すいません、ふざけました。
「──おい! 八神、お前も手を貸せ!
八番隊長官舎の近くで倒れていた旅禍が運ばれてきたぞ!」
「あ、はいはい、今行きます!」
慌ただしく走る先輩隊士の声に、
星はのんびりと応えながら救護室へと向かった。
運び込まれてきたのは、四番隊のベッドからはみ出すほどの巨体を持つ浅黒い肌の少年──茶渡泰虎。
その胸には、京楽春水の一撃によって刻まれた、
凄まじい斬撃の痕があった。
「ひどい傷……! 八番隊長直々の攻撃を喰らって、
よく命が繋がっていたものだわ……!」
先に治療に入っていた勇音が、悲痛な表情で霊圧を集中させている。しかし、チャドの傷は深く、一般的な回道では出血を止めるのが精一杯だった。
「勇音さん、僕が傷口の緊縛(止血)をやります。勇音さんは心音の安定と内臓の修復をお願いできますか?」
「えっ? あ、うん! 八神くん、お願い……っ!」
星がチャドの傍らに跪き、そっと両手をかざす。
次の瞬間、星の手のひらから放たれたのは、通常の白濁した光ではない。淡く、しかし密度が恐ろしく高い、翡翠色の稲妻の光だった。
(──『回道・雷電』。まぁ、一般隊士のフリをしなきゃいけないから、効果は一割程度に抑えて……と)
星が心の中で呟くと同時に、チャドの胸の肉が、まるで時間を巻き戻すかのように急速に塞がり始めた。
本来なら複数の席官がかりで数時間を要するはずの重症が、星が触れただけで、見る見るうちに「ただの裂傷」へと格下げされていく。
「な……っ!?」
その信じられない光景を間近で見た勇音は、驚愕のあまり回道の手を止めそうになった。
「八神くん、今の回道……っ、
そんな高度な術、私でも習ったことが……」
「あはは、ただの偶然思いついたんです。
僕、大柄な人の治療だけはなぜか得意で。
それより勇音さん、内臓の霊圧がまだ乱れてます。
僕が手伝うので、一緒に。」
星はそう言って、勇音の手の上から自分の手を重ねるようにして霊圧を流し込んだ。
「ひゃっ……!?」
至近距離で触れ合う手の温もり。そして、あの日隊長室の前で感じた、星の「優しくて、どこか底知れないほど強大で温かい霊圧」が、勇音の身体を包み込む。
一瞬で顔を真っ赤にした勇音だったが、星の真剣な(フリをした)目を見て、必死にドギマギを抑え込んで回道に集中した。
「う、うん……! 繋ぐよ……!」
二人の息の合った(?)共同作業により、チャドの容態は一気に安定へと向かう。
「……う……ん……」
やがて、浅い呼吸を繰り返していたチャドが、
微かに目を覚ました。
ぼやける視界の中で、チャドが見たのは──必死に自分の心音を追ってくれている背の高い女性(勇音)と、その隣で、あり得ない速度で自分の致命傷を治してのけた、どこか飄々とした雰囲気の死神の少年(星)だった。
「気が付きました? 無茶しますね、八番隊長に挑むなんて」
星は人懐っこい笑みを浮かべ、チャドの胸に包帯を巻き始める。
チャドは掠れた声で、しかし確かな直感を持って、星を見つめた。
「……あんた……が、俺の傷を……?」
「いいえ、ほとんどはうちの優秀な勇音副隊長のおかげですよ。僕はただの一般隊士ですから、包帯を巻くくらいしかできません。」
星はウインクをしながらそう言ったが、チャドの野生的な直感は騙されなかった。
あれほどの絶望的な一撃から自分を救い上げたのは、この「一般隊士」を名乗る少年の、底知れない力だ。
「……そうか。……だが、感謝する……」
チャドは静かに目を閉じ、再び深い眠り(回復のための睡眠)についた。
「ふぅ、これで一安心ですね。」
星が汗を拭うフリをすると、勇音はまだ赤みが引かない顔で、じっと星の手を見つめていた。
「八神くん、本当にただの一般隊士……なんだよね? さっきの、まるで……。」
「ただのサボり魔の一般隊士ですよ。あ、勇音さん、お礼にまた今度お団子奢ってくださいね」
「も、もうっ! すぐそうやって誤魔化すんだから……!」
ぷっと頬を膨らませる勇音。その距離感は、101年前から何も変わらない、二人だけの特別なものだった。
──しかし、チャドの治療が終わったのも束の間。
救護室の扉が再び荒々しく開け放たれ、今度は十一番隊の隊士たちが、血塗れの身体を引きずりながら飛び込んできた。
「四番隊!! 医療班を出せ!! 斑目席官と綾瀬川席官が……旅禍にやられたッ!!」
戦況は、一護たちの進撃によってさらに混沌へと突き進んでいく──。
どうも、真面目に書きましたが。
1部フザケました。
次回から、ちゃんとシリアスに書きます。