サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~   作:oosima

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今回、主人公が(精神的)実年齢的絡みで(個人的)ピンチに陥りつつも、前回に出てきた新しい女の子との付き合いも始まり、彼女も絡まった兄の技術チートの成果を確かめたりもします。


技術発展には幸不幸どちらもある

 ○皇紀2213年・天文22年(西暦1553年) 日本 薩摩国(さつまのくに) 鹿児島 境迫門(さかせと) 硝石工場○

 

「…あー、最後に理不尽な目に遭ったー…早くー“児童の権利条約”とか結ばれないかなー…」

「だったら犬畜生と謗られようと戦をしてでも乱世を早く終わらせるようにせい」

「貴方はいつから東海の漆黒宰相になったんですか」

 

 望楼での密談が終わって数分後、島津五兄弟の長兄義久と末弟名護丸は硝石工場の中を適当に散策するようになっていた。

 

「おおー、若様達ーお久しぶりですー」

「おお、久しいな鬼灯の親爺殿、新しい種子島の出来具合はどうだ?」

 

 その中でこの工場を仕切っている鬼灯一族の首領が声をかけてきた。

 

(…うーん、肌が灰色だったり青色だったり赤かったり…額とかから角が生えていたり…太平洋の向こうから来ている異人さん達が言うように…この“鬼人(おにびと)”と呼ばれる人たちは“オーク”だよなぁ…)

 

 名護丸が見上げるその青白い巨漢で角を生やした中年男性は、彼が知る前世のファンタジー作品の多くでは“やられ役”ポジなのが多い“オーク”であった。

 

(…オークとはいってもリネ○ジュ”やあの女騎士を育てるオークの若様みたいな感じで、強面のマッチョなイケメンという感じだなぁ…)

 

 但し、名護丸の前世の青年学芸員含めた恒星の現代人の多くが想像するものと違い、この世界のオークもとい鬼人は豚ではなかった。

 

(僕は初めて見た時も真新しい的なものを見た感動は覚えたけど、この人たちには割と好印象だったのを思い出すなぁ。他の種族含めて奇異というか恐れる感情が強いと聞くしー)

 

 その鬼人と何気なくおしゃべりも楽しむ義久もあって、名護丸は落ち着いて彼らを観察できた。

 

(ここ薩摩の北の山奥に暮らしているオークの部族を義久兄さんが恭順させたという話は御爺様から来たけど…。他人には偏屈だが身内との酒と喧嘩が好きな性格に…武器作り中心だけど手先が器用とか…だが、何よりこの目の注意を引くのはー…)

「親父ー、こっちの種子島の大きい方の試し撃ちもするかー」

「あー、いいぞー」

 

 その前世での一般イメージの多くと異なる、この世界の日本では鬼人(おにびと)と呼ばれるオークの中で、今の名護丸の目を最も集めるのは、先ほど望楼に上っていた彼に視線を向けていた鬼人(おにびと)の少女鬼灯朱祢(あかね)であった。

 ちなみに、鬼灯というのは義久が鬼人達を恭順させた時に、朱祢も属する長の一族に与えた苗字である。

 

(…う、この白に近い灰色の素肌…肌の瑞々しさからしてまだ十代前半なのはわかるけど…、この世界のオーク…鬼人が若い内の成長は早いけど成人辺りになったら廊下は遅くなってその後は二世紀くらいの寿命を掛けて人間でいう三十後半から四十前半くらいの見た目で止まるっていうけど…)

 

 性格の表層は見た目相応だが下半身系の欲は前世の積み重ねが残っていることを、名護丸は朱祢を見上げながら改めて強く再認識した。

 

(…こ、これってもう見た目は高校生スポーツ女子系俺っ娘って感じ…!)

