時間話してしまった。夜ふかしはお肌の敵なんて聞くし、可愛いマスターには可愛いままでいてほしいのだ。

 

「分かったわ」

「それでは、私が布団を温めておきますので」

「ちょっと待て」

 

 添い寝作戦は失敗した。

 

 ◆

 

 サーヴァントというものは肉体が魔力でできているからか、霊体化する事が出来る。霊体化している間は周りからは見えず、よほど濃い魔力で編まれた壁でもなければ物体を通り抜けられる。また、霊体化している間はマスターの負担が減る。サーヴァントを現界させておくにはマスターからの魔力供給が必要で、それが霊体化している間は必要な魔力量が抑えられるのだ。

 ただ、俺が現界するのに必要な魔力に関しては、凛が寝ている間の検証によって『虚飾の権能』で誤魔化せる事が分かったので、気にする必要はない。つまり、実体化し放題という訳だ。霊体化しているのはちょっと落ち着かないのでこれは助かった。

 

『虚飾の権能』。

 リゼロの原作でその全貌が明らかになっていない以上、正確な事は分からないが、思った以上にやりたい放題出来そうな能力だ。他の人が持っていたらと思うとゾッとする。

 

 確認したい事は確認出来たので、凛の寝室に向かう。

 お布団温めておきます作戦は失敗したが、俺は諦めない。

 

 ゆっくりと扉を開けて、顔だけ出して中の様子を伺う。凛はちゃんと寝ているようだ。

 音を立てないように部屋に入り、ベッドに近付く。規則正しい寝息が感じられて、大変に唆るものがある。

 凛の顔の近くに手を伸ばし、軽く振ってみる。反応はない。

 

「ますたー」

 

 小声で話し掛けてみる。やはり反応はない。

 

「寝ているのですか?」

 

 今度は耳元に口を近付けて。釘○ボイスのASMRだ。だが、やはり反応はない。

 

 英霊召喚の儀式で疲れたのだろう。無理もない。

 左胸の辺りにあるリボン結びにしている青いひもを解くと、パサリとポンチョのような布が床に落ちた。魔力で構成された布が粒子となって大気に溶ける。

 

 この身体になってから、前の身体と全然違うものがいくつかある。権能はもとより、そもそも性別が男から女になっているし、勝手に言葉が丁寧な感じに変換される。

 大きなところを言えばこの辺りだが、1つ認識の違いというか、感じ方の違いというのがある。それは、全裸でいると落ち着くというものだ。

 俺は露出狂ではない。身体がパンドラになった影響だろう。リゼロでは、パンドラが布1枚しか纏っていないのはありのままの姿で他人の愛を感じたいからとかそんな感じだと言われていた。本当は全裸でありたいが、他人に配慮して布1枚を纏っているとか。俺にそんな性癖はないが、恐らく身体に引っ張られる形で全裸なら落ち着き、着込んだら落ち着かないというような事になっているのだろう。

 まぁ、これが汚いオッサンだったり、あるいはイケメンでもちょっと個人的に嫌だが、幸いにして今の身体はウルトラ美少女。他の人が全裸を見たとしても、もはや芸術作品とすら感じられるのではないだろうか。

 

「失礼します」

 

 布団の中に潜り込む。

 相変わらず規則正しい寝息はそのまま。

 ちなみにではあるが、サーヴァントは食事や睡眠といった人間に不可欠な生理活動を必要としない。その気になれば、意図的にその機能をオフにする事が出来るのだ。が、意図的にオフに出来るというのは、逆に言えばオンにする事も出来るということ。

 

「あなたの事を理解したいのです」

 

 なんてね。

 添い寝作戦その2、成功。

 では、お休みなさい。

 

 ◆

 

 朝、目が覚めた。

 一度、目覚ましの音によって目が覚めたが、凛は眠ったままであったので二度寝。何にも邪魔されず、日の光によって自然に目が覚めるのは気持ちがいい。

 隣に目を向けてみると、マスター様は相変わらず寝息を立てていた。時計を見ると、既に9時を過ぎている。目覚ましをスルーした時から分かってはいたが、凛は寝坊助らしい。可愛いからいいけど。

