サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~ 作:oosima
○21世紀初頭 日本国 鹿児島県南部 奄美群島 奄美大島 某小学校○
「…さー皆ー、今日は昔の人達と同じ手法で黒砂糖を作ってみようねー♪」
「「「「「はーい」」」」」
地球という星で最大の大陸の東側の端にある弧状列島の島国にある亜熱帯性気候のその島の何処かの学校で、郷土史学習の一環が行われていた。
その学習の場にある一人の若い学芸員が働いていた。
地方の博物館とはいえ公務員に就職できたのではじめは楽できると思ったが、意外と島内各地からの資料の寄付やその保存、土地柄から多い台風など自然災害のたびに島内各所の遺跡の保護で割と大変だった。
しかし、今では何とか慣れて子供のころからの夢をかなえてそれを仕事として生活できているという充足感を感じられるようになった。
「…この黒糖作りは薩摩藩時代において特に推進され、高い時期には藩財政の四割は占めていたほどで薩摩藩に多大な経済力を与えました」
「それで明治維新とかするのにすごく役立ったんですよねー!」
「はい、その通りそれは幕末動乱から明治維新における薩摩藩の飛躍において大きく役立ちました。ですが、奄美群島には砂糖を中心に強力なプランテーション経済を課せられて、島民は大半が“砂糖地獄”と呼ばれるまでに困窮させられることに―…」-
(…そうそう、大学時代になろう系を読んでそれで、それでSSを書いたりしてそこから役立ちそうな知識を学んでいったけど、島津というか薩摩藩って全国の知名度は悪くない意味で有名だけど、地元…特にここ奄美じゃー…)
先輩である女性学芸員の解説とそれへの子供達の質問を聞きつつ、若い学芸員は地元の郷土史について思いを馳せる。
全国ではバーサーカー大名として勇名(?)を馳せた島津家だが、その領内、特にここ奄美では江戸時代の鬼な統治のせいで評判がめっちゃ悪く、若い学芸員は島内のご老人からそれを聞きながら育ったためである。
そんなわけで、もしも転生系小説のように転生しなくてはいけないとしたら、優先的に避けたい一族が島津家と青年学芸員はなっていた。
「…ねー、そろそろキビ汁を搾りだすからサトウキビを解いてー」
若い学芸員の思考がその地元郷土史の負の側面で思索を深めようとしたところで、先輩学芸員の声が現実に引き戻してきた。
「はーい、わかりましたー…ん? 何かサトウキビの中ににょろにょろ動くものがー…!?」
だが、若い学芸員がそれに応えようとしたところで、この島ではそこまで珍しくない災難がその身を襲ってしまう。
「!? ちょっとそこの君! それまだ子供だけどハブー!?」
「…え!?」
いち早く気付いた先輩の注意が飛ぶも間に合わず、青年学芸員の露出している肌に奄美自然界を代表する毒蛇であるハブががぶっと牙を突き刺した。
「あー!?」
「まずい! 急いで救急車を呼んでー!」
「そこの君は安静にー!」
「大変ですー! さっきが崖崩れが起きて一番早く病院に行けるルートが潰れて遠回りしまいにー!」
「えー!?」
「…あ、そ、そんな―…」
当然、その場は大パニックとなってそこへ不運も重なって治療は大幅に遅れ、青年は時と共に傷口からの痛みが増していくにつれ、騒然とする周囲が徐々に朦朧と見えていって意識が闇に落ちた。
○??? 某城○
(…ん? あれ…ここはー…? 病院…じゃないなこれはー…。なんだか古い武家屋敷みたいに見えるなー…)
数時間後、青年が目を覚まして最初に見たものは病院ではなく、何処か古びて見える屋敷であった。
「…はは、まさかこの歳になって母になるなんてね…。貴久…虎寿丸君には負けたわねー」
(…え!? 何この人!? すげー美人…けれどやけに大きく見えるなー…?)
次に目にしたのは緑色が強い少しハネ気味な長髪を生やして、そこから一対の鹿のような角を生やしている、何だかコーカソイドとモンゴロイドの中間に位置する白い素肌の美女であった。
青年が彼女に魅入られていると何やら慌ただしい足音が近づいてくる。
「先生! 我々の新たな弟が産まれたというのは真ですか!?」
「おいにも見せて下され!」
「あ、あなたにしては珍しいわね今の虎寿丸君。四郎丸君は珍しくお兄ちゃんに負けたわね」
(…え? あ、あれ…お兄ちゃん? ど、どういうこと? それに何かー…この子たちー格好とかがー…何か時代劇…それも戦国時代系の若様っぽい十代前半くらいの年齢に見えるけどー…?)
「これで去年に生まれた又七郎も兄になったのう!」
「入来院君の所のお雪ちゃんには悪いことをしたわね」
「何を申す、薩摩隼人はそんな器は小さくなか」
「むしろまさか今になって自らの師でもある先生を落とすなど父上もすみにおけんのう」
「この子はまだ短いですが先生と同じく頭から角が生えておりますなぁ」
「それでは先生の血が強く出たのかのう」
「まあよい、これからの薩摩島津をお支えする童がまた一人産まれたのだからのう」
(え? 何々!? 何だかこの子達もやけに大きく見えるしー…周囲のさらに集まってきた人達も何だかやけに大きく見えてどう見ても格好は戦国時代の武士なんだけどー!?)
