虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です   作:プラチナムウィッチ

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真夜中の教会

 

 

「──っていうのが、聖杯戦争。わかった?」

 

 ところ変わって衛宮邸居間。セイバーのマスターとなった衛宮士郎に対して凛が聖杯戦争の説明をしていた。

 どうやら衛宮士郎は聖杯戦争について知らないままセイバーを召喚したらしい。望まずに殺し合いに巻き込まれたのは同情するが、ランサーに狙われていた中でセイバーを召喚出来たのは不幸中の幸いだろう。

 

「ああ、言葉の上だけでなら」

 

 そして、俺はというと、セイバーにお茶を出していた。

 

「どうぞ。お口に合うかは分かりませんが」

「頂きましょう」

 

 ずずずと自分も啜ってみる。

 

「苦いですね。実は少し前に紅茶を淹れた際も失敗してしまいまして」

「確かに少し苦いですが、失敗というほどではない」

「お優しいのですね。思わず心が踊ってしまいそうです」

 

 交流の一環としてお茶を淹れてみたが、どうにも上手くいかなかった。

 

「って、アンタは何やってんのよ!?」

「セイバーとの親睦を深めていたのですよ」

「しかもそれ衛宮くんの家のでしょ!?」

「私は先ほどセイバーに切り刻まれてしまった訳ですし、これぐらいは頂いても良いのではないでしょうか」

 

 凛からツッコミが飛んでくるものの、こっちにも言い分はある。

 確かに衛宮士郎のものを勝手に使ったが、散々斬ってくれた慰謝料と考えれば安いものだろう。斬ってきたのはセイバーだが、衛宮士郎はそのマスターなので、責任も衛宮士郎のものだ。

 

「あんまり熱いお湯で淹れると苦くなるから、それが嫌ならちょっと冷ましたお湯を使った方がいいぞ」

「なるほど、そうでしたか。勉強になりました」

 

 どうやら本人は気にしていないらしい。それどころかアドバイスまでくれた。

 

「何これ、わたしがおかしいワケ!?」

 

 おかしいかおかしくないかで言えは、おかしい寄りではあると思う。そもそも聖杯戦争なんていう殺し合いに自ら飛び込む時点で、他人の家のお茶を勝手に飲む以上にヤバい奴であるし。

 まぁ、口には出さないが。こっちもサーヴァントなどという変な存在だし、可愛いからそれで構わない。

 

「マスター、彼への説明は終わりましたか?」

「……ええ、大体はね」

「では、帰るとしましょう。夜ふかしはお肌の天敵だと言いますし」

「待って、アーチャー。その前に教会に行くわ」

 

 貰い事故的に聖杯戦争に参加する事になった、右も左も分からない衛宮士郎に説明してあげるのは親切心からだろうし、それぐらいは良いと思うが、さすがにこんな夜遅くに男の家に上がり込んでいるというのはあまりよろしくない。家まで知っていたし、あんまり仲良くされるのも面白くない。

 という事で早々に帰る事を提案したのだが、待ったが掛かった。

 

 ちなみにではあるが、衛宮士郎が召喚したサーヴァントがセイバーと確定した時点で、俺のクラスはアーチャーという事になった。言葉は交わさないまでも、凛とは心で通じ合っているので、即興で合わせられる。

 

「教会、ですか?」

「聖杯戦争の事をよく知ってる奴がいるのよ。衛宮くんはもっと詳しく知りたいでしょう?」

「それはもちろん……けど、もうこんな時間だ。あまり遅いのは」

「衛宮士郎の言う通りです。夜ふかしはお肌の天敵だと言いますし」

「アンタ、それしか言う事ないの……?」

 

 結局、教会にはセイバーと衛宮士郎を加えた4人で向かう事になった。

 

 ◆

 

「真夜中の教会を訪れるのは初めての経験ですが、随分と不気味なのですね」

「そうね。ここにいる奴の事も考えたら不気味なんてものじゃないわ」

「聖杯戦争に詳しいという監督役の神父ですね。私の感覚から言えば、血生臭い事柄に詳しい司教となると、あまり良い印象はしませんが」

「胡散臭いエセ神父よ。その感覚が正しいわ」

 

 勝手知ったるように、隣町にあった教会の扉を凛が開き、ずんずんと中に進んでいく。その隣を歩く。衛宮士郎は後に付いてきていた。セイバーは外の門前で待っている。

 この教会は中立地帯だとか何とか聞いたが、まぁ、注意されたらその時考えよう。

 教会というもの自体、そんなに訪れる機会はない。それが真夜中ともなれば、だ。明かりも点いておらず、普通に不気味で幽霊でも出てきそうだ。

 それに、宗教関係で血生臭い感じとなると、どうしても魔女教がチラつく。特に大罪司教。

 

 月明かりのみが照らす教会。奥から一つの影が現れた。

 

「──随分と、好き勝手に言ってくれるものだな、凛」

「おや、ずっと暗闇の中でいたのでしょうか」

 