 

「朝ですよ」

 

 ほっぺに人差し指で触れてみる。

 普通、初対面の人間が布団の中に潜り込んできて、こんな事をしていたら事件だが、俺はサーヴァント。サーヴァントは使い魔、つまりはペットみたいなもので、ペットなら同じ布団で寝ていても、こうしてスキンシップをしていてもおかしくない訳である。

 

「んぁ…………ぉ」

 

 あ、指がズボッと口の中に入ってしまった。

 なんだか、イケない事をしている気分。

 

「…………ぁぇ?」

「おはようございます」

 

 パチッとまぶたが持ち上がって目があったので、ひとまず挨拶をしておく。

 

「おや。混乱じているようですね」

「…………?」

 

 何やら状況を読み込めていない様子。可愛いのでもう少し観察してみる。

 

「────!?!?!?」

「あら」

 

 ようやく飲み込めたのか、声にならない声を上げながら飛び上がり、布団から飛び出した。

 

「な、な、な……なんでアンタがいんのよ!?」

「私はサーヴァントなのですから、マスターを護衛するのは当然というものです」

 

 と、言い訳をしてみる。

 

「護衛って、一緒の布団に入ってたら護衛もクソもないでしょうが──!!」

 

 それはそうだ。そばに控えるならまだしも、一緒に布団に入ってしかも寝ていては、急に襲撃などされても対応出来るはずもない。

 

「目も覚めたようなので、朝食としませんか?」

 

 必殺、論点ズラし。

 お腹が空いた訳ではないが、それはそれとして、食事は娯楽という言葉もあるように生活を豊かにする要素の1つだ。サーヴァントではあるが、食事は出来るので、せっかくなら楽しみたい。

 お金持ちそうな家なので、どんな朝食を食べているのかも気になるし。

 

「はぁ……もういいわ。朝から疲れる」

「ええ。では朝食にしましょう。楽しみにしていますよ」

「…………」

「どうしましたか?」

「アンタ、サーヴァントよね? つまり使い魔」

「その通りです」

「使い魔なら主の手足となるべきよね?」

「ええ」

「なら朝食任せたわ。ま、と言っても紅茶だけ淹れてくれればいいから」

「…………」

 

 今の気持ちをどう言い表すべきか。この期待を裏切られたようなこの感覚。

 

「なによ。不満?」

「いえ……」

 

 親愛なるマスター様の言う事は出来る限り聞きたいとは思っているが。下心がないとも言わないが。

 不満というか、がっかりというか。まぁ、仕方ない。とりあえずやってみて、お前には任せられないと思われる形に持っていく方針でいこう。紅茶の淹れ方なんて知らないし。

 

「期待はしないでください」

「というか、アンタなんで裸なのよ。人の布団で」

 

 布団から出た俺を見て、凛は呆れたように言った。起きたら隣にいた事と全裸で寝ていた事なら後者は騒ぎ立てるほどの事ではないらしい。良い事だ。

 

「これが落ち着くのです。心配しなくても、外に出る際は配慮しますよ」

「家の中でも何か着なさいよ」

「一方的にお願い事を聞くのは不公平ですし、凛も私のお願い事を聞いてくれませんか?」

「お願い事?」

「ええ。そうですね……」

 

 サーヴァントという使い魔の一種ではあるが、こっちにも意思があるので、一方的に言う事を聞くだけの関係は不健全だと思う訳だ。

 とはいえ、言ってみはしたものの、これといったお願い事がある訳でもない。いや、本音を言うと色々あるが、時期尚早というか、弁えている。

 

「では、街を案内してもらえませんか?」

「それぐらい、後でやろうと思ってたから構わないわよ」

「ありがとうございます。楽しみにしておきますね」

 

 聖杯戦争のために下見は大切だ。ただ、こっちにとってはそれがデートになるというだけの話で。

 

「って、だから服着ろって言ってんでしょ──!!」

 