「あーも又七郎に虎寿丸が産まれた時もここの人達はー…」
(あれ? 又七郎に虎寿丸? 何だか僕らの島では評判があれなあの一族系で聞いたりした名だけどー…!?)
どんどん集まってくる周囲の古風な人だかりに青年が戸惑いを強めていく中、やがてその人だかりが二つに分かれてその合間を一人の威厳を漂わせる殿様というべき男が姿を現した。
「おお! また息子か! しかも先生とのお子になるとはのー! これで儂の息子は五人となったかー」
「こら、そんな良い齢をしてはしゃがないの虎寿丸君」
「いや先生、幼名で言うのは止して下され。今の儂は貴久じゃ。しかしー…妙に落ち着いておる子じゃのうー…」
(いやいやいや! 人の身を勝手にあれこれ持ち上げてそんな大勢で寄ってたかってこないで!? え? 貴久ってー…? たしかー…それと虎寿丸ってー…その貴久と、その息子で
自分を置いて盛り上がっていく周囲に困惑と混乱をさらに強める青年だが、そこで彼らの口から出るそれらの単語に嫌な意味で聞き覚えがあった。
(…そ、そういえば僕…さっきから全然声が出ないようなー…? 何だか体ー…特に足はほとんど動かせないしー…それに見える手もやけに小さいしー…!? ま、まさかとは思うけどー………!?)
嫌がおうにもますます強まっていくその予感に、青年は部屋の隅に置かれているあるものに目が行ったところで身がカタカタと震え始めていく。
「(…って小さくなってるーーー!?)おぎゃーーーーーーーーーーー!!??」」
そうして、この世界におけるこの身の父に持ち上げられたところで、青年は鏡に映し出された今の我が身が赤子になっていることをようやく悟った。
「…それじゃー貴久君、この子の名前はどうするの?」
「そうですのー。先生の生まれ故郷から名をとってー…あそこと名を護ると書いて…
「(…ってまさかの転生!? しかもよりにもよって戦国バーサーカー枠代表の島津家四兄弟の弟ーーーー!?)おぎゃーーーーーーーーーーー!!??」
更にその近くに張られた島津の丸十字の旗、周囲の格好と言動からして、自分がもしも転生するとすれば最も嫌な時代で最も避けたい戦国時代の島津にそうしてしまったことに気付き、思わず悲鳴交じりの絶叫を上げた。
「おお、今になって産声を上げおったかー」
「産まれたばかりの時は妙に静かだから心配じゃったがこの声の大きさなら大丈夫そうじゃのー」
そんな青年の内心など知らない周囲はそれに驚きつつむしろ安心するのであった。
○6年後 天文23年(1554年) 日本
「………」
転生したくない戦国大名家にまさかの転生をしてしまってから6年後、前世は博物館学芸員であった名護丸はこちらの世界の母の生まれ故郷にして前世の自分にとっても故郷でもある、名瀬の地にあるその城で瞑想をしているように見えた。
少ししていると、その周囲に土煙がまるで竜巻のように飛んで集っていき、それは目の前で大人十人くらいを隠せそうな土塁に変わった。
「…おお! その齢でここまで土操の術を使えるとは! 血筋を考えても才を感じさせます!」
「う、うん、ありがとう川田先生」
その現象に名護丸の
(…はあ、まさか前世でハブに噛まれてその毒と様々な不幸で死んでしまった後に…まさか日本最大の修羅の時代…それも前世の地元奄美では悪政で悪名を轟かせていた薩摩島津家に転生するなんて…)
名護丸は褒められつつも改めてこの世界とそこで生きてきた当世の自分のこれまでを見直しつつ、部屋の隅にある鏡に映し出されている我が身を見直す。
今の自分は濃い緑色の流れるような長髪をポニテにした前世からは想像できない中性的な美貌、特にその側頭部から生えている鹿のような一対の角と、明らかに通常の人間と異なっていてそれが複雑な表情をさせる。
(…しかもこの世界って歴史とか前世のそれとか違う点が多々見られるし…。更に今ここで習っている陰陽道とかこの身も含めて…この世界ってファンタジー要素が濃いというか…)
この転生した先の戦国時代は前世の過去のそれとはいくらか歴史が違う他にも、今この場で彼がならっている陰陽道などで実際に現象を起せるファンタジー要素があり、またその身も含めて人間以外の知性や文明を持つ種族が存在するのだ。
ちなみに、今の名護丸の身は母方の血筋で、龍神を遠い祖先に持つとされ、この世界の日本では
「(…それでこの身での母上…
自分の容姿と生まれもそのファンタジー世界の証拠であることに、複雑な思いと共に感慨深さも覚えていく名護丸。
「こっちの父上である島津貴久や、義久兄ちゃん達の母上である入来院のお雪様の陰陽道とかそういう術の先生…。子供のころから憧れていた女教師を幼馴染との結婚の後に攻略するとは…。それでこの身は
だが、そんな我が身関係で色々考えていると、後頭部に結構な威力で薪が投げつけられた。
