虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です   作:プラチナムウィッチ

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 今回は少し長めになりました。



開戦

 

 

 夜。遊び(街案内)の帰り道。

 街を見渡せるという事で、高いビルの屋上に来ていた。

 

「ここからなら街が見渡せるでしょう?」

「ええ。綺麗な夜景ですね」

「そうじゃなくて…………もうそれでいいわ。とにかく地形は覚えること」

 

 個人的に、大体の夜景は綺麗だと思うが、例に漏れずここから見える夜景も綺麗なものだった。凛はこれも聖杯戦争に活かそうとしているようだが、残念ながら遊び気分のこの頭にはあまり入ってきそうにない。

 

「そういえば、聞いていなかったのですが」

「なに?」

「聖杯が手に入ったとして、何を望むのですか?」

 

 と、考えながらも聖杯戦争の話。

 とはいえこれは戦略とかではなく、単純な疑問だ。聖杯戦争というだけあって、最後に勝ち残った者には聖杯が与えられる。その聖杯は願いが叶う願望器らしい。

 わざわざ聖杯戦争に参加するという事は、何かしらの願い事があると考えるのが普通だろう。

 

「望み? そんなもの別にないけど」

「はい? それでは、どうして聖杯戦争に参加しようと考えたのですか?」

「そこに戦いがあるからよ」

「それはそれは……」

 

 さすがは我がマスターだ。バトル漫画みたいな事をおっしゃる。

 

「『剣聖レイドは龍を前に剣を抜いて笑う』という事ですね」

「なにそれ。アンタの時代の慣用句?」

「そのようなものです」

「どういう意味なの?」

「強敵を前にしても一歩も引かないという意味ですよ」

 

 実際は近付いてはいけないやばい人を表す言葉だったが、まぁ、聖杯戦争という殺し合いに自ら進んで参加しているのだ。あながち間違ってはいないだろう。

 

「ふぅん。それで、アンタはどうなのよ?」

「どう、とは?」

「願いよ、願い。召喚に応じたって事は何かあるんじゃないの?」

 

 そう言われても困ってしまう。なにせ、こっちは召喚に応じたつもりなんてないし、そもそも俺は正規の英霊ではなく、この身体も自分のものではない。

 気付いたら既に召喚された状態だったため、願いがあるから召喚に応じたという訳ではないのだ。

 

「いえ、これといったものは。そうですね……お金などどうでしょうか」

 

 何でも願いが叶うなら、大金持ちになるとかもアリだろう。シンプルにお金があったら大抵の事は出来るようになるし。

 

「どうしましたか?」

「いえ、別に。どうせ貰えるなら貰っておいてもいいかと思っただけよ。魔術ってお金掛かるから」

 

 切実な願いのようだった。あんな大金持ちっぽい家に住んでいても困るぐらい、魔術はお金が掛かるのだろうか。思っていたファンタジーな感じのものよりもかなり現実的な話が絡んでいるらしい。

 

「それでは、どこかで夕食を済ませてから帰りましょうか」

「なにしれっと外食する気でいるのよ」

「いけませんか?」

「いいけど……なんかこう、図々しいわねぇ……」

「今更ではありませんか?」

「……ええ。今更ね。ちょっとぐらいしおらしくしたらどうかしら」

「では、手を。手を繋いでくれたなら、少しの間しおらしくしているとしましょう」

「アンタ調子乗ってるんじゃないでしょうね? 言っておくけど、こっちには令呪があるのよ?」

 

 少し調子に乗りすぎたかもしれない。

 令呪はサーヴァントへの絶対的な命令権として使用出来る、赤い入れ墨のような紋章だ。3回だけではあるが、普通の人間よりも強力な力を持つサーヴァントに言う事を聞かせる事が出来る。恐らく、あんな事やこんな事も命令出来るはずだ。お仕置きとか言って。

 