 

 朱祢はストレートな赤いロングヘアーに銀色の瞳でエキゾチック且つスポーティーな面貌をしており、それも前世でファンタジー系ゲームをしていた名護丸の顔を赤くしていく。

 それで鍜治場仕事が多いからと下は褌で上は法被に似た上着にサラシで、筋肉が多めだが年齢詐称を感じさせる曲線美もしていた身を恥ずかしげもなく晒していた。

 

(こ、この世界の日本も前世の同じ頃の日本と同じく(?)、男女どっちも人前で兵器に水浴びするし、女性用の下着はほとんど普及してないから夏場になると女性は熱いからって理由で普通に胸元をあけたりするし、それに他の男たちは慣れてほとんど気にしないけどー…うぅ!)

「ん? どうしたんですかい若様ー?」

 

 そうして赤い顔で見上げて徐々に前のめりになっていく名護丸を朱祢は奇妙に思った。

 

(…!? ま、まずい…前世の僕のとは比較にならない()()がいつのまに!?)

「ん? どうしたんですか? そんな怖がってるってわけでもないのにこっちを避けてー?」

「まーその辺りはまだ小さいから気分の移り変わりが激しいからであろう。今度の新たな種子島を試し撃ちも含めて見せてくれんか?」

 

 その彼女の言葉でようやく男の証の変貌に気付いた名護丸は慌てて義久の背後に隠れ、その理由を察した義久は苦笑しつつも鬼人達に真面目な話を急かさせた。

 

「へい! 若様のご考案含めて色々と新たな工夫を施した新しき種子島がこちらです!」

 

 そこで朱祢の父である頭領が差し出した種子島(この時代、鉄砲は伝来してきた地である種子島の名が通称になっていた)である鉄砲は、名護丸の記憶にある前世の戦国時代における火縄銃と異なっていた。

 

「兄上、これは―? 何か前…じゃなくて市場で見た南蛮人が持っていたのとだいぶ違うというかー…」

「ああ、従来のものだと前の記憶にあるものと比べて色々扱いづらいからな。こちらは入れ知恵して色々作り直してもらった」

「…あ、なるほど…」

「それでこいつの作りですけどー…」

 

 だが、別時間軸混じりながらも自身と同じく後代からの転生者である兄の周囲には聞こえない小声の説明ですぐ納得して、職人たちの説明を聞きながらその種子島の史実との違いを確認していく。

 まず、利き手で握るだけであった火縄銃と違い、後代風の銃床が付けられたことで反動を抑えて照準性が高められている。

 銃口付近には短刀が備え付けられるようになっており、近接戦にもある程度対応できるようになってもいた。

 良質な火打石が採れなかったので火縄に頼るしかなかった前世の戦国日本と違い、この世界では義久が恭順させた鬼人達の居住地である串木野や菱刈から適したそれが採れていることでフリントロック式となり、耐水性を高めて集団戦にも適していた。

 他にも弾丸は鉛だがそれは金型を用いて大量生産できるようにしながら前世史実の球体ではなく円錐形で螺旋状の溝が生じるようになったことで、正確性は上がっているのが見て取れた。

 

「…それじゃ行きますぜー…!!」

 

 その新しい種子島の一丁を構えて朱祢はおおよそ200m先の鎧に包まれた案山子を狙い、引き金を引くとバンっと雷が落ちたような轟音と同時に案山子は大きく揺れた。

 

「おお! この前に見た時よりも正確に射抜ける距離が伸びたぞ!」

「いやー、この距離だと当たるのは上手くて五割くらいですけどねー」

「いや! (前世の史実に比べれば)それでも凄い進歩です朱祢殿!」

「鎧に穴を開けて中の案山子にも深々と弾がしっかりとめり込んでおる!」

 

 その結果は周囲、特に島津兄弟を大喜びさせた。

 史実ではこの時代に到来した火縄銃は有効射程内での殺傷力の高さから各勢力に目を付けられて急速に普及が進んだ。

 だが、有効射程範囲は50メートルから100メートル以内、更に弾は大きな球体、加えて銃身内部もライフリングされてないために命中率もそこまで高くなかった。

 そのことを知識や体験でもう知っていた島津兄弟の驚きぶりは当然であっただろう。

 

