ポンコツ犬系男子な僕は、今日も盛大に口説き文句を噛む   作:空豆熊

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第1話 今日もまるで海へと沈むむ夕日の様にううちゅくしいよよ!?

 僕の名前は、天宅(あまやけ) 正美(まさみ)。中学2年生。

 突然だけど、僕には好きな人がいる。

 その相手は同じクラスの女子、白金(しろがね) 冬花(とうか)さんだ。 

 

 彼女はとても優しくて、可愛くて、綺麗で。

 いつも花の様に笑う素敵な人だ。

 正直僕には釣り合わない相手だとも思うけど、最初から諦めたくはない。

 だから、今日も僕は彼女にアプローチする。

 

「白金さん、おはよー! 今日もまるで海へと沈むむ夕日の様にううちゅくしいよよ!?」

 

 ……しかしまあこのザマである。

 出る言葉の内容もベタベタのベタな上、無駄に気取っているのはまだいいとして、噛みまくりだから恥ずかしいったらないよ。

 

 毎日練習しているのに、本番になるともうダメなのだ。

 考えた言葉は全て忘れ、相手の顔を見て頭が真っ白になって……何か言おうとして、勝手に言葉が出てしまうのだ。

 これならまだ普通に可愛いの一言で済ました方がマシだろうに。

 

「海へと沈むむだってよ」

「そこダブるってことは、夕日二つ分の輝きがあるって解釈も……まあできねーか」

 

 クラスメイト達が僕の言葉を聞き、何やら話している。

 ねえ、それはフォローしようとしてくれてるの? それとも余計に馬鹿にしてるだけ? 

 噛んだ台詞に何の考察をしてんの!? 細かく掘り返されて余計恥ずかしいよ! 

 

「天宅くんおはよー。あはは、今日も元気だねー。

 私が夕日なら、天宅くんは朝日かな? 今日も元気をくれてありがとー」

 

 と、白金さんはそう言って僕に笑いかける。

 さらりと僕の言葉に切り返してくる白金さん。

 優しさなのか天然なのか、ポンコツな挨拶に悪感情を持たれていないのは有難いけど、まあ相手にされていないだけだよね。

 

 例えば小さな子どもがお姉さんに背伸びして口説こうとしたら、こういう対応になるのではなかろうか? ……うん、なんか凹んできたからこれ以上はやめよう。

 

「いやいやいや、僕が朝日だったら白金さんなんてもう神というか銀河だよ!」

 

 ともあれ、カウンターをくらって凹みながらも、なんとか白金さんに言葉を返す僕。

 そんな僕の反応に、クラスメイト達がまたざわつく。

 

「流れの台詞は言えるんだよな、内容はともかく」

「な、初っ端から無理にキザな事言おうとさえしなければなぁ……」

「内容はマジで小学生だけどな。なんだ銀河って」

「あれだろ? 銀河っつったら天の川の全体象だし、一応その手の語句に通ずるものがあるってことだろ?」

「流石にそんなこじつけはしねーんじゃねーか?」

 

 とまあ、言いたい放題である。

 まあ僕も言っててバカらしいなとは思ったけども。

 

「銀河かー、じゃあ私アンドロメダ銀河かな? 天宅くんが天の川銀河で」

 

 優しい白金さんはそんな僕のバカな台詞に付き合ってくれる。

 やっぱり小さな子どもと話す感覚なのかな? 

 恥ずかしいけど、折角話を広げてくれるんだし、乗っておこう。

 

「アンドロメダなら白金さんにピッタリだね! 綺麗すぎて神に嫉妬された王女様の名前だもんね!」

 

「あれ、割といい感じのこと言ってね? 天宅比で」

「おお、マジか。偶に上振れるよな」

 

 と、クラスメイト達がまたざわつき始める。

 いい感じのこととは? 特に機転を利かせた覚えはないんだけど。

 まあ普段が酷すぎて、マシなことを普通に言うだけで評価対象になってしまうのだろう。

 で、白金さんの返しはと言うと。

 

「えー? そこまで言われるとちょっと恥ずかしいよー。

 ふふ、ありがとー天宅くん」

 

 そう言って、白金さんは花開く様に笑っていた。

 ダメだ、直視できない。するけど、やっぱり恥ずかしい。

 まだだ、まだ僕は頑張れる! 