「もしや、私の身体にご興味が? それならば令呪など使わずとも構いませんよ。ああ、いえ。もちろんそういうプレイだというのなら、喜んで受け入れますが」

「なっ……んで、そうなるのよ……!」

「おや、違いましたか?」

「違うに決まってるでしょ!!」

「お仕置きだと言って、両手を上に上げた状態で動くな、のような」

「アンタ、本気で令呪使ってその口ふさぐわよ!?」

 

 令呪を使われると、本気で口を縫い合わせたような感じにされそうだ。まぁ、『虚飾の権能』を使えばどうにでもなりそうではあるが。

 

「はぁ……。行くわよ、プリテンダー」

「パンドラと、そう呼んでくれて構わないのですよ」

「はいはい。考えておくわ」

 

 そうして、レストランで夕食を済ませた後、凛の家へと帰った。

 

 ◆

 

 翌朝。

 

「綺礼? 昨日サーヴァントを召喚したから正式にマスター登録お願い。クラス? 別に何でもいいでしょ。それじゃ、気が向いたらお邪魔するからよろしく」

 

 そんな風に凛が聖杯戦争の監督役に電話を掛けているのをそばで眺める。どうやら以前からの知り合いらしく、一方的に言うだけ言って通話を切ってしまった。

 

「今日はこのまま学校へ?」

「そうね」

「今日は遅刻せずに起きる事が出来て良かったです」

「アンタがちょっかい掛けてこなければ、もっと気持ち良く起きられたのだけれど」

 

 今はまだ学校へ向かうのに余裕がある時間だった。既に凛は制服に着替えており、通学する準備は万端だ。

 今日の凛はちゃんと目覚まし時計の音で目覚めた。それと同時に俺も目が覚めたので、隣でおはようの挨拶をしたが、昨日のような激しい動揺は見られなかった。慣れというものだろう。

 ちなみに、紅茶は凛が淹れてくれた。やっぱり自分で淹れるよりも美味しかった。

 

「それにしても、学校ですか。私も通ってみたいものですね」

「馬鹿言ってないで、行くわよ。霊体化して」

「私は見えない方が良いという事ですね。悲しい事です」

「学校で見えてた方が問題でしょうが」

 

 学校自体はどうでも良いが、それが凛と通えるとなると喜んで通うというものだ。

 霊体化するのは好みではないが、これに関しては仕方ない。『虚飾の権能』がある以上、仮に凛が奇襲を受けて怪我をしたとしてもなかった事に出来るため、常にそばで護衛する必要はないが、かと言って留守番をしていてもやる事はない。お金がないから、外出してもという感じだし。

 

 結局、霊体化して凛の後ろについていく形で学校には乗り込んだ。

 

 授業中は教師の話を聞いていても面白くないので、適当に歩き回って学校を探検した。俺も学校自体には通っていたが、自分が通う学校とそうでない学校ではまるで別物だ。部活動の練習試合で他校を訪れた時は別世界に来たようで興奮や感動があった。

 そして、練習試合で訪れる他校では入れる場所が限られているので、霊体化していて周りからは見えない事を利用して今はどこでも入る事が出来る。

 校長室や放送室なんて自分の学校でも入る機会はほとんどないし、特に興味深かったのは部活動関係の施設だ。特に弓道場。実際に見たのも入ったのも初めてで、結構テンションが上がった。

 

「気付いたでしょ? この学校を覆っている結界」

「結界、ですか?」

「呆れた……こんなに分かりやすい結界にも気づいてなかったの? 空気が淀んでいるなんて話じゃないってのに」

「ああ、これは結界の影響でしたか。そういう土地柄かと」

「そんな土地柄あってたまるかっての」

 

 確かに空気が悪いような気はしていたが、人が多くて二酸化炭素が多いとか、そういう話かと思っていた。どうやら違ったらしい。

 

「ともかく、放課後は結界を調べるわよ。どんな結界かを調べてから、消すか残すか決めるわ」

「残す選択肢もあるのですか?」

「放っておいても問題ないなら術者をあぶり出すのに使うのよ」

「なるほど」

 

