四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした   作:獅子論

37 / 39
無理矢理。


分からせの風、あるいは地獄の先にある地獄

デジタル空間が解除され、XCUTIONのアジトに現実が戻る。

 

 

 

 

銀城たち全員から力が抜け落ち、彼らがただの「人間」へと戻った安堵感の中──雪緒だけが、最後に残った自分の完現術『インビンシブル・オーダー(無敵の秩序)』の処理に困っていた。

 

 

 

「あ、あの! 僕の力は特殊すぎて、譲渡とか簡単に……!」

 

 

 

 

「あーもう分かった! 雪緒、お前もさっさと人間に戻れ!」

 

 

 

「えっ、ちょっと、いきなり……ッ!?」

 

 

 

 

一護は、銀城たちに負けないくらい力強く雪緒の肩を掴むと、

 

 

 

 

 

「お前の孤独も、その力に対する執着も、全部俺が受け止めてやる!」と霊圧を雪緒の魂魄へ流し込んだ。

 

 

 

 

 

雪緒の完現術も光の粒子となって霧散し、

一護の黒い装甲が一段と漆黒の深みを増す。

 

 

 

 

 

アジトの全員が人間へと戻り、そこにいたのは、

最高にスッキリした顔の銀城と、

呆然としながらも少し涙ぐむ雪緒だった。

 

 

 

 

「……ハハ。お前、本当にすげぇな。俺たち全員の荷物を、笑いながら引き受けやがった。」

 

 

 

 

銀城が心底感心したように笑う。

 

 

 

 

 

──だが、その心地よい余韻は、アジトの入り口に佇む男の一言によって、冷たい氷水のように断ち切られた。

 

 

 

 

 

「素晴らしいね。……でも、少し困るんだよね。

僕の計画(過去)が、勝手に書き換えられてしまっては。」

 

 

 

 

 

月島秀九郎。

 

 

 

 

 

彼が懐から一振りの栞のついた刀を取り出した瞬間、

アジトにいた銀城やリルカの顔色が変わる。

彼らにとって、月島は「最も恐ろしい敵」であり、

何より一護の過去を書き換えれば、

この美しい救済劇すらも彼の手の平の上で終わってしまう。

 

 

 

 

「一護、下がれッ! そいつは触れただけで、お前の過去を──」

 

 

 

 

 

銀城が叫ぶが、遅い。月島はすでに優雅な足取りで一護へと歩み寄っていた。

 

 

 

 

「君のその新しい力、少しだけ僕にも貸してもらおうか。……『ブック・オブ・ジ・エンド』」

 

 

 

 

 

月島の切っ先が、一護の眉間へと向かう。

 

 

 

──その時。

 

 

 

 

 

月島の影が、不自然に「ねじ切れた」。

 

 

 

 

 

「──おやおや。人の過去に勝手に土足で踏み込んで、自分好みにリフォームするなんて、随分と趣味の悪いインテリアコーディネーターだね、君は。」

 

 

 

 

 

いつの間にか、一護と月島の間に、

だらしなく白衣を羽織った男が立っていた。

 

 

 

 

 

八神星。カウンターでラーメンを食べていたはずの男が、

月島の刃を指先一本で受け止めている。

 

 

 

 

 

「……死神? 邪魔をしないでくれるかな。君は僕の過去の──」

 

 

 

 

 

月島が星に刀を入れ、その精神世界へと侵入しようとした。

 

 

 

 

 

 

──だが、次の瞬間。

月島の表情から血の気が完全に消え失せた。

 

 

 

 

 

「……なっ、これは……ッ!?」

 

 

 

 

 

月島の『ブック・オブ・ジ・エンド』が触れた星の精神世界。

そこにあったのは、星自身の過去ではない。

 

 

 

 

 

 『烈風』が編み上げた無限の暴風の檻と、

その檻を内側から食い破らんとする、

神をも焼き切る漆黒の雷撃──『迅雷』の暴力的な奔流。

 

 

 

 

 

星が毎日必死に封印している

「無限に溢れ出る神の霊圧」の、ほんのわずかな漏れ。

 

 

 

 

月島がその深淵に触れた瞬間、

過去を書き換えるという生温い能力など、

その莫大な「天災の質量」によって一瞬で精神が焼き切れ、

脳がショートした。

 

 

 

 

「が、ぁ、あぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 

 

 

月島は悲鳴を上げる間もなく、刀を落として膝から崩れ落ちた。泡を吹き、白目を剥いて卒倒する。

 

 

 

 

 

星は倒れた月島の襟元を軽く踏みつけ、

冷ややかな視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

「人の過去を盗み見して、優越感に浸ってた報いだ。……君の脳みそ、今度から少しだけお休みしてもらうよ。二度と、他人の人生を勝手に書き換えるような真似はできないようにね。」

 

 

 

 

星が指先から放った極小の翡翠色の風が、

月島の脳に直接「静かなる嵐」を吹き込み、

彼の『ブック・オブ・ジ・エンド』の機能を完全に封印した。

 

 

 

 

 

「さて。これでお掃除完了。……一護、僕、本当に腹減っちゃったよ。次はラーメンじゃなくて、牛丼にしてくれない?」

 

 

 

 

いつもの飄々とした笑顔に戻った星に、

一護は月島を見ていた恐怖を忘れ、ただただ

「……あんた、一体どうなってんだよ」

と呆れ果てるしかなかった。




どーーしても雪男の完現術を譲渡する方法が思いつきませんでした。


強引すぎたかなぁって。反省しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。