 

「全然言い過ぎじゃないよ! 白金さんは綺麗すぎて、僕はいつも目が潰れ、あああああ! ダメ! 僕を見てそんな笑顔で笑わないでえ!」

「やっぱ天宅だったわ」

「ああ、これいつもの流れだな」

 

 僕のあまりのポンコツぶりにクラスメイト達がまたざわつく。

 いやまあね? 我ながらもうちょっと上手く話せないものかなぁとは思うけど……そんな急には無理だって! そんな僕を他所に白金さんは笑顔で話しかけてくる。

 

「あはは、目が潰れるだなんて大袈裟だねー。でもありがとー。

 私だって天宅くんから元気貰ってるんだからねー?」

 

 と、そう言って優しく微笑んでくれる白金さんだった。

 うーん、やっぱり白金さんは優しいなあ……

 

 

 ──────

「おはよう白金さん! 今日もまるで月模様に彩らられたかののの如し! う、美しいよ!?」

 

 あくる日、またしても僕は噛んでしまう僕。この台詞のどこに噛む要素があるんだよ! 

 月の例えとか定番も定番、何で噛むんだよ僕! しかし、白金さんはと言うと。

 

「おはよー天宅くん。月模様かー、そういえば国によってはは女性の横顔に例えられるって、この前言ってたねー。

 ふふ、ありがとうー」

 

 と、今日もまた笑顔で僕の言葉に返してくれるのだった。

 相変わらず噛んだことに対して何も触れずに。

 そしてクラスメイト達の反応も様々だ。

 

「今回は彩らられた、ねぇ」

「うーん、流石に今回はこじつける先もねぇか? 模様を無駄に増やしたところで何が何だか分からなくなるだけだろうし」

「なんだ駄目かー。どうせ噛むなら何かプラス要素つけて欲しいよなー」

 

 君達は何を求めているのさ? 何かへとこじつけるために噛んでいる訳じゃないよ! 

 そんなに僕の噛み芸で遊びたいの!? まあいいや。それより白金さんとの話を続けよう。

 

「うんうん! 白金さんの横顔なら、月どころか太陽だって霞んじゃうからね! 

 超新星爆発起こしたって、白金さんの美しい横顔には敵いっこないよ!」

 

「何言ってんだあいつ」

「いちいちスケールでかくしないと気の済まないやつなのか?」

「そんな訳でもねーんだけどな。白金絡むと途端にポンコツになんだよなー」

 

 と、クラスメイト達がまたざわつく。

 分かっているよ! 自分でも何言っているか訳わからないってね! 

 大体、太陽は爆発なんて最期を遂げるタイプの恒星じゃない、あれは太陽よりもっと大きな星の最期だ。

 どうあがいても僕の発言は何から何まで破茶滅茶だ、何の繋がりもない。分かっていますとも! 

 

「えー? そんなに輝いてたら地球が焼けちゃうよー。あっ、天宅くんが元気に食い止めてくれるのかな?」

 調子変わらず話を続けてくれる白金さん。

 こんな話に付きあってくれるなんて、白金さんは本当に優しいなあ……

 

「僕にできる気はしないけど、白金さんを守る為なら頑張るよ!」

 取り合えず、白金さんの言葉には全力で肯定する僕。

 当たり前だろ! 大好きな人の期待に応える為に頑張るのは当たり前だよ。

 ともあれ、僕の言葉を聞いた白金さんは。

 

「あはは、ありがとー」

 

 と、花の様に笑うのだった。

 ああもう! 本当に可愛いなあ!!

 

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