 恐らく魔術師の仕業なのだろうが、その魔術師が聖杯戦争に参加するマスターの可能性もある。こっちも警戒しておいた方が良いだろう。

 改めてではあるが、これは戦争、つまり殺し合いだ。しかも、俺はサーヴァントという矢面に立たせられる立場。『虚飾の権能』がある以上、苦しみながら死んでいくなんて事にはならない。戦闘によって負った傷も、そもそも痛いという事実自体ないものと出来る。ただ、だからといって怖くないかといえばそんな事はない訳で。

 一応、サーヴァントに効くかどうかの実験などと言って、昨日夕食を摂って帰宅後、凛に俺を攻撃させた。神秘の濃さがどうとかで普通の攻撃だと通じなかったが、凛が長い間魔力を込めたというなんとか剣であれば、その神秘の守りを突破出来た。そして、普通のサーヴァントでも痛覚はあるが、その時に権能で工夫する事で、傷をなかった事にする前から痛みを感じないようにする事が出来た。

 なので、やられる心配も、痛い思いをする心配もないといえばない。ただ、セイバーなら剣、アーチャーなら弓といった武器を持っているだろうが、俺にはそれがなく、かといって素手で戦おうにも武道に関してはズブの素人。しかも、見て分かるぐらいの細い手足に細い身体。攻守で言うところの守り側は大丈夫だが、攻め側が貧弱だ。

 権能でどうにか誤魔化しながらやるしかない。こればっかりはやってみないと分からない事も多いので、出来れば初戦の相手は大した事のないサーヴァントであってほしい。

 

「ところで、マスター? 私の昼食はどこでしょうか」

 

 とまぁ、真剣な話は置いておくとして。

 今は昼休み。場所は校舎の屋上、凛以外の人間は周囲にいない。しかし、凛の手の中にある、学食で買ったであろうサンドイッチは一人分。

 

「ある訳ないでしょ? そもそも貴方、今は霊体化しているから食事なんていらないのだし、一人のはずのわたしが二人分のサンドイッチを買っていたら不自然じゃない」

 

 ガーン。

 思わず実体化する。

 

「ちょっ!? 誰かに見られたらどうするの!」

「私は悲しいです。毎食、共に食す時間を楽しみにしているというのに」

「あーもう! 半分あげるから、それでいいでしょ!」

「いえ、それは凛の分ですから。私は我慢します」

「どっちなのよ、アンタ!」

 

 紅茶だけという場合もあるが、召喚されてから毎食を共にしているため、今も何か昼食があると勝手に期待していたら裏切られた形だ。

 まぁ、ここは学校でもあるし、半分は冗談みたいなものだ。

 

「では、私は引き続き学校を探索していますので、放課後に合流しましょう」

 

 そう言って、再び霊体化。

 まだ見ていない方向へ足を向けた。

 

 ◆

 

「これで7つ目か……とりあえずはここが起点みたいだけど、こんな文字見た事も聞いた事もない。わたしの手には負えないわ。邪魔するぐらいならともかく、根本的な解決にはならない」

「それでは、放っておくのですか?」

「放置も出来ないわ。これは魂喰い。内部にいる人間を溶解させて、魂を集める結界よ。魔術に通じた人間ならまだしも、一般人が標的にされるとひとたまりもないわ」

「魂を集める、ですか。それはそれは」

 

 放課後。学校を捜索したところ、結界を形成している呪刻という魔法陣のようなものをいくつか見つける事が出来た。とは言っても、見つけたのは凛で、俺はただ後ろについていただけではあるが。

 つい先ほど見つけた7つ目の呪刻は、昼休みに屋上に訪れたものとは別の校舎の屋上にあった。魔術に詳しくない俺には全く分からないが、どうやらかなり物騒な結界だったらしい。

 

「魔力を集めてサーヴァントに渡そうとでもしてるんでしょうね」

「魔術師ではない人間からでも魔力を集められるものなのですか?」

「魔力といっても生命力みたいなものだから、魔術を知らない一般人にもあるわ」

「そうでしたか」

 

