四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした   作:獅子論

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ジャンプっぽく。
BLEACHっぽく


夜明け前の星霜、あるいは嵐への胎動

──精神世界。

 

 

 

 

そこは、真っ赤にひび割れ、

今にも崩壊せんとする果てなき荒野だった。

 

 

 

 

「主(あるじ)、まだ消えるには早すぎます……!!」

 

 

 

 

翡翠の髪を振り乱し、引き裂かれた暴風の檻を必死に繋ぎ止めようと叫ぶ、『烈風』。

その指先からは血が滲み、それでもなお主の日常を守るために牙を剥き続けている。

 

 

 

 

「封印なら、私が何百・何千・何万通りだって、考えてみせます……! だから、どうか……っ!」

 

 

 

 

「そうだよ、主!! あたし細かい事出来ないけど、霊圧を力ずくで中に押し込む事なら、まだいくらでも出来るよ……っ!」

 

 

 

 

その隣で、漆黒の雷撃を全身からパチパチと火花散らせ、暴風の檻から漏れ出そうとする神の力を内側へ無理やり凝縮している『迅雷』が、涙を浮かべて叫んだ。

 

 

 

 

 

「だからさ……っ、そんな簡単に諦めて、一人で消えようとしないでよ……っ!!」

 

 

 

 

「二人とも……。」

 

 

 

 

 

星は、泣きながら自分をこの世界に繋ぎ止めようとする

二振りの片割れたちを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

消滅を恐れ、どこか一歩引いていたのは自分の方だった。

斬魄刀達が、そして現実の勇音が、これほどまでに自分を求めてくれている。

 

 

 

 

 

(──そっか。消えるのが怖いからって、小さくまとまろうとしてたのが間違いだったんだ。溢れるなら、器の方を『進化』させて広げればいい──)

 

 

 

 

 

 

星の魂魄の中で、何かがパキン、

と心地よい音を立てて覚醒した。

 

 

 

 

 

 

風が雷を呼び、雷が風を加速させる。

二刀一対の絆が、星の魂の『器』そのものを

一段上の次元へと新生させていく。馴染ませるんじゃない。

器の容量を増やすイメージ。

これなら、始解の技をどれだけ連発しても、

しばらくは暴走することもない。

 

 

 

 

暴走しかけていた霊圧が、驚くほど滑らかに、

星の五体へと融解し、収束していった。

 

 

 

 

──現実世界。

 

 

 

 

星の瞳に、生気が戻る。

 

 

 

 

「……悪かった。もう、絶対に諦めたりなんてしないよ。」

 

 

 

 

 

 

星は後ろから自分を抱きしめる勇音の腕を優しくポンと叩くと、静かに前へと歩み出た。

その全身から漂うのは、

先ほどの天災のような狂気ではない。

自然そのものを従えるような、

圧倒的な『静謐の威圧感』。

 

 

 

 

 

「な、何なんだ……霊圧が、完全に制御された……!?」

 

 

 

 

 

恐怖を打ち消すように、敵の滅却師が奪った卍解──

『大紅蓮氷輪丸』の真の力を解放した。

 

巨大な氷の龍が天を衝き、星を丸ごと

圧殺せんと咆暮を上げて狂い降りてくる。

 

 

 

 

 

星はただ、静かに二振りの斬魄刀を構えただけだった。

新しく進化した器から、

始解の「新技」が滑らかに具現化する。

 

 

 

 

 

「──『迅雷・雷光龍(らいこうりゅう)』」

 

 

 

 

 ガガガガガガガガッッッ!!!!

 星が右手の『迅雷』を一閃した瞬間、彼の背後から、天をも焼き尽くすほどの漆黒の雷霆で編み上げられた巨大な「雷の龍」が顕現し、咆哮した。

 

 

 

 

 

 

「──『烈風・風刃龍(ふうじんりゅう)』」

 

 

 

 

 

 

 続けて左手の『烈風』を静かに薙ぐと、漆黒の雷龍の周囲を、大気そのものを鋭利な千の刃に変えた翡翠色の「暴風の龍」が、螺旋を描きながら絡みついた。

 

 

 

 

 

風と雷。二頭の神竜が、完全に一体となって天へと昇る。

 

 

 

 

 

「行け。」

 

 

 

 

 

──ドガァァァァァァァァァンッッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

激突は、一瞬だった。

 

 

 

 

 

大紅蓮氷輪丸の氷の龍は、星の放った『雷光龍』と『風刃龍』の複合双龍の前に、触れた瞬間に分子レベルで粉砕・蒸発させられていく。

 

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な……ッ!? 僕の、奪った卍解が……っ!!」

 

 

 

 

 

 

バリバリバリ、と音を立てて、滅却師の持つメダリオンが、そして大紅蓮氷輪丸の氷の翼が、内側からの風と雷の圧力によって物理的に「破壊」され、粉々に砕け散った。

 

 

 

 

「がはっ……ぁあぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

卍解を破壊された反動、二頭の龍の凄まじい風圧の残滓だけで、滅却師はそのまま遥か彼方の壁へと吹き飛んでいき、完全に再起不能となって白目を剥いた。世界を滅ぼしかけた大紅蓮氷輪丸が、星の始解の新技だけで跡形もなく完全解体されたのだ。

 

 

 

 

 

「……ふぅ。お疲れ様、烈風、迅雷。」

 

 

 

 

 

星は刀を鞘へと収めると、自身の霊圧メーターが、先ほどよりも遥かに強固で広い器の中に綺麗に収まっているのを感じていた。だが、カウントダウンは止まった訳ではないが・・・。

 

 

 

 

 

だけど、戦える時間は、二振りの頑張りによって確実に延びた。

 

 

 

 

 

八神星のこの異次元の奮闘、そして山本元柳斎の生存──。

想定外のイレギュラーの連続に、

滅却師の王ユーハバッハは一度軍を引き、

瀞霊廷には一時的な静寂が戻る。

 

 

 

 

 

「……よかった。本当に、無事でよかった……っ」

 

 

 

 

 

四番隊舎の救護室。

 

 

 

勇音は星の無事な姿を見るなり、ぽろぽろと大粒の涙を流してその場に泣き崩れた。

あの霊圧の暴走の恐怖。

そして、星が自分の声に応えて戻ってきてくれたことへの安堵。

 

 

 

「あはは、だから大丈夫だって言ったじゃないですか、勇音さん。僕、しぶといのが取り柄ですから。」

 

 

 

星はいつもの気怠げな調子で笑いながら、

勇音の頭を優しく撫でた。

 

 

 

戦える。

みんなの日常を、今度こそ守り抜くために。

星は白衣のポケットの中で拳を握りしめ、

来るべき決戦の日を見据えた。




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