「名護丸」
「っ!? は、はい! 母上!?」
痛みに釣られて背後を振り返ると、そこには子供一人を産んだ何百歳というのが信じられない身を和服と漢服が混じったような黒を基調とする衣装で身を固めた、若々しい姿の蕉寧がジト目を向けて来ていた。
「…あなたには虎寿丸(この場合は貴久のこと)の血で才能があるのは認めます。ですが、学びが最も身につく童でいられる時はそう長くはないのです。今は乱世故に一時も無駄にはー…」
「…はい…」
そのまま女性にしては高い長躯も美点に変える美貌で静かな怒気を立ち昇らせた蕉寧に、名護丸は大人しく叱られ続けるほかなかった。
「…うう、一時も無駄には出来ないと言いつつ…母上の説教はいつもきつくて長い…幾ら寿命が長い種族の一つである
数十分後、しょぼくれた様子で自分が城主を務める名瀬城の中庭の縁側で息を抜いていた。
名護丸の前世ではこの時代の奄美群島は沖縄にある琉球王国の統治下にあったが、この世界では母親の存在と影響もあってか薩摩島津家の統治下にあった。
そして、この世界の奄美は前世の同時期と同じく大陸等との貿易の中継点に位置していたため、名護丸が属する
そんなこの世界の奄美で名護丸は母である蕉寧の人望もあって島津家が奄美統治の中心として築いた名瀬城の城主に任命されており、基本は数か月ごとに薩摩と奄美を船で行き来する身となっていた。
(…まさか6歳、この数え年が基本な世界でも7歳くらいの身で、故郷のこんな小さな半分館みたいな平山城とはいえ城主になるとはなぁ。まあ、政務とかのほとんどは母上が中心になって、父上が送ってくれた役人達がしてくれているからお飾りだけど…)
但し、実権はなく、権威もこの世界の母頼りであることは自覚して、今もそれを自嘲気味に覚えた。
(…まあ、戦国大名の代名詞なあの
一方で戦国大名に生まれたこともあってか、前世同時期の英雄に自分を無意識に重ねるナルシストの気も芽生えたりした。
(…初めの頃はいつ跡目争いとかで粛清されないか心配だったけど、前世では戦国島津四兄弟だった兄上達は戦国時代では珍しい中の良い兄弟だったのがこっちでも同じっぽいし、このままこの島で大人しく仁政に務めて兄上達を立てるようにすれば静かで平和な地方殿様生活を送れそー…う…)
それから今の我が他国と比べて比較的増し且つ平和だと感じて将来を楽観視したその時、名護丸の腹はグーッとなった。
(…うう、この世界では魔法系のファンタジー技術があるから、前世の同時期に比べればまだましなんだろうけどー…やっぱり食糧事情とかがきついんだよなー…)
この世界のこの時代は、名護丸の前世知識にある戦国時代研究と同じく小氷期のために食糧事情と栄養状態は悪く、それは殿様の一族の生まれである名護丸も市井よりマシ程度で、前世の現代と比べて非常に悪かった。
(…母上の血筋で僕も木竜だから植物を扱う木系の術は得意だけど、今は戦や治水で役立つという理由で、次に得意な土系の術の修行を優先されてる…。まー、それで生産量が増えるのは麦に粟や稗といった雑穀くらいだしー…)
毎日、前世の現代に比べてあまりにもひどい食事事情を思うたびに、名護丸は涙腺がゆるくなってしまう。
(…あーー…前の世界みたいにー…地元奄美で採れた作物ー…ゴーヤとか黒砂糖とかサツマイモとかパッションフルーツとかコーヒーとかタンカンとかアボカドとかカボチャとかその他もろもろ…、それらを使った料理とかをまた食べたいよー…)
その腹の虫と前世の思い出及び現世の食糧事情への不満に押される形で、名護丸は半ば無意識のうちに中庭の地面へ手をかざして集中し始めた。
(…特にそういうのを育ててた爺ちゃんたちの家で採れていたものはそのままでも調理したものでも美味かったなー。はあ…この木系の術でー何か前世の味的なものも生み出せればいいんだけどー…)
そして、名護丸が上の空になっている間に、手から緑色の光が生じてそれに当てられた地面が内側から盛り上がり始めて何かがポポポンと生え始める。
「…ふう、気晴らしをしても結局魔力とかそういうのを使うだけで腹がその分に減るのは変わらないんだよなー…ってあれ? 何か地面から何かが生えてー…!?」
数十秒後、光が収まって肩を落とした名護丸の視線も下に落ちてそのポポポンと生えてきた植物の芽に気付いた。
「…え? これらってー…!?」
それ見るにつれてその目は見たのが信じられないという不審と、まさかという期待の色が混ざり合って震え始める。
「…あの爺ちゃんたちの農家で育てていたのに似ているけどー…まさか!?」
SSなどにおける転生者の身なら珍しくない現象の一つが名護丸の身に再び起きようとしていた。
次回は、今回の発見に対する主人公の検証やそれを護るための行動が中心になります。