四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした   作:獅子論

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書き切れました。



星君。最後の卍解。


八神星 ──凪の彼方、あるいは語り継がれる星霜

 ──『星海無限嵐・終焉神座』。

 

 

 

 

 

それは、過去も未来も、因果律すらも存在しない、

完全なる「虚無の漆黒と翡翠の嵐」の領域。

 

 

 

 

 

「馬鹿な……っ!

我が『全知全能(ジ・オールマイティ)』の光が、通らぬ……!

貴様は一体、何なのだぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

 

 

 

ユーハバッハの絶叫が、漆黒の空間に虚しく響く。

未来を書き換えようとした彼の両腕は、

触れたものを分子レベルでゼロに回帰させる星の風刃によって、すでに根元から消滅していた。

 

 

 

 

「言っただろ、ユーハバッハ。

君の便利な目は、僕の『終焉』には追いつかない。」

 

 

 

 

 

星の肉体(器)は、すでに限界をとうに超え、

足元からハラハラと翡翠の光の粒子となって崩壊し始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を救う代償は、自身の存在そのものを

世界のシステムへ捧げ、消滅すること。

 

 

 

 

 

 

 

「烈風、迅雷。……行こうか」

 

 

 

 

星が最後の一歩を踏み出す。

二頭の神竜がユーハバッハの身体を完全に喰らい尽くし、

その存在を三界の歴史から永久に抹消した。

 

 

 

 

 

 

──ドォォォォォォォン……。

 

 

 

 

 

玉座の間が静寂に包まれる。

ユーハバッハの消滅とともに、世界の崩壊がピタリと止まった。

 

 

 

 

 

 

一護と石田が駆けつけ、ゲートを維持していた藍染が、

光の粒子となって消えゆく星の背中を見つめる。

 

 

 

 

 

 

「……フン。本当に、退屈しない男だったよ。お前は。」

 

 

 

 

 

藍染が、どこか満足げに目を細めてフッと笑う。

 

 

 

 

 

「八神さん……ッ!!」

 

 

 

 

 

一護が叫び、手を伸ばすが、

星の身体はもう実体を持たない光の概念へと変わっていた。

星は振り返り、一護にいつものように飄々と手を振ると、

最後の霊圧を使って、ある「一箇所」へと瞬歩した。

 

 

 

 

 

【四番隊舎・救護室】

 

 

瀞霊廷の空が元の青さを取り戻したその瞬間、

勇音は胸が張り裂けそうなほどの予感に襲われ、

裏庭へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

そこには、誰もいない。

 

 

 

 

 

 

だが──ぽかぽかと暖かい陽気の中、

勇音の頬を、あの愛おしい翡翠の風が優しく撫でた。

 

 

 

 

 

 

風の中から、聞き慣れた、

けれどどこか遠い彼の声が、耳元にそっと響く。

 

 

 

 

「──勇音さん」

 

「八神、くん……?」

 

勇音が振り返る。

そこには誰もいない。

ただ、優しい風が彼女をそっと

抱きしめるように包み込んでいた。

 

 

「──もう、大丈夫。」

 

 

それが、八神星という死神が、

この世界に残した最後の言葉だった。

 

 

 

 

風は静かに凪ぎ、空へと溶けていく。

勇音はその場に膝をつき、涙を流しながらも、

彼が遺してくれた「平和な日常」の空を、

いつまでも見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

【山本元柳斎重國の独白】

 

 

 

「──終わったか。八神星。」

 

 

 

一番隊舎の奥書院。

相談役となった山本元柳斎重國は、

静かに木杖を突き、遠い空を眺めていた。

己の命を繋ぎ止めてくれた若き死神の気配が、

完全に世界のシステムへと溶けたことを、

その老骨は感じ取っていた。

 

 

 

「山じい……八神くんの一族の歴史、知っているんだろう?」

 

 

 

新総隊長となった京楽春水が、静かに問いかける。

 

 

 

「うむ……」

 

 

 

 

 

元柳斎は深く目を閉じ、千年前の、護廷十三隊が誕生するよりも遥か昔の記憶を紐解くように語り始めた。

 

 

 

 

 

「八神の一族……。彼らはかつて、

霊王の『呼吸(息吹)』を管理せし創世の一族。

世界に風を巡らせ、雷によって混沌を拓く役割を担う

神官の血筋であった。

……だが、千年前、五大貴族が霊王を裏切り、

天の檻に生贄として捧げた時、

八神の一族だけはそれを拒み、霊王を守ろうとした。」

 

 

 

 

 

元柳斎の声音に、歴史の重みが宿る。

 

 

 

 

「その結果、彼らは世界のシステムから『拒絶』された。

一族に課された呪い……

それこそが、【無限に上昇し続ける霊圧】。

器に収まりきらぬ神の力を魂魄に注ぎ込まれ、

戦えば暴発し、いずれは己の力で自滅するよう、

世界の因果に呪われた一族の末裔……それが八神星じゃった。」

 

 

 

「……そうだったのかい。

彼は、最初から世界に拒まれ、

それでも世界を救うために

生まれてきたようなものじゃないか。」

 

 

 

 

 

京楽が悲しげに苦笑する。

 

 

 

 

「儂とて古い文献を探し出し、つい先日知った事じゃ。

調べても調べても判らんかった程に古い記録じゃった。

しかし拒まれてなお、あの男は笑っておった。

四番隊の末席を名乗り、サボり魔を演じ、

その実、誰よりもこの世界の些細な日常を愛おしんでいた。

我が命を救ったあの『風魔雷光閃』も、

最後に放った『終焉神座』も……呪いを祝福へと変え、

自らが世界のシステム(礎)となることで、

真の平和をもたらしたのじゃ。」

 

 

 

 

 

元柳斎は木杖を強く畳に突き、天を仰いだ。

 

 

 

 

 

「悲しむな、春水。

八神星は消滅したのではない。

この瀞霊廷に吹く風の中に、天を駆ける雷の中に、

あの男は今も生き、我らを見守っておる。

……まこと、最後まで見事な男よ。」

 

 

 

 

一番隊舎の裏庭に、サラサラと心地よい翡翠の風が吹き抜ける。

 

 

 

まるで、「山じい、話が長いよ」と、

いつもの気怠げな声で笑う彼の気配を残すように。

 

 

三界を救った名もなき英雄は、今も静かに、

この世界の空で輝き続けている──。

(千年血戦篇・八神星伝 完)




最後に
山本元柳斎重國の歴史語りで終わりたかったんですw



だから生きてもらってました。

気がつけば50話目前。
極めて軽い気持ちで書いてたこの小説。
これでおしまいです。
少しは暇つぶしになりましたか?
皆さんの目に少しでも面白いと映れば満足です。
ありがとうございました。
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