 まぁ、何かいるとは思っていたが。

 高身長でガタイの良い黒髪の神父。会うのは初めてだが、確かに凛の言う通りどことなく胡散臭さがある。

 

「それがお前のサーヴァントか? 一応言っておくが、私は司教ではなく司祭だ。非公式ではあるがね」

「ああ、そう……」

「再三の呼び出しに応じないかと思えば。ようやく顔を出す気になったのかね」

「用があるのはわたしじゃなくてこっち」

「ほう?」

 

 そうして促され、その神父は衛宮士郎の方へと視線を向ける。

 

「一応魔術師だけど、てんで素人だから。聖杯戦争について説明してあげて」

「良いだろう。君の名前は何と言うのかな、七人目のマスターよ」

 

 神父と衛宮士郎が話し始めて2人だけの世界に入ったので、並べられた長椅子の1つに腰を下ろす。

 

「彼は元々マスターの知り合いだったのでしたか」

「そうね。腐れ縁ってやつだわ」

「聖杯戦争の監督役。しかし、監督すると言っても仮に参加者がルール違反のような事をしたとして、ただの人間である彼にサーヴァントが止められるとは思いませんが」

 

 そして雑談タイムだ。

 今ちょっと気になったこと。監督役、つまりは審判みたいなものだと思うが、そもそも聖杯戦争は殺し合いの戦争であるからして、審判が何か言ったところで止まるようなまともな感性の人間は少ないのではないかと思う。

 そして、例えばスポーツなんかであれば審判に従わなければ失格になったりするから、文句があっても従う訳で、この聖杯戦争にはそういう審判の力がなさそうに見える。聖杯が願いを叶えるか否かを監督役が決めるみたいな事もなさそうだし。

 

「監督役の仕事は主にサーヴァントを失ったマスターの保護とか、神秘の秘匿とかね。殺し合いにルールなんてあってないようなものだし、基本的にマスター同士サーヴァント同士の戦いには介入しないはずよ」

「なるほど、では仮に衛宮士郎があのまま亡くなっていた場合、サーヴァントという神秘そのものに殺されてしまった訳ですから、彼が秘匿したという訳ですね」

「……かもね」

 

 なんだか、審判というよりは後片付け係みたいだ。

 

「そういえば、この教会はパイプオルガンはないのですね」

「パイプオルガン? なんでまた」

「教会にあるものというイメージがありませんか?」

「そういうものかしら。たぶん高いし、ここには置けないんじゃない? アンタ弾けるの?」

「いいえ、全く。オルガンはもちろんピアノにも触れた事はありません」

「ああ、そう……というか、そういう時代が特定出来そうな発言は慎みなさいよ」

「パイプオルガンが、でしょうか? それほど最近に作られたのですか?」

「それは知らないけど」

「とはいえ、安心してくれて構いませんよ。たとえ何か、不利になる事を聞かれたとしても『それは聞き間違い』なのですから」

 

 まぁ、何を言ったところで俺というかパンドラの正体が知られる事はないとは思うが。一応街を案内してもらった時に大きめの本屋に寄ってみたが、リゼロもなかったし。

 知られたところでどう対応するのかという話ではあるが。リゼロ読者でも知らないのに。

 

「随分と好き勝手に話してくれるものだ。ちなみに言っておくとパイプオルガンの起源は紀元前に遡る。しかし、キリスト教に持ち込まれたのは中世だ」

「はいはい、ご講説どーも。アーチャー、今の話アイツの頭から消しなさい」

「かしこまりました」

「なるほど、つまり聖杯戦争の監督役である私を害するという訳か」

「何かペナルティのようなものを考えているなら、無駄になってしまいますね。そもそもなかった事になるのですから」

「冗談よ。アーチャー、戻りなさい」

「そうですか……残念です」

 

 さっそく権能を使ってあげようと立ち上がったのに、すぐに撤回されたのでもう一回座った。

 

「それで? 衛宮くんとの話は終わったのかしら?」

「ああ。行くといい。これで此度の聖杯戦争、7人のマスターは出揃った。これから先どうなるかは、お前たち次第だ」

「言われなくても。行くわよ、アーチャー、衛宮くん」

「ええ」

 

 どうやら話は終わったようなので教会を後にする。

 ちょっと不気味だったから早く出たかったので助かる。夜の学校はちょっとワクワクしたのに、夜の教会は不気味さが勝つ。たぶん幽霊とかが出ても何とでもなるから脅威はないが、単純に危険はないと分かっていてもお化け屋敷は怖いみたいな感覚。

 

 教会を出て、セイバーと合流した。

 

「寂しくはありませんでしたか?」

「寂しくなどありません。私を何だと思っているのですか」

「私は一時もマスターと離れたくないものですから」

 

 一人で待たされて可哀想だった。まぁ、待たされてというか、自分から外で待っていると言い出したのだが。

 俺なら待ってろと言われても霊体化してこっそりついていく。

 

