ナンジャモと!龍が如くの!何でも相談室!   作:洋菓子職人II

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グルーシャに一番効く説教が出来るのは間違いなく郷田龍司だと思ってる。


氷点下の警告と龍の眼光

 「はいはーい! ランドセル時代のボンタン狩り話で同接は驚異の290万人突破! 桐生ちゃんの記録まであっという間に来たところで……おろろ?最初のお便りはリスナーじゃなくて、なんと3ヶ月ぶりのあの方じゃんね! ラジオネーム『雪山の元スノーボーダー』さんから…おおうふ…!」

 

 「あぁ? またその、男か女か分からん冷気(シケ)たツラのジムリーダーか。ワシに何か文句でもあるんかい」

 

 「ひ、冷え冷えな文面だけど読むじゃんね……!

 

 『郷田龍司、そしてナンジャモ。前々回、前回の配信を観て、僕は桐生一馬という男が安全な漢だということが理解できたから、そこはもういい。

 真島吾朗も、最後の配信事故で漏れた話や、桐生一馬への執着を見て、なんだかんだ不器用なだけで根は優しい人なんだと気を許せた。

 堂島大吾は言わずもがな、紳士的で素晴らしい指導者だった。

 ……でも、郷田龍司、君だけは完全に違う。君は、他人を傷つけることに何も感情を抱かない、本物の獣の目をしている。

 今はたこ焼き屋をしていると言っているけれど、それでも漂ってくる危険な雰囲気はこれまでの3人と段違いだ。ナンジャモ、君はわざわざ自分の命を冷やすどころか、ハッコウシティそのものを消し炭にする気かい? ナンジャモの安全のためにも、僕は今すぐこのコラボ配信をやめてほしい』

 

 『グルーシャくんのガチレスきたあああ!!!』 『確かに龍司はこれまでの3人と違って「ガチの破壊者」のオーラがある』『「他人を傷つけることに何も感情を抱かない目」……鋭すぎる観察眼』『配信中止の危機!? 龍司どう返すんだこれ』『リザードンがグルーシャのメールに「あ? 文句あんのか?」って炎吹いてて草』

 

 「……クハハ、言うてくれるやんけ、雪山のお坊ちゃん。ワシが『他人を傷つけることに何も感情を抱かない目』をしとる、やと?

 ……あぁ、正解や。否定はせえへん。ワシはかつて『関西の龍』と呼ばれ、神室町を血の海に沈めた、自分のプライドのためだけに暴れ回った極道や。

 敵を殴り倒し、病院送りにした数なんぞ数え切れんし、その一人一人の痛みに寄り添うような、お利口〜な『優しさ』なんか最初(はな)から持ち合わせとらんわ」

 

 「…おお…こぇ〜〜……」

 

 「だけどな……勘違いするなや。ワシが人を傷つけるのは、何も感情がないからやない。

 それは己の『美学(すじ)』を通すためだけに、全神経を尖らせとるからや。

 ワシは昔から、女子供を脅したり、カタギの奴らを理不尽にいじめるような、せこい暴力が一番大嫌いなんや。

 ワシが拳を向けるのは、いつだって『命を懸ける覚悟のある、本物の漢』だけ、桐生一馬とタイマン張った時もそうや。

 ワシらは互いのプライドと龍の座を懸けて、死ぬ気で殴り合った。そこに他人を傷つける喜びなんかねえ。あるのは、己の命のすべてをぶつける、最高に熱いケジメだけや!」

 

 『「本物の漢としか戦わない」これが郷田龍司の美学なんだよな』『カタギや弱者には絶対に暴力を振るわない優しさ』『龍司の目が、ただの悪党の目じゃないことにグルーシャくんも気づくはず』

 

