ナンジャモと!龍が如くの!何でも相談室! 作:洋菓子職人II
「というか桐生ちゃん! 桐生ちゃんの経験、配信の中で生きまくりじゃんねーっ!!キャバクラ経営から始まって、サラリーマンの愚痴聞き、ポケサー、果ては狂犬のあやし方まで、引き出しの数が多すぎてボクの
「……そうか? 俺はただ、神室町や沖縄で必死に生きてきた中で、人や獣とぶつかり合って学んだ『当たり前のこと』を話しただけだ。特別なことをしたつもりはねえよ」
「その『当たり前』のレベルが次元違いなんよーーー!でも、そんなハードボイルドな桐生ちゃんのおかげで、今日のドンナモンジャTVは同時視聴者数がなんと過去最高の300万人を突破!! パルデア地方の人口の何割が見てんのコレ!? 奇跡のウルトラ大バズりじゃんねーーーっ!」
『同接300万wwwww』『パルデア全土が漢・桐生に惚れた夜』『もうレギュラーになってくれ』『神回すぎてアーカイブ1億回再生するわ』
「300万人、か……。神室町のミレニアムタワーが何個分かは分からんが、それだけ多くの人間が、今この瞬間に笑顔になっているんだな。……配信というのは、本当にすごいシノギだな、ナンジャモさん」
「でしょでしょ~!? これがボクの、みんなの目玉をエレキネットする、世界一最高で最強なシノギなんじゃぞっ!……ああっ、楽しい時間はあっという間! そろそろ配信も終わりの時間になっちゃいましたじゃ!」
「ああ、夜も更けてきた。パルデアの若い衆や子供たちは、もう寝る時間だな。……楽しかったぜ、ナンジャモさん。最後に、あれをやるんだろ?」
「うんっ! それじゃあ画面の前の『みなのもの』!今日のゲスト、神室町の生ける伝説・桐生一馬さんと一緒に、いつもの最高の合言葉で締めくくるぞ~!カメラに向かって、せーのっ!」
「「『あなたの目玉を、エレキネットーーー!!!』」」
配信画面は「番組は終了しました」という静止画のテロップに切り替わった……はずでしたが、右上の「LIVE」ランプは赤く点灯したまま…機材トラブルか、はたまたナンジャモのうっかりミスか、配信の音声とスタジオの映像がそのまま裏で流れ続けている…
「あーーー疲れた……。マジで顎が外れるかと思った。さすがに同接300万は神経すり減るわぁ……」
「フッ、お疲れさん。見事なシノギだったぞ、ナンジャモさん。……ん? その頭の飾り、外れるものだったんだな」
「これ結構重いから肩凝るのよ……。あ、桐生ちゃん、お茶でいい? 炭酸?…ごめん、やっぱ 悪いけどセルフで冷蔵庫から取って。もう一歩も動きたくない……」
『誰だこのダウナーな美少女wwwww』『素のナンジャモ氏きたあああ』『声のトーン低くて最高なんじゃが』『桐生ちゃんにタメ口www』
「いや、俺のことは気にするな。……しかし、配信中のあの爆発的なエネルギーと、今の落ち着いた姿……かなりのギャップだな」
「ギャップっていうか、これが本来のボクよ。……ねえ、桐生ちゃん。配信は終わったし、ここからはただの『一人の大人同士の雑談』として聞いてほしいんだけどさ……」
「ああ、何だ? 俺に話せることなら、いくらでも聞くぞ」
「……ボクの、『年齢』についてなんだけどさ」
『!?!?!?』『おいガチの禁忌に触れるぞ!』『全裸待機』『年齢トークキターーーー!!!』
「画面の前ではさ?『最強キュートなボクちゃん』とか言って、若い子たちのノリに合わせて『かわちい★』とかやってるじゃん? 見た目も一応、これで通ってるし。でもさ……実はボク、結構いい
「なるほどな。芸能の世界でもよくある、イメージを守るための『キャラ作り』というやつか」
「そう、それ! でも最近さ、肉体と精神の限界がリアルにきてるわけ。配信で2時間ハイテンションで飛び跳ねた後の、翌日の『筋肉痛』と『激しい疲労感』が全然抜けないの。
