サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~ 作:oosima
○皇紀2213年・天文22年(西暦1553年) 日本
朱祢が新式大筒を発射させて大木を真っ二つにして上半分を下の茂みに落とした時、そこには何者かがいた。
「…な、何だったのだ!?」
「さ、さっきの雷のようでいて違う轟音で鼓膜が破れそうじゃあぁ…」
「何か時々…妙な臭さが漂ってくるから何をしているかと思ったがー…」
「島津め…ここで何をしているのだ…?」
その者達は先ほど目にした新式大筒の威力に驚いた様子を隠せていない。
彼らは武士の格好をしており、言葉遣いや口にしている内容からしてこの地の者ではないことがわかった。
「若様! これ以上ここに留まるのは危険です!」
「すぐに
「ま、待て! 先ほどの轟音の正体を調べるまでは帰れ―――!」
やがて彼らは仲たがいを始めるが、それは思わぬ横槍によってすぐに止む。
「ブブうううううううううううううううううううううぅぅぅぅ…!」
彼らが居る茂みの更なる奥より、苦悶と怒りを宿らせた唸り声がその鼓膜を震わせてきたのだ。
「―――え? な、何だぁ…!?」
「ブヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
若様と呼ばれた男が茂みの奥を恐る恐る見ようとしたその時、そこでうめき声の音源が落ちてきた大木を押しのけながら姿を見せた。
「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「「「「「よ、妖怪だぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」
そして、眉間に瘤を生じさせている涙目ながら巨大な猪が怒れる様子で姿を現し、彼らは悲鳴と絶叫を上げた。
「また妖怪化大猪ぃ(○ののけ姫ネタはこの前の奄美でやったばっかでしょお)!?」
「さ、さっき落ちた大木と誰かが跳ね飛ばされたぞぉ!」
当然、その光景は硝石工場にいる名護丸達にも見えて彼らも驚かせた。
「お! おい! あの大猪! 何だかこっちに向かってきておるぞぉ!」
「ぎゃー!?」
「わ!? 若様ーーーー!?」
「な、何だか茂みにいたのか人を跳ね飛ばしながら向かってきておるぞぉ!」
「マジで!?」
明らかに自分たち目掛けて近づいてくる大猪に島津側も慌ただしくなり、すぐ防衛行動に移る。
「おい! すぐに門を閉じろ!」
「弓矢をもって土塁に上れ!」
「種子島も持ってこい! それも大鉄砲くらいのをだ!」
「門も土嚢を積んで補強しつつもいざってときのための長槍もだ!」
「ブモォ!!」
そうして義久の指揮もあり、あっという間に防衛体制を工場側が整えたその直後、とうとう大猪は閉められた正門にぶち当たった。
「のわぁ!?」
「怯むなぁ! 押し返せぇ!」
「おい! あまり強く押すな鬼人衆!」
「お前らが加減なく押したら閂が内からへし折れる!」
小屋以上のサイズはある大猪の突撃で正門は大きく揺れるがどうにか踏みとどまり、人々は土塁の上から矢を浴びせて大石を投げつけ、更に陰陽師と術者は火の玉のように燃える式神を浴びせる。
「ブモォ! ブモオオオオオオオ!!」
だが、分厚い毛皮と皮下脂肪や筋肉に包まれたその身にはさして効かなくて、大猪はうっとうしそうに身に着いた程度のそれらを振り落とした。
「うわぁ! 今度は土塁の方にぶち当たりやがったぁ!」
「すごい勢いでガリガリ削りに来てやがる!」
「まずい! あの向かっている先はこの前の水害で壊れてまだ修理中だ!」
「おい! 種子島をもっと撃てぇ!」
「撃っているけどせいぜい小さな血を流す穴が開くだけだぁ!」
猛威を振るって人々を慄かせる大猪だがそれを頭上から狙おうとする者もいた。
「…くっそ! こいつを使うしかないか!」
大猪が土塁を牙で削りながら向かっている先にある櫓に朱祢が駆け上がっていく。
その手で構えられた鉄砲は後世の狙撃銃に似た構造をしつつも、フリントロック式などこの時代相応の技術的限界も見えた。
