四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした   作:獅子論

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遂に、バレます。


主人公。星の力を一部の人物に。


氷解せぬ幻影、あるいは雛鳥たちの慟哭

「四番隊!! 医療班を出せ!! 斑目席官と綾瀬川席官が……旅禍にやられたッ!!」

 

 

救護室の扉が激しく開け放たれ、十一番隊の隊士たちが、

血塗れの二人を担ぎ込んで来た。

 

 

運ばれてきたのは、十一番隊第三席の斑目一角と、第五席の綾瀬川弓親。一角は黒崎一護との死闘で全身を深く切り裂かれ、弓親は志波岩鷲の奇策によって爆発に巻き込まれ、共に意識を失っている。

 

 

「二人同時にこんな重傷なんて……! 八神くん、私たちは斑目三席を! 弓親五席は他の隊士たちに回道を回して!」

 

 

 

「了解です、勇音さん。」

 

 

 

星と勇音はすぐさま一角のベッドへと駆け寄る。

 

 

一角の傷口からは未だに大量の血が溢れており、十一番隊特有の荒々しい霊圧が暴走して、治療の光(回道)を弾こうとしていた。

 

 

 

「くっ……霊圧が激しすぎて、回道が上手く浸透しない……っ!」

 

 

焦る勇音。十一番隊の死神は戦闘狂ゆえに、気絶していても魂魄が戦闘態勢のまま拒絶反応を起こすことがあるのだ。

 

 

 

「勇音さん、そのまま霊圧の供給を続けてください。僕が一角さんの暴走を抑えます」

「えっ? あ、うん……!」

 

 

 

星は一角の胸元にそっと手をかざした。

 

 

そして、周囲の隊士たちにはただの「止血の回道」に見せかけながら、手のひらの内側だけで、烈風の気流操作による微細な『霊圧の調律(圧殺)』を行った。

 

 

 

(四番隊の治療をナメるなよ、戦闘狂。大人しく寝てろ)

 

 

 

星が極小の範囲で放った冷徹な圧が、一角の暴走する霊圧を一瞬で力ずくでねじ伏せ、平穏な『凪』へと強制同期させる。

 

 

さっきまで激しく波打っていた一角の魂魄が、嘘のように静まり返った。

 

 

 

「──えっ!?」

 

 

勇音は目を見開いた。自分が流し込もうとしていた回道の光が、まるで吸い込まれるように一角の傷口へと馴染み、瞬く間に止血が完了していく。

 

 

 

「あはは、上手くいきましたね。勇音さんの回道が綺麗に入ったおかげです。」

 

 

星はいつもの冴えない一般隊士の笑顔で頭を掻く。

 

 

 

「う、うん……八神くんが抑えてくれたからだよ。ありがとう……っ」

 

 

 

数時間の突貫治療の末、一角と弓親の命の危機は去り、四番隊舎にはようやく深い夜の静寂が訪れた。

 

──そして、運命の翌朝。

東の空が白み始めた頃、瀞霊廷の静寂は「それ」によって完全に叩き割られることとなる。

 

「──いやああああああああああああッッッ!!!!」

 

 

五番隊副隊長・雛森桃の、引き裂かれるような悲鳴。

 

 

四番隊の救護班として現場に急行した星と勇音の目に飛び込んできたのは、五番隊舎の壁に、無残にも斬魄刀で磔にされた五番隊隊長──藍染惣右介の「遺体」だった。

 

 

 

「藍染……隊長……? うそ……そんな、隊長格が、こんな殺され方……ッ!?」

 

 

隣に立つ勇音が、あまりの光景に息を呑み、その長い身体をガタガタと震わせた。周囲の死神たちも「嘘だろ!?」「あの藍染隊長が!?」と、絶望とパニックの渦に叩き落とされている。

 

 

 

──だが。

 

 

 

周囲が涙を流し、取り乱すその狂乱の中で。

八神星の網膜だけは、まったく別の「真実」を捉えていた。

 

(……やれやれ。101年前とやってることが変わらないな。)

 

 

 

星の目には、壁に刺さっているものが藍染の死体などではなく、鏡花水月が作り出した歪な『幻形』であることが完璧に見えていた。

 

 