 恐らくこの結界は学校中を覆っているだろう。日中にその効果が発動されてしまえば、ここに通う生徒や教師たちはみんな死んでしまうというのは、想像に難くない。

 

「無駄だろうけど、邪魔をするぐらいなら出来る。呪刻から魔力を消して……」

「──なんだ、消しちまうのか?」

 

 と、意識外から割り込んできたのは男の声だった。

 声の聞こえた方を見れば、そこにいたのは全身タイツのような青い装束に身を包み、手には赤い槍を携えた青髪の男だった。サーヴァントとしての感覚で、その男もサーヴァントだと分かる。槍を持っているのでランサーだろうか。

 

「……これ、貴方の仕業?」

「いや? 小細工を弄するのは魔術師の役割。オレたちはただ命じられたままに戦うのみ。だろう? そっちのお嬢ちゃんよ」

 

 実体化した俺がそばにいるからか、即座に逃げるのではなく、会話を始める凛。だが、その推定ランサーはこちらに視線を向けてきた。

 

「ええ。その通りです」

 

 一応、反応しておく。

 

「サーヴァントよね」

「ですね」

 

 隣から耳打ちされたので、こちらにも返しておく。

 自分もサーヴァントだからか、相手がサーヴァントかどうかはなんとなく感じ取る事が出来た。

 

「さて、と。セイバーか、アーチャーか」

 

 くるくると手元で槍を回し、こちらを見定めるように近付いてくる男。槍を持っているからランサーとしておくが、どう見てもこれから戦う流れだ。

 槍というリーチが長い武器に素手で挑む事の不利は素人の俺にも分かる。アーチャーやキャスターといった、それ以上に射程の長い相手でなくて良かったと見るべきか、あるいはアサシンかライダー辺りのまだやりやすそうな相手でなくて残念と見るべきか。

 

「得物を出すぐらい待ってやる。剣でも弓でも出しな」

「……困りましたね。弓道部から弓を借りてくるというのはどうでしょうか」

「いい訳ないでしょ。武器がないなら拳よ、拳」

 

 そりゃあ、武器がないのだから殴る蹴るでいくしかないのだが、それにしてもいくらか脳筋な気質が見え隠れしているような感じがするのは気のせいだろうか。

 

「仕方ありませんね」

 

 とりあえずファイティングポーズをとって腰を少し落としてみる。

 

「そっちがその気なら、オレは構わないぜ」

 

 どの道、純粋な戦闘技術で隙を突くなんて出来ない。権能を使って不意打ちを狙うしかないだろう。

 

「あん?」

 

 正面から突撃し、真っ直ぐ突き出される槍をなんとか横に避けたまでは良かったが、その直後に槍を薙ぎ払われ、思い切り攻撃を受けてしまった。

 布1枚など容易に切り裂かれ、血が噴き出す。権能の誤魔化しのおかげで痛みはない。その場に崩れ落ちる。

 

「おいおい、冗談だろ?」

 

 向こうからすれば、小手調べで相手が死んだというような感覚だろう。冗談だと思うのも無理はない。その答えを聞くためか、目線は凛の方へと移る。当然ながら応える事はない。

 凛にはあらかじめ伝えているため、表面上の動揺は少ない。少ないだけで、ない訳ではないのは曲がりなりにも自分のサーヴァントがやられる光景を見たからだろう。見ようによっては、動揺を表に出さないように気丈に振る舞っているようにも見える。

 

「期待外れにも程が──」

 

 今だ。

 完全に一瞬、こちらから意識を離したこの瞬間。

 

 権能で攻撃を受けた事実をなかった事にし、背後から首に思い切り飛び回し蹴りを打ち込んだ。

 

「これでやられてくれれば良いのですが」

「さすがね。わたしも一瞬本気でやられちゃったかと思ったわ」

「ご安心を。私がやられる事はありません」

「ええ、安心したわ。でも、これぐらいじゃアイツもやられてくれないでしょうね」

 

