この話が難産だったのと
リアル忙し過ぎでなかなか書けませんでした。
──虚圏(ウェコムンド)。
かつて黒崎一護と第四十刃ウルキオラ・シファーとの
死闘により、天蓋が大きく穿たれたその遥か上空。
破面(アランカル)すら立ち入ることの許されぬ、
深く、暗い闇の先。
元々は、それこそが本来の虚圏。
光すら届かぬ「絶望の深淵」で──
「それ」の目が静かに開いた。
『……“息吹”の呪いが……無くなったか……』
低く、重く、地響きのような威圧的な声が暗闇を漂う。
『……気味の悪い風が吹いておるな……』
ガリ。
「それ」は、白銀に輝く巨大な爪をほんの僅かに動かした。
『気に入らぬ……。我々をここまで弱らせた……
あの風が……雷が……憎い……』
かつて世界そのものを書き換え、
この深淵に静寂を齎した八神星の残香。
その「呪縛」が解けたことを察知し、
旧き虚圏の王はゆっくりと、確実にその肉体を蠢かせ始めた。
「それ」が動き出したことに気づいた者は、
まだ死神にも破面にも、誰一人として存在しない──。
【瀞霊廷・一番隊舎 執務室】
「──というわけで、八神ちゃん。
君には今日から『地獄の七日間』を過ごしてもらうよ。」
一番隊執務室。
総隊長羽織を羽織った京楽春水は、目元を影に落としながら、いつもの軽妙さを崩さずに一枚の訓練日程表を突きつけた。
「……京楽総隊長。私、ただ四番隊に帰りたかっただけで
……更木隊長が襲ってきたから撃ち返しただけで……。」
机に突っ伏した八神夜は、今にも死にそうな声で呟いた。
四番隊舎前をドロドロのクレーターに変え、
更木剣八を吹っ飛ばした代償は大きかった。
「気持ちは分かるよ。でもね、四番隊の敷地どころか一番隊の目と鼻の先まで焦土にしちゃったのはマズかった。君のその『器』から溢れる霊圧と爆発的な火力……今のままじゃ、味方まで巻き込む歩く大災害だ。」
「うぐっ……。」
「だからね。各隊のスペシャリストたちに頼んで、
君を1から叩き直してもらうことにしたんだ。」
【1〜2日目:精密なる霊圧制御
(講師:伊勢七緒 & 日番谷冬獅郎)】
「八神三席。一滴たりとも霊圧を漏らさないでください。
集中です。」
一番隊副隊長・伊勢七緒の冷酷な指示のもと、
夜は畳の上で正座させられていた。
その隣には、十番隊隊長・日番谷冬獅郎が腕を組み、
鋭い視線を送っている。
「八神。お前の霊圧はデカすぎる上に、
風と炎の性質が荒すぎる。
氷輪丸ほど繊細にとは言わねぇが……
まずはその『強すぎるエンジン』を、
指先ひとつの出力にまで絞り込む術を覚えろ。」
「つ、冷たい……! 日番谷隊長の氷の霊圧が寒いですし、
七緒副隊長の目が怖いです……!」
「喋るな。霊圧が乱れているぞ。」
ひたすら自らの内なる膨大な霊圧と向き合い、
微細な針の穴を通すような精密操作を体に叩き込まれるふたり。
不器用な夜にとって、この静かな正座の特訓こそが
何よりの拷問だった。
【3〜5日目:二刀一対の理(講師:京楽春水)】
「二刀流ってのはね、
ただ二本振り回せばいいってもんじゃないんだよ。」
場所を変え、一番隊の演武場。
京楽は『花天狂骨』を肩に担ぎ、ゆっくりと間合いを詰めた。
「風の『烈波』で相手の間合いを狂わせ、
炎の『轟炎』で仕留める。……君は今まで、その両方を100%の力でぶつけて自爆してた。右手の刃と左手の刃、それぞれの『役割』を滑らかに切り替えるんだ。」
京楽の変幻自在な二刀の太刀筋を受けながら、
夜は必死に二刀の伝導率を調整する。
七緒と日番谷との訓練で身につけた「抑え込む制御」が、
ここで初めて二刀の刃へとしなやかに伝わり始めていた。
【6〜7日目:極限の焦熱・出力訓練
(講師:山本元柳斎重國相談役)】
「──甘いッッ!!!!」
──ゴオォォォォォォォンッッッ!!!!
一番隊地下演武場。
一番隊相談役へと退いた山本元柳斎重國は、
凄まじい眼光で仁王立ちしていた。
「制御を覚えたからとて、おぬしの真骨頂である
『火力』を削いでどうする!!
抑え込んだ霊圧を、瞬時に100%……
いや、120%へと一気に解放してみせよ!!」
「む、無理です元柳斎様!
これ以上解放したら地下が溶けちゃいますー!」
「溶ければ建て直せばよいと言っておるッ! 撃てッッ!!」
「そんなーーーッ!!(号泣)」
【7日目の夕暮れ】
「……はぁ……はぁ……死ぬ……マジで死ぬ……」
7日間の地獄のトレーニングを終え、
四番隊の自室のベッドになだれ込んだ夜。
ポニーテールはボサボサで、顔は煤だらけ。
だが、その膝の上に置かれた二刀一対『烈波轟炎』からは、
以前のような「制御できずに漏れ出る無駄な熱量」が
綺麗に消えていた。
不器用だったパワー&スピードの強龍は、
瀞霊廷の猛者たちの手によって、
少しずつ……だが確実に「真の強者」としての
牙を研ぎ澄ましつつあった。
しかし、夜が疲れ果てて眠りについたその頃。
遠く虚圏の深淵では、静かに、だが確実に
「巨大な不穏の足音」が迫っていたのだった──。
と、言う訳で匂わせと訓練回でした。
本当に完全オリジナル展開なので閲覧にご注意下さい。