四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした   作:獅子論

55 / 55
自らの意思を理解して前にーーーーー。



予兆の影、あるいは突き動かされる刃

地獄の七日間を終え、ようやく勝ち取った四番隊としての平穏。

 

 

 

 

 

四番隊舎の静かな廊下で、夜は救護班としての通常勤務——包帯の補填と薬草の調合——を、これ以上ないほど穏やかな顔でこなしていた。

 

 

 

 

 

 

「ふふ〜ん♪ やっぱり四番隊のこの平和な空気最高……。

もう二度と更木隊長にも山じい様にも関わらないで、

このまま一生救護班として静かに暮らすんだ……」

 

 

 

 

 

だが、そんな夜の慎ましいサボり願望は、

緊迫した伝令神機の警報音によって一瞬で打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

 

『──緊急伝令! 現世・三号地区にて想定を超える規模の虚の群れが出現! ただちに後方待機および救護班を編成せよ!』

 

 

 

「八神三席、行きますよ!」

 

 

 

 

「は、はいっ!」

 

 

 

 

 

四番隊の編成に従い、救護班として現場へ急行した夜。

 

 

 

 

 

だが、穿界門を抜けた現世の路上で、遠目にその「敵」を捕捉した瞬間──夜の翡翠色の瞳が、強い違和感に揺れた。

 

 

 

 

 

「何? あれ……」

 

 

 

 

 

そこにいたのは、通常の巨大な虚(ホロウ)とは

明らかに異なる異形の影。

 

 

 

 

体躯は人間ほどに小さく、しかしその移動速度と

鋭利な霊圧の奔流は、あり得ないほどの異常さを誇っていた。

 

 

 

 

 

前線に配置されていた六番隊と九番隊の混合部隊が、

一瞬のうちに散り散りへと蹴散らされていく。

 

 

 

 

 

 

 

その残像を目で追いながら、夜の口から自然と単語が漏れ出た。

「……破面(アランカル)……?」

 

 

 

 

 

 

「そんな筈ないわ。虚圏の破面は残り全てが、

ティア・ハリベルに統率された筈」

 

 

 

 

 

背後から響いた凛とした声に振り返ると、

そこには十番隊副隊長・松本乱菊が立っていた。

 

 

 

 

 

乱菊は豊満な胸を張り、妖艶な笑みを浮かべて

夜の肩をぽんと叩く。

 

 

 

 

「ま、お姉さんに任せておきなさい!」

 

 

 

 

茶目っ気たっぷりにウインクすると、

乱菊は風を切る瞬歩で前線へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

しかし──副隊長格である乱菊が前線に立ち、

交戦を始めたというのに。

 

 

 

 

 

夜の胸の奥で渦巻く「強い違和感」と「不快な悪寒」は、

拭い去るどころか益々膨れ上がっていく。

 

 

 

 

 

(行かなければ──)

 

 

 

 

ふと、そんな考えが脳裏を過ぎった。

 

 

 

 

夜は自分自身のその思考に、

信じられないというように目を見開いた。

 

 

 

 

 

「……私が? サボりたいだけの私が……

戦いたいって言うの……?」

 

 

 

 

 

「──唸れ、『灰猫』!」

 

 

 

 

 

遠くで乱菊の解号が響き、煙状に変化した刃が空中を舞う。

一進一退の攻防。

 

 

 

 

だが、相手の「小ぶりな虚」の動きはあまりに異質だった。

 

 

 

 

灰猫の死角を突くような不気味な軌道、

そして放たれる白銀の熱線。

次第に乱菊の身体に痛々しい擦過傷と血が滲み始めていく。

 

 

 

 

 

 

胸の奥が、熱い。

いや──夜の体内に眠る「八神の血」が、あの虚の奥底に潜む『何か』に反応して激しく警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

 

 

 

(違う……あれはただの虚じゃない──!)

 

 

 

 

 

 

気がついた時には、夜の手は腰の二刀の柄に伸びていた。

 

 

 

 

誰に命じられたわけでもない。

サボりたいという自分の本能すら置き去りにして、

夜は静かに二振りの斬魄刀を鞘から引き抜いていた。

 

 

 

 

 

 

「……戦るんだ。分からないけど……私が戦わなくちゃ」

 

 

 

 

 

 

何かに強力に後押しされるような、不思議な衝動。

 

 

 

 

 

七日間の地獄の特訓を経て、

洗練された霊圧が静かに二刀へと宿っていく。

 

 

 

 

 

「──烈波吹き捲りて天を裂け、轟炎猛りて地を焦がせ──

『烈波轟炎』!!」

 

 

 

 

自分の意志で、大切な誰かを護るために。

 

 

 

 

サボり魔・八神夜の「自発的な最初の戦闘」が、

今ここに幕を開けた──!




BLEACHっぽくなってますかね?

最終回をじっくり堪能してたらまた期間空いてしまって申し訳ないです。
熱量上がってきたので更新頻度あがるかも知れないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

BLEACH ―斬界の御厨子―(作者:tunagi)(原作:BLEACH)

黒崎一護には、昔から付き合いのある一人の少年がいた。▼その名は――御門朔夜。▼普段は浦原商店で気ままに暮らし、店番を頼まれては嫌がり、四楓院夜一とは軽口を叩き合う。▼一見すれば、少し変わった普通の少年。▼しかし、その正体は――死神だった。▼朔夜を鍛え上げたのは、元十二番隊隊長・浦原喜助と、元二番隊隊長にして瞬神の異名を持つ四楓院夜一。▼二人による常識外れの修…


総合評価:555/評価:5.56/連載:82話/更新日時:2026年10月29日(木) 12:54 小説情報

絶対の先制(作者:幻影の塔)(原作:BLEACH)

護廷十三隊どこにでもいる平隊員、だがその実力は最強格あえて実力を隠し平穏に生きてる。これはしがない平隊員が、絶対の先制をもって敵を葬る物語である


総合評価:280/評価:5.33/連載:110話/更新日時:2026年10月04日(日) 03:40 小説情報

BLEACHの世界に転生したけど何故かステータス画面があるんだが(作者:最強主人公2)(原作:BLEACH)

気づいたら『BLEACH』の世界に転生していた主人公。▼しかも、目を開けると何故かステータス画面が表示されていた!▼「ステータスがざこすぎる!」▼原作知識とステータスを頼りに、斬魄刀も持っていない状態から少しずつ強くなっていく。▼果たして朔は、この世界でどこまで強くなれるのか。▼これは、そんな少年の成長物語。


総合評価:755/評価:6.57/連載:17話/更新日時:2026年10月26日(月) 21:36 小説情報

転生したら奈良シカマルの双子の兄でした(作者:ZAZAI)(原作:NARUTO)

奈良シカマルの双子の兄・カゲマルとして転生した主人公。アカデミーで仲間との絆を育みながら、未来を変えるため忍として歩み始める。


総合評価:1802/評価:6.95/連載:47話/更新日時:2026年11月01日(日) 12:53 小説情報

僕のヒーローアカデミア A Little Extra(作者:ジョン堂)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 日本に生きるごく普通の一般人だった男は、唐突に【個性】が存在する世界へ転生する。▼ 原作に登場するキャラ達、事件の数々、襲い来る敵、物語の中心『雄英高校』での試練……。▼ 転生主人公が、薄い原作知識とチート【個性】をもって、どうあがいていくか……。▼ これは、そんなよくある話――▼※注意※▼ 拙作・愚作・凡作・駄作、ご注意されたし。▼ 何卒寛容な心をもって…


総合評価:1476/評価:7.9/連載:40話/更新日時:2026年10月31日(土) 17:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>