ポンコツ犬系男子な僕は、今日も盛大に口説き文句を噛む   作:空豆熊

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第2話 今日もまるでヴェネっっ、ヴェネツィアの運河の様に美しいよ!

「白金さんおはよー! 今日もまるでヴェネっっ、ヴェネツィアの運河の様に美しいよ!」

 

「うん、咬んだな」

「ベネチアで良いだろうに、なんでちょっとだけちゃんと発音しようとしたんだあいつ。噛むって分かってただろ」

 

 とある日の学校の休み時間、僕はクラスメイト達のそんなヤジをスルーしながら白金さんに挨拶をしていた。

 今日もまた嚙んだ。発音がとか聞こえはするけど、何言っても咬むし練習ではどれも問題無くできるからあまり意味を成さない。

 そりゃまあ簡略化した発音の方が、心拍数上がっていても成功率は多少上がるのかもしれないけども。

 

「おはよー天宅くん! 今日もありがとー。ヴェネツィアかー、漫画やアニメでもよくモデルになる水の都だよねー。

 テレビの観光名所紹介とか見てると、一度ってみたいって思うなー。

 モトスカフィ……だっけ? あの水上タクシーとかお洒落だよねー」

 

 白金さんはいつも通り、僕の咬み芸を華麗にスルーして、笑顔のまま返してくれる。

 毎度ながら話まで広げてくれるのは、本当に有難い。

 本当に頭が上がらないな……なんて感謝しつつ、僕も話を続ける。

 

 モトスカフィと言えば、エンジン付き小型ボートの総称だ。

 ヴェネツィアの交通手段では比較的新しいもので、より観光に重点を置いたものらしい。

 水上タクシーと呼ばれるだけあり、ルートは客が自由に組めて宮殿や教会などヴェネツィアの見所を存分に巡ることができる。

 

「そうだね! 白金さんが乗ったら、きっと凄く似合うんだろうなあ。大聖堂をバックに、水面に反射した光の中を進む白金さん……

 うん! 写真に撮っていつでも見えるところに飾りたいくらいだよ!」

 

「あ、これはアウト寄りのセリフだな」

「天宅、今のは攻めすぎ!」

「お前それ少女漫画でもほぼレッドカードだぞ」

 

 うーむ、自分でもちょっと今のはきもかったかな? 

 しかし、綺麗な風景の中白金さんが居る情景を思い浮かべたら、冷静でいられるはずが無かった。

 

 いやうん、

 でも綺麗だよね。素直にそう思うよ? と、それより白金さんの反応は? 僕は恐る恐る白金さんを見る。

 あっ、少し不満げな顔だ! やっぱ流石にきもかったかな? 

 

「天宅くんは外から見るのー? 居るなら一緒に乗ろうよ〜。

 天宅くんが隣で語ってくれるなら私、きっと退屈しないよ?」

 

 ち、違った! 全然違う理由だった! えっ、隣に乗って欲しい? え、隣? 白金さんの横で? 

 しかも語って欲しい? 僕に観光ガイドを! このオタク感満載な早口で!? 

 

「あっ、うん! 是非ともご一緒させて頂きたいです! はい!」

「わっ! ビックリした〜。そんなに力一杯言わなくても〜、あははー」

 

 白金さんは、僕の勢いにビックリしたようで、少し引き気味になりながらもすぐ笑顔に戻り、また楽しそうに笑う。

 ホントゴメンナサイ! あぁ、白金さんの笑顔がいつも以上に眩しい! 

 もうほんと、僕、白金さんの笑顔の為なら何でもしてしまいそうだ! 

 

 

 

 ──────────────────

 またとある日の朝、僕は教室に入り自分の席に鞄を置くと、そのまま白金さんの席へと向かい、挨拶をした。

 

「おはよう白金さん……あれ、何か眠そうだね。大丈夫?」

 

 いつものように用意した言葉を言おうとするも、白金さんの様子を見て控える。

 彼女は、僕に気づくとややあどけない表情で挨拶を返してくれる。

 

「ん〜……おはよう天宅くん〜。ちょっと色々考え事してて、寝るの遅くなっちゃったんだ〜」

 白金さんは少し間延びした声で挨拶をしつつ、目を擦りつつそう答える。

 考え事かぁ。生活習慣しっかりしていそうな白金さんが寝るのも後回しにするなんて、よっぽどそれについて考え込んでたんだろうなぁ……

 