 そのまま寝室を出ようとすると、凛に赤いシャツを投げつけられた。洗濯済かもしれないが、少し前に着ていた服と考えるとちょっと興奮する。

 

 ◆

 

 朝食という名の紅茶を飲んだ後、凛は学校を休んで案内をしてくれる事になった。今日はどうやっても遅刻なので休むらしい。紅茶に関しては眉をしかめていたので、次からは自分でやってもらいたい。

 

「ちゃんと着たわね?」

 

 案内してもらう間の服装に関して、霊体化せずに歩きたいと言ったら凛のコーディネート通りの服を着る事を条件にされた。あの布1枚では、痴女だと思われてしまうらしい。

 

「ええ。この通り」

 

 凛も一応こちらの事を考えてくれたらしく、真っ白なワンピースという言ってしまえばポンチョと似たような感じの服を選んでくれた。

 手を広げてみせると、凛は俺の首元に指を入れて胸元を覗き、そして裾をつまんでめくった。

 

「ちゃんと下着も渡したでしょうが……」

「この身体は起伏に乏しいですし、生地も比較的厚いので、そうして覗かない限りは見えませんよ」

 

 あと、さすがに上はともかく下を履くのはアウトな気がした。

 

「はぁ……。もうそれでいいわ。行くわよ」

 

 呆れたように玄関を出る凛の後ろに続く。

 

「ちょっと、靴」

「…………」

 

 裸足のまま出ようとすると、止められた。

 

「……私はサーヴァントですから、汚れは気にする必要はありませんよ」

「今の間は、そういう問題じゃないって分かってるんでしょう?」

 

 わざわざワンピースを着たのは、元の格好が柔らかく言えば変な格好で、一緒にいる凛まで変な目で見られるからだ。そういう意味では、隣に裸足で歩いている女がいれば、必然的に凛にも目がいく事になる。

 分かってはいる。が、こっちもボケている訳ではない。

 前世ではなんてことはなかったのに、なぜか普通のものでも異常に締め付けられているような感覚になって不快なのだ。靴もそうで、普通の締め付けなんて全然ない靴でも、めちゃめちゃ締め付けられているような感覚になって嫌だ。下着類もそういう理由で着けたくない。

 

「…………」

「なによ、そんなに嫌なの?」

 

 うなずく。

 そもそも、原作のパンドラにそんな設定はないはずで、全身で他人を感じたい云々というのが身体に引っ張られてどうこうと予想は立てたものの、落ち着く落ち着かない以上に、こうも不快感を覚えるとなるともはや呪いか何かなのではないだろうか。

 

「子供じゃないんだから…………分かった、分かったわよ。足元は魔術で視線が集まりにくいように誤魔化すわ。それでいいでしょ」

「さすがはマスター。頼りにしています」

 

 泣き落とし作戦、成功。

 

 という事で、街へレッツゴー。

 

 ◆

 

 この地は冬木市という場所らしく、冬木市は新都と深山町に分かれていて、この2つは冬木大橋という橋によって繋がっている。凛の家があるのはこのうち深山町だったため、冬木大橋を通って新都へ。そして色々と案内してもらって、目についたショッピングモールに入って、いつの間にか夜になっていた。

 

「貴重な経験をさせていただきました」

「遊びに来たんじゃないわよ!!」

 

 普通に楽しくなってしまったのはご愛嬌。

 前世はこの年代よりも未来の世界を生きていたが、そういう年代の違いも相まって興味深いものも多かった。

 ゲームセンターなんかは、当然ながら昔のゲームばかりだったが、太○の達人とか知っているものもあって楽しかった。

 

 





 ○パンドラ
 寝る時は全裸派。なんなら制限がなければ出歩く時も全裸派。さすがにアレなので白ワンピース一枚だけ着て街を案内してもらった。
 元は令和の高校生だったので、2000年代の街は新鮮。

 ○遠坂凛
 セイバー狙いだったのにハズレを引いたかと思いきや、なんかとんでもないのを引き当てた。
 権能……?事象の改変……?ヤバい事が目の前で起こっている気がする。考えないようにしよう。
 
 
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