サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~   作:oosima

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今回は数か月ぶりに見る薩摩の変化と、それに振り回される主人公の様子が中心になります。


人だけでなく物も変わるもの

 ○皇紀2213年・天文22年(西暦1553年) 日本 薩摩国(さつまのくに) 鹿児島○

 

「…いやー、お蕉殿は相変わらずお変わりないですなー。それで名護丸も前に奄美へ出立した時より三分から四分くらい背が伸びたかー」

「ええ、義久殿も前に見た時よりも壮健に…」

 

 奄美から鹿児島へ戻ってきた名護丸一行を出迎えて数十分後、健康的な明るい海の男と言う風体に変わった島津義久は合流して談笑しながら鹿児島の港に上陸して歩いていた。

 

「(…確かにこっちは今の母上の生まれ育ちの都合で現地住民との付き合いの必要から、何年も前から名瀬城主にお飾りながら任じられて数か月おきにあっちに移ってたし、その頃から義久兄さんは何だか城内や外の工房を行き来してはいても室内作業とかが多い感じだったけどあまり会えなかったとはいえ…、いくら何でもこれって変わり過ぎでしょー…)あ、兄上もすごく精悍になられましたねー…。全然ひきこもりになりそうになくて安心というかー逆に(歴史の流れとかそういう意味で)不安も生じてくるというかー…」

 

 一方の島津名護丸は海上で敵の水軍に襲われかけた時の恐怖と長兄のあまりの変貌ぶりに対する驚きで、前世歴史ネタが無意識のうちに口からまた出てしまう。

 

「いや、引きこもりというのは間違っておらんぞ。元服はしたがまだ領内の外には危ないし恥ずかしいという理由で父上に出るのはお許ししてもらっておらん」

「いや! そういう意味じゃ―…あ、失礼しました…」

「……………」

 

 一方、義久は名護丸のそのぼやきに難なく合わせており、普段なら怪訝な顔で息子を問い詰めるはずの蕉寧は何か知ってそうな顔でそのやり取りを見守っていた。

 

「あ! 名護丸ーそなたも奄美から戻ってきたのだなー」

「お久しぶりー又七郎兄上―」

 

 そこで名護丸よりも一つ年上の異母兄、前世の歴史マニアのネット界隈では戦国島津最強のバトルマシーンにして大物釣り師と歌われた島津家久となっていた、島津又七郎も合流してきた。

 

「又七郎兄上も背が伸びたねー。これなら戦場でも早く武功を上げられるんじゃー」

「そんな大したことではないよー。兄上達のお仕事のおまけで色々と皆のように良いものを口に出来ているだけさー」

「そうだねー、ここ鹿児島は湾内だから元から港に向いているけどー…」

 

 名護丸一行が歩いている鹿児島の町は茅葺木造が大半だが、隣の大隅がまだ国人と呼ばれる小領主の群雄割拠で不安定なのと違い、この世界の父で前世の歴史マニア界隈では戦国屈指のリーディングサイアーと名高い島津貴久で薩摩が統一されているので比較的安定していた。

 更にこの世界では、(名護丸から見れば全然ひきこもっているようには見えない)義久が色々しているおかげで造船業が盛んになっており、それも生かした海上交易も増えていた。

 実際、名護丸達が通っている鹿児島の町には、国内外各所から集っている旅人や商人が盛んに往来しており、様々な人種や種族にその言葉が飛び交っていた。

 

「…でもさー、幾ら良い船が多く出来ても運んで売りさばける船荷が無ければ意味がないんじゃないの? それにー…言ったら悪いけど薩隅ってー、皆をまともに食わせて行けるほど豊かな土地はそう多いわけじゃー…」

 

 それ故に、前世からの知識と現代的価値観から名護丸は又七郎との会話中に重い表情となった。

 この時代、当然の如く農業技術は現代と比べて遅れており、台風銀座と呼ばれるまでに台風が良く通る南九州に位置し、更に薩摩と大隅は桜島を始めとする活火山のおかげで長年にわたって灰が降り積もって出来た水捌けがよすぎるシラス台地が特に広く広がっているため、日本人の主食である米を育てるのに適した水田を広げるのは限界がある。

 だが、この時代の日本は小氷期にも関わらず人口は増加傾向にあって九州も例外ではなく、それもあって食い物が相対的に少なくなった南九州では食料と僅かな土地を巡る争いが史実だと頻発していた(実際、当時の日本を訪れた宣教師の記録にも、食料を巡る争いは日本全体で日常茶飯事であったことが記されている)。

 だが、そうなればますます食い扶持を失う人間が増えるのは自然の流れであり、そうして出てきた人々の行き先が明るくないのは自然であった。

 

「…そなたは本当に賢いし、人が良いなー。だから…今は父上と兄上の所へ急ごう。皆様がそなたのお土産もお待ちしているから…」

「…あ、はい…どうもー、気を遣わせたようですみませ…!?」

 