「そっか、じゃあ今日は僕が代わりにノートとっとくよ。

 白金さんは、ゆっくり寝てて」

「え〜、悪いよ〜。いつも天宅くんにはノート見せてもらってるし~……」

 

 そう言って白金さんは申し訳なさそうにするが、僕としては全く苦ではないし、寧ろいつもポンコツを披露している分、こういうところで役に立ちたいのだ。

 というか単純に心配だしね。

 

「後、昼食前とかに無理ない範囲で軽く身体動かした方が良いと思うから、一緒にストレッチとかしよ?」

 

 と、僕は補足するように伝える。

 こういうのは勧めるだけじゃあまり意味が無い。

 やった方が良いと分かっていても、寝不足の時に態々身体動かすのって、めちゃくちゃ辛いからね。だから、勧めるならまず自分が率先しなくちゃ。

 

「えへへー、それじゃお言葉に甘えちゃおうかな? ありがとね天宅くん」

 僕の言葉を聞いて、白金さんははにかんだ表情を見せる。あぁやっぱり可愛いなぁ……

 いやでもほんと寝不足なんだろうなあ……僕は白金さんが無理してないか心配になりながらも、それと同時に愛しさを感じる。

 

「うん、それじゃまた昼休みに」

 僕はそう言って自分の席に戻った。

 

 

 ☆☆☆

「息吸ってー、吐いてー。呼吸止めたら逆効果だからねー」

「スゥー……ハァー……」

 

 昼休み、僕と白金さんは校庭のベンチでストレッチを行っていた。

 白金さんの顔色を伺ってみるが、まだ少し眠たそうではある。

 

 だけど、風とお日様の暖かさと程よい運動が脳内物質の分泌を良くしているのか、少しはマシになってきたように感じる。

 勿論、油断は禁物だけども。

 

「後、余裕あったら鼻歌とか歌ってみると良いよ。より必要な酸素を効率良く取り込むことができるし、気分も良くなるから。

 寝不足な時ほど、意識的に血流良くして回してかないとね」

「は~い。……ん~、ふんふふ〜ん」

 

 僕のアドバイスに白金さんは少し考えた後、軽く鼻唄を口ずさむ。

 うん、やっぱり可愛い。

 

「それにしても……天宅くん手慣れ過ぎてるね~。何か習ってたの?」

「こういうの詳しい親戚の人にちょっとね。あっ、詳しく話すとちょっと長くなるから寝不足の今はあんまり聞かない方が良いと思うよ! 気になったらいつでも言って!」

「うん、分かったよ~。あ、でも良ければもう少し詳しく健康法とか聞いてみたいかも。昨夜の考え事も、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの介護でお母さんたち忙しいから、何か私に出来ることがあれば良いなあって思ってて〜」

 

 僕の話を聞いて、白金さんはストレッチの手を止めて僕の方へ向き直りつつそう言った。

 ……そっか、それが寝不足の原因か。優しい白金さんらしい、とても尊い理由だ。

 とは言えだ。専門家として資格持ってるわけでもない僕が、介護が必要なレベルの人に対して健康の事を教えるのは少しどころではなく危険すぎるし、そこは普通に医者や介護士の人に任せるべきだと思う。

 でも、白金さんはきっとそれでも何かしたいんだろう。なら……

 僕は少し考えてから答える。

 

「うーん、それなら今度の土曜辺り、天宅さんのお祖父さんお祖母さんに合わせて貰えるかな? 健康法そのものは専門家でもない僕が教える訳にいかないけど、既にお医者さんからこれやると良いですよって言われてることを少し楽しくやる方法なら、多少は伝えられると思うから」

「えっ、そこまでして貰って良いの~?」

「勿論! 白金さんには笑顔でいて欲しいからね。

 僕が伝えられることで何かが変わるかは分かんないけど、白金さんの力になれるなら僕は嬉しいから!」

 

 とまあ、ちょっと臭いけど格好つけてそう言ってみる。まあ、いつものくどい上に嚙みまくりのアレよりは断然マシだろう。

 白金さんは、僕の言葉を聞き終えると少し悩んだ後、いつもの笑顔で応える。

 

「うん、分かったよ~。楽しみにしてるね!」

 

 その言葉に僕はとても嬉しくなるのだった。

 

 ……それにしてもさ。

 白金さんの家って……白金さんの家だよね!? 

 ああああ! 僕、ちゃんとやることやれるかな!? 

 

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