不思議ですね。
顔から火が出るかと思いましたw
見えざる帝国の第一次侵攻が終結し、瀞霊廷は深い傷跡の中で、静かに、けれど確実に新しい血を滾らせていた。
【一番隊舎・奥書院】
「──やれやれ、まさか僕がこの歳になって、
総隊長なんて大役を押し付けられるとはねぇ。」
新総隊長に就任した京楽春水は、トレードマークのピンクの織羽織を揺らしながら、深くため息をついた。
その視線の先には、白い寝衣を纏い、片腕を失いながらも、未だ衰えぬ眼光で座す山本元柳斎重國──旧総隊長であり、現在は護廷十三隊の「相談役」となった男がいた。
「ふん。春水、泣き言を吐くな。八神星がその命を賭して繋いだこの老骨の命……。ただの相談役として座しておるだけと思うなよ。お主が迷った時は、いつでもその頭を木杖で叩き割ってやるわい。」
「そりゃあ心強いねぇ、山じい。」
京楽は苦笑しつつも、その瞳には新総隊長としての
不退転の覚悟が宿っていた。
「……で、山じいの命を救った、
うちの『最高のサボり魔』の様子はどうだい?」
「……。四番隊で、いつも通り薬草を干しておる。だが──」
山本元柳斎は目を閉じ、星がユーハバッハの剣を止めたあの瞬間の、世界を押し潰さんばかりの翡翠の風と漆黒の雷を思い出していた。
「あの男の『器』は、もう限界に近い。
戦闘はおろか、回道を練ることすら自身の寿命を削る綱渡りじゃ。……これ以上の戦い、あの男に参加をさせてはならん。
それは、三界の破滅を意味する。」
「……分かっているよ。」
京楽の帽子の影が、一段と濃くなった。
【四番隊舎・地下救護室】
「──一護。本当に、行くのかよ。」
救護ベッドの横。白衣を着た星は、包帯を巻かれた黒崎一護の姿を見つめていた。
現世から遅れて駆けつけた一護だったが、星騎士団の最高幹部との激闘の末、死神の力の上に完現術の装甲を重ねたあの『融合卍解』を、力ずくでへし折られてしまっていた。
「ああ。零番隊の人たちに言われたんだ。折れた卍解は、瀞霊廷じゃ二度と直らねぇってな。……俺は、霊王宮に行く。
そこで、俺の『本当の斬魄刀』を打ってもらう。」
一護の瞳に絶望はなかった。銀城たちの想いを引き受け、さらに強くなるための渇望だけがそこにある。
「八神さん。あんた、俺を助けるために凄い無理したんだろ?
身体、ボロボロじゃねぇか。」
一護は星の体内でパチパチと小さく爆発を繰り返す『迅雷』と『烈風』の悲鳴を、その鋭い霊圧知覚で感じ取っていた。
「あはは、バレちゃった? ちょっとね、
ラーメンの食べ過ぎでさ。」
星はいつものように飄々と笑い、一護の頭をパシッと叩いた。
「少年。君が霊王宮でどこまで強くなるか、楽しみにしてるよ。……僕の『サボり時間』が切れる前に、さっさとその新しい刀、持って帰ってきなよ。」
(……じゃないと、次、僕が本気を出したら……本当に、君に後始末を頼むことになっちゃうからね)
星は心の中でそう呟きながら、一護に背を向けた。
その直後、高天から降りてきた『天柱輦(てんちゅうれん)』とともに、一護は零番隊の面々と共に、雲の上の領域──霊王宮へと旅立っていく。
残された瀞霊廷。
山本元柳斎重國という大御所、京楽という新総隊長、そして自分の命のメーターを削りながら静かに佇む八神星。
滅却師の第二次侵攻までの短い「夜明け前の静寂」の中で、それぞれの決意が交錯していくのだった。
てな訳で元総隊長改め、護廷十三隊相談役の
山本元柳斎重國の誕生です。