 さすがは自分もサーヴァントと言うべきか、普通の人間ではあり得ないようなパワーが出た。あの男は落下防止の柵を飛び越えて、グラウンドの方へ落下していった。

 ただの人間なら即死だが、向こうもサーヴァント。この程度では死なないだろう。

 

「追うわよ。着地任せるわ」

 

 そう言って、凛は俺の背中に覆いかぶさるように体重を掛けてきた。おんぶ待ちの状態だ。

 このままでも背中の感触が大変に幸せだが、安全を考えるとおんぶでは少し不安だ。

 

「後ろよりも前の方が良いですよ」

 

 背中と太ももの裏に腕を当てて抱き上げる。お姫様だっこの形だ。

 

「しっかり掴まっていてください」

 

 首に回された腕に力が籠もった。

 一歩で柵を越え、グラウンドへと跳ぶ。

 正直に言うと、屋上から飛び降りるのは前世の感覚から言って普通に怖かったが、そもそも召喚直後に上空から無防備に落下しても無傷だったこと、たった今人外の身体能力を発揮出来たこと、何より最悪虚飾の権能でどうとでもなることが、恐怖心を上回った。

 

「着地しますよ」

 

 土の上に着地する。膝のバネや腕の動きで極力掛かる衝撃を軽減した。

 

「やってくれるじゃねぇか。幻術の類いか」

 

 そこには、コキコキと首を鳴らすランサーがいた。頑丈さも人間離れしているという事だろう。サーヴァント間でも耐久力に差はあるだろうから、仮に俺がランサーに同じような蹴りをやられたとすると、こんな風に無傷でいられるかは分からない。

 その辺りは個人差というか性能差だろう。結局、権能があるから関係ないが。

 

「もし……『何かの見間違え』ではありませんか?」

 

 そう、見間違えだ。幻影などではない。

 

「いいぜ。この眼、騙し切れるならやってみな」

「見間違えと、そう言ったのですが」

「言ってろ!」

 

 槍が赤い光となって、一直線に心臓に吸い込まれる。

 見えてはいる。サーヴァントの視力によって見えてはいるが、それと避けられるかは別問題だ。呆気なく背中から槍が飛び出し、血を振り払うかのような動作で、身体が地面に投げ出された。

 

「コイツも幻か? ご丁寧に内臓まで再現しやがって。どんだけ精巧な……」

「おや、ご自慢の目もどうやら曇ってしまっているご様子」

「チィッ……!」

 

『虚飾の権能』で槍を受けた事実をなかった事にし、頭上からの全力踏みつけ。しかし、ランサーの身体が首だけ残して地面に埋まる、なんて事はなく。

 槍で防がれ、ランサーに膝をつかせる事も出来ない。追撃として、槍を足場にしてサッカーボールキックを放ってみるも、それは避けられた。

 やっぱり完全に虚を突かないとダメみたいだ。

 

「お前なぁ……そんな風に戦うならもうちょい格好ってもんを考えろよ……」

 

 仕切り直し、槍を肩に担いだランサーが言った。

 

「おや、もしや私の身体にご興味が? 気にせずとも、満足するまで眺めてくれて構いませんよ。ええ、興奮を隠す必要はありません」

「誰がガキの身体に興奮するか」

 

 男に興味はないが、男が女体に興奮するのは分かる。こちらは気にしないので、見てくる分には構わない。むしろ、少しぐらいサービスしてあげてもいい。

 だというのに、この男。言うに事欠いてガキだとか興奮しないだとか、何たる失礼な。身体の起伏に乏しいとはいえ、凛と同じぐらいの身長はある(ちょっとだけ誇張)し、この魔女の美貌は見る者すべてが震え上がるほどのものであるはず。

 

「怒らせたか? そりゃ悪かったな。だが、そういうのはもっと大人の女になってからやるもんだぜ」

「失礼な方ですね。マスターもそう思いませんか?」

「アンタも大概でしょうが」

 

 なんだか、心情的に凛が一瞬向こう側についたようで悲しいところだが、色々と心当たりがあるので文句は言えない。

 

