四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした   作:獅子論

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101年前に絡み無かったあの人達。





常夜の地下室、あるいは先覚者たちの盤上

空座町・浦原商店の地下に広がる、広大な模擬戦場。

 

 

 

グリムジョーたち破面(アランカル)が

虚圏(ウェコムンド)へと撤退したその翌日、

星は四番隊の巡回という名目の裏で、

この地下空間へと足を運んでいた。

 

 

「──いやはや、お久しぶりッス。驚きましたよ八神さん。

まさか四番隊の臨時出張班として現世に降り立つなり、

あの破面を片手であしらってしまうなんて。」

 

 

からからと軽い笑い声を上げながら、緑と白の信者帽をかぶった男──浦原喜助が歩み寄ってくる。

その手にはいつも通りの仕込み杖があったが、

帽子に隠れた瞳は、星の動向を冷徹に観察していた。

 

 

「しょうがないでしょ。浦原隊長。

目の前でルキアちゃんが風穴空けられて、

一護少年が脳天カチ割られそうになってたんだ。

四番隊の席官として、患者の増産を見過ごすわけにはいかないからね。」

 

 

浦原は苦笑し、手にした仕込み杖をポンと突いた。

 

 

「……星さん、お願いですからその呼び方は止めてくださいよ。もうその座を退いて長いですし、なにより貴方にそう呼ばれると、自分が『何かの隠し事』をしているような気分になる……というか、何より落ち着かないんです。」

 

 

 

「相変わらずの言い草じゃな、星よ。」

 

 

 

 

岩肌の影から声をかけてきたのは、

褐色の肌に妖艶な肢体を誇る女性──四楓院夜一だった。

 

 

 

 

だが、普段の快活な彼女とは違い、その右腕と左足には痛々しい包帯が巻かれている。先日現世に襲来した十刃(エスパーダ)のヤミーと交戦した際、奴の異様な硬さに自慢の白打が弾かれ、肉を痛めていたのだ。

 

 

「あれ、四楓院隊長。ずいぶんと派手にやられたんですね。

いい一撃をもらったみたいで。」

 

 

 

 

「ふん、皮肉を言うな。。

……それと星よ、ワシの事も『隊長』と

呼ぶのは止めてくれ。背中が痒うていかん。

奴らの『鋼皮(イエロ)』は想像以上に硬くてな。

……おい、突っ立ってないで、

四番隊様の自慢の回道を見せてくれんか?」

 

 

夜一が不敵に笑うと、星は「人使いが荒いなぁ」

と苦笑しながら彼女の隣に跪いた。

 

 

星がそっと両手をかざすと、手のひらから淡い翡翠色の光──回道が放たれ、夜一の四肢を優しく包み込む。

 

 

「──っ!? はは、やはりお主の回道はいつ受けても反則じゃな。痛みが一瞬で消えていくわ。」

 

 

夜一の肌の下で、傷ついた筋繊維が猛烈な速度で再生していく。

 

 

その様子を見ながら、浦原は真剣な表情で顎に手を当てた。

 

 

「しかし、八神さん。双殛の丘で、総隊長の前であれだけの霊圧を開放し、今回グリムジョーを退けたことで、藍染惣右介はおろか護廷十三隊の全員がアナタの『規格外』に気づいてしまいました。良かったんですか?」

 

 

「いいんだよ、これで。総隊長には『四番隊四席』って役職を押し付けられたけど、代わりに『勇音副隊長の監視下(建前)』っていう、これ以上ない特等席をもらったからね。僕としては、彼女の後ろでのんびり薬草を干せればそれで満足さ。」

 

 

星が飄々と言ってのけると、夜一は包帯の取れた腕を動かしながら、呆れたようにため息をついた。

 

 

「相変わらずの身内びいきじゃな。お主がその虎徹の小娘を気に入っているのは分かるが……藍染がそれを放っておくと思うか? 東仙の口ぶりから察するに、藍染はお主への『復讐』を最優先に動いておるぞ。」

 

 

浦原の目がスッと細くなった。

 

 

 

「……藍染の狙いは、現世の黒崎さんを覚醒させること、

そして──自身の完璧な計画を101年前から二度も叩き潰した『八神星という最大のリスク』を排除すること。

奴は近いうち、アナタの最愛の日常(四番隊)を人質に取るような真似をしてくるかもしれない。」

 

 

「させないよ、そんなこと。」

 

 

星は立ち上がり、腰の二本の斬魄刀──『迅雷烈風』の柄を静かに撫でた。

 

 

 

その瞬間、浦原商店の地下空間の全域が、一瞬だけ呼吸を忘れるほどの圧倒的な『絶対零度の凪』に支配される。浦原も夜一も、本能的に肌が粟立つのを感じた。

 

 

 

「藍染が虚圏で何を企もうが勝手だけどさ。もし僕の四番隊(日常)や、勇音ちゃんにその汚い手を伸ばすなら──今度は腕の一本や二本じゃ済まさない。奴が手に入れた『崩玉』ごと、僕の『夜』で虚圏の空もろとも塵一つ残さず消し飛ばしてやる。」

 

 

それは、傲慢ではなく、実行可能な神の宣告。

 

 

 

星の底なしの霊圧を感じ取り、浦原はフッと帽子を押し上げて笑った。

 

 

 

「くく……相変わらず頼もしいことで。では、アタシは、これまで通り現世で黒崎さん達の育成と、空座町決戦の準備を進めます。八神さんは──」

 

 

 

「僕は、四番隊の出張業務を適当にこなして、早く瀞霊廷に戻るさ。僕がいないと、僕等の副隊長、寂しくてまた泣きそうな顔になっちゃうからね。」

 

 

 

星はいつもの気怠げなサボり魔の笑顔に戻ると、浦原たちにひらひらと手を振って、地下室の階段を上っていった。

 

 

「……相変わらず、底の知れん男じゃな。味方でなければ、ワシが真っ先に逃げ出しておるわ。」

 

 

「ええ。ですが、あの藍染惣右介が唯一『恐怖』を抱くイレギュラーが僕らの味方にいる。これほど心強い盤面はありませんよ。」

 

 

 先覚者たちの密談が終わり、破面篇の真の戦いに向けて、星の『嵐』が静かに牙を研ぎ始めるのだった。




出張診療所。大盛況です。
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