サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~ 作:oosima
○皇紀2213年・天文22年(西暦1553年) 日本
「…それではー、薩摩統一による安寧を護れたことと、島津宗家一門全員が揃えたこと…実におめでたい!」
名護丸達が鹿児島に帰り着いてから数日後の夜、今の島津家の居城である内城の大広間で、その父で島津家現当主貴久が一族及び郎党を集めて、奄美組も含めた薩南諸島組との久々の再会の喜びも交えた宴会を開いていた。
(…うーん、陰陽道とか修験道とか忍術とかそういうのが前世のファンタジーの魔法みたいな現象を起せる世界観とはいえ、やっぱ電気機器がないこの時代のこの夜にここまで明るい宴会を開けるというのは凄いけど違和感ー…)
その宴席の島津一門席の隅辺りにちょこんと正座していた名護丸は、柱に張られるか天上にぶら下げられて光を放っている陰陽道の札に不思議さを隠せない顔を浮かべていた。
この世界の陰陽道は何と札を太陽光などに当ててその明るさや熱を蓄えて、任意の時にそれを引き出すという技術が実用化されていたのだ。
(…前にいた世界の電池みたいな技術がもう実用化されているなんてなー。まあ、これの起源は
「お待たせしましたー。今宵の料理ですー。此度は薩南の島々で見つけられた新しく珍妙な作物も多く用いられていますよー」
名護丸がこの世界ではまだそこまで広まってはいなくてほとんどの人々も重要性に気付いていないだろう、その“貯め札”という技術に転生者気質からすごい可能性を感じたり、それの起源である前世には無かったその国へ心ひそかに反応していると、彼が関わっている品々が島津家中へ広く示された。
「…むむ? こちらの炊き込みご飯は…何やら薄黄色の芋のようなものをサイコロみたいに細かく切り刻んで混ぜたようなー」
「“甘藷(サツマイモのこと)”という芋を混ぜ込んだようですがー…」
「何やらこっちの赤い煮物はこの名前の通り赤い“赤茄子(トマトのこと)”の色らしいがー…」
「こちらの黄色くて長く太い細かい豆みたいなのが沢山ついているのは“玉蜀黍(トウモロコシのこと)”と言うらしいが、こちらは塩で軽く茹でただけだとー…」
「こちらの焼いた餅みたいなのは、“芋の木(キャッサバのこと)”という背が低い木の太い根を蘇鉄みたいにアク抜きしてすり潰して乾燥させたものを、水で練って焼いたものらしいがー…」
「こちらのごつごつした芋は“馬鈴薯(ジャガイモのこと)”と言うものらしい…人参とか他の野菜と煮込まれてて…肉は黒豚としてー…(肉じゃがみたいな感じ)」
「なんだか菓子というこの黒い小石みたいなのは“甘蔗(サトウキビのこと)”の汁を煮詰めて作ったものらしいがー…」
それらは今年で発覚した名護丸の陰陽道系木術のチートスキル(?)で、史実よりも早く(?)この日本に到来した作物だが、到来の詳細は秘されて本日の正月料理の材料として用いられていた。
(…とりあえず毒見されて大丈夫なのは厨房で確認したしー、キャッサバはアク抜きの方法が沖縄の親戚の農家でされていたのと同じなのは確認済みだけどー…え!? 何で義久兄さんあんなチラチラと時々こっちに視線を向けてくるの―――!?)
「…う…ぐぅぅ…!?」
今は隠されているが当世の自分が深く関わっている料理をまじまじと見つめてこれまでのことを考えながら不安を禁じえていない名護丸だが、そこで身内の不自然な反応に気付いて更に上座の方から追い打ちが掛かってきた。
「と、殿ぉ!? 何をそんな苦しそうに!?」
不安が強い思考に落ちている間に、上座に座っていた当世の父である貴久が料理を口にして苦悶した表情で喉を抑え込み始めたのだ。
(―――おってぇえーーーーーー!? そんな―確か厨房で毒がないのは毒見役の皆さんの反応で確認したのになんでー!? まさかここまで運んでくるわずかな隙を突いて盛られちゃったー!? もしくは杯や器の方に塗られていたってオチー!? これってもしかして父上が毒殺されてまた内戦にー!? いや!? それ以前に僕ってもしかしてー謀反人として処断される流れ―!? もうお終いだー!!!!)
