英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
第1話
ーほぅ……これが金の騎神か……
目の前で片膝を付き凄まじい存在感を放っている黄金の騎士人形。彼の名前はエル・プラドーと言うらしい。聞けば帝国に伝わる七つの騎士人形の1つで、俺はその起動者に選ばれた。
しかし腑に落ちない点が1つ。どうして俺なのだろう?俺はただ幼なじみを超える為に剣に人生を捧げた男。決してこの様な存在に認められるはずがないのだが……うん。彼に直接聞けばいいのだろうがここは仕組んだ張本人に尋ねるとしよう。
「俺が彼の担い手でいいのか?ローゼリア?」
背後にいた緋色の魔女ローゼリアに聞く。この騎神に導いたのは彼女だ。
「当然じゃ。ヌシの光の剣に相応しいじゃろ帝国最強の剣士。ヴィクトリア・アルゼイド」
「買いかぶり過ぎだ。俺の故郷に俺より強い槍使いの女がいるだろう?」
俺の故郷レグラムに、リアンヌという幼馴染がいる。子供の頃から仲が良く、互いに鍛錬を積んでいたのだが、ある時、お互いの得意な獲物で戦ったのだが惨敗。それがあまりにも悔しく半泣きで故郷を飛び出し剣を極める旅に出た。無論弟や父親に黙ってだが。
「しかし……今思えば、俺がレグラムを飛び出したのと同時に君と出会ったのは、俺が彼の起動者候補と知っていたからか。何かと俺の旅に付いて来たがってたのもこの為か」
「ま、そういう事じゃの」
「やれやれ……」
自慢げに言うローゼリア。今更だから何も言わないが、彼女との2年の旅を振りかえると、やや怪しい所が浮かび上がってくる。露骨に行き先を変えたり、俺が行きたいと言った場所を却下したり。変な魔獣と戦ったり。最初の二つはいいとして、最後の魔獣については色々と文句を言いたいのだが。
「それで俺はどうすればいい?剣を極める旅は続けていいのか?」
「勿論じゃ。妾とも暫く会う事は無かろう。ヌシの言った女は気になるが」
「だったら一緒に来るか?そろそろ顔を見せに行く頃合いだし」
「それはまたの機会じゃな。妾も長としての使命もあるからの」
「残念。リアンヌに頼んで美味しい郷土料理を作って貰おうと思ったのだが」
「なぬ!?」
「来ないなら仕方ない。珍しい友が出来たと紹介たかったが君も色々と忙しいだろうし、またの機会にするよ。世話になったな」
左手に持っていた王剣ガランシャールを背中に担ぎ霊窟から出ようとすると、ローゼリアが右手を力強く掴んでくる。
「ちょっと待て。折角だからもう少し付き合う事にする」
「結局来るのかよ。言っておくが徒歩だぞ」
「分かっておる。レグラムまで転移で飛べぬからな」
「なら行こう。ここから一月はかかるからな」
「ま、気長に行くとするかの」
紅い杖をしまうローゼリア。霊窟を出ると強い日差しが差し込んでくる。暫く霊窟にいた影響かとても眩しく感じる。確か試練とやらで2日程籠っていたか。少し腹も減っていることだし、近くの街に寄って食べるか。
「さて、パルムで腹ごしらえでもするか」
「よいぞ。近くにあれもあるし」
あれとは何だ?凄く気になるのだが聞かないで置こう。聞いたところで答えない。この二年旅をして、彼女の事は大体分かっている。なんせ色々と苦労したからな。
「パルムまでは1時間程か。エル・プラドーは放置でいいか?」
「出る前に里に転移させておる。必要ならば呼ぶといい」
「了解。それじゃあ行こう」
街道に出てパルムへと向かう。途中で魔獣を討伐しながら進んで行くと、5アージュ程ある大猿と遭遇。ガランシャールを抜き距離を詰めると、大猿が雄たけびを上げながら近づいてくる。ローゼリアは後ろで呆れながら言ってくる。
「放置しても良かろうに」
「そういう訳にもいかん。君は下がっていろ」
迫ってくる大猿に剣先を向け闘気を開放。ガランシャールに光を纏い振り下ろす。
「奥義・光凰剣」
光の剣が大猿を飲み込み跡形もなく消し去る。旅の途中で編み出した我が剣の総集。とはいっても精度も威力も満足していない。近いうちに宝剣と共に弟に託そうと思っているが……それまでにもう少し鍛えておかねば。
「相変らずの威力じゃの。敵にまわすと恐ろしいわ」
「安心しろ。君に剣を向ける事はない。先に進むぞ」
ガランシャールを背中に担ぎ足を進める。この後は魔獣と遭遇することなくパルムに到着。ここに来るのは試練の前に寄った以来か。2日振りとはいえ少し懐かしく感じる。
「折角だから土産でも買って帰るか。一応手紙は出していたがかなり迷惑をかけたし」
「妾も里の皆に買って帰るとするかの。また後で合流じゃ」
「分かった。出口で合流だ」
ローゼリアと別れまずは腹ごしらえを済ませる。その後に土産屋に入り何かいい品が無いか物色。リアンヌや弟のシオン。家族の分を考えるとかなりの量を買わないといけないのだが……
「うーん……リアンヌの場合は何がいい?その前に弟には技と宝剣があるからいいか。だとすると……ん?」
視界の端で銀色の腕輪が写る。リアンヌがこういった品を気に入るか分からないがいいだろう。
「さて、そろそろ出口に向かうか」
土産屋を出て出口に向かう。暫く待っていると上機嫌のローゼリアが来る。こういった時の彼女は宜しくない事を考えていることが多い。嫌な予感がするがあまり気にしない方向で行こう。
「では行くとしよう。近くの精霊窟じゃ」
「またか。今度は何をする?」
「行ってからのお楽しみじゃ」
凄く怪しい。笑っているから尚の事怪しい。以前にも同じようなことがあり痛い目を見たことがある。その時は『これもヌシの為』と言われたことがある。まぁその事はいいだろう。どのみち俺には拒否権は無いからな。
「なら早く行こう。日が暮れるまでに済ませたい。案内は任せるぞ」
「心得た。期待しておるぞ」
俺とローゼリアはパルムを出て精霊窟へと向かう。
この時の俺はまだ思っていなかった。些細なきっかけで始めた剣を極める旅が、まさか250年以上続くとは……