浦原喜助の作った門が開き、一護、星。
そして『椅子に座ったまま』の藍染を乗せた霊圧の奔流が、
一気に霊王宮へと上昇していく。
急ごしらえの移動空間の中、沈黙を破ったのは、
やはり四番隊のサボり魔だった。
「ねぇ、藍染さん。その椅子、座り心地はどう? 長旅だし、僕が鬼道でちょっとクッション性とか上げてあげようか?」
「断るよ、八神星。
お前のその薄汚い白衣が視界に入るだけで、
私の霊圧が不快に揺らぐ。
……それと、この椅子は無間のテクノロジーの結晶だ。
クッション性などという生温い概念は必要ない。」
「へぇー、こだわりがあるんだね。さすが大罪人。」
「八神さん、藍染、お前ら緊張感なさすぎだろ……!」
一護が頭を抱えて突っ込む。
かつて世界を滅ぼしかけた宿敵が、
椅子に縛られたまま星と小学生のような口喧嘩をしている。
この異様な光景こそが、彼らの「余裕(格の違い)」の証明でもあった。
「……フン、お喋りはそこまでだ。
天の住人たちが、随分と無様に散っているよ。」
藍染が冷徹に視線を上空へと向ける。
霊王宮の表参道では、すでに零番隊の面々が、
ユーハバッハの親衛隊と激突していた。
親衛隊はユーハバッハの『聖別』によって真の力を覚醒させ、
零番隊の防衛線を力ずくで突破しつつある。
「零番隊の奴らが、押されてる……!?」
一護の表情が強張る。
「しょうがないなぁ。
五人しかいないのに『僕たちだけで世界を守ってまーす』
みたいな顔してるからだよ。
……少年、藍染元隊長?
門が開いたら、挨拶代わりに一発派手に行こうか。」
星が不敵に微笑み、腰の『迅雷』と『烈風』の柄に手をかけた。
今の星の器は大幅に拡大されている。
始解の技なら、いくら出力を上げてもビクともしない。
──ゴォォォォォンッッ!!!
霊王宮の正門へと、彼らの乗った門が激突し、爆散する。
そこに広がっていたのは、千手丸の布の結界を食い破り、
勝ち誇る親衛隊──リジェ・バロ、ジェラルド、
アスキンたちの姿だった。
「ハハッ! 終わりだ死神ども! 我ら親衛隊の前に──」
「──うるさいよ。鳥の化け物と、無駄にデカい盾持ちさん。」
──『迅雷・雷光龍』『烈風・風刃龍』──
星の言葉と同時に、門の残骸から漆黒の雷龍と翡翠の風刃龍が、侵攻時の数倍の質量となって顕現した。
「双竜天嵐翔(そうりゅうてんらんしょう)」
「なっ……何だこの霊圧はッッ!?」
リジェの『万物貫通』が撃ち抜くよりも早く、
ジェラルドが『奇跡』を呼び起こすよりも圧倒的に早く。
星の放った双龍の顎(あぎと)が、
親衛隊の防陣を正面から跡形もなく噛み砕き、
霊王宮の石畳ごと彼らを遥か彼方へと吹き飛ばした。
「……相変わらず、品のない暴風だ。」
椅子に座ったまま、
黒き棺の残響で残りの聖兵を消し飛ばした藍染が、
フンと鼻を鳴らす。
「いいじゃん、時短だよ時短。
零番隊の人たちも、
あとは僕たちがやるからお茶でも飲んでてよ。」
星はあっけらかんと手を振り、唖然とする零番隊を置いて、
ユーハバッハの待つ『真世界城』へと真っ直ぐに
歩みを進めるのだった。
書いてて思います。
一護出番少な。