 「そんなワシがな、今は裏社会を破門されて、蒼天堀の路地裏でたこ焼きを焼いとる。

 …なんでか分かるか? ワシの作った美味いたこ焼きを食って、ガキも、サラリーマンも、ヤクザも、みんなが『美味いなぁ、おっちゃん!』って笑顔で食うていく。

 ……そのツラをな、この屋台(特等席)から眺めるのが、今のワシの最高のシノギなんや。雪山のお坊ちゃん。お前がワシをどれだけ危険だと恐れようが構わん。

 だが、ワシがパルデアのガキどもを無意味に傷つけるような真似は絶対にせん。ワシはたこ焼き屋や。客を笑顔にできん店主なんか、粉もん界の破門やからな」

 

 「うおおお~~~っ!!! 格好良すぎるじゃんね、龍ちゃん!!ただの暴君じゃない、自分の美学を貫いて、今はたこ焼きで人を笑顔にしてる本物の漢じゃん!

 

 「それはそうと……おい、雪山のお坊ちゃん。お前、この配信の『本筋』を根本から間違えとるぞ。この配信はお悩み相談の場や。ワシが危険やからやめろと、警察気取りで警告(お説教)しにくる場やないんじゃい」

 

 「あっ…!そうじゃん!これグルーシャきゅんの悩みじゃないじゃん!」

 

 「ナンジャモちゃん。そのグルーシャっちゅうお坊ちゃん、普段なんか悩んどることはないんか? 腹に溜め込んどるもんは何や!」

 

 「えっ!? あ、えっと……グルーシャきゅんはね、昔は世界的に有名な凄い天才スノーボーダーだったの!

  でも、競技中の不慮の事故で足に大怪我をしちゃって……。リハビリしても自分が納得する結果を出せなくなっちゃって、大好きなスノーボードを絶望のまま引退した過去があるんじゃよ……」

 

 「……納得する結果が出せんから引退した、やと?ナッペ山のお坊ちゃん、お前……ワシのこの右腕を見ろや!!!」

 

 龍司がガバッと右腕を突き出す。スタジオのライトを浴びて、鈍く銀色に光る無骨なガトリングアームが画面いっぱいに映し出された

 

 「お前、こんな鉄屑のバケモノみたいな腕で、たこ焼きなんかまともに焼けると思っとるんか!?ああ!? 冗談やないぞ! ワシなんか、箸すらまともに持てんのじゃ!!! 飯を食うのも、タコを仕込むのも、毎日毎日思い通りに動かんこの腕に、血の涙が出るほどイライラしながら生きとるわ!!」

 

 『龍司……!!!』『箸すら持てない……たこ焼き屋やるのにどれだけ絶望的な障害か』『大怪我で絶望したグルーシャに、この言葉は重すぎる……』『龍司のガチの説教が始まった』

 

 「五代目の近江を破門され、右腕も失くし、ワシの人生なんかあの時完全に『終わった』はずなんや。お前の言う通り、絶望して、納得いかん現実のまま、すべてを諦めて雪山に引きこもることもできたわ!

 せやけどな…!ワシはたこ焼きの千枚通しを、この動かん機械の指に無理やりガムテープでぐるぐる巻きにしてでもな、もう一度這い上がって、自分の『美味いたこ焼きで人を笑顔にする』っていう新しい道を掴み取ったんや!」

 

 「…パチクリ…パチクリ…」

 

 「大怪我したくらいで『納得いかん』やと? 甘えとんじゃねえぞ、ガキが!

 五体満足じゃなくなろうが、大好きな世界を奪われようが、漢なら、死ぬまで自分の新しいケジメ(生き方)を諦めるなや!

 お前が本当に悩んどるんは、ワシの危険さやない。昔の栄光を引きずって、今の自分を燻らせとる『自分自身の不甲斐なさ』やろが!

 いいか!そこで待っとれよ!この配信が終わったら箸が持てんワシが、このガトリングで世界一美味いたこ焼きを焼いて、お前の口に直接放り込んでやるわ!!」

 

 「…グルーシャきゅん、聞こえた…? 龍ちゃんはお箸すら持てない体で、今たこ焼きの道を極めようとしてるんだよ?過去の怪我に囚われてないで、龍司さんの熱い魂を五臓六腑で受け止めて、また明日から前を向いて歩き出そう?ね?」




郷田龍司編最終回をお待ちください。
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