サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~   作:oosima

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今回、主人公の頭脳系チート要素と前世由来一般ピーポー気質のどちらも出てきます。


家族ゆえに言葉とその圧迫感は重くなる時もある

 ○皇紀2213年・天文22年(西暦1553年) 日本 薩摩国(さつまのくに) 鹿児島 内城(うちじょう) 奥の間○

 

 戦国時代におけるチートご老人を上げるなら、島津家ならば島津日新斎忠良が挙げられるだろう。

 史実では後の薩摩藩の教育にも影響を与えたいろは歌を考案したほか、農業には不向きな鹿児島の地で養蚕などの産業を興し、対明貿易の拡大、鉄砲の大量購入など島津氏中興の祖として知られている。

 

(ななな何をやっちゃったんだろう僕!? 何か気付かない内に死亡フラグになりそうな言動や行動をしちゃったー!?)

 

 その島津家のチートご老公にして、当世における自分の祖父である島津日新斎に密かな呼び出しを受けた島津名護丸は内心でテンパっていた。

 剃髪していてもう六十を過ぎてはいる身は前世現代でも老体だが、この乱世で中興を成したまでの器量とその経験に裏打ちされた眼光は衰える気配を感じさせず、それが名護丸の緊張を加速させていた。

 他で近くには父である貴久に長兄の義久、実母である蕉寧しかおらず、警備も声での密談が聞こえない距離まで遠ざかっている状況もあり、名護丸は密かに粛清フラグが立ったのではと不安になったのだ。

 

「…父上ー、名護丸はまだこんな小さな童ですぞ。そんな怖い雰囲気で問いをされたら言いたいことがあっても言えませんし諫言もしづらくなります」

「…あ、そうじゃったな。すまん…やっぱりこの歳になるとー気づかぬ内に悪手を取るものじゃなー…」

(…ほ、幾らかこわばりが解けた…あと数分くらいしたら御爺様のプレッシャーでちびりそうになった…)

 

 そこで貴久のフォローが入って名護丸は今にも泣きそうな顔が幾らか和らぐ。

 

「…それでは改めて名護丸よ、此度の珍妙だが薩摩の地には名利な作物をもたらしたこと、地味なれど万人を縁の下から助ける大功である」

「は、はい! お褒めくださりありがとうございま…す…え??」

 

 そこで日新斎が穏やかにかけた褒め言葉に名護丸は勢いよく土下座するが、その直後にその内容でドキッと胸が騒ぐ。

 

「お主は偶々明や東海向うの商人の船着き場で珍しい草を見つけたので興味をもって集成園で育てさせたら偶々食い物と分かったのが、今宵の宴席の料理の材料と言わせているらしいが、実際はお主の木術で生まれた品と言うのは既に知っておる」

「…ど、どうしてそれをー…!?」

「あのなあ、父である私が島津の現当主でその先代がお主の祖父なのを忘れたか? 忍びの者は多く従わせてあちこち調べさせておる。お主の行いもきちんと見ておるぞ」

(しまったー! この時代から島津家って内の監視体制がそこまですごかったのかー!?)

 

 名護丸が恐る恐る顔を上げて問うと祖父と共に少し呆れた顔になった貴久の答えで、島津の諜報対策の強さを思い出す。

 名護丸の前世における現代より昔の江戸時代、日本全国が鎖国(前世現代ではこの言い方も歴史研究分野では怪しくなってはいるが)と呼ばれる状況だった頃、その中で島津家が治める薩摩藩は国内鎖国と呼ばれるまでに他藩との交流には制限が設けられ、領内監視網も尋常ではなく強かった。

 この時代、まだ島津家領内は先にあげた火山活動やシラス台地に台風で農業が難しく、そのため自然の山野に住まいを置いてそこからの獣肉や毛皮に木材で生活しているものが多くいた。

 島津家は日新斎の代からそう言う者達の保護下に置くのと引き換えに、諜報部隊として組織してきたのである。

 

「…それでのう。名護丸よなぜお主はこの不毛の地が多い薩摩の地で観音の慈悲の如き手柄を上げながらそれを人にやるような真似をしたのだ? 功無きものは軽んじられるのが常のこの乱世なら普通は自身の手柄であることを隠したりはすまい」

(やばいやばいやばい! 穏やかな感じになったけどむしろ下手な嘘を付いたらすぐ見抜かれてその反動で失望されまくって結局消されるかも! ここはもういっそ正直且つ冷静にー…!!)