「遠坂はアーチャーと仲が良いんだな」

「まぁ……そうね。サーヴァントは一緒に聖杯戦争を戦う相棒なのだから、衛宮くんもセイバーとは仲良くしておく事をおすすめするわ」

「その通りです。さあ、マスター。夜の街は危険です。どうぞ、近くへ」

 

 今だ。

 サササ、と近付いて凛と腕を組みにいく。

 

「近すぎ」

 

 だが、手のひらでグイグイと顔を押し返された。

 

「つれないではありませんか」

「本当に仲良いな……」

「ええ。私とマスターは魂で繋がった伴侶ですから」

「変な言い方しない」

 

 腕組みは失敗したが、仲の良さを衛宮士郎に見せつける事が出来たので良しとしよう。

 

 ◆

 

 途中までは帰り道が同じなので、軽く雑談をしながら家を目指す。

 凛は衛宮士郎に聖杯戦争の注意点を教えたり、明日からは敵同士だという事を言ったりしていた。なので、俺はセイバーと親交を深めておいた。

 

「ここでお別れね。ま、色々と言ったけど精々気を付けなさい」

 

 そして、別れの時だ。

 お互いに聖杯戦争に参加する者同士。次に会った時は敵同士という訳だ。

 正直、衛宮士郎の事はどうでも良いと言えばどうでも良い。凛のために助けてあげたが、自分から殺し合いに参加するというならどうぞご勝手にという感じだし。ただ、セイバーが消えてしまうのはもったいない。敵になって戦う事になったらセイバーは貰おうかな。

 

「ねぇ、お話は終わり?」

「あら……?」

 

 坂の上、立っていたのは北国風の格好の銀髪少女と、半裸のムキムキデカ男。

 

「こんばんは、お兄ちゃん。こうして会うのは二度目だね」

 

 ムキムキ男の方はサーヴァント。手には巨大な石を削って作ったみたいな剣が握られている。

 明らかに肉弾戦タイプ。

 ランサーは肉弾戦タイプ。セイバーも肉弾戦タイプ。あのムキムキ男も肉弾戦タイプ。聖杯戦争って肉弾戦タイプしかいないのかね。魔術とかあるんだよね? 

 

「アイツ……桁違いだわ」

「はじめまして、リン。わたしはイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」

 

 衛宮士郎とは会った事があるらしいが、どうやら凛の事も知っているらしい。

 イリヤスフィール。可愛い。随分と日本語が上手だが、どこかの国の子だろうか。可愛いから好みだが、仲良くなるには隣の大男が邪魔なのが困りどころ。

 

「アインツベルン……!」

「知り合いですか?」

「ええ、アイツの事は知らないけど──」

「やっちゃえ、バーサーカー」

 

 バーサーカーらしい大男が飛び出してくる。同時にセイバーも前に出た。

 バーサーカーの剣とセイバーの見えない剣が衝突し、その衝撃がこちらにも伝わってくる。

 

「アーチャー! アンタもやるのよ!」

「加勢したいのは山々なのですが、難しいですね」

「拳よ、拳!」

「あの、マスター? そろそろ私に肉弾戦をやらせようとするのはやめませんか? 見てください。この細腕と細脚を」

 

 やっぱり凛はちょっと脳筋なところがある。

 権能があるから無理矢理に出来ない事はないとはいえ、あれは本気で殴ったり蹴ったりしてもビクともしなさそう。まだ常識的な人間サイズだったランサーはともかく、あれはもう巨人の域だと思う。

 

 だが、渋っているとセイバーがバーサーカーの剣をお腹にモロに食らってしまった。

 

「……仕方がありませんね。ここは私が」 

 

 このままではセイバーがやられてしまう。

 選手交代だ。

 

「サーヴァントを倒さなくとも、マスターを倒せば良いだけの話なのですから」

 

 バーサーカーと正面から戦うつもりはない。

 こっちには権能しかないのだから、とことん使い倒す。

 

 敵マスターの少女の方へ向かって走る。

 普通の人間からすれば結構な速度が出るが、サーヴァント基準では遅い。俺がたどり着くよりも前にこちらに気付いたバーサーカーに追い付かれてしまうだろう。

 

 まぁ、このまま何もしなければの話だが。

 

「■■■■──!!」

 

 雄叫びを上げながら迫るバーサーカーは、俺の横を通り抜け、一直線にマスターの少女の元へ。

 次の瞬間、石剣が少女の脇腹へと吸い込まれるように振るわれ、小さな身体はいとも容易く吹き飛んだ。

 

 一旦ね? 一旦。

 ちょっと見間違えてしまっただけで、可愛い子が死んでしまうのは望むところではないし。

 





 ○パンドラ
 必殺『見間違えアタック』:敵は自滅する
 マスターとサーヴァントが一緒にいるような組はカモにされる。当然と言えば当然だが、マスターがやられては元も子もないという性質上サーヴァントが近くにいる事が多い聖杯戦争ではかなりの威力を発揮する。
 教会は中立地帯なのでサーヴァントが入るのは普通に良くないが、注意されるまではセーフ理論で当たり前のように入って行った。
 可愛い子はみんな好き。

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