 前世が現代の博物館学芸員故にそういう暗い歴史知識と倫理観からくる名護丸の葛藤を感じ取ったのか、又七郎は気遣って急かすように促すが、その道中で名護丸はその魂と精神性ゆえにまた信じられないものを目の当たりにする。

 

「…え? 又七郎兄上…何かあそこでの田んぼで百姓たちは使ってる農具ってー…(あ、明らかに…前世の職業柄から見知ってー…というかー、こういう戦国時代転生系世界だと定番なのがー…)!?」

 

 鹿児島の町を囲う田園地帯を通る道に入った所で、名護丸はその転生者気質を大いに刺激する光景を目の当たりにする。

 

「あぁ、あの農具はね。あの長い針が沢山ついたのは千歯扱きと言って脱穀を素早く且つ簡単に済ませる道具だ。円のような大きな木箱が付いているのは唐箕と言って付いている取っ手を回すことで得た風の力であの上の口から臼に轢いた米を入れて籾殻と米を仕分ける道具だ。どれも明から入手した書物を元に皆さんが復元したものだよ。他にもー…」

「…そ、そうですかー…。どれもすごく便利なのはわかりますねー…(いやいやいや!? 名前も見た目も性能も同じ島の他の博物館にあった昔の農具の展示品とかとで見たし! 児童向けの昔の農業体験とかで米の収穫にスタッフとして参加したこともあったからわかりますよ! これってやっぱり他にも僕みたいなのがいるって証拠!? ってあー! もうあれこれ考えている間に史実と同じくこの頃の島津家の居城である内城(うちじょう)に着いたー!?)」

 

 目前の生前における戦国転生系ネット小説では普遍化した光景に色々と突っ込みたい気持ちを、急に感じ取れた死亡フラグへの恐れから必死に抑えつつ、今の自分が鹿児島で暮らす家が見えてきた。

 

「…おおー、お久しぶりだのー先せ…ではなくてお蕉殿、申し訳ないな。こちらもー色々と多忙ゆえに愚息を迎え役にせねばならず…」

「いいえ大殿、義久殿とこの人を遣わしてくれたあなたの慧眼に救われました。そして又七郎殿のご案内で道中も楽しきものを色々お見せしてもらえました。それと忠平殿と歳久殿も御父君と兄君をお支えられるまでになられて…」

「カカカ、そう言うお蕉殿も相変わらずお変わりないごちゃっなぁ。それと名護丸もさすがに指一本くらいは背が伸びたのう」

 

 そして、正門の前には当世の父である島津貴久、後に足利義昭から名前の一文字を貰って義弘と名乗って鬼島津と恐れられることになる次兄で薩摩弁が強い島津忠平、史実の戦国島津四兄弟では地味で有名な三兄の島津歳久が出迎えてくれた姿があった。

 

(…もしかしてー、離れている間に僕みたいな人がーこの本家に入りこんだのか!? 良心的で島津に好意的な人だと良いけどー。戦国で上げまくった手柄の犠牲にされた人達とか、もしくは江戸の砂糖地獄とか戊辰戦争とかで薩摩や島津を内心恨んでる人が内部から滅茶苦茶にするために田園で見たチート要素を餌に取り入ったりしたとか!? もしもそうだったら僕はどうすればー…!?)

 

 その数か月ぶりの再会で大きな成長をまた遂げていることが分かる家族からの、戦国時代の大名家には珍しい家族愛と親族への信頼を確かに感じ取れる当世チートボディゆえに、名護丸は頭の中がこんがらがってきたところで、その思考は鼻孔を通して伝わってきた()()で遮られることになる。

 

「…え、何この臭い…? 何ですかー…? 内城の後詰であるあの山の向こうの山々から―…冬場で落ちてはいますけどー…糞尿とかが長らく折り重なって時間が経ったような臭いがーしてくるんですけど―――??」

「「「「「!!??」」」」」

 

 だが、当世のチートボディを逆手に取った嗅覚を苦しめる奇襲攻撃に名護丸が齢相応の反応を示したその時、家族を含め何名かがギョッとした顔を一瞬だけだが浮かべて彼を沈黙しながら見やる。

 

「…き、気にしなくていいよー名護丸ー、この臭いはー民から取り入れた農具で手が余るようになった村人たちを集めてー、あの山の中で良い肥やしの配合を調べたり、作っているだけの臭いでー…えいだだだ!?」

「又七郎! このような時はまだ何も言わなくていい時だ!」

「ささ! お蕉殿も長旅でお疲れでしょう! さささ! どうぞ館へお上がりに…!」

 

 又七郎が作り笑いで何処か視線を斜めに逸らしながら解説しようとするが、歳久がその耳を掴んで強引に館へと引っ張り込んでいき、皆は続々と館の中へ上がっていく。

 

(―――お…て、あ、もしかして僕…下手すれば詰むような余計なことにしちゃった!?)

 

 その中で名護丸はしまったという顔で動きがしばし止まり、後から彼の不在に気づいた又七郎が戻ってきて館へ引き込むまでポツンと立ち続けた。




次回、主人公のおみやげ物が島津家中を色々と驚かせる予定です。
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