 

 その思い出した歴史的知識と父からの怪訝な顔での問いに、名護丸は内心では完全に混乱し恐れつつも表情は必死に冷静さを保たせ、言った方が良いと判断した言葉をそのチートボディによる高速思考で自分にとっては当り障りのないものに組み上げていく。

 

「…それは正直に恐ろしかったからです」

「…ほう、恐ろしかったとは?」

 

 そうして十数秒の沈黙を置いて名護丸が落ち着いた表情で述べたその第一声に、義久は興味を強めた表情で話しに加わってきた。

 

「…確かに、此度の宴席で出た新たな食材の多くは私の木術で生まれました。ですが、私自身もそのような術が扱えると知ったのは、あの日に鍛錬の合間の時間つぶしで陰陽術の修行をしたら偶然生じたものだったのです。それ故に、初めて目にするあれらにどのような効能があるのか分からず、慎重に調べる必要があったためです(見た目は実際に前世でのチート作物であったあれらだったけど、世界が違う以上は見た目だけで中身は毒物含めて別物の可能性があったから嘘は言ってない!)」

「それで、集成園の皆に頼んで共に面倒を見てもらい、共に調べていったと?」

「はい! 私一人だけではどのような効能があるのか調べるのに不足が多く、その点で人数を多くすればその分に増えた視点で様々な効能を調べられると考えたためです。それに役に立たない場合でも、義久兄上が薬草の研究のために設けられたあの集成園ならそのことがわかって早急に無駄な手間を減らせられると考えたのでー…」

「なるほど、それなら成功した今となってもあそこで調べて働く者達の功績とし、そなた自身の名にしなかったのは何故だ?」

「…それは、私自身と…何より島津の為です」

「…なるほど、それではその理由を述べてみよ」

 

 問うてくる人が増えるにつれて、名護丸は緊張から覚えるプレッシャーで一周廻っての影響で冷静になってか、落ち着いた様子で問いに答えるようになっていた。

 

「確かに生んだのは私ですが、実際に育てて調べるのには集成園の人々と共にしてもらいました。それなのに私一人の手柄にすれば、あの方の元で働いても手柄を奪われるだけであり、それが島津家のものだとすればそのことも含めて奪われたと見做す者達は周囲にそのことも含めて言いふらすでしょう」

「なるほど、自分だけのものとすれば島津には人材は来なくなり、また仕えている者達も良き奉公をしなくなると考えてか」

「その通りだな義久。だが、それではそなた自身の名を成功した今でも伏せているのは何故か?」

「…それも我が身を含めた島津の為です」

「ほう、我が身もか?」

「はい、此度の作物は恐らく島津家領内を根本から大きく変えるものになるでしょう。この時代、まずは人がいなければ何事も始められませんが、今は乱世で且つこの地は過酷な自然故に人は早死にしやすく、また飢えで満足な仕事を成せないのもざらです。この状況ではやせた土地で水が少なくても味の良い食材が多く採れる此度の作物は腹を満たして活気を増やし、兵を育てるうえでも大きな助けになります」

「ふむ、その通りだ。それが何故そなたの功績を隠さねばならぬ理由となる?」

 

 弟の落ち着いた振る舞いですらすらと述べられる言葉に、義久は警戒と興味を同時に強めた表情を向け続けるが、名護丸も普段の内心での彼が信じられないレベルで落ち着いた様子で言葉を続ける。

 

「…もしも私一人だけの手柄とすれば、此度から始まるだろう事業で良くなるだろう薩摩の国を見て、対立する他の大名は私を殺して島津の躍進を止めるか、もしくは奪って自らを富ませて逆に島津をしのいで滅ぼす力にしようとするかもしれません。ですが、ここは私だけでなく皆にその技や知恵を広めていけば、私一人を攫われるか殺されても無駄骨にしかなりません。むしろこの場合はなるべく多めの人数で共有すれば、幅広く意見を集めてよりよい方法が産まれやすくなり、他家からすればあいつ一人を消しても止まらんから無理だという感じで私への暗殺などの手を打たれる可能性も減るでしょう。無論、共に学び競い共有していく相手は他家に盗まれる可能性を考えて選ばなければいけませんが…」

「なるほど…確かに、いかに良き品でも少なければ利を受け取れる者も少なくなるしな…」

「それに、武士以上に領内の大半を占める百姓達の意見がもとで内紛になるというのも恐ろしいです」

「む?」

「恐ろしいと?」

「空論ではなさそうじゃな。言うてみよ」

 

