──ゴォォォォォォォォォッッ!!!
瀞霊廷の全域が、物理的な『自重』に耐えかねるように
激しく揺れていた。
霊王宮へと突入したユーハバッハの手によって、
世界の楔である『霊王』が命を落としたのだ。
現世、尸魂界、虚圏──三界の境界が歪み、
崩壊のカウントダウンが始まる。
「これより、僕たちは遮魂膜を突き破り、
上空の霊王宮へと直接殴り込みをかける。
……門の作成を急いでくれ、浦原くん。」
一番隊舎の広場。京楽春水が緊迫した声で指示を飛ばす。
その隣には、新たな二振りの斬魄刀を背負った黒崎一護、
そして白衣のポケットに手を突っ込み、
拡張された『容量』で霊圧を完全にコントロールしている
八神星が並び立っていた。
「門を安定させるには、規格外の霊圧が必要っす。
一護と八神さん、二人の力があれば霊王宮への道は開ける。
……っすけど、その後に上のユーハバッハを叩く戦力が、
圧倒的に足りない。」
浦原喜助の言葉に、場が沈黙する。
滅却師の最高幹部『親衛隊』。
そして、未来を書き換える王。
護廷十三隊の隊長格が満身創痍の中、
その戦力差は絶望的だった。
「──だったら、足りない分の『ピース』は、
僕が下から拾ってこよう。」
京楽が編笠の影から、不敵な笑みを覗かせた。
彼が懐から取り出したのは、一番隊総隊長にしか
触れることを許されない、最深暗黒地獄への『鍵』。
「……総隊長、まさか……!」
隊長たちが息を呑む。星の翡翠色の瞳が、
その瞬間、初めて微かに細められた。
「そうさ。悪を以て悪を制す。
……あの男の手(霊圧)を、借りに行く。」
【一番隊舎地下・地下監獄最下層『無間』】
一歩足を踏み入れれば、光も、音も、
霊圧すらも知覚できない完全なる虚無の闇。
京楽、一護、そして星の三人は、その闇の最奥に鎮座する
『椅子』へと辿り着いた。
全身を幾重もの拘束具で縛られ、
ただ両目と口だけを解放された男が、
暗闇の中で妖しく微笑む。
「──やぁ。ずいぶんと賑やかな往診だな。
黒崎一護、京楽春水……。そして。」
男の唯一動く瞳が、一護を通り過ぎ、
その後ろに立つ白衣の死神を捉えた。
「八神星。……私の胸を穿った、
あの『星海轟嵐』の心地よい風の残響が、
未だ私の魂に刻まれているよ。」
藍染惣右介。
かつて三界を揺るがした大逆の徒は、
無間に幽閉されてなお、その圧倒的な格と霊圧を微塵も
衰えさせていなかった。
「久しぶりだね、藍染さん。随分似合う椅子を貰ったんだね。」
星は一歩前に出ると、いつもの気怠げな調子で、
けれど藍染の霊圧を正面からいなすように飄々と応じた。
「強がりを言うな、八神星。
お前のその『器』……。私を倒した代償に、
一度完全に崩壊しかけたはず。……ふん、なるほど。
容量を無理やり広げたか。
だが、それは破滅を先延ばしにしたに過ぎん。」
藍染の一言に、一護がハッとして星を見る。
藍染は一瞬で見抜いていた。
星の中に眠る、限界を突破した神の霊圧の危うさを。
「先延ばしで十分さ。
君をここで永遠に腐らせておくよりはね。」
京楽が鍵を回し、藍染の拘束を一部解除する。
その瞬間、無間の闇を圧殺するほどの、
天を衝く黒き霊圧が解き放たれた。
椅子に座ったままでなお、世界を揺るがす超越者の質量。
「黒崎一護。お前が天へ昇り、ユーハバッハを討つというのなら、私も力を貸そう。……何より、私の見込んだ男(一護)と、私の器を壊した男(星)が、あの滅却師の王の前に屈する姿など、見たくはないからね。」
藍染の傲岸不遜な、けれど確かな共闘の意思。
かつての宿敵が、椅子に縛られたまま護廷十三隊の
『切り札』として戦列に加わる。
「よし、役者は揃った。行こうか、少年。
……天の上のトカゲさんに、僕たちの喧嘩を見せつけにね。」
星が『迅雷烈風』の柄に手をかける。
覚醒した一護、器を広げた星、そして再臨した藍染惣右介。
三界の常識を遥かに超越した三人の怪物が並び立ち、
物語の舞台は、決戦の地──霊王宮へと移る。
藍染惣右介再登場でした。
この世界の藍染は、崩玉を持っていませんが星と同じ様に
普通の死神を遥かに凌駕する霊圧を持っています。