ナンジャモと!龍が如くの!何でも相談室! 作:洋菓子職人II
「う、うぅ……二人の最高の兄弟の絆に、ボクちゃん本気で涙が止まらないんじゃが……。あ、あれ……? でも、そんな二人の奇跡の時間の最中に、なんだか……文字化けしてるような、すっごく古い暗号みたいなメールが、一通だけスタジオのサーバーに直接届いたじゃんね。ラジオネームは……書いてない、『匿名希望』さんから。お悩み相談、じゃなくて……なんだか不思議な手紙みたいだけど…」
『匿名希望? 誰だ?』『文字化けって、ロトムのハッキングのせいか?』『ナンジャモ、頑張って読んでくれ……!』
「泣きながらだけど読むじゃんね……」
『桐生一馬、錦山彰、そしてナンジャモ。画面の向こうで奇跡の再会を果たした二人の漢たちへ、この手紙を送る。
……わたしは、3000年前に大きな罪を犯した。3000年前、この世界を巻き込んだ戦争のなかで、私は何よりも愛する、たった一匹のポケモンを失ってしまった。
わたしは絶望し、愛するポケモンをどうしても生き返らせるため、あらゆる命のエネルギーを吸い上げて、死者に「命を与えるキカイ」を作り上げた。
……そしてわたしは、愛するポケモンを現世に取り戻した。だが、わたしの怒りは収まらなかった…。愛したポケモンを傷つけ、死に追いやったこの醜い世界が、どうしても許せなかった。
わたしは怒りのままに、命を与えるはずのその機械を、すべてを消し去る「最終兵器」へと作り変えた。愚かな戦争を終わらせるために、わたしは自ら破壊の神になることにした。
そして……キカイを作動し、地表のすべてを焼き払った。戦争は終わった。だが、兵器の放ったおぞましい光と、私の犯した罪の深さを知っていた愛するポケモンは……涙を流して、わたしの元を去っていった…。
それから、わたしは永遠の命を持ったまま、自分の元を去ったあのポケモンをただ探し求めて、何百年、何千年の時を一人で彷徨い続けた。
……結局、愛するポケモンがわたしを許し、わたしの元に帰ってきてくれるまでに、3000年という、気の遠くなるような時間が掛かってしまった。
君たちが離れ離れになってから、再会するまでの十数年という年数は……わたしからすれば、ほんの瞬き同然の、一瞬の時間にすぎない。
だが……せっかく再会できたのだ。もし今、愛する者と同じ時間を共にできているのなら、その「今の時間」を、一秒たりとも無駄にせず、何よりも大切にしなさい。
……悩みではなく、ただの老人の昔話になってしまって申し訳なかったな。どうか、悔いのない時間を』
「……え? 3000年前の戦争? 命を生き返らせる機械……?あはは、何これ……誰かの作ったファンタジー小説のポエムかな……? コメント欄のみんなも、誰だかさっぱり分かんないよね……?」
『3000年前って、歴史の教科書の世界じゃんね……』『ガチのオカルトマニアのなりきりメールか?』『でも、文章から漂う哀しみがリアルすぎて鳥肌が立つ』『誰だよ匿名希望って、小説家か?』
パルデアの誰もが、3000年という途方もない数字を「ただの悪戯か、フィクションの作り話」だと笑い、信じようとはしない。しかし……スタジオの中央に立つ、グレーのスーツの桐生一馬と、白いスーツの錦山彰の二人だけは違った。二人はお便りの言葉を耳にした瞬間、全身の毛穴が逆立つような感覚を覚え、互いに顔を見合せる
何万人もの極道たちの生霊を背負い、生死の境目を何度もくぐり抜けてきた二人の鋭い『勘』が、この荒唐無稽な手紙の全てが、紛れもない「本物の事実」であり、一人の漢の犯した罪の歴史であることを、一瞬で完全に見抜いていたのだ…
「……いや、ナンジャモさん。これは、作り話なんかじゃない。自分の愛する者のために世界を敵に回し、すべてを壊して、その代償として3000年もの間、たった一人で孤独の地獄を彷徨い続けた……。この手紙には、それだけの『嘘偽りのない、命の重みと覚悟』が、一文字一文字に血の涙となって刻まれてる」
「あぁ、桐生の言う通りだ。3000年を生きるあんたから見れば、俺たちの十数年なんて、本当に一瞬の瞬きみたいなもんだろうな。
だけど……名前も知らねえ遠い先輩さん。あんたの言う通り、俺たちのこの一瞬の逢瀬は、3000年にも勝る、世界で一番贅沢で、最高の時間だ。
……あんたの熱い言葉、俺たち伝説の兄弟分の胸に、ガッチリとケジメとして刻み込ませてもらったぜ。ありがとな」
「桐生ちゃん……錦山さん……。二人がそこまで言うなら、ボクもこの手紙の重さを信じるじゃんね……!匿名希望さん、素晴らしい昔話を本当にありがとう! 二人は今、あなたの言葉通り、世界一『今の時間』を大切にして、最高の笑顔を交わしてるよ……!」
AZはフラエッテに再会して約1年後に亡くなる…
錦山と桐生ちゃんは今夜で会えなくなる…