「それで鬼灯の親爺殿、この新式の種子島はどれくらいの速さで作れる?」

「そうですなぁ、ここも含めて各所の儂らは島津の殿様のおかげで市にも出られるようになりまして材料も手に入りやすくなりましたが…」

「あー、その分に仕事も増えたのが問題とー…」

「色々複雑なカラクリもありますんで慣れ始めるまではここだけで一丁から二丁、慣れて五、六丁くらいでしょうかねぇ」

「やはりそれくらいかかるか。仕方あるまい…」

 

 そこで生産スピードについて話が進むとは初めて義久は残念そうな顔を見せ、名護丸も納得した。

 先の説明で名護丸はこの工場も含めて島津家の鉄砲や火薬の製造所は、義久の工夫によって部品ごとにそれを得意とする人員を見極めて役割を分担し、それを別の場所で組み立てることで生産性と機密性をなるべく高めていることは知ってはいた。

 それでも如何せんまだ工場制手工業なので、良くて一週間か普通に半月くらいでそれだろうと受け止めたのだ。

 

「そうですなー、一日に五、六丁が限界ですなー。これ以上は人数を増やさんと―――」

「「!!!???」」

 

 故に、職人達にその予想を否定されると二人そろってズッコケた。

 

「―――おって…ちょちょ大丈夫ですかい?」

「い、いや、何でもない…寧ろ良い話を聞けたというか…」

「…す、凄いですね兄上…、こ、これってー…()()()()()()()()()()()()()()()()()()への輸出は早めてもいいのではー…」

「…い、いや、その辺りは皆も含めて相談だな。急ぐな。そ、それでー…私が以前に聞いていた例の“大筒”は?」

「へい! 皆ー持ってこい!」

 

 それで周りを戸惑わせつつも義久の催促に応じて職人達はその大筒を持ってきた。

 

「…うわぁ、これは…(前世に別の博物館で見た抱え大筒と似つつも、それよりも大きくて移動させやすいように車輪もついていて、史実のこれとカノン砲との中間くらいかな…?)」

 

 そうして引っ張ってこられた、この世界の島津家では初めて生まれた国産大筒に名護丸は驚きつつも記憶や知識との違いも目にし、その眼前で発射のための準備が進められていく。

 

「…それではー…あの大木を狙ってぇ…放てぇ!!」

 

 そして、朱祢の号令と同時に火がつけられて先ほどよりもはるかに大きい轟音が発せられた。

 

「うおおお!? あそこまで正確に打ち抜きおったぁ!」

「あ、あれだけの大木がベキベキと曲がっていって…!?」

 

 その砲弾は先ほどの的との距離の倍以上の先にある急斜面から生えてる大木の中心に命中し、そこに大穴を開けてバキバキと倒していってやがてちぎれてズズンと地に倒した。

 

「…な、なんちゅー音じゃあ、み、耳が潰れそうだ」

「だ、だがこれはぁ凄い威力だぞ!」

「ああ! 間違いなく戦が変わるぅ!」

 

 その光景に人々は先ほどの轟音と合わせて腰を抜かすものが出るまで驚いていたが、やがて喜びと歓声が生じて伝播していく。

 

「若様ぁ! やりましたなぁ!」

「いいや! 良くぞやってくれたのはお主たちだ!」

「そんなこたぁありません! 貴方様に引き上げられなければわしらはぁ人里にも出られなかった身ばっかです!」

「そのことを考えりゃーこれは若様の大手柄―――!!」

「ブヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 だが、工場の人々が喜びに沸き立ち続けようとしたその時、彼らの鼓膜を獣の大いなる咆哮が破らんばかりに震わせてきた。

 

「―――あ…て、な、なんだぁ?」

「い、今さっきの大筒でへし折れた大木の落ちた方の茂みから聞こえてきたが…!?」

 

 それに人々が戸惑いつつもその方向を見やったその時、茂みから落ちた方の大木が天高く舞った。

 

「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 そして、先ほどの倒木で出来たと思われるたん瘤を眉間に生じさせて半分涙目だが怒りの咆哮を上げる巨大な猪が姿を現した。




次回、主人公達が今回の話の最後に現れた敵と戦う予定です。
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