「ど、どうしたんだ!? 何だか顔色が怖いぞー…!?」
声にこそ出してなかったが色々な意味で大量の死亡フラグを覚えた名護丸のムンクの叫びのような顔に、又七郎は泣きそうな顔になりつつも兄として宥めようとするが、そこで上座からのドンっという響きが皆の鼓膜を震わせてきた。
「…落ち着けい皆の衆! それで各々…此度の品をしっかと口にして味わうが良い! さすればわかる!!」
「…ぅ…うぅ…」
「わ、わかり申した…」
少し息苦しさを残した様子ながらも鋭い眼光を取り戻した貴久が刀の柄で机をぶっ叩いて発した制止の命令を受け、慌ただしくなっていた者達はおずおずと席に戻って視覚的にも奇妙に見えるその料理をゆっくりと口にしていく。
「…!? な、何じゃこの…玉蜀黍の粒々とした黄色い豆は噛めば噛むほど甘味が…!?」
「こ、こちらの甘藷を焼いただけのものは…凄く甘みがあってほくほくとしとる…!」
「肉じゃがに用いられてるこの馬鈴薯は豚肉や醬油と実に噛み合っとる…はぐはぐ!」
「この赤茄子の煮物も血のようなけったいな色じゃが…甘酸っぱい味が肉や野菜にさっきの珍妙な芋と絶妙にー…」
「こ、こっちの芋の木の芋を粉にして用いた焼き餅…それで挟んだ…この“
「こ、この“黒糖”なる小石みたいなものは噛めば噛むほど深い甘味が口の中に広がってー…!」
「お、おい! それは某のものだぞ!」
「ええい! 小さいことを言うでないわぁ!」
そして、貴久が勧めた理由を己が舌で次々と実感していく島津家中の姿に、先ほどまで首筋に冷たい感触を覚えていた名護丸は安堵の念を浮かべていた。
(…よ、良かった! どうやら未知なる味への驚きで身が固まっていただけのような感じでぇ…! 皆の反応からして好印象っぽくてぇぇ…! 前の世界の味に比べれば調味料や材料の都合で味が薄目とかでぇ不安だったけどぉぉぉぉ…)
「こ、今度は泣かれ始めたぞ?」
「な、何か昔から表情豊かな方とは思うがぁ…」
だが、それは顔にわかりやすく出ているので周囲の家臣の者達に多く気付かれて怪訝な顔を向けられていた。
「…おい、義久…名護丸だがぁ…もっと小さい頃より時々妙だな鋭いひらめきをしていたがぁ…」
「ええ、父上…もしかしたらー…
そして、その中には短くも神妙な顔で密談しあう父と長兄が混じっていることに、死亡フラグ回避に成功したという早とちりで気が緩んでいた名護丸は気づけてはいなかった。
「…さてと、名護丸よ…そなたに幾つかしたい問いがあるので来てもらったがよろしいかの?」
「「「……………」」」
数時間後、内城の奥にあるその一室の上座に座る歳を感じさせない厳格さと人情味が混じる両眼を浮かべた当世の祖父から呼び出しを受け、他にその場にはじーっと見てくる貴久と義久に蕉寧の他には他人の姿が見えない状況へ名護丸は呼び出しを受けた。
(…結局さっきの安堵が死亡フラグだったって事ですか!!!??)
周囲も小声が聞こえない距離まで遠ざかっている見張りを除けば人の気配が無い状況もあり、名護丸は反動から密かな謀殺や粛清フラグを覚えてかびっしょりと汗をだらだら流しまくるようになっていた。
次回、主人公の心拍数が再び猛烈に爆上がりする展開になります(笑)。