 と、一瞬気の抜けたような空気にはなったが、依然として戦闘中。これを正攻法と言って良いのかは分からないが、このまま今のままの正攻法で攻め続けても無駄に時間を消費するだけだろう。

 

「マスター。自由に使役出来るサーヴァントが増えると便利だと思いませんか?」

「サーヴァントが、増える?」

「ええ。上手くいけば、ランサーを駒に出来るかもしれません」

 

『虚飾の権能』に出来るのは、傷をなかった事にするだけではない。やり方によっては、相手の認識を書き換えたり、それこそ洗脳のような事だって可能だ。それが上手くいけば、サーヴァントという駒を増やせるかもしれない。前衛で戦ってくれる駒が増えると助かる。

 

「貴方のお手並み、見させてもらうわ」

「ええ。では……」

 

 と、ランサーに近付こうとした瞬間、少し離れたところから物音が。

 

「誰だ──!」

 

 ランサーが反応する。

 そして臨戦態勢から一転、霊体化して離れていった。

 

「逃げられてしまいましたね」

「ランサーはどこに行ったの!?」

「たった今、物音が聞こえた方向です」

「追って! きっとこの学校の生徒だわ!」

「ええ、了解しました」

 

 恐らくは目撃者の口封じだろう。凛から、魔術師として神秘の秘匿がどうとかいう話を聞いた。魔術は一般人には隠さなければならないらしい。

 サーヴァントなんて魔術の塊みたいなものであるし、一般人には知られてはならない存在だろう。俺なら権能で記憶の改ざんも出来るだろうが、ランサーに同じような事が出来るか分からない。手っ取り早く殺すという手段を取りそうだとは思う。

 

 無駄な犠牲はこちらも望むところではないので、走ってランサーを追いかけて、校舎の中に入る。だが、ランサーの方が余裕で足が早いので、追い付くのは難しい。

 

「申し訳ありません。どうやら、間に合わなかったようです」

 

 結局、ランサーに追い付く事は叶わず、そこに見えたのは血を流し倒れた男子生徒だけだった。

 

 





【CLASS】プリテンダー
【真名】パンドラ
【性別】女
【出典】『Re:ゼロから始める異世界生活』
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力E 耐久EX 敏捷E 魔力EX 幸運EX 宝具EX
【保有スキル】対魔力E 単独行動EX 領域外の生命EX 魅惑の美声EX
【宝具】『虚飾の権能』 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

・筋力
 あまり強くない中で頑張っている。
・耐久
 あらゆるダメージをなかった事にして戦闘続行可能。権能により評価規格外。
・敏捷
 あまり素早くない中で頑張っている。
・魔力
 保有魔力(容量)自体は並だが、どれだけ使っても尽きる事はない。権能により評価規格外。
・幸運
 運命を好き勝手に捻じ曲げる。権能により評価規格外。
・宝具
 権能そのもの。評価規格外。

・対魔力E
 おまけ程度の対魔力。
・単独行動EX
 マスター不在でも行動出来る。権能により魔力の消費そのものをなかった事に出来るため、マスターからの魔力供給がある状態と全く変わらないパフォーマンスを常時発揮する。権能も使いたい放題。
・領域外の生命EX
 完全なる別次元に存在する魔女。地球の存在する「この宇宙」を支配する法則とは全く別の摂理を有する。
・魅惑の美声EX
 普段は抑えているが、権能が組み合わさり男女問わずあらゆる人間に対して魅了の魔術的効果として働く。対魔力を持っていようと、抵抗する意思を持っていようと回避する事は出来ない。 

宝具『虚飾の権能』
・ランク:EX
・種別:対界宝具
・レンジ:-
・最大捕捉:-
 自らの好きなように事象を書き換える。世界そのものへの干渉であり、他者が抗えるものではない。死をなかった事にする、認識を書き換えて洗脳するなど様々な事が行える。常時発動しているため、不意打ちで殺してもなかった事になる。また、存在そのものがこの宇宙と異なる法則を持つため、抑止力が及ぶ事はない。


 
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