暫く空きましたが、またぼちぼち書いていきます
「ちょっと待って八神! 街を壊すな! 加減しろ加減を!!」
夕暮れの空座町に、黒崎一護の悲鳴のような絶叫が響き渡った。
「無理ですよ! 私、加減とか超苦手なんですーーーッ!!」
夜は泣きそうになりながら、
二刀一対『烈波轟炎』を大きく振り抜いた。
現世の住宅街の路地裏。
迫り来るギリアン級の虚の脚元を
「ちょっと転ばせる程度」のつもりで放った風と炎の斬撃。
だが、夜の内に眠る暴力的なパワーとスピードは、
本人の控えめな意図を完璧に裏切っていた。
──ドガァァァァァンッッッ!!!!
ドロドロに溶けるアスファルト。
爆風で弾け飛ぶガードレール。
虚の足首を切り落とすと同時に、
背後の電柱まで跡形もなく焼き尽くされる。
「『三天結盾』っ!! ふぅ、危なかった。
……電柱の破片が飛んでくるところでした……!」
織姫が間一髪で盾を張り、冷や汗を拭う。
「おいおい……あの子四番隊の新入りって聞いたが、
全部分子レベルで街を溶かしてないか……!?」
雨竜が眼鏡の位置を直しながらドン引きしていた。
そう、夜は真央霊術院時代から「繊細な霊圧のコントロール」が壊滅的に苦手だったのだ。『八神』として受け継いだ
「バカデカい容量(器)」のおかげで伝導率はいいものの、
彼女の技の根本は「力と速さのゴリラ押し」。
現世のような「被害を出してはいけない場所」は、
夜にとって最も不向きな戦場だった。
「だーかーらー! 四番隊は下がってサボってろって
言っただろ!」
「だって! ほっておいたら私の後ろから虚が湧いてたから、
手伝おうと思ったんですぅ!」
「手伝いになってねぇよ!
お前が振るたびに空座町の被害が広がってくんだよ!」
一護と夜が、虚の群れを前にしてギャーギャーと
口喧嘩を始める。
その光景は、恐ろしいほどの霊圧を放ちながらも、
どこか微笑ましく、見ていた茶渡(チャド)の口元を
微かに緩ませた。
「……だが、速い」
チャドがぽつりと呟く。
「え?」
「あの身体の使い方……風で自身を加速させ、
炎の爆発力で一瞬で敵の懐に入っている。
……技は不器用だが、あのスピードと威力は、
並の隊長格でも止められない。」
チャドの言う通りだった。
夜は文句を言いながらも、風の超加速で空間を滑るように
移動し、すれ違いざまに炎を纏わせた刃で虚の面を粉砕していく。
不器用ゆえに広範囲を巻き込んでしまうが、
その純粋な「パワーとスピード」のポテンシャルは、
一護たちの目から見ても圧倒的だった。
「ふぅ……! これで全部ですかね! 一護さん、
私、四番隊の鑑として大活躍しちゃいました!」
夜はドロドロに溶けた道路の真ん中で、
えっへんと控え目な胸を張った。
「大活躍じゃねぇよ! ほら見ろ、
浦原さんの店の方向の街灯まで溶けてんぞ……!」
一護は頭を抱えつつも、どこか呆れたように笑った。
そして、自分の背中に斬月を収めると、
夜の頭をガシガシと雑に撫でた。
「……まあ、助かったよ。ありがとな、八神。」
「へ? あ……えへへ。」
不意に感謝されて、
夜は翡翠の瞳をパチクリとさせて照れくさそうに微笑んだ。
「さて! 街をこれ以上壊す前に、私は瀞霊廷に帰りまーす!
勇音さんにお土産の和菓子も買いましたし、
今日はお部屋でぬくぬくサボるぞ〜!」
現世での「加減の難しさ」に冷や汗を流しつつも、
無事に任務を終えてルンルン気分で穿界門へと向かう夜。
だが、彼女はまだ知らなかった。
この時すでに、瀞霊廷では「八神の血を引く二刀流の新人が、現世でバカデカい霊圧を撒き散らしている」という噂が広まり──
十一番隊隊長・更木剣八が、四番隊舎の門の前で
笑いながら待機しているという事実を……!
霊圧コントロール苦手度合いMAX