昔は徹夜配信しても平気だったのに、今は夜更かしすると翌朝、目の下にガッツリクマができるし。あと、若いチャレンジャーの子たちが『これ今アカデミーで流行ってるんすよ!』って持ってきた最新ミームが、ガチで一文字も理解できない時があって……。その瞬間、『あ、ボク、もう若者の流行についていけてないんだ』って、めちゃくちゃ精神にダメージ受けるのよ……」
「…………」
「この、『見た目とキャラを若く保ち続けなきゃいけないプレッシャー』と『リアルな加齢の現実』の板挟み……桐生ちゃん、どうすればいいと思う……?」
『生々しすぎて涙出てきた』『ナンジャモお姉さん……!』『墓場まで持っていく…年齢は分からずじまいか…』『わかりみが深すぎる』
「年齢による衰え、そして時代の変化に置いていかれる恐怖か。……よく話してくれたな、ナンジャモさん」
「あ~あ、言っちゃった。伝説の極道に三十路……いや、大人の悩みをぶっちゃけちゃったよ……」
「気にするな。いいか、ナンジャモさん。俺も今年で58歳になる」
『58!?!?!?』『桐生ちゃんアラ還だったの!』『動ける58歳すぎるだろ』『お前のような58歳がいるか!鏡見てこい鏡!』
「俺もな、若い頃のように『体力が無限にある』と思っていた時期はとうに過ぎた。今じゃちょっと無茶をすれば腰に来るし、神室町の若いモンが使っているスマートフォンの最新機能や、流行りの横文字の意味など、さっぱり分からん。完全に時代の化石だ」
「え、桐生ちゃんでもそうなの……?」
「ああ。だがな、俺はそれを『恥』だと思ったことは一度もねえ。若者の流行が分からないなら、お前は若い奴らに『それ、どういう意味なんだ?』と真っ直ぐ聞けばいい。
男も女も、自分の無知や衰えを隠して知ったかぶりをする時が一番格好悪い。そして、年齢を重ねるということは、決してマイナスばかりじゃねえぞ」
「マイナスじゃない……?」
「ああ。若い奴らには勢いがある。だが、あんたにはこれまで配信を続けて、修羅場をくぐり抜けてきた、圧倒的な『経験と包容力』がある。若さというメッキはいつか剥がれるが、年齢を重ねて培った『人間の深み』は、何物にも代えがたいあんたの武器だ。現に、今日の配信であんたがパルデアの住民たちの悩みに寄り添えたのは、あんた自身が色んな経験をして、人の痛みが分かる『大人』だからだろう?」
「……………!」
「だから、無理に若者の流行に100%合わせる必要はねえ。『最強キュートなナンジャモ』の裏に、時折のぞく『すべてを包み込んでくれる大人の包容力』……それが見えた時、リスナーはあんたをただのインフルエンサーではなく、一生ついていきたい『本物のスター』として愛し続けるはずだ。
…歳を取ることを恐れるな。あんたはあんたのままで、堂々と胸を張って、年を重ねていけばいい」
「……あはは。なにそれ、ズルいじゃん。そんなこと言われたらさ……お姉さん、また明日からも頑張れちゃうじゃんね」
『全パルデアが号泣』『神配信の後にさらに神配信が始まった』『ナンジャモ一生推すわ』『桐生一馬、全大人の救世主すぎる』
「フッ、いい笑顔だ。…… ところでナンジャモさん。あのパソコンの画面で、さっきから『コメント欄』というやつが、さっきより凄い勢いで流れてるんだが……これは何だ?」
「え?……あれ? 嘘、LIVEランプついてる……? 番組終了のテロップの裏で……音声も映像も、ぜんぶ流れて……」
「……流れてるな。『ナンジャモお姉さん一生ついていきます』と書いてあるぞ」
「………!!!!ひゃ、ひゃあぁぁぁーーー!!! ちょっと待ってマニアック! 切れてない! 配信切れてないじゃんねーーー!!!みんな忘れて! 今の無し! ボクちゃんは永遠のピチピチ美少女だからァァーーー!!! 桐生ちゃん早く画面隠してーーー!!!」
「……みなのもの。今の話は他言無用だ。もしナンジャモさんの年齢を詮索する奴がいたら……俺が相手になってやる」
「だから火に油を注ぐなァァーーー!!!」カチカチカチッッ!!!
次回、あの漢も襲撃してくる。