でもーーーーーーやります。
すべての陰謀が暴かれ、双殛の丘は絶望に染まっていた。
五番隊隊長・藍染惣右介は、朽木ルキアの魂魄から「崩玉」を冷酷に奪い取り、市丸ギン、東仙要と共にその本性を現した。
駆けつけた隊長格たちが包囲しようとした、その刹那。
天が割れ、巨大な大虚(メノスグランデ)の群れが顔を出す。そこから放たれたのは、対象を隔離し、いかなる攻撃も遮断する絶対の光──『反膜(ネガシオン)』。
光に包まれ、ゆっくりと天へと昇っていく藍染は、眼鏡を外し、自身の髪を無造作に掻き上げた。その瞳には、すべてを見下ろす絶対者の傲慢さが宿っている。
「最初から誰も天に立ってはいない。……これからは、私が天に立つ」
全死神が、己の無力さに歯噛みし、その昇天を見上げるしかなかった、その時。
「──おいおい、勝手に一人で盛り上がってるところ悪いんだけどさ。」
あまりにも場違いな、気怠げな声。
死神たちの視線が一斉に向かった先には、
四番隊の白衣をなびかせた一人の一般隊士──八神星が立っていた。
「八神、くん……? だめ、下がって……っ!」
勇音が悲鳴のような声をあげるが、星は止まらない。一歩、踏み出す。
その瞬間、双殛の丘の全域──いや、瀞霊廷全土の空気が、
ミリミリと音を立てて『圧殺』された。
「この霊圧は……ッ!?」
山本総隊長が驚愕に目を見開く。
星の全身から溢れ出たのは、天を圧し、大地を割る、
死神の次元を遥かに超越した『底なしの深淵』。
その両手に、尸魂界で3例目。
二刀一対の斬魄刀──『迅雷烈風』が具現化する。
「まさか……ッ!?」
反膜の中で、藍染の顔から余裕が完全に消え失せた。
忘れるはずがない。激痛と共に、肉体を再生させるのに数十年の歳月を費やした
──あの101年前の夜に自分をバラバラに引き裂いた『あの男の霊圧波形』。
「……気づくのが遅いんだよ。101年前、お面を被った僕に斬られた傷はもういいのか?
よくも数十年もコソコソ潜伏してたな。」
「フッ。やはり君だったのだな。あの時の狐は。御覧の通り全て元に戻したさ。」
藍染は『反膜』にいる状態からか余裕の表情を崩さなかった。
「──お前が天に立つって? 笑わせるな。
僕のいる世界で、僕より高い場所に立とうなんて思うなよ。」
星は『迅雷烈風』を逆手に交差させ、大地を踏みしめた。
もはや一般隊士の仮面など不要。
今、全死神の前で、最強の男の真名(口上)が解き放たれる。
「──唸れ烈風、轟け迅雷! 全てを縛り、神をも穿て!!」
ドガァァァァァァンッッ!!!!
星の解き放った100%の霊圧に呼応し、双殛の丘を包囲するように、
天を衝く「緑の竜巻の龍」と、世界を焼き尽くす「漆黒の雷龍」が同時に
具現化した。
それは世界そのものを拒絶する絶対の結界陣。
「──風雷双龍陣(ふうらいそうりゅうじん)!!!」
星が一閃すると同時に、二頭の暴風と雷撃の巨龍が、中央の藍染たちに向けて一斉に牙を剥いて収束した。
本来ならいかなる攻撃も通さないはずの『反膜』の光が、星の風雷の前に、ガラス細工のように容易く粉々に砕け散る。
「馬鹿なッ!? 反膜が……引き裂かれるなどということが──ぐ、ああああああああああああああああああッッッ!!!???」
再び、藍染の口からこの世のものとは思えない絶叫が響き渡った。
市丸ギンも東仙要も、あまりのエネルギーの質量に防戦一方となり、
血反吐を吐いて絶叫する。
空間ごと神の嵐に揉みくちゃにされながら、藍染は、右腕と左脇腹を根こそぎ消し飛ばされ、満身創痍という言葉すら生温い姿で、強引に虚圏の割れ目へと吸い込まれて消えていった。
嵐が去り、静寂が戻った双殛の丘。
反膜は完全に消滅し、天の割れ目は閉じられた。
残された護廷十三隊の全員──山本総隊長も、京楽も、白哉も、そして黒崎一護すらもが、開いた口が塞がらない状態で、たった一人佇む八神星を見つめていた。
「はぁ……。四番隊の白衣、ボロボロになっちゃったな」
星はいつもの気怠げな様子で頭を掻くと、ゆっくりと四番隊の面々の元へと歩いていく。
あまりの事態に腰を抜かしていた勇音の前に跪き、星は優しく、けれど少し不器用な笑みを浮かべた。
「お待たせしました、卯ノ花隊長・勇音さん。
愛染達は、僕が宇宙の果てまで吹き飛ばしておきましたから。」
「八神……くん……っ」
勇音は溢れ出る涙を堪えきれず、大勢の死神の目があることも忘れて、星の胸へと勢いよく飛び込んだ。星はそれをしっかりと受け止め、その背中を優しく撫でる。
護廷十三隊の誰もが、今確信した。
四番隊のサボり魔の一般隊士──八神星こそが、この尸魂界の歴史の裏に隠されていた、文字通りの『天をも落とす、最強の死神』であるということを。
この小説を、考えた最初の頃からここかなぁって思ってましたが。
ずっと悩んでました。
文章に出来て安堵しています。
正体(強さ)を晒し、これまでの生活は守れるのだろうか。