「…あれは! よし! 僕もあっちを手伝います兄上!」
「ああ! 行けぇ!!」
それに気づいた名護丸は陰陽道の木術による正門守護が必要なくなったこともあり、今度は両手を地面に付けて術を発動させる。
「ブモ!? ブモオオオオオオオオオオ!!」
すると大猪の周囲に大量かつ長大な蔓が生えでてきてその巨体を拘束してしまった。
「! こいつはいける!」
それで身悶えするがその場から離れられなくなった大猪に、朱祢はその手に持つ新式鉄砲を構えて狙う。
「ブオオオオオオオオオオオ!!??」
そして新式鉄砲が火を吹かすと、大猪の眉間に出来ていた大きなたん瘤に必中し、大猪は悲鳴と血飛沫に涙を撒きながら後ろ足で立ち上がった。
「やったか…!?」
「ブヒオオオオオオオ!!」
名護丸はそれに喜色を見せるが、大猪は火事場の馬鹿力か彼の掛けた陰陽道の蔓の拘束を引きちぎり、朱祢がいる櫓をその根元を護る修理中の土塁ごと突進で粉砕した。
「のわああ!?」
「危ない!」
そうして投げされた朱祢を名護丸は木術の蔓を伸ばしてキャッチした。
「ブヒオオオオ!?」
それに気づいた大猪は土塁だった瓦礫を吹き飛ばし、工場内へ入って今度は名護丸に襲い掛かった。
「!? いかん! 逃げろー!」
義久はそれに悲鳴交じりの声を上げる。
「のわああ!? 来たあああ! と、とりあえず回避ー! ゴーヤ橋ー!!」
「ブモォ!?」
名護丸は怯えつつもすぐに足元に先ほどの蔓を生やして二の足から地面よりも大きく持ち上げ、それを大きなアーチ状にして戸惑う大猪をそこへ突っ込ませることで回避してみせた。
「ぬおぉ!?」
「あんな風に使うなんてすげぇ!」
その軽やかな回避に周囲は驚くが、当の本人は何とかこの状況を切り抜ける打開策を必死に考えていた。
(鉄砲や今の大筒ではあいつの分厚い毛皮とかを撃ち抜くのはまだ無理っぽい! 眉間の怪我は単に派手っぽいし! どうすればー…どっかこっちの攻撃を届かせられる穴でもあればー…!?)
その時、名護丸の目に自分の姿を見失ってキョロキョロとする大猪の尻と、その変に落ちていた大槍が止まった。
(…これだぁ! どんな生き物でも鍛えられないあの穴があったぁ!!)
名護丸は蔓を用いてその槍をひったくり、更に我が身にも蔓を纏わせて鎧というかパワードスーツのように着せた。
「チェストーーーーーー!!」
そして、陰陽道の木術効果もあってパワーとスピードを上げた名護丸は大猪の背後に回り、その後ろにたしかにある大きな穴である肛門へ槍を突き込んだ。
「!!??」
すると大猪は無言の状態で顎が外れんばかりに大開きし、しばらくその巨体は硬直してしまう。
「…や、やったか?」
「ど、どっちも微動だにせんが…!?」
その沈黙に周囲も固まって静かに見守ろうとしたその時、大猪の尻から赤い爆ぜのような衝撃波が噴き出した。
「ブモッアアァーーーーーーーーーーーーー!!??」
そうして赤い爆ぜと悲鳴に涙を撒きながら大猪は来た道を猛スピードで逆走し、山の茂みの方へ戻っていった。
「「「「「……………」」」」」
それを工場の人々はポカーンと見送った。
「…な、何とか助かった…かな…」
そして、その場に残っていた赤い爆ぜによる土煙が収まると、体にべっとりと赤い血がついてはいるが大けがはしていない名護丸の姿があった。
「…おおお! 皆よ見たか! 我が弟の名護丸が妖怪を追い払ったぞー!」
「た、助かったー!」
「名護丸様ー! ありがとうー!」
「…皆で胴上げするぞー…!?」
それを見た義久達は彼の身の無事という安堵と、その手柄から歓喜して彼を囲んで称えようとするが、その身に触れようとしたところでビクッと動きが止まった。
「…あ、あのー申し訳ありませんがー…あの大猪のこの置き土産ー…早くー…」
「…まずは湯を沸かそうか…」
「あ、はい…」
大猪撃退と引き換えにその肛門から浴びせられた大量の血便で涙目の名護丸の懇願に、周囲は極めて微妙そうな顔で答えた。
次回は、主人公が今回のお話で助けたあの子との関係を深めるのが中心になりつつ、次のトラブルへのフラグが立ち始めたりもします。