 故に、名護丸の口から不穏な意見が出て家族が険しい顔を浮かべても言葉は続けられていく。

 

「武士が戦場でどれだけ華やかな手柄を上げてもそれを支えるのは年貢を納める百姓達であり、そもそも戦自体がそれを護るか増やすためというのが実体です。此度の作物の利で最も助かるのは彼らです。それを私の名で出してしまえば、末子の身で私の名が陰ながら大きくなる可能性もあります」

「…! なるほど…さすれば他家からすればお前を担ぐか旗印にして、島津家内部にも内紛を起せる切り込み口に見えると言うことか…」

「はい、今でこそ島津内部は他家と比べて平穏ですが…、父上の代はその養子入り先である先代勝久様の時に争乱が起き、周囲の佞臣にそそのかされて兵を上げた勝久様は最終的に母の伝手で豊後へ亡命となりました。そのことを考えれば今の島津でも同様のことはもう起きぬという保証はありません。何より…私自身もこれまで育てていただいた島津家に形でも弓を引く身になって首を撥ねられるという愚かな末路は御免蒙ります」

「…確かに、そうなった時にそれを押した他家は“お家を盛り立てた功ある身内を切り捨てるなど島津家は忘恩の輩が取り仕切る家である”と盛んに吹聴し、そうなれば民草からの信望を島津は失うというわけか。だからそなた自身の名は伏せておいたのか…」

「…はい兄上、そこまで見抜かれるとはさすが…何よりも第一は私もまだ命が惜しいのがー…」

「「「「…………」」」」

 

 こうしてすらすらと続く答えに伴って却って熱心さを増していく身内からの視線に、名護丸は内心でようやく今の状況は却ってやばいのではと思い始める。

 

(まずいまずいまずい! 何かこの重く言葉が止まった雰囲気って“この齢で末子がここまで物事を考えてられるなんて長男との跡目争いになりやすそうだから消しといたほうがいいんじゃね”って黙考!? 何度も自分の命が大事な保身アピールをしてみたけど“我が身が可愛い暗愚を装った方が安全そうだって見抜いてそうでやっぱ末子にしては脅威だから消しとこう”ってやっぱり抹殺対象に見られだしてる感じ!? こ、これってもしかして“もう金になりそうなものは出しているからめんどくさくなる前に病死とか他家による暗殺ってことにしておいて今の内に消しておこう”って感じじゃー…。戦国島津四兄弟とその身内は同時期では仲が良い方だから有能且つ従順アピールをしておけば大丈夫かと思ったけどー…考えが甘すぎた! 普通にこれって粛清になり得る流れ―――)

「お見事! その齢ゆえに所々の考えの拙さと視野の狭さはあるとして! その齢で本質をそこまで見抜くとはさすが我が島津家の男子よ!!」

「―――え…!?」

 

 その危機感が脂汗となって名護丸の緊張から却って感情が出なくなった能面から噴出そうとしたその時、長兄義久のパンっとした拍手と明瞭な声がそれを打ち消した。

 

「いやぁ、お蕉殿の子息だけあってさすがです! 私も妻もその教えを受けてきた甲斐がありますなぁ!」

「いいえ、貴久様あなたの血と御教えが第一です。その次は義久殿たちご兄弟が面倒を見てくださったからですよ」

「カカカ、見た目はともかく儂よりも年の功が勝るだけはあるのう」

「御爺様、女人にそれは禁句ですぞ」

(…た、助かった! どうにか“有能且つ忠義に厚い弟”って感じで重用されそうな流れになった! 兄さんありがっさまりょーた!!)

 

 前世でも見た兄が弟を自慢する場面を義久がしてくれて他の肉親も同調していく光景に、名護丸は緊張と恐怖から解放された反動で内心では奄美の方言が出て瞳が潤い始めた。

 

「皆様、もうこれなら“境迫門(さかせと)”の方も見せた方がよろしいかと」

「そうじゃな、この子はもう島津の将来を大きく左右するだろう芽になりつつある」

「鉄は熱いうちに叩けと言うからのう」

「皆様、この子が堕落しないようにあそこでも匙加減しつつどうぞ厳しく…」

「…え!!??」

 

 故にその潤いが、義久が普通に口から発したその地名とそれに同調する周囲の反応で、再びの反動で急速に血の気が引いて白い乾いた笑みとなった名護丸より涙となって流れ出てくるまで、数秒と掛からなかった。




次回、主人公は自分以外でのチート要素を目にする予定です。
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