周囲の死神の五感が催眠で狂わされる中、星の持つ超越的な超感覚と『迅雷烈風』の気流探知は、壁の向こうの影から、自分たちを見下ろしてほくそ笑んでいる「生きている藍染」の微かな呼吸すら正確に捉えている。

 

 

 

(今ここで、あの偽物の首を撥ねて、本体を引きずり出してやってもいいけど……)

 

 

チラリと横を見る。

 

 

雛森は狂ったように泣き叫び、三番隊長の市丸ギンに刃を向けて暴走を始めていた。

 

 

そして──。

 

 

 

「どうしよう、八神くん……っ。瀞霊廷の中で隊長が殺されるなんて、これからどうなっちゃうの……私、どうすれば……っ」

 

 

勇音は、完全に恐怖に呑まれていた。副隊長としての責任感と、突如訪れた混沌への恐怖。今にも過呼吸で倒れそうなほど、彼女の美しい瞳から涙が溢れている。

 

 

 

星は、小さく息を吐いた。

 

 

これ以上、この人を怖がらせるわけにはいかない。

 

 

 

「──勇音さん」

 

 

 

星は一歩踏み込み、周囲のパニックに紛れるようにして、勇音の震える小さな肩を後ろからそっと抱き寄せた。

 

 

 

そして、周囲の死神たちには絶対に悟らせない極小の範囲にだけ、自身の内なる底なしの霊圧を──あの101年前に藍染を圧倒した、どこまでも深く、温かい『夜の凪』を、勇音の魂魄へと直接流し込んだ。

 

 

 

「ひゃっ……、あ……」

 

 

 

ドクン、と勇音の心臓が大きく跳ねた。

 

 

全身を包み込む、圧倒的なまでの強者の霊圧。普通ならその圧に気絶してしまうほどの質量なのに、星が流すそれは、驚くほど優しく、勇音の凍りついた心を芯から温めていく。

 

 

「大丈夫です。僕がここにいますから。」

 

 

 

星は勇音の耳元で、低く、けれど絶対的な確信を込めて囁いた。

 

 

 

「周囲に合わせて、驚いたフリをしていてください。何が起きても、僕があなたを指一本触れさせずに守ります。……だから、落ち着いて。」

 

 

 

「八神……くん……」

 

 

 

その言葉と霊圧に支えられ、勇音の頭の霧が嘘のように晴れていった。

 

 

(ああ、この人は……やっぱり、ただの一般隊士なんかじゃない)

 

 

その正体が何者なのかは分からない。けれど、この人がそばにいてくれるなら、

世界が滅びても自分は安全だと、本能が理解してしまう。

 

 

 

勇音はトクンと跳ねる胸を押さえ、真っ赤になりそうな顔を必死に伏せながら、星の腕の中でコックリと首を振った。

 

 

 

「う、うん……。ありがとう、八神くん……。」

 

 

 

落ち着きを取り戻した勇音を確認し、星は腕を離すと、すぐにいつもの「怯える一般隊士」の顔を作って周囲の騒ぎに同調した。

 

 

 

「うわぁぁ! 大変だ! 誰か、救護班、早く包帯を……! いや、もう手遅れなのか……!?」

 

 

 

わざとらしい大声をあげる星。

 

 

その大根役者っぷりを、壁の向こうの闇から見つめていた藍染惣右介は、眼鏡の奥の瞳を冷酷に細めた。

 

 

 

(……八神星。他の死神が私の鏡花水月に完全に惑わされる中、君だけは、今の今一瞬、私の霊圧を“威圧”したな? ……やはり君か。101年前、私の左腕を奪った『あの夜の狐面』は──)

 

 

 

周囲の死神たちに合わせながらも、隠しきれない最強の片鱗。

藍染の疑惑が、確信へと変わり始める。

 

 

 

 

けれど、星はそんな藍染の視線すら、ふんと鼻で笑い飛ばしていた。

 

 

大切なヒロインを守るためなら、これ以上の力を見せつけて、今度こそ息の根を止めても構わない。

 

夕闇が迫る瀞霊廷の空気は、八神星というイレギュラーの手によって、

さらにヒリヒリとした神域の緊張感へと突入していくのだった。




はい!


と言う訳で、勇音副隊長と愛染隊長に気づかれ始めました。



そして長い!書きたいことが多くてまとまりません!
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