進んでも地獄
──ドガァァァァァァァァァンッッッッ!!!!!
「なっ……何事じゃァァァッッ!!!」
突如として、瀞霊廷の全域から巨大な青き霊圧の火柱──
『遮魂膜』を内側から食い破る滅却師の
聖兵(ソルダート)たちの襲撃が始まった。
千年の怨念を抱いた『見えざる帝国』の第一次侵攻。
「隊長格の卍解が……奪われた……だと……!?」
技術開発局からの絶望的な通信が鳴り響く。
白哉、砕蜂、日番谷、狛村──護廷十三隊の中核を成す隊長たちの卍解が、滅却師たちの奇妙なメダリオンによって次々と強奪され、戦況は初手から完全なる『蹂躙』へと変貌していた。
「八神くんッ!! 救護班、第一~第三部隊を率いて戦線へ向かいます! 準備を──」
四番隊舎の作戦室。
大慌てで指示を飛ばす勇音の声を聞きながら、
星は、自身の胸元を強く押さえていた。
(くそっ、このタイミングで……っ!)
精神世界では、空間が真っ赤にひび割れていた。
『烈風』の風の檻はすでにボロボロに引き裂かれ、
それを『迅雷』が自身の雷撃で、自傷行為のように
魂を焼きながら繋ぎ止めている。
外からかかる滅却師たちの強大な霊圧のプレッシャーに呼応するように、星の中の『神の霊圧』が、暴走寸前の質量でブワリと膨れ上がろうとしていた。
(今、僕が動けば……封印が解ける。
戦っても、治療(回道)でも霊圧を練り使えば、
器の崩壊が早まる……!)
「八神くん……?」
星の異常な発汗と、見たこともない険しい表情に、
勇音が不安そうに声をかける。
「……何でもないです。行きましょう、勇音さん。」
星はいつもの気怠げな笑顔を無理やり作り、
戦場へと瞬歩で飛び出した。
──そこは、地獄だった。
あちこちに死神たちの凄惨な死体が転がり、建物の影では、星騎士団(シュテルンリッター)の一人が、四番隊の救護班ごと死神たちを笑顔で惨殺していた。
「あはは! 死神なんて、ただのマトね!」
「──っ、下がれッ、みんな!!」
勇音が前に出て始解『凍雲』を構えるが、
敵の滅却師が放つ神聖滅矢の雨の前に、
一瞬で防戦一方に追い込まれる。
「っ……!」
星は一歩、前に踏み出そうとした。
(僕が、刀を抜いて──『迅雷烈風』でこいつを吹き飛ばせば、一瞬だ。……だけど、それをやったら、
僕はもう、勇音さんの隣で書類をサボれなくなる)
戦うべきか。
それとも、後ろで血を流して倒れている、
今にも魂魄が消えそうな隊士たちの
治療(回道)に専念すべきか。
(いや、治療だってタダじゃない……。回道で霊圧を細かくコントロールするたびに、僕の魂の器はきしみ続ける。戦っても、治療しても、僕は……!)
初めての、明確な「迷い」。
己の中に宿る最強すぎる力が、
星のすべての選択肢を縛り、冷酷な天秤にかける。
「八神、くん……っ。迷わないで、私は、大丈夫だから……っ!」
神聖滅矢の爆風に吹き飛ばされ、血を流しながらも、勇音は星の後ろ姿に向かって必死に叫んだ。彼女は気づいていた。星が今、自分たちには理解できない『底知れない恐怖』と戦っていることに。
「……はは。格好悪いな、僕は。四番隊のくせに、自分の霊圧なんか気にして、出し惜しみ(サボり)してる場合じゃないだろ」
星の瞳から、迷いがスッと消え去る。
キィィィィィィン…………。
星が白衣を脱ぎ捨て、腰の二振りの斬魄刀
──『迅雷』と『烈風』の柄に手をかけた。
その瞬間、彼の周囲の空間が、翡翠の風と漆黒の雷によって
物理的にミキリと歪み始める。
(まずは目の前のこのネズミを片付けて、それから全員、僕の回道で意地でも生き残らせてやるッッ!!)
己の消滅という絶望の未来を見据えながらも、大切な日常のために、星くんがその「封印されし神の力」の片鱗を、
血に染まる瀞霊廷に解き放とうとしていた。
内側からの恐怖と戦う姿は、
オールマイトのオマージュです。
カッコいいなって思って取り入れて見ました。