霊王宮の最奥、天を穿つ『真世界城』の玉座の間。
世界のすべてを視通し、書き換える能力
『全知全能(ジ・オールマイティ)』を取り戻した
滅却師の王ユーハバッハが、冷酷な瞳で侵入者たちを
見下ろしていた。
その傍らには、因果の不運を分け与える
『世界調和(ザ・バランス)』の雨を降らせる右腕、
ユーグラム・ハッシュヴァルト。
「……来たか。だが、すでにすべての未来は
我が手のひらの上だ。」
「そんな未来、俺と雨竜で今からへし折ってやるよッッ!!」
一護の真のハイブリッド卍解が、
そして石田雨竜の『銀の矢』が、
ハッシュヴァルトへと向けられる。引き裂かれた二人の絆が、
今、滅却師の最高幹部を迎え撃つために完全に重なった。
「黒崎、行くぞ。……僕たちの『過去』と『未来』を、
この男に調和させるわけにはいかない。」
「おう、雨竜!! 合わせろッッ!!」
一護と石田が、ハッシュヴァルトを玉座の間から
引き剥がすように別の階層へと猛烈な突撃を仕掛け、
激しい金属音が響き渡る。
そして、歪む世界の空間を、
ただ一人の男の霊圧が強引に縫い留めていた。
藍染惣右介だ。彼の放つ漆黒の霊圧が、
崩壊しかけている霊王宮と現世を繋ぐゲートのシステムを、
物理的に『固定』している。
「……ハハ。藍染、ゲートの門番なんて、
随分と地味な役回りを引き受けてくれたね。」
一人、ユーハバッハの前に残った星が、気怠げに笑う。
「勘違いするな、八神星。
私はただ、上空でネズミ(ユーハバッハ)が暴れるせいで、
私の無間の椅子が揺れるのが不快なだけだ。
……さあ、行くがいい。
私を一度は地に伏せさせたお前のその力、
あの男の『未来』とどちらが頑丈か、ここで証明してみせろ。」
「了解。……じゃあ、ちょっと行ってくるよ。」
星は白衣をそっと脱ぎ捨て、
四番隊の制服のまま、ユーハバッハの前に
スッと立ちはだかった。
その翡翠の瞳には、もう迷いも、恐怖も、
己の命のメーターに対する吝嗇(けち)さもない。
「八神星。お前がここへ来る未来も、ここで死ぬ未来も、
すべて私は視ている。お前が如何なる技を放とうと、
私の『全知全能』の前には──」
「──見せてあげるよ、滅却師の王様。
君のその便利な目が、二度と何も視たくなくなるような
……本当の『奥の手』をさ。」
星は、腰の『迅雷』と『烈風』をゆっくりと引き抜いた。
(烈風、迅雷。……ごめんね。
これで最後だ。僕の全部を、君たちにあげるよ)
『──主……ッ!!』
『思いっきり、暴れておいで……ッ!!』
二振りの片割れたちが、
精神世界で星の魂と完全にひとつに溶け合う。
拡張した器に収めていた神の霊圧を完全に開放する。
自らの意思によってパキィィィンと粉々に撃ち砕かれた。
封印の閾値を遥かに超え、三界のシステムそのものを物理的に圧殺する、真の超越段階の光が星の全身から溢れ出る。
「──卍解──」
星の声音が、世界のすべての音を消し去りその名を呼ぶ。
高まった霊圧によってその名と姿は明確に変化していた。
「──『星海無限嵐・終焉神座
(せいかいむげんらん・しゅうえんのみくら)』──」
ゴオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!
発動した瞬間、ユーハバッハの視ていた
『何兆通りもの未来』のビジョンが一瞬で
真っ黒に塗り潰され、物理的に消失した。
星の纏っていた霊圧は、あまりの超高密度ゆえに、
光さえも透過しない「完全なる虚無の漆黒の嵐」へと
変貌している。星の肉体を包み込む、
翡翠の風の十二衣と、漆黒の雷の神御衣。
その能力は──『因果の無効化』。
「な……に……!? 未来が……視えん……!?
書き換えるべき未来そのものが、存在せぬだと……っ!?」
初めてユーハバッハの顔に、本物の『戦慄』が走る。
未来を弄ぶ王の前に立ちはだかるのは、
今、この瞬間の空間と因果を力ずくで固定し、
神の理不尽すらも無に帰す、絶対的な『終焉の王』。
「……さあ、始めようか。
これが、僕の人生で──最後の手合わせだ。」
星の瞳が真紅の光を放ち、
漆黒の嵐が真世界城の玉座の間に狂い咲く。
三界の命運をかけた、八神星の命のすべてを燃やし尽くす
本当の最終決戦が、ここに幕を上げた。
次回
最終回です。